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サーナイトSS総合 part5
519
:
名無しのトレーナー
:2015/03/07(土) 00:40:34 ID:/qBnNDz6
何かまた始まってしまいましたね。
ダークナーって名前は五秒程度で思い付いて採用しました。
戦闘に緊迫感が無い!ここ字が間違ってる!など色々あると思いますが長い目で見て頂ければ嬉しいです。
520
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:25:52 ID:/qBnNDz6
内容が薄いかもしれませんが取り敢えず小説が出来ました。
一ヶ月に二つ投稿なんて久しぶりです。
なので誤字脱字等あるかもしれませんがそこは勘弁を。
521
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:26:25 ID:/qBnNDz6
ある街のコンサート会場。大勢の客が歓声を上げながらステージ中央にいるマイクを持ったポケモンに釘付けになっていた。
そのポケモンはミミロップといった。煌びやかな衣装を身に纏って踊っている。
「みんなー!盛り上がっちゃってるー!?」
彼女の声に会場は一際盛り上がる。
「それじゃ、次の曲行くよー!」
彼女が歌い出すと観客はスティックライトを左右に振る。
奇妙なもので誰が指示した訳でもなく全員が一糸乱れぬ動きでスティックライトを同じ方向に振っている。
会場の盛り上がりは最高潮に達しつつあった。
その中にポケモンだけでライブを見に来ている珍しい姉弟がいた。
サーナイトとキルリアである。
二人共最前列でスティックライトを他の観客と同じ様に振っている。
少々変わった点と言えば姉のサーナイトがメガバングルを左腕に着けている事である。
そして、コンサート会場の盛り上がりはミミロップの歌声で最高潮に達した。
衣装に隠れていて見えなかったがミミロップの左腕にもメガバングルがはめられていた。
コンサート会場の外では五人の少年がサーナイトとキルリアを待っていた。
傍から見れば退屈そうにしている。
「まさかサーナイトがライブに興味を持つなんてな。」
そう言ったバイツは退屈そうにしているかと言えばそうではなくむしろ心配そうであった。
「サーナイト、調子がいいとは言っていたが倒れたりしていないだろうか・・・」
「だったら今から会場に入る?」
そう言ったのはライキだった。
「入れるのか?」
「冗談だよ。チケットは辛うじてとれた二枚だけで即完売。流石ミミちゃんの生ライブ。」
ある意味感心しているライキに向かってヒートが口を開く。
「珍しいじゃねえか、お前の事だからダフ屋でもするのかと思ったぜ。」
「転売屋と言ってほしいね・・・まあ、やってる事はそんなに変わらないけど。」
「ねーねーライキ、今日泊まるホテルは決めたの?」
イルが口を挟む。
「ご飯の美味しくない所は嫌だよ。」
「我が儘な奴だね君も。」
シコウがそのやり取りを見て溜め息を吐く。
やがてライブが終わり、客が次々と出口から出てきた。
「さーて、サーナイトとキルリアは何処かな、っと・・・」
バイツが人混みの中に入り辺りを見回す。
人、人、ポケモン、人、ポケモン、人、ポケモン、人、人、人、人。
数百人を超える人とポケモンの波の中たった二人を見つけるのは難しかった。
「あ、バイツお兄ちゃん。」
微かにキルリアの声がした。
バイツは慎重に辺りを見渡す。
人混みを上手くすり抜けてキルリアが現われる。
「サーナイトは?」
522
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:27:03 ID:/qBnNDz6
「お姉ちゃんはもう少ししたら来るよ。」
数秒遅れでサーナイトもバイツの前に現れる。
「よう、ライブは楽しかったか?」
「凄い熱気でした!私もそれに乗せられてついついはしゃいでしまいました!」
興奮冷めやらぬといった状態のサーナイト。
「体は大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です。」
「そうか、それならいいんだけどな。」
そう口にはしたものの心配そうにしているバイツ。
サーナイトが気の利いた事を言おうとした矢先ライキの声がバイツの背後から聞こえた。
「おーい、今日泊まるホテルの部屋が取れたよー、早く行こう。」
「今日は疲れただろう。ホテルでゆっくり休もう。」
バイツはサーナイトとキルリアを連れて四人の元へ戻った。
それから数時間後の事、ミミロップはホテルの一室に居た。
ライブが大成功した事もあって気分がよかった。
それに個室をあてがわれて小うるさいマネージャーから少しの間離れられるという事もあった。
「うーん!よし!休んじゃおう!」
ミミロップはベッドに飛び込み枕に頭を埋めて足をバタバタさせる。
売れるようになってから働きづめ。やっと取れた休める時間。
しかし、それを邪魔するかのようにドアをノックする音。
「何よーあたしには休む時間も無い訳?」
愚痴を言っても始まらない。小うるさいマネージャーかもしくはホテルを突き止めた熱狂的なファンか。
ミミロップはドアに向かう。
「はーい。」
ドアの先に居たのは一人の男。身長は平均的な男性と比べれば少し低いものの横幅は平均的な男性と比べれば広い体型。
「社長!どうしてここに?」
「いや何、君をねぎらってやろうかとおもってね。」
「ちょ・・・ちょっと・・・!」
無理矢理部屋の中に入る社長と呼ばれた男。この男はミミロップが所属する芸能事務所の社長だった。
「あのマネージャーも目がいいなこんないいホテルと部屋を見つけるだなんて。」
社長は部屋を見回した後、ミミロップの身体を嘗め回す様に見る。
「シャワーは浴びたのか?ん?」
「話があるなら後にしてくれない?あたし凄く疲れてるの。」
ミミロップがベッドへと移動する、だがそれがいけなかった。
社長がミミロップをベッドの上に押し倒す。
「誘っているのか?」
「やめ・・・!放して!人間の女に相手にされないからって!」
「何?」
ミミロップの放った言葉は社長の動きを一瞬止め、こめかみに血管を浮かび上がらせる。
「貴様!所有物のくせに!」
社長は荒々しくミミロップに覆いかかぶさる。
「お前は・・・こうでもしないと・・・売れる・・・ポケモンじゃ・・・ないだろ・・・!」
523
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:27:38 ID:/qBnNDz6
社長は右手をミミロップの股へと伸ばす。
その時、ノックが聞こえた。
社長も動きを止めてミミロップから離れる。
「さっさと対応して・・・来い・・・」
鼻息を荒くしながら社長がミミロップに命令する。
ミミロップはドアを開ける。
そこにはサーナイトとキルリアが居た。
「とっ、突然訪問してごめんなさい!ええと・・・」
驚いているサーナイトを見てミミロップの頭に妙案が浮かんだ。
「なーんだ!遅かったじゃない!」
「え?」
「さあ行っちゃお!この街を案内してくれるんじゃないの?」
そう言いながらサーナイトとキルリアの手を引っ張って部屋を後にするミミロップ。
残された社長はぽかんとした表情を浮かべながら立ち尽くすしかなかった。
何故サーナイトとキルリアがミミロップの部屋を訪ねてきたのか。
話はライブ終了の一時間後に遡る。
ホテルのラウンジでチェックインまでの時間を潰しているバイツ達。
その間イルが退屈そうに口を開く。
「このホテルを選んだ理由は何かな?食べ物が美味しいとか?でもここらへんじゃああまり有名な食材の事を聞かないよね。だったらお土産が何か有名かと言われるとどれも大して美味しくないそこらへんで売っているものばっかり。キミが何を思ってこのホテルを選んだ理由をボクは知りたいわけであって別に有名どころじゃないからって怒ってるわけじゃないんだよ。でも答えが知りたいんだよねー。さてライキ、このホテルを選んだ理由は?」
「台詞長スギィ!」
ライキが奇妙な発音をする。しかし、だれもその事について触れない。
「うーん・・・大きな声じゃあ言えないけれど。」
全員がライキに注目する。
「何と今日このホテルにミミちゃんが泊まるという情報を手に入れたから。」
「何だそりゃ?」
ヒートは期待して損をしたとでも言うかの様にガックリと肩を落とした。
「そんな理由で?・・・ん?まって、有名なアイドルが泊まるくらいだから料理にもそれなりに期待が持てるかも!?」
イルの目が輝く。
バイツとシコウは二人同時に溜め息を吐いた。
バイツはサーナイトとキルリアに視線を移す。
二人の目はイルに劣らず輝いていた。
「も・・・もしかするとミミちゃんにもう一度会えるかもしれないという事でしょうか。」
「運が良ければね。」
そうライキが返す。
「やったー!」
キルリアが喜びの声を上げる。
バイツはそれを見てライキに耳打ちをした。
「お気遣いどうも。」
「気にしないでよ、これもトラウマを乗り越える一歩みたいなものだから。」
524
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:28:19 ID:/qBnNDz6
そう言われたバイツは親友の肩を軽く叩いた。
そして現在。
ミミロップはサーナイトとキルリアを連れてあまり目立たない喫茶店に入った。
