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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】

31マクア・ア・タランガ:2018/12/11(火) 16:06:00

「……そう、だな」
「俺たちは、『ステラナイト』だ」
「戦って……願いを、叶える」

それは、不思議な幸福に満ちた言葉だった。
願いを叶える手段がある。
それは素晴らしいことで――――なにより、隣に友がいるというのが良かった。
一人ではない。
この悲しみも、郷愁も、希望も、絶望も、一人の物ではないのだから。

「いつも……すまないな、フゥ」
「キミがパートナーで、良かった。……そう、思う」

マクアは、彼女が言う『草原』というものを知らない。
彼の世界はどこまでも続く海と、無数の島々によるものだ。
まるで海のように、世界の果てまで続きそうな草原――――それは、マクアの想像力の外にあるものだ。
彼女にとってもそうだろう。
マクアは草原を知らず、フゥは海を知らない。
お互いに、故郷を取り戻す夢のために戦っていながら――――お互いの原風景を、知らないのだ。
それを少しだけ、歯がゆく思うこともある。
同じ夢を持っていながら、同じ風景を見ていない友のことを。
普段は口にしない。
それでも、心から信頼する友であることは変わらないのだから。

……だからきっと、口にしてしまったのはマクアの弱さ。
潮の香りがしない違和感で、弱ってしまった心の弱さ。

「……正直に言えば……怖いんだ」
「あと何回勝てばいい?」
「いつまで……いつまで戦えば、俺は故郷に帰れる? フゥは故郷を取り戻せる?」
「いつか俺たちが夢を叶えた時――――俺たちが覚えている故郷は、本当に俺たちの故郷だったもののままなのか?」
「……俺はフゥの故郷を知らない。キミもだ」
「俺たちの故郷は、俺たち自身しか知らない……それがたまに、たまらなく怖いんだ」


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