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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】
16
:
アレックス・グロース
:2018/10/23(火) 02:16:35
アレックス・グロースという男を一言で表すなら、『地味』であった。
仕事は真面目。人付き合いは良くも悪くもなく、普通。
服装の趣味は―――元の世界と基幹世界で数年ばかり時間軸のズレがあるせいか―――やや古い。
ボランティア活動くらいしか趣味らしい趣味のない、平凡で、善良なだけの男―――
―――それが、アレックス・グロースという男の、周囲からの評価であった。
それは、或いは用務員という立場においては、優れた点なのかもしれない。
用務員の仕事は、芸術とは対極に位置するもの。
地味な、誰でも知っているだろう当たり前の作業を、ただただ寡黙にこなすものだ。
例え職場が芸大であろうとも、それは変わらない。むしろ他の場所よりも地味でなければならないくらいだろう。
日常とは、あくまでも芸術の引き立て役にすぎないのだから。
「いや、構わない。」
「あまり、こういう洒落た店には入らないから、不作法がないと良いが……」
しかし、君は知っている。地味な男は表の姿に過ぎない。
..・ ・ ・ ・ .・ ・ .・ ・ .・ .・ .・ ・ .・ .・ .・..・ .・ ・ ・ .・ .・ .・
彼の本質は、マスクで顔を隠し、違法な自警活動を行う危険人物である。
―――言い方が悪かった。いわゆる『ヒーロー』というやつだ。
スーパーはつかない。山を持ち上げるようなパワーもないし、目からビームも出せない。
いくら相手が悪党と言っても、私刑を下すのは当然違法行為だ。故に彼は、公的には悪人ということになる。
だから、マスクで顔を隠すわけだ。もちろん、周囲の人間に害が及ばないようにという意図もあるが。
彼にとっての君は、職場に通う生徒という以上のものではない―――もちろん、正体を知る、という枕詞は付くが。
偶然目撃したのか、或いは助けられたのか。それは私の知るところではない(自由に決めてくれて構わない)が―――ともかく、君は彼の正体を知っている。
「そう面と向かって言われると、少し照れくさいな……」
「どうも……とりあえずコーヒーを一杯。」
「あー……まあ、食べるよ。甘いの。スニッカーズとか。」
とは言え、こういった機会にはさほど慣れていない。
何しろ仕事にボランティア活動にヒーロー活動と、なかなか忙しい人生を送っている身だ。
どこかの鉄の男やコウモリ男のようにプレイボーイというわけでもない。
有り体に言えば、まず周囲から浮いていないか心配というのが第一。
面と向かって褒められる事に、あまり慣れていないというのが第二であった。
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