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『ヒーローズ・アカデミー』
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時は20世紀後半。
後に黄金時代(ゴールデンエイジ)と呼ばれる、ヒーロー達の最盛期である。
挑む子らの学園。
それは世界最大のヒーロー組織ガーディアンズ・シックスが設立した、全寮制の学園である。
その設立理念は、次世代のヒーローの育成!
教師はヒーロー! 校長もヒーロー! 卒業生もまたヒーロー! まさにヒーローのための学園!
キミたちは、そこへの入学―――即ち、ヒーローを志す学生なのだ!
―――キミたちは、まだ知らない。
これからキミたちを待ち受ける、数奇な運命を。
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『―――――ブガー!』
『ガシャン!ガシャン』
早川(たち)の病室の入り口と窓を、シャッターが封鎖する。
対パワー暴走・脱走防止用の強化合金隔壁(防音機能付き)だ。
【Dr.ノーチラス】「保健室では―――音量――――静か―(聞き取り不可能)」
サプレッサーイヤーマフ
ドクター・ノーチラスはどこから取り出したか、防音ヘッドホンを装着し、
隔壁操作用のリモコンを片手に平然と様子を見守っている。
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『魔殺(まあや)―――――母さん―――――!!』
一度は吹っ飛びつつもなんとかスマホに触り音量を調整する。
早川魔殺(まあや)。
いわゆる『天才』であり、天才らしく極度のコミュ症。
同程度以上の知性を持たぬ相手とはとことん話の噛みあわない、合わせる気のない偏屈な人だ。
まあ、その分。妹以外は抜群の知性を持つ早川一家に対しては話が噛みあい、過剰ともいえる偏愛を示す女性でもあるのだが――――
《どーかなー英雄?退屈してない?キミは子供のころから落ち着きのない子だったからねー》
《ハヤカワインダストリのこととか気にしたりしてないかな?かな?自分がいなくなったから機能停止してるんじゃないかー!?とか考えてないかなー☆?》
《そんなきにしいのキミの為にー、ママは報告をするのでしたー!!》
その分愛がうっとおしい。
そのうっとおしさ、実に早川英雄500人を500倍させるほどと言われている――――!!
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辟易するにはするが――――確かに聞きたかったことではある。
ハヤカワ・インダストリは今どうなっているのか。その被害状況を聞き、退院した後のプランを考えなければ―――――
だが。
そう思って、聞いた現況は。
500人の天才たる早川英雄が抜けてもなお、ハヤカワ・インダストリは滞りなく業務を続けていると言う事。
確かに投資・発展・拡張などまでは手を回せていないが・・・現状維持、業務を行うと言うだけであるならば十分なほどに万事運用できている。
そしてその運用の要となっているのが・・・
《――――って感じかな!えへんぷい!ママ頑張ったんだよ英雄、ほめてほめて〜☆》
超人種にまでは及ばない、父と母の尽力であるというのだ。
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『―――――――』
メールはまだ続いているが頭にうまく入ってこない。
父と母が?僕の業務を引き継いで運用できている?
どういうことだ。両親は確かに尊敬できる人たちだ。だがそこまで能力の高い人たちではない。
ゲイツのような知力や僕のような並列思考、ソーラーのような発想力を持つような人では断じてないんだ。
わからない。想像もできない、理解を超えている。
なんで彼らが、僕の受け持っていた業務なんて明らかに手に余るような仕事に手を出し、それをこなせているのか―――?
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【Dr.ノーチラス】「頑張っている子供を親が助けない理由はない」
……メールBOXには母からの連絡の他に、山とメールが溜まっている。
キミが参加している部活や各委員会からの救援依頼と業務連絡だ。
そして、その後には「問題が解決した」ことを知らせるメールも届いている。
キミを除いたメンバーだけで解決したことを知らせるメール。
他の救援が来たことを知らせるメール。
キミの事情を知る教師陣からの返信もある。
『業務の引継ぎは完了しました。スプートニク』
『安心して治療に専念してください。Mr.デンジャラス』
早川達の支援を前提に組まれていた業務は破綻した。
自分の能力に任せ、頼られるままに手を広げ続けた結果だ。
しかし、それでも全ては変わらずに回り続けている。
・ ・ ・ ・ ・
【Dr.ノーチラス】「なまじ、人並み以上に物をこなす君だから今まで体感することもなかったのだろう」
「子供が失敗したり助けを必要としてる時に、大人が手を差し伸べるのは当然だ」
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――――ふと、ある風景を思い出した。
早川英雄のオリジン、今のライトロードを生み出した原風景。
それは母の背中、父の背中。彼らが見せてきた『人のために動く』その行為。
『力ある者は力なき者を助けるべきである』『この世で最強の力とは知識である』
――――早川家は、その二つを柱とした存在であった。
貴族的、と言えるその行為を早川英雄は、尊いと思って、憧れていたのだ。
