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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】

28フゥ・フィウ・ユメライ:2018/12/04(火) 03:06:11

傍には少女がいた。岩場の、少し高いところに立っていた。

「マクアくん、わたしも夢を見たんだよ。
 なんだと思う? バーベキューの夢!
 しあわせな夢だよ。しあわせな夢なんだよ」

身体は羽のように軽く、小さい。
まるでこのにせものの箱庭のように。
かつてその容貌によく準えられた鳥は、
今はにせものすら、どこにもいなかった。

「なにせ、わたしは肉が好きだからね。
 見て。ウミってやつにいるというのに、
 ウシってやつの肉を買ってしまったんだよ」

「まあでも…………これも、ある意味、
 今しか食べられないものではあるかな!」

いわゆる『海の家』のような割高物販で、
サカナではなく『肉串』をわざわざ選んだ。

「これは夢の話の続きだけどね。バーベキューは、マクアくんと二人でしてた!」
 
「わたしは肉ばっかり焼いてしまうんだけど、
 マクアくんは野菜も焼けなんて言ったりしなくて、
 むしろ自分も、サカナばっかり焼いてるんだよ。
 ああ、見たことないサカナばっかりだったなあ……!」

くすくす笑いながら、一本だけ差し出した。

「とてもしあわせな未来予想図だったんだ。きっと正夢に出来ると思ってる!
 この肉は、その気持ちのおすそ分け。食べないならわたしが全部食べてしまうよ」

?この肉は匂いが良い。肉の匂いでもない。調味料の匂いしかしない。
ここに海の匂いがあっても、なくても、なんにも関係ない匂い。
そんな、なんの景色もない匂い。だから悲しい気持ちもない料理な気がする。

まあ海の匂いってぜんぜん知らないけど。
というか海自体知らないけど。それを知れる日は、きっとそう遠くない。


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