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改訂版投下用スレッド

157恋慕の袋小路・改定版/5:2003/12/05(金) 03:10
 初音は、楓と出会ってから、逃げられるまでの経緯を話した。当然、「賭け」のことも。

「楓が優勝したら、耕一さんが、永久に楓のもの……?」

 耕一は、他の女を品定めして、結果、自分のところに返ってきて結ばれる筈。
耕一本人の意思など全く関係しない理屈だが、柏木千鶴はそう思い込んでいた。
だから、楓の提案した賭けなど、意味はなさないはず…そう考えて、思いだす。
『……なるほど、優勝者の願いを一つだけ他の参加者と企画側でかなえてあげる、ですか。
 面白いかもしれませんね』
(正式に発表していないとはいえ)そう言ったのは自分ではないか!
いくら耕一が自分のために尽くしてくれていても、楓がそんなことを言っていては、耕一とは結ばれない。
少しの焦燥感、大いなる怒り、そして、楓に対する殺意にさえ似た敵意を覚える。

「初音」

 そんな千鶴を見て、怯えていた初音。突然呼ばれて返事がまともにできない。

「ふぁ、は、はい!」
「ここで私と会ったことは忘れていいわ。いえ、寧ろ楓に悟られないために忘れなさい」
「う、うん。忘れる、忘れるよ。私、散歩にだって出てないよ、うん」

 正に鬼気迫る千鶴への恐怖の余り、錯乱状態に近い初音。
千鶴は、そんな初音に、笑みを浮かべる。

「じゃあ、お互い頑張りましょう、初音」

そういって、千鶴は風になった。
その後、駅舎に戻った初音は、本当に散歩に出たことさえ忘れていたという。


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