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その憧れに任せて走り続けてきた。
父と母の手を掴んだと思ったらそのまま振り切り、どこまでも走りぬいてきた。
――――僕は、いつから彼らに背中を見せるようになっていたのだろうか。
決して親をないがしろにしたというわけではない。
衝動のごとく駆け抜けたとしても時折振り返り、親の顔を見てはまた走ってを繰り返すような少年期。
だが、それはただ『親を見ていた』というだけで。親の傍に戻ることはとんとなかった。
子に置き去りにされていた彼らを少し思う。
そう言えば――――彼らは。淋しそうな顔をするときが増えていたな、と。
「――――ハハ。」
「なんなんですかね・・・これ。」
「自分がいなくても皆が頑張ってる。」
「僕がいてもいなくても動いている。」
「本来ならいてもいなくても同じなのか、って憤るべきなんでしょうけど――――」
困っていた人たちが。『自分たち』がいなくても歩いているのを見て。
「なんでだろ。いま、すごくうれしい。今すごく嬉しいです。」
何もしていないのに――――何かこう、あたたかいものが僕らのなかで満ちている。
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【Dr.ノーチラス】「当然、楽に回っている訳じゃない。不足に備えていた者もいたろうが……」
「皆、自分の仕事をそっちのけで君が抜けた穴を埋めようと駆けまわっている」
早川の腸頭脳をもってして回っていた仕事であれば、
穴埋めに必要となるマンパワーは2倍にも3倍にもなる。
ましてや超人種でない英雄の父と母なら、実を砕いての超過業務だ。
【Dr.ノーチラス】「それでも、君の入院していたこの一週間」
「“これに懲りて手に負えるだけの仕事をしろ”という声はほとんど出ていない」
業務がぎりぎりで回っているのもまた、君がこれまでに各委員や部活の、
作業やシフトを見直し効率化してきたからでもある。
キミが抜けたからといって、全てがゼロに戻ったわけではない。
【Dr.ノーチラス】「皆が、キミの夢を知っている」
自分こそが真の超人種と公言してはばからない身の程知らない――しかし行動と結果を伴ってきた、大きな理想。
キミが築いたものを無駄にはするまいと、皆が苦難の時を支えている。
ずっと昔から、君の走る姿を見てきた2人がいる。
【Dr.ノーチラス】「大人だから、親だから子供の夢を叶えてやりたいんだ」
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『・・・まあ!超人種の僕の目からすればまだまだ効率よく出来ますけどねー!』
『やっぱり一般人ですからね!僕が導いてあげないと!!』
――――ヤバい。かなり照れくさいという自覚がある。
その自覚が顔にまで現れる前に声を上げるのが精いっぱいだ。
実際触発されただけでボクの求めるラインに至るわけじゃない。
僕が早く現場に戻るのは急務だろう。でも――――
『その為にも早く治さないとですね。』
『皆が踏ん張っているうちに、たっぷり休息も取ってスーパー早川になって戻ってやりますよ。』
急がなくてもいいと、そう思えてきた。
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【Dr.ノーチラス】「その意気だ」
―――――数分後。
検診を終えたドクター・ノーチラスは防音シャッターを解除して、保健室を後にする。
解放された窓からは、グラウンドをあわただしく駆け回る美化委員会や飼育委員の姿が見える。
手押し車をひっくり返して運んでた土をひっくり返す男子生徒。
脱走したサイオンニワトリを追いかける先輩たち。
普段はデスクワーク専門の生徒も混ざっている――――あぁ、実に手際が悪い。
襲撃があった日の、グレートウォールの会話が思い出される。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【ウォール】「……ハヤカワ。お前を見てると自覚も行き過ぎると毒だなって思う」
「オレは自分の手の届く範囲には責任を持ちたい」
「だから、届くかどうか怪しい範囲にまでは、出しゃばらない」
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今にして、思えばあれも彼の体験から来る助言だったのかもしれない。
守ると決めた一点にのみ責任を持ち、必要以上に抱え込まない。
適材適所、領分を超えた仕事は信頼できる仲間に任せる。
ヒーローの飽和した社会に適応した、スマートで道徳的なやり方だ。
だが、それもヒーローの道の一つでしかない。 ライトロード
今の自身の器以上を望み多くを取りこぼしながらも、皆は君の道に希望を見た。
その灯りを絶やすまいと普段の道を外れて奮闘している。
常に限界を超えようとする者、それこそがきっと―――――――
『シーン13:真の超人(仮)』
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シーン13:ED
登場PC:春夏 冬『ナイトサムライ』
―――学園体育館・トレーニングルームNo.5。
カーボンタタミが敷かれた人工的な和の空間には冬が1人。
四方を囲むようにトーテムポールめいた形状の柱が立ち並んでいる。
『トレーニング設定速度8』
『セット21、3・2・1―――――START』
トーテムポール側面から、強化樹脂のブレードが突き出し、
開始を告げる電子音声と同時に、トーテムポールがバラバラに横回転を開始。
ブレードが冬の頭部や胴、足を打ち据えんとする。
集団戦闘トレーニング用の木人ロボットである。
『ギュィンッ!』『ギュイイインッ!』
模擬刀や拳でブレードを打ち返せば、ブレードは逆回転し今度は逆方向から襲い来る!
