したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】

22アレックス・グロース:2018/10/25(木) 01:46:29

「ただ一回パッと咲いて、パッと散って……それで満足できるのか?」
「明日はもっと上手くできるかもしれないと、そう思わないのか?」

彼女は『ここまでできればいい』という明確なボーダーを敷いている。
俺にはそれがない。己の限界を認めるのであれば、俺はとっくにマスクを捨てているだろう。
恐らく、それこそが、俺と彼女を隔てるものなのだろう。
持つ者が自分の可能性に蓋をして、持たざる者が未来を信じる。皮肉なものだ。

「それだけの自負と才能があって、未来に向けて努力もしている。にもかかわらず……」
「自分で可能性を閉じてしまうなんて、とても勿体ないだろう。」

一つの芸術で満足してしまえば、心を動かせる人の数もそこまでだ。
じゃあこれが二つなら? 乱暴に計算すれば、二倍の人の心を動かせる可能性がある。
三つなら? 四つなら? 可能性は、無限大だ。
きっと、そんな無限の可能性に満ちた未来を描く力を―――人は、希望と呼ぶのだろう。

周囲の注目は、所詮一過性のものだ。
やがて再び、周囲の目が離れてから、再び口を開く。

「……そう、らしいな。」

逆に言えば、必ずしも同じものとは限らない。
だからこそ、こちらもどの程度のズレがあるかを把握したかったのだ。

「英雄というのは、柄じゃあないが……」

コーヒーを一口。高いだけはあって、特に何も入れなくても美味い。
いつかカネがない時に街角のオバさんが奢ってくれた、泥水みたいなコーヒーとは大違いだが―――
不思議とあのクソ不味いコーヒーが懐かしく、少し寂しい。

「……俺は、どうも君より強欲らしい。一つじゃとても満足できない。」
「いつまでも平和な時間が続いて欲しい。悪党に泣かされる善良な人々に救いが欲しい。」
「悪党には正当な裁きが下って欲しい。歩くなら綺麗な道がいい。」
「滅んでしまった世界を救いたい。滅びに瀕する世界を救いたい。」

きれいな道を歩きたいから、ゴミを拾うし落書きも消す。
悪党が少しでも減ってほしいから、マスクを被って悪党を殴る。
神様にばかり頼るのもなんだから、できることは可能な限り実践しているが―――
さすがに個人の努力では、世界を救うとか、そういったことには手がとどかない。
だからこそ―――

「誰もが希望を信じて生きていける、当たり前の未来が欲しい。」
「誰も彼もが救われて、それでめでたしめでたし、って感じの……あー……ハッピーエンド! って感じの世界を、歩きたいんだ。」

―――マスクを捨てても、後悔することのないような。
そんな、普段なら手の届かない未来こそ、俺が望むものなのだろう。
願いの成就に至るまで、どれだけの戦いを重ねれば良いのかもわからないけれど。
それでも、手が届くのであれば、手を伸ばさない理由にはならない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板