適当な席に座るとミミロップが声を上げた。
「あー助かっちゃった。ありがとう。」
「ええと・・・私まだ状況を良く呑み込めていないのですが・・・」
困惑するサーナイトにミミロップは笑顔を向けた。
「あたしを助けてくれた。それでいいじゃん。」
「はあ・・・」
「そうだ、名前をまだ聞いていなかった。」
「私はサーナイトです。」
「僕はキルリア。」
ミミロップは頷き二人を見比べる。
「サナサナにキルキルね。あたしはミミロップ、よろしくね!」
「ええっと・・・実はミミロップさんの事ライブで・・・」
「そんなにかしこまっちゃわないでミミロップでいいよ。可愛く言うならミミちゃん?好きに呼んで。」
「そ・・・それではミミちゃん。私あなたのライブを拝見させていただきました。」
「え!?うそー!ホント!?」
ミミロップが口元を押さえて驚く。
「ねえねえじゃあさ、今回の衣装どうだった?あたし的にはいまいちだと思っちゃったんだけど。」
「いいえ、とても良かったです。光の中で踊るミミちゃん。綺麗でした!」
「そ、そう?何だか照れちゃう。」
その時、喫茶店のドアが開く音がした。
「サーナイト、キルリア、ここにいたのか。」
現れたのはバイツだった。
「バイツ様。」
「バイツお兄ちゃん!どうしてここが?」
「サインを貰いに行ったにしては遅すぎると思ってな、ライキに監視カメラをハッキングしてもらってあっちこっちの映像を見て探したんだ。」
「そうだったのですか。ごめんなさい。お手数をおかけしました。」
「まあいいさ、おや?そちらにいるのは・・・」
「シーッ!」
ミミロップは口元で指を立てて静かにしてほしいというジェスチャーをした。
「成程、売れっ子も大変だ。」
「っていうかどちらさん?」
「自己紹介が遅れたな俺はバイツ、サーナイトとキルリアのパートナーだ。」
「へえトレーナーじゃないんだ。」
「まあな。旅をしているが別にサーナイトとキルリアを強くする為にしているわけじゃない。」
「へー旅しちゃってるんだ・・・ねえねえ何か面白い話聞かせてよ。」
ミミロップの所望通りバイツは席に座り話を始めた。話し上手ではないバイツだったがサーナイトとキルリアのフォローで楽しい話になった。
「羨ましくなっちゃうなー」
525
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:28:56 ID:/qBnNDz6
ミミロップが運ばれてきたグラスに入っているきのみジュースをストローで少し飲んだ。
「あたしも面白い話を持ってればいいんだけど・・・」
寂しげな表情で三人を見るミミロップ。
「あたしは今の事務所に拾われてからずっとアイドル活動であっちこっち行ってるけど・・・やってる事は変わらないの。」
「CD配って握手会とか?」
バイツの答えにミミロップは頭を横に振った。
「枕営業・・・何人の人間と寝たか思い出せない。」
「酷い話だな。」
「同情は誘ってないよ。もっと聞きたければ色を付けて話しちゃうし。」
「いや、いい。」
ふと、バイツの視線がミミロップの左腕のメガバングルに移った。
「サーナイトもだけど・・・左腕のソレ、流行ってるのか?」
サーナイトはドキリとする。
ミミロップの答え次第でサーナイトはメガバングルの秘密を洗いざらい話さなくてはならないのだった。
「これ?それは乙女のヒ・ミ・ツ。」
「そ・・・そうです!秘密です。」
「ふーん・・・そろそろ夕食の時間だホテルに戻ろう。」
特に怪しむ事の無いバイツが席を立つ。
それに続いてサーナイト、キルリア、ミミロップも席を立った。
バイツ達は外に出る。
「ねえ、あたし達泊まってるホテル同じじゃない?だからさ一緒に夕飯食べたいんだけど・・・どうかな、駄目?」
「俺は構わないさ。サーナイトもキルリアも構わないよな。」
「はい。お話いっぱいしましょうね。」
「僕も沢山話すー!」
そして四人はホテルへと戻って行った。
そして夕食が終わり、各々の部屋に帰る時にミミロップがサーナイトにこっそりと呟いた。
「後であたしの部屋来ちゃわない?」
それに対するサーナイトの答えはこうだった。
「分かりましたもう少ししたら伺います。」
「やった!約束だよ。」
「はい。」
そしてサーナイトとミミロップも自分の部屋に戻る。
部屋に戻ったサーナイトは椅子に座っているバイツに近付く。
「どうした?」
「あの、この後ミミちゃんのお部屋を伺う事になっているのですが・・・」
「そうか、分かった。行っておいで。」
バイツの了解を得てサーナイトは部屋を後にした。
部屋に残されたバイツとキルリア。キルリアがバイツに話しかける。
「お姉ちゃん最近調子良さそうだね。」
「ああ、だが・・・いや止そう。」
何かを言いかけて話を止めるバイツ。
「でも、お姉ちゃんだけずるいなー」
526
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:29:29 ID:/qBnNDz6
「キルリア、除け者にされた俺達は下のレストランで甘いものでも食べに行くか。」
「んーそうだね。何がいいかな。」
「ここで考えていてもしょうがない店に行ってから決めよう。」
そう言ってバイツとキルリアも部屋を後にした。
バイツとキルリアが階下のレストランに着いた頃、サーナイトもミミロップの部屋の前に着いていた。
サーナイトは部屋のドアをノックした。しかし、何の反応も返ってこない。
「ミミちゃん、私ですサーナイトです。」
再度ドアをノックする。返事は返ってこない。
ドアを押すと難無く開く。
嫌な予感がしたサーナイト。勢いよくドアを開ける。
サーナイトの目に映った光景、それは複数の男。そして倒れているミミロップ。
「あなた達一体何を・・・!」
そこまでサーナイトが口にすると、一人の男が瞬時にサーナイトに接近しスプレーを顔に噴射した。
少量スプレーを吸い込んだサーナイト。咳き込んだ後にその場に倒れてしまう。
「おい、このポケモンどうする?」
男達にとっては意外な客人だったサーナイト。
「しょうがない、こいつと一緒に依頼人の所まで連れていくぞ。」
「うーん、食べ過ぎた。」
そう言いながらバイツはキルリアと共にミミロップの部屋を目指していた。
「お姉ちゃん随分遅いよね。」
「ああ、案外話が盛り上がってるのかもな。」
そんな事を言っている間にミミロップの部屋の前に着く二人。
ドアは開けっ放し、荒らされた室内。異常だという事はすぐに見て取れた。
「サーナイト・・・!ミミロップ・・・!」
「バイツお兄ちゃん・・・お姉ちゃんは?」
「誰がやったかは分からないが・・・誘拐された・・・今すぐライキの所へ行くぞ。監視カメラをまたハッキングしてもらって・・・」
「その必要は無いよバイツお兄ちゃん。」
キルリアが集中してサイコパワーを高めだす。
すると、バイツの頭の中に映像が浮かび上がる。浮かんだのは街外れにある廃工場の風景。そこに車が現われ停まった。そして、サーナイトとミミロップを担いで降りる男達の姿。男達は建物の中へと消えていった。
「何だ・・・これは。」
すぐに映像が途切れる。
それと同時にキルリアが倒れる。
「大丈夫か!?」
「平気・・・だよ。ちょっとサイコパワーを使いすぎちゃっただけ・・・」
「今の映像は?」
「ちょっとした未来の映像・・・少しの間しか見せれなかったけれど。」
「未来か・・・という事はいま動けば連中の不意を突けるかもしれないって事だな。」
527
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:30:08 ID:/qBnNDz6
「でもこれはごく近い未来だからすぐに行かないと。」
「お前は部屋で休んでいろキルリア。」
「でも・・・」
「不本意だが荒事は得意なんだ、任せてくれ。」
「うん、分かった・・・お姉ちゃんをお願い。」
バイツはキルリアを部屋に運んだ後、バイツはホテルの外へ出た。
夜空を見ながら溜め息を吐く。
「行くか。」
言葉はあっさりだったが鬼気迫る表情でバイツは走り始めた。
丁度その頃、街外れの廃工場に一台の車が停まった。
中からサーナイトとミミロップを担いだ男達が現われる。
「依頼人はこの中だ。」
男達は建物の中へと消えていく。
建物の中の暗く広い空間には照明機材とカメラが複数設置してあった。
「ここでいいんだよな。」
サーナイトとミミロップを乱暴に地面に降ろす。
「う・・・ここは・・・」
「痛たた・・・もう!何なのよ!」
サーナイトとミミロップが気が付く。
すると男の一人が拳銃をサーナイトとミミロップに向ける。
「依頼人が登場するまで大人しくしてもらおうか。」
その時拍手が聞こえた。
拍手をした主が窓からの月明かりに照らされた。
「社長・・・?何で・・・?」
「私が頼んだのだよ、彼等に君を誘拐させる事を。」
「誘拐?どうして?」
「そろそろお前を新しいビジネスの道具にしようと思ってな。アダルトビデオだよ。」
「!!」
ミミロップは驚いて声も出せなかった。
「アイドルが失踪し、少し経った後アダルトビデオで発見される。我ながらいい筋書だと思うがね?」
社長の視線がサーナイトに移る。
「おまけ付きか、まあいい。そいつも一緒に稼いでもらおう。」
社長の後ろから体格のいい男が数人現れる。
「さあ、その二匹をこっちに・・・ぐぅっ!」
突然胸を押さえて苦しみだす社長。
『ダークナー!』
サーナイトのメガバングルが反応する。