トレーニング用とはいえ、現在の設定速度は最高値に近い。
無防備に受ければ打撲は免れない。
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「――――――――――――。」
瞠目――――開眼。
訓練用の木刀を構え、木人の攻撃をいなしにかかる。
「(右をかわす)」
「(左を受ける。上は軽量化で回避)」
「(右を弾く。下を跳躍で回避し上を受ける)」
「(胴を捌く)」
「(上を重量化で押し返す)」
「(左をかわして右をくぐる)」
「(袈裟を半身で避けて下を打ち払い――――)」
加速するニューロンが、木人の攻撃への対処を次々と導き出す。
師匠たちや――――あの時の有生の方が、ずっと激しく打ち込んできた。
だからかわせる。対処できる。対処しなければならない。
右、左、左、上、袈裟、面、下段、突き、左、右、下段――――――――
「――――ぅぐッ!?」
――――かわしそこねた一撃が、冬の胴を強かに打つ。
『ヒット確認』
『トレーニングを終了します』
同時に沈黙し、持ち場へと戻っていく木人たち。
弾き飛ばされた冬は腹部を抑えて悶絶し、木刀を支えにゆっくりと立ち上がる。
まだだ。まだ、こんなものではダメだ。
「ハッ、ハッ、ハッ……もう、一回……!」
……痣だらけの体で、滝のように汗を流しながら、それでももう一度と冬は吠える。
強くならなくてはならない。
でなければ、ここに来た意味がない……!
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『セット22、3・2・1―――――START』
木人が起動し、再び回転を開始する。
たまにトレーニングにやってくる生徒はいたが、
キミの鬼気迫る様子を目にすると、声も掛けれずすごすごと引き返してゆく。
『――――47、48、49、50』
学生用に設定速度にリミッターが設定されているとはいえ、
本来2機セットでの使用を想定された木人拳ロボット――それを2倍。
『ギュインッ!』『ヒット確認』
再び右ひじに鈍い痛み。
後ろからやって来たブレードが冬を強かに打った……身体が付いてこなくなっている。
四方を囲む危険な配置と打たれ方から、即座に離脱することもままならない。
未だ回転を続ける、残り2機の樹脂ブレードが冬の頭部に迫る!
『ブツッ―――――キュウウゥゥゥンン………』
【ハル】「………閉館時間よ」
「それ以上続けても逆効果。そのあたりにしておきなさい」
木人の電源が切れ、寸前でブレードの回転が停止する。
声がする方を見れば、引き抜いた電源コードを手にしたハル・ソメダの姿があった。
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「っ、っ……先、輩」
一瞬、呆けたように呟いて……ガクリと膝をつく。
手足が震え、立つこともままならない。
……それでも、許されざるはその未熟。
「……まだ、だ」
「俺は、まだ……強く、ならないと……!」
未熟、未熟、度し難い未熟。
そんなものに甘えている暇は、無いのだ。
……次は本当に、誰かがいなくなってしまうかもしれないのだから。
木刀を支えに、震える脚で立ち上がる。
まだだ。
まだ、終われない。
「『ナイトサムライ』の、名を継ぐ者として――――」
「――――――――それ、以前に」
「ヒーローを目指す、一人の、人間として」
「俺は、強くならなくちゃ、いけないんだ……!」
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【ハル】「……トレーニングロボットTaifeng-PND33」
「訓練中の学生、電源コードに接触して横転する事故が発生して生産中止になった型」
「設定速度7以上の長時間使用で、じん帯に過剰な負荷がかかる危険性も指摘されている」
「プログラムのアップデートは20年も昔に中止されているわ」
少林寺拳法部辺りが拾ってきたのが倉庫に残ってたのかしらねと独り言ちる。
【ハル】「オーバートレーニングで筋肉も委縮するだけよ」
「これ以上は繰り返しても変に癖が付くわ」
「……自分への懲罰のつもりなら、美化委員の清掃ボランティアにでも参加しなさい」
「本当に“トレーニング”がしたいのなら、一旦休憩」
そう言ってハルはタオルとスポーツドリンクのボトルを差し出す。
近づいて気づいたが、眼鏡越しに見える彼女の目元にはうっすらとクマが浮いている。
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「………………………………わかった。そうする」
もう一度……今度はゆっくり、床に座り込む。
受け取ったスポーツドリンクを一息に呷り、口元を拭って。
……そうすると、いよいよ鎌首をもたげてくるのは無力感だ。
何もできない。何も。
「…………先輩」
「あの時は……助太刀に来てくれて、助かった」
「ありがとう」
力なく、礼を言う。
あの時、先輩の助けが来ていなかったらどうなっていたことか。
……本当に、どうなっていたことか。
「……俺は――――」
「刀を振る事しか、できないんだ」
「早川のように、器用にはなれない」
「…………だから、これだけは」
「これだけは……未熟のままじゃ、いられないんだ」
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ハルは冬の隣で壁にもたれ、ため息をつく。
【ハル】「……礼を言うのはこちらの方よ」
「今回の件は、私がヴィランに騙されて利用された事に端を発したのだから」
……ここ数日、聞こえてきた噂では本物のハル・ソメダは、キャンプの数日前に、
母を名乗る人物から「父の入院」を知らせる偽の電話に誘い出され、実家に戻っていたのだという。
電子生徒手帳から、学校のサーバーに発信したはずの欠席届の改ざん。
学生証を偽装し、大きな違和感も抱かせず潜入していたヴィラン。
閉鎖され外部に連絡の届かない自然公園への誘導―――全てがあまりにもスムーズに進行していた
【ハル】「実家に戻って異変に気付いたのが、襲撃の数時間前ギリギリ……」
「『本当はヴィランに協力してたんじゃないか?』なんて、しつこく取り調べに捕まってたし」
「………ほーんとマヌケにもほどがあるわね!うん、私でも疑うわ!」
「無責任な言い方だけどさ、戦いって誰かケガしちゃうものなのよ。当たり前なの」
