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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
5
:
有明 刃
:2018/10/18(木) 23:46:07
――――この時六層を歩いていたのは、さてどうしてなのだろう。
愛しのパートナーを探していた。
……うん、それは間違いない。
探していた、というほど積極的では無かったかもしれないけど……ここに来たのは、きっとどこかで彼女を求めていたからだ。
まず彼女の家を訪ねてみれば、不在だった。
こんな遅い時間に――――そう思って心配した、という部分もある。
もちろん、こんな遅い時間(その時は九時頃だった)に女の子の家を訪ねる方も悪いのだけど。
それでも訪ねてしまったのは、彼女を求めてしまったのは――――あの、咲き誇る黒のヒルガオを見たせいだろう。
そうしてあちこち探して回って……最後に辿り着いたのが、この喫茶店だった。
去っていく人がいて、少し考えた。
踏み入ってはならない場所。きっとあるのだろう。誰にでも。
でも……黙っていることは、どうにもできなかった。
苦手なんだ。どうしても。
「――――やぁ、カノン」
気付けば、自分は彼女の座るテーブルに手をつき、彼女に笑いかけていた。
「ああ、カノン! 何度口にしてみても、透き通るように綺麗な響き!」
「けれど、こんな時間にキミのような可憐な少女が一人……って言うのは、少し危ないよ」
視線を周囲に巡らせて、他に人は見当たらないけれど。
店長らしき人物が佇んでいるだけの寂れた喫茶店。もう一度彼女を見る。
「それほど会話に花が咲いたのかい? はは、妬けるなぁ!」
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