社長の体は夜の闇よりもさらに深い闇に包まれる。
そして黒い大きな怪物へと変貌する。
男達はその怪物を恐れて何処かへと逃げていった。
「な・・・何アレ・・・」
サーナイトは立ち上がる。
528
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:30:43 ID:/qBnNDz6
「ミミちゃん。下がっていてください。ここは私が・・・」
「待って。」
ミミロップがサーナイトの前に出る。
「あたしのファンはあたしが護る。その為には何だってやる。例えそれが戦いでも。」
ダークナーの視線はミミロップに向けられる。
「さあおいで!大きな化物さん!あたしが相手しちゃうんだから!」
その時ミミロップの頭の中に声が響いた。
『その意気だよ!力を貸すから頑張っちゃえ!』
その声はミミロップが着けているメガバングルからの声。
ミミロップは左腕を上に掲げた。
ミミロップの体が光に包まれる。
そして光が弾けるとそこにはメガミミロップが立っていた。
「何だか力が湧いてきちゃう!」
ミミロップが構える。
『さあ、私達も。』
サーナイトも頷くと左腕を掲げて光を纏う。そしてメガサーナイトへ進化する。
「ダークナー!」
ダークナーが右手を振りかぶる。
しかし、ミミロップが素早く接近しダークナーの顔面に蹴りを瞬時に数十発叩き込む。
頭から後ろの壁に吹っ飛ぶダークナー。
体勢を立て直そうと立ち上がるところをサーナイトが「サイコキネシス」で拘束する。
「ミミちゃん!今です!」
「分かった!」
ミミロップは突進しダークナーの手前で跳ぶ、そして渾身の「とびひざげり」をダークナーに叩き込んだ。
「ダーク・・・ナー・・・」
ダークナーはもう一度壁に叩きつけられて、そのまま力無くずり落ちる。
そして光の粒となって消えていくダークナーの体。
「私達の勝ちです。」
サーナイト、ミミロップ共にメガシンカ状態が解ける。
ダークナーのいたところには社長が壁を背に気絶していた。
「どう・・・するのです?」
「決まってる、こんな奴の事務所なんか辞めちゃうんだから。」
その時、複数の足音がサーナイトとミミロップの背後から聞こえた。
先程サーナイトとミミロップをさらった男達であった。
逃げたと見せかけて物陰からこっそり戦いを覗き見していたのであった。
「こいつ等、トレーナー無しでメガシンカしやがった。」
「珍しいポケモンだなこいつは高く売れるぜ。」
男達は拳銃を手にした。
その瞬間、何かが天井を壊して降ってきた。
男達の敗因を先に述べておくと「ソレ」に無意識に銃口を向けた事だった。
男達が瞬時に弾け飛ぶ。引き金を引く間も無く。
「サーナイト、ミミロップ、無事か?」
降ってきた「ソレ」とはバイツだった。
「はい、大丈夫です。」
サーナイトはそう答えたが、ミミロップはすぐに口を開かなかった。
529
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:31:16 ID:/qBnNDz6
代わりにバイツに飛び付いた。
「怖かったよー!」
「よしよし、もう大丈夫だ。で、この太ったおっさんは誰だ?」
「あたしの「元」社長なの、あたしとサナサナを誘拐してここでアダルトビデオを撮影しようとしちゃったの。」
バイツは滅茶苦茶になっている照明機材とカメラを見つけた。
「この事件の主犯格はこいつか。」
「どう・・・するのですか?」
「さてな、どうしたい?」
バイツは意地悪な笑みを浮かべた。
それから数時間後の事。緊急の記者会見が行われた。
「あたし、アイドル辞めちゃいまーす!みんな今まで応援ありがとー!」
ミミロップの突然の引退発表。
そして、ミミロップの所属していた事務所の社長が緊急逮捕された事。
世間は突然すぎる発表に慌てふためいた。
しかし、慌てなかった人達もいた。
例を挙げるとすればミミロップに最近接触したと思われる五人の少年だった。
熱烈なミミロップのファンはその五人を調べようと思ったが何の情報も得る事が出来なかった。
「これからどうするんだ?ミミロップ。」
街のはずれでバイツはミミロップに問い掛けた。
「んーみんなについていっちゃいたいんだけど・・・駄目かな。」
「構わないさ。なあ、皆。」
サーナイト、キルリアは喜んだ。ライキ、ヒートは微妙そうな表情を浮かべた。イル、シコウは別に構わないという答えを返した。
「やった!じゃあこれで本決まりね。よろしく!マスター!」
そう言ってバイツの腕に抱きつくミミロップ。
「おいおい、マスターって・・・」
「駄目?」
「いや、駄目じゃないけれど・・・」
バイツはサーナイトを見た。
サーナイトはニッコリと笑っていた。
対抗心を燃やしているなとバイツは思った。
「では行きましょうかマスター」
「サーナイト、お前その呼び方は・・・」
「何か問題でも?」
サーナイトの圧力にただただ気圧されるバイツ。
それを見ていたシコウが口を開いた。
「拙者、ようやく喋れる機会を得たのは良いものの、この話はこれで終わりで御座る。」
530
:
名無しのトレーナー
:2015/03/30(月) 22:31:47 ID:/qBnNDz6
このお話はこれでお終い。
何だかマンネリ化している気が・・・
次の投稿はいつになるだろう。
531
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:04:58 ID:/qBnNDz6
Q 遅かったね今まで何してたの?
A ウィッチャー3をやっていました。えらいこっちゃー(反省の色なし)
532
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:05:48 ID:/qBnNDz6
それはとある街道を移動している時の話だった。
「サーナイト・・・ミミロップ・・・」
バイツが呆れかえった様子で口を開いた。
右腕にはサーナイトが抱きつき、左腕にはミミロップが抱きついていた。
「なあにマスター。もしかして照れちゃってるの?」
ミミロップが口を開く。
「気になさらないでくださいマスター、私達はこうしていたいのですから。」
サーナイトはそう言うと更にバイツに寄り添った。
「あー!サナサナってばずるいー!あたしもー!」
ミミロップも更にバイツに寄り添う。
「あのなぁ二人共。非常に歩きづらくなっているのは俺だけなのかな。」
そう言っているバイツも何処か楽しそうでそれを見ている五つの視線には気付かなかった。
「何だか負けている気がする。」
そうライキが呟いた。
「何競ってんだよ何を。」
ヒートがつまらなそうに言う。
「バイツが楽しいならそれでいいじゃん。」
イルが割とまともな事を言う。
「・・・キルリア、お主はどう思う?」
シコウがキルリアに訊く。
「いいなぁ・・・バイツお兄ちゃんと一緒に歩けて。」
「何だ、お主もバイツと手を繋いで歩きたいのか。」
「うん、あ、先に言っておくけどシコウお兄ちゃんじゃバイツお兄ちゃんの代わりにならないからね。」
キルリアの鋭い言葉にしょげ返るシコウ。
そんな事を続けている内に辺りは暗くなり野宿の時間となった。
「よし、皆。あの大きな木の下で野宿をしよう。」
バイツの視線の先には大きな木の下で野宿の準備をしているグループが複数いた。
「何だ、バイツ。先客がいるじゃねえか。」
「別にいいだろうヒート。迷惑を掛ける訳じゃないだろう?」
「何かしら大声で歌いたい気分なのによ。」
ヒートの発言にただただ溜め息を吐くばかりのバイツ。
「私はマスターと御一緒出来るなら何処でも構いません。」
サーナイトが頬を紅く染めて言った。
「あたしもマスターと一緒なら何処でもいいっ!」
ミミロップもサーナイトの言葉に続く様に言う。
バイツは交互に二人を見て口を開いた。
「ま、とにかくサーナイトの調子が最近安定して良さげだからいいんだけどな。」
「もしかしたら、マスターから元気をもらっているのでしょうか。」
「かもしれないな。」
サーナイトはバイツのその発言に小さく微笑んだ。
テントは三人用と四人用のテントしかなかった。
四人用のテントにはライキ、ヒート、イル、シコウが寝る事に。
533
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:06:30 ID:/qBnNDz6
三人用のテントにはサーナイト、キルリア、ミミロップが入った。
「まあ結局は俺が火の番になるんだけどね。」
咄嗟に炎が出せるという点からまたもやバイツが火の番をする事に。
橙色の炎がテントを照らして影を作る。
バイツは炎を眺めながら考え事をしていた。
サーナイトの事だった。
急に体調が良くなったのはいいが何がその根底にあるのかが不思議だった。
「何かしらあるはずだ・・・」
バイツはそこまで口にしたが頭を横に振って思考を止める事にした。
「自然療法ってやつかもな。」
仲間の事であれこれ考えていても仕方が無かった。
あるべきを受け止める。それがバイツの出来る事だった。
「しかし・・・」
バイツの疑念はサーナイトから離れ、周囲の状況についての事になった。
辺りが真っ暗闇なのは時間的にも分かるが他のグループが火の番を立てずに眠っている事である。
夜もそれ程深いのであろうか。
するとテント入口のジッパーが開く音がした。
サーナイトがテントから顔を出してきた。
「どうしたサーナイト。」
