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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】

38宍戸 香音:2019/02/07(木) 22:40:11

周囲と距離を置くようになったのは、その日から。
人の命というものは、時に何の前触れもなく、簡単に失われてしまうものなのだと。
そう、心に焼き付けられた時からだ。

親しかった人とは、まず物理的に距離を置いた。
上層を離れ、下層に下り、関わる機会そのものを極端に減らした。
いつか『過去の人』になり、忘れられてしまうために。

それ以外の人とは、そもそも関わりを避けた。
わざわざ寄ってくる物好きとも、とにかく距離を置いた。時には辛辣な言葉も吐いた。
やがて、ただ一人の例外を除いて、宍戸香音に好んで近付こうとする物好きはいなくなった。

「……はぁ……」

けれど。人の本質は、そう簡単に変わらない。
過去の友人に出会った時は、結局遅くまで話し込んでしまって。
まとわりついてくるアイツを振り払おうとする度に、自己嫌悪で潰れそうになって。
そうして身勝手な弱音を溢す度に、また自己嫌悪が募り、一人溜息を吐く―――

誰かの腹の音と、その主の独り言が耳に届いたのは、まさにその時であった。
接近する足音に気付かなかったのは―――それだけ、注意が散漫になっていたのだろうか。
何れにせよ、視線は自然に音と声の主の方に向き―――

「…………」

何か言おうとして、言葉に詰まる。
いつからだ、とか。どうして、とか。学校は、とか。
そういう在り来りなことの何一つ、自分の言えた事ではなくて。
いつものように辛辣な言葉を投げかけるのも、憚られて。
気まずさのあまり、再び視線をどこかに逸らすのが精一杯であった。


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