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改訂版投下用スレッド

159恋慕の袋小路・改定版/7:2003/12/05(金) 03:12
 昼も大分過ぎて、柏木楓は先ほど自分の妹たる柏木初音と分かれた川に戻ってきていた。
(見つかった場所からは離れたがる、という人間の心理をついて、わざと戻ってきたのだ――犯人は現場に戻る、という説もあるが。)
彼女には鬼の証たるタスキはかけられていない
――無論、手に持ってもいない、正真正銘の逃げ手である。
彼女は、微かに顔を歪め、見るものが見ないとわからない笑みを――愉悦の笑みを浮かべていた。
この長い鬼ごっこも、さすがにもう終盤だろう。
時々見かける人間は鬼――本当の意味ではなく、タスキを掛けた人間――が殆どだった。
中には本当の意味での鬼や、共に僅かな時を過ごしたリサ・ヴィクセンのような逃げ手もいたが今は誰もそばにはいない。
残っている人間を把握する手段は無いが、自分はかなり優秀な逃げ手だろうという自覚は、僅かながらある。
確実に数を増している鬼達に気付かれる事無くやりすごし、或いは襲撃された場合も、能力を遺憾なく発揮し全て順調にかわしてきた。
この実績は、彼女に少しの満足感を与え、笑みのささやかな理由ではあった。
だが、そんな輝かしいと言える実績よりも、彼女が笑みを浮かべていた理由。
以前に交わした初音との賭けに勝つ、即ち、優勝すれば、あの人が手に入る。
とても愛しい人。次郎衛門。柏木耕一。
もうすぐ、あの人が手に入る。しかも、永遠に。
そう思うと、どうしても頬が緩んでいた。
が、突然エルクゥとしての血が騒いだ。力を解放する時間もなく、横に跳ぶ。
楓の身体の真横を一陣の風が背後へ通り抜けた。
楓はふりかえる。
そこには、そこかしこに大分傷ついてはいたが、自分のとてもよく知った顔が有った。

「リズエル……千鶴姉さん…!!」


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