「あの・・・少し寝付けなくて。」
バイツが枯れ枝を炎の中に入れながら静かに笑みを浮かべて見せた。
「おいで、サーナイト。」
「はい、失礼します。」
このシチュエーションが前にもあったような気がしたバイツ。
「暖かいですね。」
「焚き火が?」
「それもありますが気温もどことなく高い気がします。」
「そうか?涼しい位だぞ今夜は。」
「そうでしょうか。」
サーナイトがバイツとの距離を詰める。元から近くに座っていた為少し動くだけで体が触れ合う。
「おいおい、体の火照りを冷ませるのは俺だけだなんて言うなよ?」
「ばれてしまいましたか。残念です。」
「図星かよ。」
「冗談です。では本題に入りましょうかマスター、そろそろマスターも寝るべきではないのでしょうか。」
「テントは満員だぞ。」
「今なら一つ空いていますが?」
サーナイトの言いたい事が分かったバイツ。
「つまりサーナイト、自分のスペースを使ってくださいって事か?」
「そうです。火の番位ならば私にもできます。」
バイツは溜息を吐いた。
「それじゃあ俺の意味が無い。」
そう言ったバイツは枯れ枝を炎の中に放り込んだ。
「それに俺が寝込みをミミロップに襲われたらどうするんだ。」
意味深な発言にサーナイトは言葉が見つからなかった。
そんなサーナイトを見てバイツは静かに笑った。
534
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:07:07 ID:/qBnNDz6
翌朝。
結局夜が明けるまでサーナイトはバイツと共に過ごした。勿論今まで完全に起きていた訳ではなく、何度も睡魔に襲われてうとうとしていた事もあった。
「よっしゃ、じゃあ行くとするか!」
朝食とテントの回収を終えるとヒートが勢いよく立ち上がった。
「今日中にはどこか宿泊施設に着きたいね。」
ライキはそう言い立ち上がる。
「よし、行くか。」
バイツも気合いを入れて立ち上がる。
一睡もしていない割には元気なバイツ。
対してサーナイトの方はうつらうつらとしていた。
「ライキ・・・近くの街までどれくらいある?」
バイツはサーナイトを横目にライキに訊いた。
「結構あるね。まあ道すがら何かあると思うけど。」
「早く行っちゃお!サナサナも目を覚まして早く!」
ミミロップの元気な声が響く。
対してサーナイトの方はあくび混じりに。
「あ・・・はい・・・」
とだけ返す。
「バイツお兄ちゃん。夜お姉ちゃんと何話していたの?」
「んー?何だと思う?」
「何こそこそ話しちゃってるの!?あたしも混ぜて!」
ミミロップがそこまで言った所でシコウが口を開いた。
「バイツ、お主寝ていない様だが大丈夫か?」
「大丈夫だ。問題ない。」
「そうか、ならば問題は―――」
シコウの視線はサーナイトに向けられた。
「体力を消耗しきる前に休憩所を見つけられれば良いが。」
「そうだな。」
問題を残しつつもバイツ達は歩き始めた。
キルリアとミミロップに色々聞かれながら移動を続けるバイツ。
サーナイトは眠いのか欠伸をしながらついて来るだけが精一杯の様だった。
それでも昼前まではバイツ達に追い付いていた。
しかし、バイツ達の歩みはそこでいったん止まった。
「いいからこの土地を明け渡せ!」
それは大きな家の前に辿り着いた時だった。
「お断りします。ここはこの子達の家でもあるのです。」
角刈りの大柄な男とウェーブのかかった長い髪をした二十二、三位の若い女性が口論していた。
「あのなあ、スンドゥーさんはなこの土地に大層な金額を出してくれるんだぜ?」
535
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:07:59 ID:/qBnNDz6
「それでもここは代々私達の一族が受け継いできた土地、手放す訳にはいきません。」
一歩も引かない女性と荒々しくスンドゥーという名前を出し何度も土地を手放す様に言う男。
バイツ達は興味深そうにそのやり取りを見ていた。
「何だ手前等。」
男がバイツ達に気付く。
「さっさと行け、見せもんじゃねえ。」
「そんな事言われてもな、道端でだみ声響かせてるあんたが目立ちすぎてしょうがないんだ。」
バイツが痛烈な言葉を浴びせると男は顔を真っ赤にした。
こいつとは友達になれない。
バイツはそう思った。
「おいヒートこういう場合どうする?」
「あん?んなもん決まってるじゃねーか目の前のデカブツ倒してよ。お嬢さんに向かって一言言うんだ「綺麗なお嬢さん大丈夫ですか?」ってな。」
その時、女性の後ろから幼い声が聞こえてきた。
「クミお姉ちゃん!皆を安全な場所に避難させてきたよ!」
そこに居たのは一体のクチートだった。
バイツの目はクチートの左腕に向けられた。
サーナイト、ミミロップと同じ腕輪をしていた。
「ありがとうクチート、さ、あなたも入っていてすぐに終わるから。」
そこで男の中で何かがキレた。
「そんなにそのガキどもが大事なら大人しくするように躾やがれ!こういう風にな!」
男が荒々しくクチートに接近し、拳を振り上げた。
拳が振りかぶられたモーションを見た途端クチートは咄嗟に目を閉じて頭を庇った。
そして振り下ろされる拳。
乾いた音が響いた。
全く男の拳が来ない事を不思議に思ったクチートは目を恐る恐る開けた。
それもそのはず、バイツが拳を右手で受け止めていたのだった。
「どうした、それで終わりか?」
「んにゃろ・・・お・・・!?」
男が拳を引こうとするが一向に自分の拳が動かない。
「えーっと、ヒート。こういう時はどうするんだっけ?」
バイツが男をヒートの方に押す。
男は軽く吹っ飛びヒートの眼前で尻餅をついた。
「しゃーねーな実演を交えて教えてやんぜ。」
ヒートは尻餅をついた男の鳩尾に重い拳の一撃を叩き込んで悶絶させた後、クミと呼ばれていた女性に近付いて声を掛ける。
「綺麗なお嬢さん。大丈夫ですか。」
「え・・・ええ。」
「っていうのが一連の流れよ。分かったかいバイツ君。」
「ありがとうヒート先生。今後の参考にするよ。」
そして、ライキとイルは男に近付いた。
クミに見えない位置で銃口を男に向け、氷の剣の先端を喉に向けた。
「君のボスに伝えるんだね。こういう事から手を引けって。」
ライキが殺気を隠さずに男にそう言う。
半分意識が飛びかかっている男は呻き声を漏らすとその場を這う様にして本能が赴くままに逃げていった。
536
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:08:35 ID:/qBnNDz6
「シコウ。」
「承知。」
バイツがシコウの名を呟くと、シコウはその場から消えた。
そしてバイツが溜息を吐いた瞬間サーナイトが倒れた。
「サーナイト!」
バイツはサーナイトの近くに寄って抱きかかえる。
サーナイトからは寝息が聞こえた。
「全く・・・無茶をするから。」
大事が無い事を知ったバイツはホッと一息。
その時クミがバイツに向かって話しかけた。
「よかったらこの家に寄って行きませんか?助けてくださったお礼もまだですし。」
「それじゃあ、お言葉に甘えて。」
バイツがそう言うとクミは微笑んだ。
「ではこちらに来てください。」
そう言ってクミはバイツ達を家の中に招き入れたのだった。
サーナイトを空いている部屋のベッドに寝かせてバイツ達は応接室に通された。
そこそこの広さの部屋で三人用のソファーが二つ机を挟んで置いてあった。
「クチート、もう安全だって皆に伝えてきて。」
「うん!」
クチートは大きく頷いた後に応接室を出ていった。
「少し座って待っていただけますか、今お茶の準備を・・・」
「いや、結構。それよりあの男が襲ってきた理由を教えてくれないか。そしてここがどういう所なのかも。」
バイツはソファーに座る事なくそう言った。
「ここはポケモン達の孤児院です。主にトレーナーに捨てられて一人で生きていくのが困難なポケモン達の。」
「奴らがここを欲しがる理由は?」
バイツの問いにクミは応接室の窓際に近付いて外を見た。
「理由ですか・・・それは先祖代々受け継がれてきたこの土地にあります。」
バイツはキルリアとミミロップをソファーに座らせるとクミの視線の先を見た。続いてライキ、ヒート、イルも外を見た。
家の裏、そこには広大な草原と森が見て取れた。
「あの人達はここに巨大な娯楽施設を立てようとしているのです。私達を追い出して。」
「あの人達?確かスンドゥーがどうとか言っていたな。」
「近くの街の権力者です。あまりいい噂を聞きません。」
「成程、拙者が見てきたものと同じだな。」
声のした方を振り向くとそこにはシコウが立っていた。
「お主等もう少し周囲に気を配れ、拙者が敵だったらどうなっていた事か。」
「お前の気配の消し方が異常だってーの。」
ヒートが頭を掻いてそう答える。
「まあいい、それよりバイツ。スンドゥーは―――」
「おいシコウまさか全員潰してきたなんて言うんじゃねえぞ?」
「何を言っているヒート。お主じゃあるまいし。拙者が言いたいのはスンドゥーが組員達を集めてこちらに向かってきているという事だ。」
「へっ!だったら話は早えや。そいつ等をぶっ潰す。」
537
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:09:17 ID:/qBnNDz6
ヒートはやけに楽しそうに言った。
そんなヒートを見てクミが口を開いた。
「あの・・・あなた達は一体・・・」
