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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
23
:
トワレカ・ヴァニア
:2018/10/27(土) 00:09:20
「明日はもっと上手くできるかもしれない。
そのまた明日は。また明日、明日、明日。
いつか明日が来なくなるまで……
繰り返すのも良いかもしれないけれど、
……『今日こそ』と思うから、芸術なんだ」
そう口にしてから、喉の奥から湧き出してくる言葉があった。
それは『トワレカ・ヴァニア』が言うべき言葉ではないのだろうが、
『アレックス・グロース』のブリンガーは、言うべき言葉に思えた。
「……そう、思っているんだ」
「それは……私は怖いのかもしれない。どこかで閉ざさないと、
閉ざす事も出来ないまま終わってしまうかもしれないから。
…………いつまでも『明日』を信じて舞えたら、それは、
どれほど希望に満ちた芸術なんだろうね。……私は、出来ない」
私は絶望だ。
絶望に舞う。
絶望だから、舞える。
そう思っている。
「でも―――――――――――――『ハッピーエンドの未来』、か」
なにせ、全ての形あるものはいずれ滅びる。
だから、誰かの未来の『世界』に希望を託してこなかった。
託すのはいつも自分で。世界ではなく物語に託していた。
だから、自分を何処までも磨き上げる事が出来た。
だから、何かが終わっても語り継がれるものに賭けた。
「いつか壊れてしまう世界だから、
壊れても語り継がれるものになりたい」
「けど、本当は……壊れないのがいいに決まってるんだ。
壊れるはずのない世界で、私の芸術がずっと残ったら。
ハッピーエンドのあと、ずっと幸せなまま、
当たり前の日々を繰り返すことが出来る……
芸術になった私が親しまれ続けるのが、そんな世界なら」
……だから、ハッピーエンドがずっと続くなんて今だって思えない。
思えないことを、目の前の英雄は、これほど真剣に語っている。
夢を見ているのではなく、現実に手を伸ばそうとして、伸ばしている。
私には出来ないことだ。
終わることなく続く『平和な未来』を、信じてしまいそうなほどに。
この人は出来るのだろう。
「それは、かけがえのないくらい……素晴らしい事だと思う」
自分が行けないところにいる人と、舞う事が出来る。
その剣を携えて、『トワレカ・ヴァニア』を超える芸術になる事が出来る。
「だから私は……貴方とのステラナイツで良かったと、本当に思うよ!」
いつか洗練した動作でコーヒーカップを傾ける。
自分の『ステラバトル』が、自分という存在だけではなく、
世界そのものを素晴らしい物語へと昇華させるものになるのは、
この戦いが自分だけではなく――――二人の『ステラナイツ』で織り成す『英雄譚』だからだ。
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