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改訂版投下用スレッド
191
:
課題が見出される瞬間
:2003/12/16(火) 15:03
「待てぇぇぇぇぇぃ! 逮捕するーーーーーー!!」
どこぞの昭和一桁生まれの警部のような叫びを上げながら、耕一が川の中を疾走していた。というより壮絶な水しぶきを伴ったその姿は『爆走』という言葉の方がしっくり来るだろう。
追われる水面スレスレを滑空する漆黒の翼の少女――オンカミヤリューの始祖、ムツミは軽く後ろを振り向くが、嘆息を一つ吐いただけで再び前方を見据え、翼に力を込めた。
(参ったね……やっぱり直線の速度は向こうの方が速い。どうしようかな……)
常人なら鬼の力を全て発現した耕一の姿を見ただけで恐怖に足が竦むところである。が、そこは化け物の類は見慣れたムツミ。
見慣れたというかお父さんが神様なムツミ。特に臆することもなく、冷静に状況を分析、対抗策を練っていた。
(ちょっとずつ差を詰められてるな……このままじゃジリ貧……空に飛んで……逃げてもさっきまでと同じ。中途半端に浮くぐらいなら地面スレスレを飛ぶ方が向こうも手を出しにくい)
現在のムツミの高度は耕一の膝以下である。川面で水が弾ければ飛沫が身体を濡らす、そのくらいの高さ。
しかし逆にこの位置はさすがの耕一も手を出しがたく、タッチをするには身をかがめる必要がある。が、身をかがめるには一瞬足の動きを緩めなければならない。
そうするとムツミに距離を離される――確かに、下手に空中に浮き上がるよりよほど耕一にとっては嫌らしい位置取りをキープしていた。
(けど本質的な解決にはなってないしな……このままじゃ蹴りとばされるか、あるいはもっと距離を詰められてタッチされるのは時間の問題……
術……はもう一度使っちゃったしな……さすがに同じ手を二度と使うのはちょっとリスクが大きいね……結局土の術法は効かなかったし)
語り口は落ち着いているし顔は相変わらずの無表情だが、内心ムツミにしてはかなり焦っていた。
まぁもっともその微妙な変化を見抜けるのはお父様ズであるハクオロ・ディーの二人ぐらいであろうが。
(どうしたものかな……)
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