「ただの根無し草さ。」
そう言ったバイツはソファーに座っているキルリアとミミロップに視線を向けた。
「キルリア、ミミロップここで待っていてくれないか。」
「え!?僕達の事置いていくの!?」
「マスターの事護らなきゃ!あたしも行く!」
バイツはいかにも真面目そうな表情を作ると二人に言い聞かせた。
「人間同士の問題に巻き込みたくないんだ。」
キルリアとミミロップもバイツの表情を見て互いを見合わせた。
「じゃ、行こうかバイツ。」
イルの言葉にバイツは頷いた。
「クミさん、少しの間だけ三人を預かってくれませんか。」
「分かりました。」
そして五人は応接室を後にした。
サーナイトが目を覚ますとそこは見覚えの無い部屋だった。
「あれ・・・?私・・・」
何故ここに居るのかを思い出そうとするサーナイト。すると部屋のドアが開いた。
「あ、目を覚ました。」
そこに居たのは一体のクチート。
「ええと・・・」
「あたし、クチート。お姉ちゃんは?」
「私はサーナイトです。あの・・・ここは・・・」
「あたしの・・・ううん、あたし達の家。ここは孤児院なの。」
バイツの姿が見えない事に気付くサーナイト。
「私と一緒に居た方々は何処に・・・」
「皆悪い人達をやっつける為にここを出てったよ。」
クチートの言葉に頭を抱えるサーナイト。大事な時にバイツの近くに居られなかった事を後悔した。
ふと、クチートの左腕に目が行った。
自分と同じ腕輪をしている。
「あの・・・その腕輪は何処で?」
「裏の森で見つけたの・・・填めたら取れなくなっちゃった。」
そう言うクチートもサーナイトの左腕の腕輪に視線を移す。
「お姉ちゃんは何処でそれを?」
「偶然ゴミの山の中から・・・」
「ふーん。何なんだろうねこの腕輪。」
「メガバングルと言うらしいですよ。」
そこまで言って言葉を止めたサーナイト。まだこの子は戦う運命ではないのかと思いメガシンカの事は伏せておいた。
すると、またドアが開いた。
「あ!サナサナ!おはよう!」
元気な声と共に部屋に飛び込んできたのはミミロップ。続いてキルリア。そして最後にクミが入ってきた。
538
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:11:28 ID:/qBnNDz6
クミはサーナイトの傍に立ち顔を覗き込んだ。
「気分はどう?」
「はい。大丈夫です。」
「良かった。私はクミ、ここの園長をしているの。」
「あの・・・私はどうしてここに・・・」
「サナサナこの孤児院の前で倒れちゃったの。」
ミミロップが簡単に説明する。
「寝不足だったのね。あなたスヤスヤ寝息を立てていたわよ。」
サーナイトはクミからその事を聞かされ顔を紅く染めた。
「ふふっ、可愛い子。」
クミは静かに笑って見せた。
その笑顔を見ていると何処か癒される感じがしたサーナイト。
そして、心に決めた。今度は自分がバイツを癒そうと。
一方、バイツ達はスンドゥーの率いてきた数十人の男達と対峙していた。
「こ、このガキどもですスンドゥーさん!」
この一言から始まった。
声を上げたのはクミと言い争いをしていた男。
先頭に居た長身の男がバイツ達に頭を下げる。
「初めまして。スンドゥーと申します。そしてありがとう。」
「あン?何でいきなり礼言われなきゃなんねーんだよ。」
ヒートが一歩前に出て言う。
「いやあ私の部下から聞いたんだよ、先に手を出したのは君達だってね。」
「その男がポケモンを殴ろうとしたのが先だ。」
バイツが少し殺気立ちながら言う。
「だが、攻撃は届かなかったそうじゃないか。だから先に手を出したのは君達。私達はその暴力から身を護ろうというのだ。」
スンドゥーは両手を一度だけ叩いた。
「そう正当防衛だよ君達。だから少し痛い目を見てもらおうと思ってね。あの孤児院の女にも。」
「難癖つけてカチコミしてえだけじゃねえか。」
正論を口にしたヒート。
「ここは通さない。あの孤児院に危害を加えるのなら尚更。」
そうバイツが静かに言うとスンドゥーはバイツ達に人差し指を向けて声高らかに言った。
「皆さん!やってしまいなさい!」
男達が怒号を上げ一斉にバイツ達に襲い掛かる。
だがその勢いは一発の銃声で止まってしまう。
ライキがわざわざ拳銃から消音器を外して男達の一人に向かって発砲したのである。撃たれた男は太ももを押さえてその場に倒れた。
「武装もろくにしてないの?そんなんじゃ甘いよ。」
その声を皮切りにバイツ達は男達に襲い掛かった。
勝負は一瞬で付いた。
勿論バイツ達の勝ちである。
男達は自分の足でまたは仲間を担いで逃げていった。
「なあスンドゥー見なかったか?」
539
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:12:34 ID:/qBnNDz6
バイツは四人に訊いたが全員首を横に振った。
「参ったな、一番痛めつけておかなきゃいけない奴が何処かに消えた。」
「トラウマでも植え付けるつもりだったのー?」
イルは笑いながら半分冗談のつもりで言ったがバイツが真剣な表情で頷いた。
「しゃーねーなバイツ。ここら一帯を捜索すっか。隠れているかもしれねーしな。」
ヒートの言葉通りここら辺を探索する事にしたバイツ達だった。
スンドゥーはその頃部下達がやられたのを見ると一人で一目散に逃げていた。
「じょ・・・冗談じゃありませんよー!何であんなガキどもにやられるんですかー!」
信じられないものを見たスンドゥー。まさか自分の用心棒があれ程簡単にやられるとは思ってもいなかった。
目を閉じれば脳裏に焼き付いていた光景が蘇る。
たった五人にズタズタにされた用心棒達。
それを思い出すだけでも震え上がった。
どの道をどう進んだのかは覚えていない。
しかし、街の入り口が見えてきたところで安心しきった。
まずは使えなかった連中を全員首にする事は決まっていた。それから今度は誰を雇うかの問題へ。
「つ・・・次はぁ・・・!」
その途端心の中のどす黒い感情が全身を包み込むような感覚が彼を襲った。
そして意識はどす黒い感情から生み出されたどす黒いエネルギーに包まれた。
サーナイト達は孤児院のポケモン達と外で触れ合っていた。
「ミミロップ、もしかしあなたって・・・」
クミがミミロップの事を見て何やら考えている。
「ん?なあに?」
「芸能界に居た事ってある?」
「うん。」
「え・・・ちょっと・・・もしかしてあのミミロップ!?」
「どのミミロップ?確かにあたしは芸能界に居たけど引退したの!」
「やっぱり!この前アイドル活動を辞めたミミロップ!私、ファンだったの!引退して何をしているのかと思えば―――」
「マスターについていこうって決めちゃったの!」
「そう・・・でもあなたの歌、ダンス、忘れられないわ。」
『ダークナーの気配がします!』
サーナイトのメガバングルが反応した。
続いてミミロップのメガバングルも反応する。
『凄い勢いでこっちに近づいて来ちゃう!』
サーナイトとミミロップは互いに頷き合って空を見た。
空から黒い大きな人型の化物が降ってきた。
「え?何これは・・・」
「ダークナー!」
ダークナーが一際大きく叫んだ。その時にクミは本能でこう言った。
「皆!森の中に隠れて!」
540
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:13:16 ID:/qBnNDz6
クミの声は遊んでいたポケモン達に届いた。
異常を感じ取ったのかポケモン達は少々散り散りになりながらも何とか森の中へ
サーナイトとミミロップはダークナーの前に立つ。
「あなた達も逃げて!」
クミがサーナイトとミミロップに向かって言う。
「お姉ちゃん!早く!」
キルリアもサーナイトとミミロップの事を待っていた。しかしサーナイトとミミロップは動かない。
「なるべく人に見られない様にメガシンカしたいところですね。」
その時クチートがキルリアの腕を引っ張った。
「早く森に避難しよ!」
「でもお姉ちゃん達が・・・」
「二人は私が連れていくわ!だから先に逃げてて!」
クミがそう言うとクチートはキルリアを引っ張っていき何とか避難を成功させた。
「二人共さあ早く!」
その時ダークナーが何を思ったのか森の方へ向かう。
「森には皆が!」
クミは急ぎ足でダークナーの前に立つと両手を大きく広げた。
「ここは通さない!」
ダークナーは止まった。だがその言葉に耳を傾ける為ではなかった。ダークナーは右手でクミを強く払い退けた。
吹っ飛ぶクミ。そのまま意識を失ってしまう。
「ここまでするなんて・・・もー!謝っても許してあげちゃわないんだからー!」
ミミロップがメガシンカをする。
続いてサーナイトも。
「サイコパワーを高めます!ミミちゃんは直接攻撃を!」
「オッケー!」
「こうそくいどう」を絡めて一気にダークナーに接近する。
そしてミミロップは大きく飛び跳ねるとダークナーの頭上へ。
「これでどうだー!」
ミミロップがダークナーの頭部を何度も踏み付ける様にしての蹴撃。
しかし、ダークナーはすぐにミミロップの足を掴みサーナイトへ向けて勢いよく投げつけた。
サイコパワーを高める事に集中していたサーナイトはそれをかわせる筈が無く二人共吹っ飛ばされる。
「ダークナー!」
二人共咄嗟に動けないほどのダメージを受ける。
勝利の雄叫びであるかの様にダークナーは叫んだ。
その雄叫びは森の中まで聞こえてきた。
クチートはクミがいつまでたっても来ない事を不安に思っていた。
