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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
17
:
トワレカ・ヴァニア
:2018/10/23(火) 05:27:25
トワレカは上層で生まれ、上層で育ち、上流に生き、芸術を育んだ。
童話を読み漁った。伝承を聴き漁った。いつしかそれを舞い演じる舞台にいた。
書く道や描く道、撮る道に進まなかったのは彼女の中では疑問すらない。
「照れくさいかい? 実はね、それは……私もなんだ。
ごめんね、私……あまり、こういう『人と組む』事が無くて。
剣舞は一人か、大人数の中の一人だから。『二人』は初めてなんだ。
それも……あとで一人になる二人なんて、本当に前代未聞なんだよ」
「つまり、素晴らしいって意味なんだけど」
舞いは己を芸術にする事。それゆえ、彼女は華美で、瀟洒でいた。
脚をばたつかせるのは水面下でのみ。地に足着けず、浮かび続ける。
それは自警団(ヴィジランテ)――――土地に根付く英雄譚とはかけ離れている。
だからこそ、尊敬していた。道なき道を地に足を着けて歩み続ける者を。
「私は…………そうだね、私もまずは『コーヒー』にしようかな」
アメリカンとかブレンドとかエスプレッソとかカプチーノとか、
そういう事をするのは抜け駆けのようで、なんとなく憚られた。
注文を終えてウェイトレスが去ってから、少し声を潜めて。
「……なんだか、かしこまったカフェを選んじゃったんだよね。
…………いつもこういう所しか来ないわけじゃないんだけど、
大事な話をしたいから。そういう時、こういう所を選んでしまうんだ」
とはいえ客は少なかった。そういう時間を選んだのは正解だったか、
おせっかいだったか――――きっと少し余計な、気を揉んでしまう。
「……ええと、ああ、そうだ」
「スニッカーズというのは確か……チョコレートの仲間だよね?
そういうフウに聞いたような、聞かなかったような気がする。
あのね、ここはチョコレートケーキも美味しいんだ。ふふ……」
気が急いていた。『その時』が近づいて来て、それが戻る事は無い。
「それで……そう。今日呼んだのはね、アレックスさん」
一呼吸。大事な事は消えない。ゆっくりでいい。
「あらためて話がしたいんだ」
「『ステラバトル』という最高の舞台を――――貴方と最後までちゃんと演じ切るために。
私は貴方の事を少しは知っているけど、それは本当に『わかってる』ことじゃあない。
あの日のヒーローとしての貴方じゃあなくて、貴方という物語、そのものをわかりたいんだ」
「……っていうのも、ちょっと照れる言い方な気がするね。でも、言い方を変えても気持ちは変わらない」
我ながら、熱っぽい文句だとは思った。その熱のまま戦えれば、それが私にとって魔女の魔法なのだろう。
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