「取りこぼしてちゃう事に罪悪感を抱いてしまうのは当然」
「でも、こーゆーのってちょっと身体を痛めつけても上書きできないわ。少なくとも私はそうだった」
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「……………………」
……押し黙る。
…………“先輩”の言葉だ。
相応に、重みがある。
すると、ますますわからなくなる。
わからずやなのだ。春夏冬という少年は。
「……先輩」
「頼みが……頼みが、ある」
だから、そう切り出した。
「俺に、剣の稽古をつけてくれないか」
「……もちろん、今すぐに……というわけではなく」
――――春夏冬は、人に与えられて生きてきた。
師に救いを与えられ、技を与えられ、夢を与えられた。
いつか、与えられたものを返す時がくるのだろう。
……だが、それは今じゃない。
「師匠が……ナイトサムライが死んでから、ずっと自分だけで剣の稽古をしてきた」
「師匠に教わったことを、繰り返してきた」
「……これから先、それだけじゃ足りなくなる」
「いや……今でさえ、足りてない」
「だから――――先輩。俺に、稽古をつけて欲しい」
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【ハル】「『剣の稽古』にはならないと思うわよ」
「染田は打つ方が専門で、使う方となるとデタラメのからっきしだもの」
あのキャンプの日、バルザイムーンが見せた戦い方が思い起こされる。
次々に刀を取り出しては投げる、打ち付ける、突き立て足場にする。
古い時代においては魂にも例えられるそれを、縫物の留め針1本分程度にも惜しまず使い捨てていた。
一振りの刀に己を込めるナイトサムライとは対極だ。
【ハル】「それでも、殺人トーテムポールよりは役に立てるかしら―――いいわ」
「先代(ナイトサムライ)はTVの前にほとんど姿を見せるヒーローじゃなかったけど、振るう剣は何度か観たことある」
「あなた、師匠流一本だけでやって来たなんて言うけど、練習の様子を覗いた時の剣―――」
「うーん……あれは練度の差とかムラっ気とかじゃなく……」
「戦い方に『別のヒーロー』の癖とかニオイを感じた気がするのよね」
「入学前から?学校で付いたクセ?他に誰か影響を受けるようなヒーローでもいたのかしら」
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「――――――――。」
「……ああ、そうだな」
冬の人生で関わった、他のヒーローと言えば。
それは間違いなく、あの寡黙な仮面の亡霊のことで。
「……もう一人の、師だ」
「スペクターさん……剣は使わないから、立ち回りのことを少し、教えてもらった」
少しだけ、誇らしい。
あの人の教えが、多少なり身に付いている、ということだ。
だったら、少しは前を向ける。
だってそれは、それならば。
冬は立ち上がって、頭を下げる。
「…………ますます、お願いしたい」
「先輩。俺に稽古をつけて欲しい」
「スペクターさんの教えが、俺の身に少しでもついているのなら――――先輩の教えも、俺の何かになるはずだ」
剣士でなければ師になれぬ、なんてわけはない。
師匠は、先代は言っていた。
『一番の師は、己である』と。
今ならその言葉の意味が、少しわかる気がした。
どのような教えであれ……それを咀嚼して身に付けるのは、己なのだから。
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【ハル】「私からもお願いするわ――教うるは学ぶの半ば、というし」
「まだ足りない……みんな、もっと強くならなくちゃいけない……」
―――ハルの足が霞み、竹刀置きが蹴り上げられる。
無数の木刀とカーボン竹刀が宙に舞う。
-―━━ =ミx、
´ ____ ` 、 、
/ .。s≦: : : : : : :≧s。、 \ 、
r――ィ(: : : : : : : : : : : : /: : : : \ }k}
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./ )': : : /: : : : : /: : :ィ′|:|: : : : : ∧ / r \
/ ィ(: : : /: : : : : /: // Ⅵ!: : : : : : ∧ L___}
. /'i: : : /: : : : : ィf /′/ Ⅵ∨: : : : : :}k1
/ |: : /i: : : ,ィ(生{ / 'L斗: : : : :.} :| 【ハル】
./|: /: |: : 〈 寸 ィf 圷ミメ、: :| : : : ! 「それじゃ、そろそろ筋肉も冷えてきた頃でしょう」
/ /|/: : | /全s。._」! ′、り 斥 : 八: : :|
./ //|: : : |{圭´ 〈 `¨¨ .ィ(: :/: : i : : | _ 「まずは1セットだけ―――――」
. i// ̄ : |{:i:圦 __ _ イ( : /: : :|: : !{ ヽ 「見てみたいわ。あなたの剣がなにでできているのか」
/∧ : : |Ⅵ/^ . ー7一 /:/V}∨:| : : | } i
_, /__.∨: | V / `./ー ≦:/ }′/´/´ ヽ} ト、
_/_`_< \: | / ̄}[∨/ / },/ /r‐′:{ iN} L \
_「 ̄ ̄Ⅵー' ,r‐{ }', ( / / .r〈 .′ .} Уs≦{/}
{、 `Y} 「ーr `ァー一/ { ィ( ̄ /{ ー―=≦ ̄ { ̄〉
∧ーヘ ∨ー/ ./ / .ィ( / (\ {
{ ∧一じ / , ′′ , ′ )k ≧s。.____ ィ(
} ∧ }^ト、./ / / .)′ , ′ / }ト、 _. ィト、
∧ ∧ } :! i{{※} / , ′ { / 「≧=―< ィ(\ \ ./
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⌒\_ ィ( / ∧ :}!{「}|ー=≦ 、 ! } ./ }ト、 \ 〈__}ト、 \ ∨
“バルザイムーン”の顔になったハルが、両手に竹刀を構えると、
粘滑質の足さばきで距離を詰めてくる――――名状しがたき無形の剣が襲い来る!