そしてクチートは思い切った行動に出る。
「あたし・・・クミお姉ちゃんを探してくる。」
傍に居たキルリアがクチートを呼び止める。
「待って、だったら僕も行く。」
「駄目だよ、君がついてきたら皆も来ちゃうでしょ。」
キルリアは何も言い返せなかった。
541
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:13:59 ID:/qBnNDz6
クチートは急いで雄叫びの聞こえた方向へ走って行った。
森を抜けてまず目に入ったのは倒れているクミ。
そして、サーナイトとミミロップを大きな手で握り潰そうとしている黒い巨大な化物。
「そんな事させない!」
クチートはダークナーの足に大顎で噛みつく。
しかし、効果が薄くダークナーはクチートを引きはがす為に蹴り飛ばす。
クチートは吹っ飛び二転三転し倒れた。
「お姉ちゃん達を助けなきゃ・・・」
クチートは軋む体に活を入れ立ち上がる。
「やあああ!」
クチートは叫びながらダークナーに突進していく。
その時、声が聞こえた。
『皆を苦しめる奴を懲らしめよう。勇気を出して力を貸すから。』
ダークナーの手の中にいるサーナイトとミミロップは確かに見た。光を纏ったクチートがメガシンカした所を。
再度ダークナーの足に二つの大顎で噛みついた。
「ダークナー!」
先程とは違う激痛にダークナーは思わず叫びサーナイトとミミロップを離した。
「ありがとうございます。助かりました。」
「ありがと、さーて勝負決めちゃうよー!」
ダークナーはクチートを倒そうと拳を繰り出す。
が、二つの大顎が拳を捕らえる。
そしてそのまま「かみつく」を繰り出す。
「ダッ・・・ダークナー!」
ダークナーを再度襲う激痛。
クチートを振り払おうと空いている方の拳でクチートを捕まえようとした。
「あたし達の事忘れちゃってない!?」
ミミロップがもう片方の拳に渾身の蹴撃を叩き込んだ。
ダークナーはバランスを崩しよろける。
「サナサナ!今だよ!」
「はい!」
サーナイトの「サイコキネシス」がダークナーに当たると同時にクチートは大顎を離した。
「ダッ・・・ダークナー・・・」
ダークナーの体は光の粒となって消えていった。そしてその中からスンドゥーの体が現われた。
サーナイトとミミロップとクチートはメガシンカ状態を解いた。
「サーナイト、ミミロップ!」
遠くから二人を呼ぶ声。それはバイツの声だった。
「大丈夫か!?」
「大丈夫です。マスターこそいかがなさいました?」
「こっちの方向に嫌な気配を感じたんだ。」
「何の事でしょうか?ミミちゃん。分かりますか?」
「あたし、マスターが何言っちゃってるか分かんなーい。」
そこまで言った時、クチートの声が聞こえた。
「クミお姉ちゃん大丈夫?」
「うん大丈夫・・・でも・・・さっきのは一体・・・」
「さっきの?一体何を・・・」
542
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:14:34 ID:/qBnNDz6
「分かりません、ただ・・・黒い巨人が見えてそれから・・・」
クミは自信なさげに俯いた。
「黒い巨人?」
「あたし達森に逃げていった子達を迎えに行かなきゃ。じゃあまた後でねマスター」
ミミロップはサーナイトとクチートの手を引っ張って森に逃げていった。無論ダークナーに関する箝口令を敷く為である。
「あり得ませんよねそんな事・・・私疲れてるのかな。」
「・・・」
バイツは何も言わなかった。サーナイト達は何かを隠している。それだけは確信が持てた。
その証拠に何故ここに探していたスンドゥーが倒れているのかが不明だった。
「何があったんだ・・・本当に・・・」
その夜、クミの計らいで孤児院に泊めてもらう事に。
しかしバイツ達は夕食の後スンドゥーを街中に連れていく為に孤児院を後にしていた。
勿論警察に連れていくのだがその前にトラウマを植え付けようとする謎の作戦もあった。
バイツ達五人が孤児院を後にして少し後、クチートは草原で月を見ていた。
「お隣、よろしいですか。」
クチートは声のした方向を振り向いた。そこに居たのはサーナイト。
「サナお姉ちゃん。いいよ。」
「失礼します。」
二人並んで月を見上げる。
「ねえサナお姉ちゃんって旅してるんだよね。」
「はい。」
「旅って楽しい?」
「楽しいですよ。色々な人と出会い困難があっても皆様と力を合わせて乗り越えて進んで行く。私はそこが気に入っています。それに・・・」
メガバングルに目を落とすサーナイト。
「私達は世界を護る運命にあるようです。」
クチートも自分の左腕にあるメガバングルを見る。
「世界を護る旅・・・」
「この事はメガバングルを着けている方にしか話してはいけないのですけれど。」
「あたしも行きたい。でも・・・」
「ここから離れたくない・・・そう言いたいのですか?」
サーナイトの言葉にクチートは頷いた。
「二人で何をしているの?」
クミが二人に声を掛ける。
「クミお姉ちゃん、あたしサナお姉ちゃん達と旅に出てみたい。」
「そう・・・」
クミは当然寂しそうな表情を浮かべる。
「でもここも離れたくない。どうすればいいの?」
「クチート、あなたはどっちがいいの?もし旅に出るというのなら私は止めない。でもね、ここはあなたの家でもあるの、だからいつでも帰りを待ってる。」
「クミお姉ちゃん・・・」
クチートはその言葉に涙をぽろぽろと流し始めた。
543
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:15:16 ID:/qBnNDz6
「おいで、クチート。」
クミはその場にしゃがみこんだ。そしてクチートを抱きしめた。
その時クミの頬を一粒の水滴が伝って行った。
そして翌朝。
バイツはサーナイトに呼ばれて応接室へ。
応接室ではクミが座って待っていた。
クミの向かいに座ったバイツは真剣なクミの表情を見て出方を窺った。
「お願いがあります。どうかクチートをあなた達の旅に加えて頂けないでしょうか。」
キョトンとした表情でクミを見るバイツ。
「それは―――」
「これはあたしの選択。あたしが決めた事。」
クチートが応接室に入ってきた。
「だからお願い!あたしを旅に連れてって!」
バイツは溜息を吐いた。
「その前に、だ。何で俺にだけこの事を話す?」
「旅のメンバーの中では一番発言力があるとサーナイトから聞きました。」
クミはそう言ったがバイツは頭を横に振った。
「俺達は全員が対等な立場にある。だから発言力なんてものは無い。」
「それでも・・・私からもお願いします。」
サーナイトとクチートとクミが頭を下げる。
「まあ、旅の仲間は多い方がいいな。」
そう言うとバイツは立ち上がって応接室のドアを開けた。
ライキ、ヒート、イルが雪崩の様に室内に向かって倒れてきた。そしてその様子を見ていたシコウ。
「盗み聞きか?感心しないな。」
「だって、僕達の知らない所で話がドンドン進んでいくんだもの。」
「そうだな蚊帳の外にして悪かった。」
バイツはクチートを抱き上げると四人の前に立った。
「新しい仲間のクチートだ。」
「よろしくね、お兄ちゃん達。」
クチートは笑顔でそう言った。
「あーもう!分かったよ!近くの街に寄ったら大きいテントを買うぞ!」
ヒートが喚く様に言った。
バイツはクチートを床の上に降ろすと、サーナイトに声を掛けた。
「キルリアとミミロップに声を掛けてきてくれそろそろ出発するから。」
こうしてバイツ達は孤児院を後にした。
行く前にクミがクチートを抱きしめた。
「これからの旅、頑張ってね。」
「うん!」
こうして新たな仲間を迎えバイツ達の旅は続くのであった。
544
:
名無しのトレーナー
:2015/07/18(土) 00:16:20 ID:/qBnNDz6
この話はこれでお終い。
誤字脱字腑に落ちない点などございましたら脳内で補完してください。
545
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:05:00 ID:/qBnNDz6
HALO5とかfallout4が発売されたらこんなペースで投稿できない。
はっきりわかんだね。
546
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:06:24 ID:/qBnNDz6
「ねえねえマスター手を繋いでいい?」
街に向かう途中でクチートがバイツに聞いた。
「いいよクチート。キルリアもおいで。」
「わーい!」
キルリアが右手、クチートが左手を掴む。
「あーん!あたしもマスターと手を繋いじゃいたい!」
ミミロップが悔しそうな声を上げる。
「マスターは大人気ですね。」
と、サーナイトが言う。
そんな事があって街に着く。
今回は上層都市に寄っていく事にする。
何故ならばサーナイト達をポケモンセンターに連れていく為であった。
ここ最近設備の整った場所でサーナイト達を回復させていない事に気付いたバイツ。
「俺達はポケモンセンターに寄っていくよ。」
噴水のある公園でバイツはそう言った。
「じゃあ僕達は旅に必要な物を買い揃えながらホテルの予約を取るよ。一時間後ここの噴水の所で待ち合わせだね。」
そう言ったライキはヒート、イル、シコウを連れて何処かへと消えていった。
「さあ、俺達はポケモンセンターだ行こうか。」
ポケモンセンターに着いたバイツ達は思わぬ光景を目にする。
