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【セ】彼方への郷愁【銀剣のステラナイツ】

15トワレカ・ヴァニア:2018/10/23(火) 01:26:10

寂しい夕暮れが横たわっていた。
いつも学友と過ごすカフェテラスの、
なんてことはない夕暮れだったけど、
私の気持ちがそう彩っていたのだろう。

もう、時間はあまりなかった。
シンデレラのように時計の針も忘れて踊れたら、
どれほどよかっただろう――――

けれど残酷なことに、近付いてきているのは魔法が解ける時間ではない。
魔法の時間だ。終わりではなく始まりだから、忘れさせてはくれなかった。

「あなたと……こうしてカフェで話すのは初めてだよね。
 時間を取ってくれてありがとう…………私の『シース』」

何度か話した事があった。
何がきっかけだったか、そんな事より。
そのひとの物語は私にとって宝石だった。

「……なんてね。ねえ、アレックスさん。
 あなたと私で『ステラナイツ』だと聞いた時、
 ほんとうにびっくりしたんだ。ほんとうに……」

だからその物語の続きを演じられるなら、
それはとても、とても……………

「…………よかったと思っているんだ。本当にだよ」

やや陶酔的になっている自分に気づいて。
それから――せっかくカフェを選んだのに、
いつまでも空っぽのままのテーブルを見て。
ちょっといい椅子しか意味をなしていないと気付いた。

「……あ、ごめんなさい。これ、メニュー。
 コーヒーゼリーがおすすめだけど、
 そういう甘い物って……食べたりする?」

見事な革装丁のメニューを彼に渡す。
名前は知らないけど、いつかの卒業生が作ったものらしい。
この学園には芸術があふれている――――そう、あふれている。

だが、目の前の彼ほど気高いものは、その中にどれほどあるだろう?
私は、『アレックス・グロース』という、この虚飾の庭に不似合いな〝隣人〟を尊敬している。


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