……得たものを鋳溶かし練り上げるもよし。
それとも白鋼を造るようにそぎ落としてゆくもよし。
果たして、きみの剣は師匠(ナイトサムライ)のそれとなるか、まだ見ぬ形にたどり着くのか。
『シーン14:刃のカタチ』
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『ヒーローズ・アカデミー/星に願いを』終了
獲得グリット数:9―――→成長点:9点
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リトライ:2
初期グリット:4
バトル:1
チャレンジ:1
クエリー:4
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シーン1
登場PC:ライト・ロード
―――さて、なんやかんやでキミも退院するわけだが、なんともう6月も終わりに近づいている。
期末試験までもう一週間とちょっとと言ったところだ。
キミにとっては―――実技試験さえどうにかなれば―――些細な事だが、キミ以外にとっては阿鼻叫喚の時期である。
人によっては―――主にタイガーリリーの発言であるが―――下手なヴィランより余程恐ろしい敵との事だ。
さて、そんな言葉を残したタイガーリリーは現在隔離中である。
座学はドクター・ノーチラスが見ているらしいが、そもそもすっぽり抜けている基礎知識を埋め直すのが主らしい。
と言うわけでキミは、試験対策をまとめて保健室へやってきたのだ。
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×退院する
○退院した
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『ノックしてもしもぉ〜し』
勝手知ったる保健室・・・と。
クラスメイトとしても心配だし、彼女の症例は今後の為にも是非見ておかなくてはいけないという話もある。
とりあえず早川印のまとめノートを持ってきて保健室に来たわけだが・・・先生はいるだろうか?
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【Dr.ノーチラス】「どうぞ。」
保険医のドクター・ノーチラスが、キミを出迎える。
基本的にタイガーリリーへの差し入れ等は、彼女を経由して行われる事になっているそうだ。
既にナイトサムライが多数のDVDとポータブルDVDプレイヤーを差し入れ(させられ)た実績があるため、よほどのことがない限りは突っ返される事もないだろう。
公的には何か問題を起こしたと言うわけでもないため、ある程度融通が利くらしい。
【Dr.ノーチラス】「で、今日はどうした? 負傷者を連れて来たわけでもないようだが。」
近況については、キミもある程度聞いている事だろう。
しかし、いつ戻ってくるのかについてはまだ聞いていない。
時期的にもかなり微妙な時期であるが―――
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『ノートですよノート。』
『先生のマンツーマンとは言え多少のズレは出るでしょう?』
『テストも近いことですし、授業内容を僕なりにまとめたものを持ってきたんですが――――』
『どうです、彼女は期末試験には一緒に参加できそうなんです?』
ひらひらとノートを振りながら先生に答えよう。
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【Dr.ノーチラス】「そうだな。テクノマンサーなんぞと呼ばれてはいるが、私も人間だ。リソースが足りなければ色々と無理も出るさ。」
「彼女に関しては、中学レベルの知識を補完してやる必要もある。正直に言えば、現状取れる時間では試験対策まで手が回らん。」
キミも知っての通り、タイガーリリーは中学時代の後半を病床で過ごしていた。
意識を失っていた間は当然勉強などできようはずもなく、意識を取り戻した後もリハビリの方に多くの時間を割いていたのだろう。
経歴を考えるなら、むしろよく合格できたものだ―――
【Dr.ノーチラス】「結論から言えば、君達と一緒に期末試験を受ける事はできない。」
「―――こればっかりはタイミングが悪かった、としか言えんな。この時期に急激な環境の変化が相次げば、試験にも悪影響が出るだろう、という判断だ。」
【Dr.ノーチラス】「と言っても、あくまで試験への悪影響を避けるための処置だからな。」
「期末試験が終わり次第、帰宅許可が出る予定だよ。」
―――とのことらしい。
少なくとも現時点では、不当な扱いを受けているということはないようだが―――それはそれとして、期末試験には欠席らしい。
恐らく、彼女は彼女で別に試験を受ける事になるだろう。
【Dr.ノーチラス】「そういう君の方も、あまり悠長にはできんぞ。」
「病み上がりだろうと、実技試験の採点は甘くならないからな。」
正直な所、キミにとって唯一にして最大の脅威は実技試験である。
こればかりは仕方ない。フィジカル面において、キミはあくまで人並みに優れているというだけだ。
オマケに常人をはるかに凌駕する当たり判定の大きさと言うハンディも背負っている。
それらを知識と技術で補うのは、決して容易な事ではないだろう―――
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『心配そうですね・・・大丈夫ですよ。』『体の方はもう万全ですし、ね。』
戦闘となるのなら新たな力は手に入れた。