薄手のシャツからはち切れんばかりの筋肉質の男達がポケモンセンターの待合室に居た。
「な・・・何だこの光景は。」
「やーん!筋肉―――」
「ミミロップ、静かに。」
何か怒りを買いそうな言葉を言いかけたミミロップの口元にバイツが人差し指を添える。
その中に少女が居た。十五、六歳ぐらいの年齢で髪はショートカット、上はシャツ、下は道着といかにも格闘少女らしい恰好だった。筋肉だらけのポケモンセンターでも物怖じせずに平然としている。
「マスター?一体何をご覧になっているのですか?」
サーナイトがバイツを覗き込みながら言う。
「ん?ちょっと珍しい光景を見てたのさ。」
「えー!なになに!どんなの!?」
ミミロップが食いつく。
「あたしも見たい!」
クチートも参加する。
バイツが口を開こうとした瞬間ジョーイの声が聞こえた。
「次の方どうぞー」
バイツはジョーイに従ってサーナイト達を預けた。
待合室は筋肉隆々の男達で溢れかえっていた。
その所為か待合室が暑く感じる。
「ああ・・・くそっ。しかし、仕方のない事だ。」
バイツはそう言ってこの暑さを我慢する事にした。
一方で四人はというとある電子ポスターの前にいた。
「おい見たかよ。人間同士の総合格闘大会だってよ。」
547
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:07:00 ID:/qBnNDz6
ヒートが嬉々として言う。
「俺も参加すっかなー」
「待ってよヒート。その前に今日泊まるところを探さなきゃ。」
ライキが優先すべき事を口にする。
「めんどくせーのはお前等に任せるぜ!俺は大会の受付してくるからなー」
そう言ってヒートはポスターに書かれていた必要事項を読むと参加受付の為走り出した。
「ねーライキこれってさ確実にヒートが迷子になるよね。」
イルの言葉にライキは頷いた。
「ヒートを追おう。イル、シコウ、行こう。」
三人はヒートの後を追って走り始めた。
それから十数分後、運よく大会の申し込みをしているヒートと合流できた三人。
「お?何だ。お前等も参加すんのか。団体戦か?」
「冗談、ただ迷子になろうとしている君を放っておけなかっただけさ。」
ライキがそう返す。
受付を終わらせたヒートは歩き始めた。三人も後を追う。
予選は今から一時間後。ヒートは周りにいる筋骨隆々な男達を見てテンションを上げていた。
「先にホテルの予約を済ませようか。ヒートは?ウォーミングアップは必要なさそうだね。」
それからホテルを決めて部屋を取っても予選までの残り時間はまだ三十分程あった。
ホテルの部屋の中で四人は話し合っていた。
「んー・・・スイーツ巡りと行きたいところだけどバイツと合流しようか。」
イルがまともな事を言う。
「俺は会場に向かうぜ。楽しみがあるっていいな。」
「僕等は予選見ないよどうせ君の一人勝ちに決まってる。」
ライキはそう言うと歩き始めた。バイツとの合流場所へ向かう為である。
「じゃーねーヒート。また後で。」
イルもそう言ってライキの後を追った。
「まあお主の事だやりすぎにはならんだろうが精々気を付けろ。」
シコウも二人の後を追う。
「さてと、着るもの準備しねーとな。」
そしてヒートもホテルを後にした。
一方バイツはというと、屈強な男達に囲まれてサーナイト達の回復を待っていた。
少女は雌のルカリオを待っていたらしく、ルカリオの回復が終わるとすぐに外へ出ていった。
やがてサーナイト達の回復も終わりバイツは外に出た。
「あー新鮮な空気だ。」
バイツは背伸びをする。
「さあ、あいつ等と合流しよう。」
そう言ってバイツは公園までの道を歩いていった。
そして公園に辿り着いたバイツ達。
先程は気が付かなかったが公園では噴水の周りでウォーミングアップしている男達が爽やかに汗をかいていた。
「どの方々も凄く鍛え上げられた体をしていますね。」
サーナイトが男達に視線を向けながら言った。
「うえーあんな筋肉達磨達の何処がいいの?サナサナのセンスが分からないよ。」
548
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:07:40 ID:/qBnNDz6
ミミロップはなるべく男達を見ない様にしていた。
「あたしはマスターがいい。」
そう言ってクチートはバイツの足に抱きついた。
「あっ!クチクチ!そうやって点数稼ぎしちゃうの!?」
ミミロップもバイツに抱きつく。
「二人の気持ちは分かったから離れてくれないか、歩けない。」
ミミロップとクチートは照れながらバイツから離れた。
バイツは辺りを見回す。
まだ四人は来ていない様だった。
バイツは公園の電子掲示板のモニターを見る。
掲示されていたのは人間の格闘大会のお知らせ。
「成程、だからこんなに逞しい男達が集まっているんだな。」
ヒート辺りが喜んで参加するだろうとバイツは思った。バイツの知らない所で実際参加してしまったのだが。
その時、笑い声が聞こえた。
何処か人を馬鹿にしている様な笑い。
バイツ達はその声のしている方を向いた。
そこに居たのはポケモンセンターでバイツが見かけた少女と筋肉隆々の男達。
「お前みたいなガキが大会に参加するだぁ?馬鹿言ってんじゃねーよ。ハハハ。」
少女は笑っている男をキッと睨み付けて口を開いた。
「私は自分がどこまでいけるか試したい!だからこの大会に参加する!」
「無理無理無駄無駄。精々そのポケモンとおままごとでもしてな。」
少女の傍らに居たルカリオも男達を睨み付ける。
バイツは関わらない事にした。
ああいう手合いは実戦で痛い目を見る。相手を外見だけで判断しているからである。
「行こうみん・・・な・・・?」
サーナイト達が周囲にいない事に気付いたバイツ。
どこに行ったのかというと少女の近くに居た。
「今の発言を取り消してください!」
サーナイトが男達に向かってそう言った。
「二人を囲んで馬鹿にするなんて酷いじゃないかー!」
キルリアも参加する。
「この筋肉達磨!あんた達なんてマスターにぶっ飛ばされちゃえばいいんだ!」
「女の子を馬鹿にすると罰が当たるんだからね!」
ミミロップとクチートも少女を擁護していた。
バイツは溜息を吐くとサーナイト達の所へ向かった。
「何だテメェ等、どこからしゃしゃり出てきた?」
男達の内の一人がサーナイト達を睨む。
「俺のパートナー達をそんなに睨み付けないでくれるか?馬鹿がうつりそうで怖い。」
バイツはそう言いながら男達に近付く。
「何だ?このポケモン達のトレーナーか?やけにヒョロヒョロの優男じゃねえか。」
男達は一層高笑いをする。
「悪ぃな兄ちゃん。俺等はポケモンバトルで勝負するんじゃねーんだわ。この鍛え上げられた肉体でバトルしてんだよ。」
「俺もポケモンバトルで白黒つける気は無い。」
「だったらどうするんだ?俺等と殴り合いでもするのか?」
「話が早いな。俺もそっちの方がいい。」
549
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:08:21 ID:/qBnNDz6
「お前馬鹿か?この鍛え上げられた肉体が見えねえってのか?」
「これはいい筋肉だ。もしかすると脳みそまで筋肉でできているのか?」
「このガキ!」
男は怒りに任せてバイツの顔面に向かって拳を打ち込んだ。
しかし、拳はバイツの顔面に届かなかった。
右手でしっかりと伸びてきた拳を掴んでいたのだった。
「遅いな。」
右手を引いて相手の姿勢を崩したバイツ。前のめりになった相手の背中に左肘を一撃。
男は短く呻き声を上げるとその場に倒れ込んだ。
「次は誰だ?」
簡単に一人倒したバイツ。男達は勢いを削がれたのか誰も声を上げる事無く視線を互いに合わせるだけであった。
「次が無いのなら俺達は行くぞ。」
バイツは少女とルカリオの手を取ると男達から離れた。サーナイト達も男達から離れたが離れる際にミミロップは男達に舌を出して見せた。
その時、バイツの視線の先。ルカリオの左腕にはサーナイト達と同じ腕輪がはめられていた。
公園の入り口付近まで来るとバイツは二人から手を離した。
「いきなり済まなかったな。」
「い・・・いえ!こちらこそ助けていただきありがとうございました!」
少女は丁寧に頭を下げた。
「私からも・・・ありがとう。」
ルカリオも頭を下げる。
「礼はいいさ、こっちが勝手にやったことだ。」
その時、ルカリオが何かに気付いたかの様に少女に向かって言った。
「リカ、予選が始まる。そろそろ会場に行った方がいい。」
「あーっ!いけない、こんな時間だ!それでは失礼します!」
リカと呼ばれた少女とルカリオは公園の外へ駆け出していった。
それと入れ替えにライキとイルとシコウが姿を現す。
「バイツ、今の子誰?」
ライキが一応訊く。
「公園で複数の連中に囲まれている所を助けたんだ。」
「ふーん、正義の味方って訳だ。」
「ヒートはどうした?」
「格闘大会に参加したよ。」
「そうか。」
リカと呼ばれた少女には残念ながら優勝は諦めてもらおうと思ったバイツ。だが、大会にはどんな番狂わせがあるのか分からない。
「ライキ、席のチケットは取れるか。」
「え?一応取れるけどどうして?」
「俺とサーナイトとキルリアとミミロップとクチート。五つの席だ。」
「まあ、僕等三人は見なくても結果が分かるからいいけど。」
ライキはそう言うと近くのベンチに座りパソコンの画面を展開した。
「どうせヒートが優勝するのにねー」
