したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

改訂版投下用スレッド

160恋慕の袋小路・改定版/8:2003/12/05(金) 03:13
「今のをかわすなんて……だいぶ頑張っているみたいね、楓」

 いつもと変わらない笑みを浮かべている千鶴。
だが、その身体からは圧倒的な威圧感が醸し出されている。
狩猟者エルクゥ……またの名を『鬼』としての力を発揮しているのだ。

「姉さん……わざわざ気付けに来てくれたのですか?」

 そうでは無いことは勿論わかっている。
楓は、形式的な質問をしつつ、自分の身体を簡単に調べる。
その様子を見て、千鶴が答える。

「フフ…、楓。残念ながらまだタッチはできていないわ」

 確かに、楓の身体には裂傷どころか、かすり傷一つ無かった。
千鶴が突進してきた勢いから鑑みるに、触られていないと考えて間違いない。
だが、楓は戦慄を覚えざるを得ない。
『残念ながら』『まだ』タッチはできていない。
その言葉には含みがあるように、否、含みではなく、明確に意志がある。
――姉さんは、私を捕まえる気だ。けれど、私は捕まる気は、無い。
そして、楓は『鬼』の力を解放する。楓にもすさまじい威圧感が生まれる。

「貴方、初音と賭けをしてるんですってね」

 楓の『鬼』の力など無視するかのように、唐突に放たれる言葉。
千鶴の威圧感が増し、普通の人間では腰が抜けるほどの殺気さえも放ちはじめる。

「ええ、しています」

 何故、千鶴がそれを知っているのか、楓にはわからない。
強くなった威圧感に臆することなく、瞳を逸らさず、答えた。

「未成年で賭けなんていけない子ね。で、内容は勿論冗談よね?耕一さんを、もらうなんて」

 語調だけは優しく、しかし言霊はナイフのごとく。
それでも、楓は引かない。

「いえ、優勝して、私は耕一さんを頂きます」

 キッパリと言い放つ。

「そう……私の耕一さんを奪おうというなら……!」

 千鶴の殺気が、さらに増し、体勢を低くし走り出そうと構える。

「耕一さんは、姉さんのものじゃない……!」

 楓の威圧感も増す。姉と同様に体勢を低くし、構える。
開戦の準備。

「貴方に絶対に優勝させるわけにはいかない……貴方を、捕まえる!!」

『鬼』の姉妹が風になる。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板