汎用性がウリの装備だ。生身だけで殴りかかっていたころに比べてボクの対応力も格段に上昇した――――
『正直実技は詰め込みで鍛えることなんてできませんし、慌ててもしかたない面もありますよ。』
『そうなるとやっぱり期末試験でしょう・・・ノート、渡しておいてくださいね?』
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【Dr.ノーチラス】「判っているなら結構。君の場合は、無理して短期で鍛えようとしても逆効果にしかならないだろうからね。」
そう言いながら、ノーチラスはノートをパラパラと流し見る。
普通の人間なら、この程度で中身を把握することは難しいだろうが―――
【Dr.ノーチラス】「―――うむ、中身にも問題はないようだな。渡しておこう。」
―――当人にそんな意識は1ミリもないだろうが―――仮にも君の師匠的なポジションである。そんな心配は無用らしい。
ともあれ、キミの目的は果たした。後は、限りある時間を有意義に使うとしよう―――
シーン1『ケース1:座学の心配は無用』―――End
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シーン2
登場PC:ミス・セカンド
なんか色々と壮大な目的のため飼育委員に入ったキミは、今日も“飼育小屋”で様々な動植物の世話に従事していた。
動植物の世話―――と言うより人為的な環境の維持活動は、キミにとって興味深い、重要な活動である。
最近は家に帰る時間も遅くなることが多く、小テストの点数も下がり気味ではあるが―――キミは、あまり気にしていなかった。
【???】「―――ミス・セカンド。」
作業のキリが良い所を見計らったのか、丁度休憩に入ろうというタイミングで、キミは声をかけられた。
キミにとっては顔見知りだが、プレイヤーはこの限りではないので一応説明しておこう。
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/{-{二ニ===ニ二二二二/ / l/::::|
-=⊂| 〈二ニ====ニ二二/二/ /::::::::::|
/ニニ⊂|_人\二二二ニニニニニ/ |:<>:::/\
/ニ/::::/ ̄ 〈\\ニ三三三ニニニニ|::::/::::::::::>‐-..、
/ニニ/:::::::\ 0 \\二二二二| ̄ ̄::::/:::/:::/::::---、::〉
/ニニニ/::::::::::}::::∨ ∧二二ニニニニ|::::::::::::/:::/:::/:::::::::::::::::::::{
/ニニニ/:::\::::|::::l::∨ { `7二二}二/|::::::/}::::{:::/::::/::::::::::::::|
/二二/::: \:Ⅵ:: |::::∨ \/ニニニ/ニ/'┤:::{::::::\:/:/::::::::::::::::::八
. /二二/:::::::::::::::: |::/:::::::∨ /ニニニ/ニ/ /::::::|::::::::::/::::::/::::::::::/
彼は飼育委員長の“ビーストマスター”。
動植物と心を通わせるパワーの持ち主である。
単に心を通わせると言うだけで、言う事を聞いてくれるかどうかはその動物次第だが―――まあ、今は良いだろう。
見かけによらず面倒見が良く、委員の者と談笑している事も多いが、こう改まって話しかけてくるというのは珍しい事だ。
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※ 委員会活動を満喫する地球人の図
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ァ ゥ l. ,.' .;;l .l l,ィレ'゙i:. l:::V.l::.、 l゙:二l___:ヽ Vミ.ム.. }./. `ー, 〉`´ `'、_} ヒ
( ラ プ l; ':| l:.,lf゙l::i,|/⌒\/ /⌒ヽ lミVハ |::::.. `‐'´ |...) ィ
イ ァ ゥ.. ;: .: ::l .l´|V',ィ/⌒ヽ::::::::::::ん(__ハムミヽ l.. |:::::: |、 )
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「そっか、牧畜って周辺の環境にこんなに影響を与えるんだ」
「人の手でバランスを取るのって大変だな……」グビグビ
さすがは最先端の超人技術が集まる学園の飼育委員。
食糧問題解決のためにサイオン・ホルスタインの研究までしているとは驚きだ。
主要5教科以外の知識がどんどん高まるのを感じる。
「あ、B・M(ビーストマスター)。厩舎の掃除は終わったけど、ほかにやることあった?」
-
【B・M】「いや、貴様の活動内容に文句があるわけではない。むしろ貴様はよくやっている。」
どうやら、追加の仕事があるとかそういう話ではないらしい。
しかし、ビーストマスターの表情は真剣そのものだ。
決して軽い用事ではない事が読み取れるだろう。
【B・M】「しかし―――委員会活動は、あくまで学業との両立が前提だ。」
【B・M】「スプートニク教諭から、貴様の小テストの点数がこのところ低迷していると警告があった。」
「委員会活動のみにかまけて、学業に身が入らんようなら―――委員長席に身を置く者として、貴様の活動に制限をかけねばならん。」
重々しく切り出されたのは、最近ちょっと手を抜き過ぎた感のある、学業に関する苦言であった。
