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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
27
:
マクア・ア・タランガ
:2018/12/03(月) 23:45:28
アーセルトレイに、海はない――――初めてそのことを知った時の奇妙な喪失感を、今でも覚えている。
もっとも、喪失というのも奇妙な話だ。
マクア・ア・タランガは、かつて基幹世界にあったという海を知らない。
彼が知る海は彼の故郷のもの……雄大に、無限に広がる大海原。
だからアーセルトレイに海が無いからと言って、彼が喪失感を覚えるのは少しズレている。
わかっている。そんなことは。
それでも――――海が無いという事実は、彼の故郷が滅んだという事実を強く認識させた。
世界の果ては水平線ではなく、壁。
どこまでも続き、人々を身守り、慈しみ、恵みを与え、時に牙を剥く、あの母にして父なる海は、もう。
今でも思う。
コンクリートで塗装された街を歩く度、言いようのない感情がこみ上げる。
吹き抜ける風から潮の香りがしないことに気付く度、自分は失ったのだということを強く自覚する。
……だからせめてと、マクアは海洋保護区に足を運ぶ。足繁く。
例え人工的に作られたものだとしても、その果てにあるのが無機質な壁だったとしても……彼が感じられる、僅かな海。
海洋保護区とは言え、要するに海水浴場だ。
周囲は観光客でごった返しているし、彼の故郷とは似ても似つかない。
…………それでも、ああ、それでもなのだ。
岩場に腰かけ、潮風を受ける。
この瞬間だけが、彼の心を慰める瞬間だった。
「…………夢を」
「見たんだ」
呟く。
巌のような巨躯から、静かに。
「俺はカヌーに乗り……魚を追っていたんだ」
「投網を引くと、魚たちが網の中で跳ねていて……」
「……俺はその魚を担いで、家族たちの下へ帰る」
「…………そんな、幸せな夢だった」
ゆっくりと、語る。
……誰に?
決まっていた。
――――傍らにいる、己のパートナーに。
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