そう言えば昨日帰ったのは何時であったか―――
-
確かに、最近の国語と社会の成績はお世辞にもいいものではなかったかもしれない。
若干、理解するのを諦めてる節もある。
逃避するかのように門限ギリギリまで飼育小屋に籠っていることはサラだ。
「ええっ、そんなぁ!だって50年も前に死んだ作者と心を通わすだなんて無理だよー」
「霊媒系のミスティックか“サクシャ・マスター”を呼んでよ!いるのなら!」
「それに歴史だって知ってるのと教科書に書いてるので全然違うし……」
なんだよ世界四大文明って。当時はもっと文明あったし。
-
【B・M】「解答を導き出すのに必要なのは“事実”ではなく“出題者の意図”だ。」
【B・M】「出題者は常に現在編纂された教科書に基づいて問題を出す。」
「当然、貴様の知る事実と異なる点もあるだろうが、当然のことだ。」
「出題者はお前とは違う、短命で無知な弱者だからな。4000年前に何があったかなど知るものか。」
基本的なカリキュラムは、あくまで人間ないしその延長線上にある者のために作られている。
つまり、平均的な人間の持つ知識に基づいて出題されるのである。
キミとは違い、多くの人間は1万4千年前に何があったかとか実際見て知っているわけではないのだから―――
問題にキミの知識とのズレがあるのも当然の話と言えよう。
【B・M】「―――超越者どもにありがちな視点のズレだ。貴様も例外ではなかったと言う事だな。」
「ともかく、次の期末試験の点数次第だな。結果さえ出せば、俺は何も言わん。以上だ。」
-
知識と教科書のズレは、記憶の混線や“歴史の揺れ”によるものという話もあるが……。
「なんか、前にも同じこと言われた気がするかも。デジャブ?」
「(……人間の見える範囲で、人間の視点で考える―――力加減?)」
これは確か……そうだ、思い出した。
入学時にマスタードラゴンに与えられた課題、それを再び突き付けられたのだ。
自分がこの世界にやって来るに至った原点(オリジン)、『ヒーローを知ろうとすること』と同じなのだ。
「これは逃げられないなぁ―――よしっ、やってみる」
「今日から試験まで全力で向き合って成績A+持って帰って来るからね。いくぞ、作者……!」
「私がいない間、ギュウドン(※飼育してるサイオン牛の名前)の世話よろしくね」
-
【B・M】「うむ。世話の方は任せておけ。」
「貴様は試験に集中する事だな。もうさほど時間はないぞ。」
―――試験までは、1週間と少々。
キミにとっては、まさしく瞬き程度の時間である。
キミは果たして、試験を無事終える事ができるだろうか―――
シーン2『ケース2:ひとのこころがわからない』
-
シーン3
登場PC:ナイトサムライ、B×B (他2名も登場したければ可)
【スプートニク】「―――最後に一つ。期末試験まで、残すところあと一週間となりました。」
「ここで赤点を取ってしまうと、夏休みの大半が補習で潰れる事になります。」
【スプートニク】「夏休みを少しでも自由に使いたければ、きちんと試験範囲の復習をしておいた方がいいですよ。以上です。」
チャイムが鳴り、ホームルームが終わる。
教室内は暫し、いつも通りの喧騒に包まれる。
教室を見渡せば、いつも通りのやつ、慌てて勉強しているやつなど、クラスメイトの姿勢も様々だ。
キミたちにとっても、決して他人事ではない。
何せキミたちにも、苦手な科目の一つや二つはあるのだ。
この所何かとめまぐるしかったが、キミたちも学生である以上、試験対策は急務と言えるだろう―――
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「ぷぅ……」
ホームルーム終わりで頭を抱えたのは水嶋カレンだ。
反省室時代のブランクもある。
尋常じゃないほど勉強が苦手という訳でもないが、あまり得意でもない。
母親に言われて国語力や公民や法律などの社会科系は厳しく育てられている。
しかしその他の強化はどうか。数はまだしも理系の成績は赤点一歩手前の手空飛行である。
「どうしよう……」
今まではなんとか手を尽くしてきたが今回は授業の遅れが微妙に足かせだ。
「自分一人だと途中で飽きちゃうし……」
「でもるうどと勉強したらそれはそれで意識逸れちゃいそうだし……」
「英雄は……ちょっと、ううん……勉強は出来るんだろうけどなぁ……」
-
「……………………………」
――――困ったことになった。
率直に言えば……春夏冬は、さほど頭の出来がよくない。
決して頭が悪いというわけではないのだが、学校の勉強との親和性が低いとでも言おうか……
師やスペクターに手ほどきを受けた理系分野についてはある程度マシなのだが。
幼少期をストリートで過ごした影響もあってか、国語や歴史などの文系学問は正直危うい。
文系に関しては『赤点は回避できる』という程度のレベルである。
加えて、最近は剣術の修行に力を入れており、学業は少し疎かになっているきらいがあった。
つまり――――ヤバイ。
「……早川に……いや……」
早川に頼れば、いくらでも教えてくれるだろう。
彼はそういったことを得手としているし、無数の肉体を以てすれば苦でもない。
しかし、だからといってなんでも彼に頼るのもよくないだろう。
依存は毒だ。自分の失態と未熟の尻拭いを任せるのは、道理に反する。
とはいえ、一人では集中力を欠く。
……未だ『反省室』にいる、有生のことを考えてしまうからだ。
となると――――――――
「………………カレン」
「少し……いいか」
――――――――『自分と得意分野が異なり同程度の学力の友人』に声をかけるしかあるまい――――!
-
「ふ、ふふ……」
笑えて来た。
人間ピンチになるほど笑えるものだな。
ヒーローとしてはそれで正解かもしれない。
生徒としては赤点クラスの反応だが。
「あぁ、冬……うん、あたしも感じてたんだ」
「そうなんじゃないかって。もしかしたら同じこと考えてるって」
「冬、勉強教えて?」
-
「ああ――――俺たちは、同じ気持ちだ」
助け合う心……そう、これこそが一番大切なものなのだ……
自助努力とかそういう言葉はもうこの際脇に置いておこう……
なんか……そういうのは……今はいい……!
「その代わり――――勉強を教えてくれ……!」
今ここに、赤点回避同盟が結成される……!
-
教室のドアが勢いよく開かれる。
大型台風の到来だ。
「おー、いたいたっ」
「2人とも――――――勉強会をしよう!」
お互いの欠けた部分を埋め合わせ、バランスの取れた赤点回避同盟。
さて、そこに『得意科目と不得意科目で極端に学力の違う友人』が加わったらどうなるか?
これはそういう問いかけ(クエリー)なのだ!
-
―――試験まで、残り7日。
本当に大丈夫なのか?
それは、今後の君達次第だ。
さあ、1週間を有意義に過ごそう。
シーン3『ケース3:普通にピンチ』―――End
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シーン4
登場PC:ナイトサムライ、ミス・セカンド、B×B
―――放課後、ナイトサムライ&タイガーリリー宅。
応接室にはホームシアター設備とリクエスト漏れしたDVDの収まったラック、そして座り心地の良さそうなソファーが設置されている。
寝室は2台のベッドを除けば、トレーニング用の器材くらいしか目につくものはない。
台所にはホットプレートと大量の小麦があり、冷蔵庫には多少の野菜とコーラが入っているくらい―――
ここ男の一人暮らしなんじゃないかと勘違いしかねない部屋に、ミス・セカンドとB×Bは通された。
勉強会に使えそうな部屋は台所の食堂スペースくらいだろう。寝室は論外だし、応接室は確実に飽きたところで映画鑑賞会が始まるからだ。
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次スレ:ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/game/51605/1516199050/
―――次スレも、GMと地獄に付き合ってもらう。
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エナジー現在値(ライフ:-1 サニティ:-3 クレジット:4)
1d10 行動順
DeadlineHeroes : (1D10) → 8
《空飛ぶ銀盤》を再使用し、飛行状態&状態異常無効状態に(クレジット:4→3)
「(真似る……同じ視点に立つ………)」
自分をトレースするB×Bの動きを感じつつ、静かに目を閉じる。
抱擁を待つかのように両手を広げるノーガードの構えを取る。
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マ≧s。____ ____jI斗≦::::::::::::≧s。_ ヾ:、
===ミx,\ \ \≧s。 __)≧く::::::::::::::ニ=-::::::::_:::::\.}::}
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丈≧s。_ \. ':, \___r乂:::::/:::{ /::::/:::::::::::__jI斗― }
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,' ', >.、, ≧s{ / / アミ,/ 小 `、 ___{ /イ 「――――誇れ」
', >入ハ_/ / ./ ハ -:小 _ ' ´ 「お前が強い、その証拠だ」
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l{ / \ノ 「≧s。_
l{ /| >-るo。__り
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从 {
. / ' , {
{ \ {
難敵こそ早急に排除すべし。
基本だ。基本中の。
「苦しませはしない」
「――――俺の友達も、苦しんでいる」
「早急に、終わらせる……!」
刀を構える。
一歩踏み込む。
―――― 一歩が、滑るように伸びる。
花月の眼前に。
刃を振り抜く。
ここは夜だ。
己は夜に侍う者だ。
「――――――――――――――――壱ノ型、黒猫ッ!」
切り伏せる――――神速の抜刀術!
……無論、峰打ちではあるが。
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