イルがそう言ったがバイツはそれに意地の悪い笑みを返すだけだった。
「何やら不穏な笑みだな。」
「全くだよ。」
550
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:09:19 ID:/qBnNDz6
ライキもシコウの意見に同感だった。
試合会場は予選といえど盛り上がっていた。
バイツ達は端の方の席だったがそれでも試合を見る事が出来た。
ヒートとリカはグループが違う為予選では戦う事は無かった。
「ま、決勝トーナメントで嫌でも会う事になるだろう。勝てればの話だがな。」
それがバイツの意見だった。
試合は勝ち抜き戦で行われ複数のグループの一位と二位が決勝トーナメントに出場できる。
試合はついにリカの番になった。
緊張しているのか表情が硬い。
「始め!」
ついに試合が始まった。
相手の男性はリカより二回りも大きかった。
体格の差が目に見えていたのか相手は警戒する事無く距離を詰める。
「ていやぁー!」
先に仕掛けたのはリカだった。跳び蹴りを見事に鳩尾に叩き込む。
男性は嘔吐こそしなかったものの吹っ飛ばされてダウン。
九カウントの間起きる事は無かった。
「強いですね。」
「ああ、そうだなサーナイト。公園であの子を助けなくともよかったんじゃないか?」
「それは・・・馬鹿にされているのが悔しくて・・・」
「ま、困った人を見過ごせないのがサーナイトのいい所なんだけどな。」
サーナイトは誉められたのが嬉しそうであった。
ふと、一体のルカリオがバイツ達の目の前を通り過ぎていった。そのルカリオは左腕に腕輪をしていた。
「あのルカリオ・・・」
リカと一緒だったルカリオだった。
バイツ達は互いに目を見あってそして頷いた。
「よくやったリカ。」
ルカリオはタオルをリカに渡し、そう言った。
会場内の長廊下。そこでは出番を待っている選手が所狭しと居た。
「まだまだだよルカリオ。まだ予選の一回戦が終わっただけ。」
リカは心休まらぬといった感じだった。
「お疲れさん。」
そう言って誰かがスポーツドリンクを渡した。
髪の長い、自分よりも年上の少年。
「あ・・・あなたは・・・」
リカとルカリオが目にしたのはバイツだった。
「公園ではありがとうございます。でも、どうしてここに?」
「友達の試合を見に来たのさ。っと自己紹介がまだだったな。俺はバイツ、こっちはサーナイト、キルリア、ミミロップ、クチートだ。」
551
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:10:02 ID:/qBnNDz6
呼ばれた順に頭を下げる。
「私はリカと言います。この子はルカリオ。」
ルカリオも頭を下げる。
「リカはこの街の出身なのかい?」
バイツが訊く。
「いいえ私達武者修行っていうか旅をしているんです。」
「武者修行ね・・・」
「バイツさん達は?」
「俺達も旅をしているんだ。武者修行とは違うけどな。しかし・・・」
バイツは周りを見渡した。
「女の子一人で男だらけの大会に?」
「大丈夫です!それにこの子も一緒だし。ね、ルカリオ。」
「ああ、リカが居れば何も怖くない。」
その時大会のスタッフが現われた。
「ヒート選手、ヒート選手はいらっしゃらないでしょうかー」
バイツは溜息を吐いて腕を組んだ。
「あいつ何やってんだ?」
その時声が聞こえた。
「おう!わりーな係員さん!」
ヒートがスタッフの現れた通路の反対側から走って現れた。
黒い生地に金色の刺繍が入っている試合用のロングトランクスを穿いていた。
「時間が押しています急いで!」
「へいへい、っとバイツじゃねーかお前も参加してるの?」
「いや、参加しているのはこの子だ。」
「へえ、女の子の割にやるねえ。」
「ヒート選手!」
スタッフが声を上げる。
「また後でな。」
そう言い残しヒートは試合会場の方へ。
「今の人は・・・」
リカが不思議そうにバイツに訊く。
「あいつの試合を観に来た様なものだけどな・・・そうだ、次の試合まで時間あるか?」
「はい、でもどうしてその様な事を訊くんですか?」
「ヒートの試合を一緒に観ようと思ってな。リカにとっても何か勉強になるかもしれない。」
「分かりました。一緒に観ましょう。」
そう言ってバイツ達はリカとルカリオと共にヒートの試合を観る事になった。
ヒートは笑みを浮かべながら試合のフィールドに立った。
会場の熱気が心地良く肌を刺激する。
観客は千人程だろうか。
そんな事を考え始めてヒートは頭を振った。
両手で自分の頬を二、三度叩き目の前の試合に集中する事にする。
相手はヒートより大柄だったが体格差などヒートには関係の無い事だった。
552
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:11:06 ID:/qBnNDz6
「ファイッ!」
審判が声を上げる。
相手は体格差による手足のリーチを利用してヒートの射程外から仕掛ける。
巧みに防いではいるものの防戦一方のヒート。
しかし、相手が右ストレートを放った時、戦況が大きく変わった。
その右ストレートを読んでいたのか相手の伸ばしきった右腕に組み付く。
「取ったぜオイ。」
腕ひしぎ十字固めが決まる。こうなってしまっては簡単には外れない。
徐々に背筋を逸らしてゆくヒート。
「ギブ・・・ギブアップ!」
相手が激痛のあまり叫ぶ。
こうして一試合が簡単に終わった。
その試合をバイツ達はチケットの要らない立見席で観ていた。
立見席があるならチケットを取る必要が無かったと思ったバイツ。
そんな考えに至ったバイツとは対照的にリカは純粋に今の試合を観て感心していた。
「関節技かぁ・・・」
「何か掴めたのかリカ。」
ルカリオがリカに訊く。
「うーん・・・よく分かんない。でも勝ち進んでいけばヒートさんと戦える!そうですよねバイツさん!」
「ん、まあな。」
バイツは煮え切らない様な答えを返す。
「それで一つ聞きたいんですけど、ヒートさんの格闘スタイルって何ですか?」
「総合格闘技かな・・・よく分からないけど。」
バイツはそう単純に纏めた。
「そうですか・・・よし!私、次の試合に備えて待機していますね!」
走って長廊下へ行くリカ。
「忙しい子だな。」
バイツはそう言ってリカの背中を視線で追った。
「無礼があっても許してくれ。ああいう子なんだ。」
ルカリオがバイツに向かって言う。
「いや、構わないよ。」
バイツはそう返す。
「さて、俺達は観客席に戻るか。ルカリオ、お前はどうするんだ。」
「私も観客席に戻る。リカが一席分だけチケットを取ってくれたからな。」
「そうか、じゃあな。」
そう言ってルカリオと別れたバイツ達。
席に戻る途中でサーナイトが口を開いた。
「リカ様、ヒート様の試合を観て目を輝かせていましたね。」
「同じ武道家同士何か惹かれあうものでも感じたんじゃないか。」
「私、この大会はリカ様に優勝してほしいと思います。」
「それは・・・」
バイツは言葉が詰まって出せなかった。
553
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:12:09 ID:/qBnNDz6
無理。
その二文字がどうしても口に出せなかった。
勝ち進んでいけばいずれヒートと試合をする事になる。その時ヒートは勝ちを譲るだろうか。
ヒートの事である、きっと譲らないであろう。
言葉を詰まらせたまま観客席にバイツは座った。
そして、リカの第二試合が始まった。
予選が終わったのは日が沈み夜の闇が空を覆い尽くした頃であった。これ程時間が掛かるとは主催者側も思っていなかった様であった。
グループ一位通過のヒートは大して攻撃を食らわなかったのかピンピンしていた。
バイツ達と合流したヒートは次の様な事を口にした。
「いやー大した事なかったぜ。」
ホテルに戻ろうとした時、バイツはボロボロのリカを見つけた。
「リカ、グループ一位通過おめでとう。」
リカもグループを一位で通過していた。
「あ・・・ありがとうございます。」
「今日泊まるところは決まったのか?」
「ポケモンセンターにでも泊まろうかと。」
バイツは少し考えてこう言った。
「なあ、どうせなら俺達の泊まっているホテルに来ないか。」
「え!いきなり何を言うんですか!」
「変な意味で捉えるな。ホテルの部屋をもう一つ借りてそこで休めばいい。勿論金は俺達持ちだ。」
「分かりました。でも一つだけ答えてください。」
「ん?何だ。」
「どうして今日初めて会った私にここまで?」
バイツは静かに笑って答えた。
「敵に塩を送るってやつさ。」
「・・・分かりました。ありがとうございます。」
そして、ヒートを先頭にバイツ達はホテルへと向かった。
ホテルの夕食の時間を過ぎていた為、深夜まで営業しているホテルのレストランで遅い夕食を取る事にした。
夕食が終わり、バイツ達はそれぞれの部屋へ。
リカとルカリオの部屋はバイツ達の隣だった。
「じゃあお休み、リカ、ルカリオ。」
「お休みなさいバイツさん。」
部屋の中に入る。
ベッドは二つ。
「マスター、一緒に寝てくださいませんか。」
「ねえバイツお兄ちゃん一緒に寝ようよ。」
「マスターはあたしと寝ちゃうんだよねー」
「あたし、マスターと一緒に寝たい。」
554
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:13:21 ID:/qBnNDz6
四人から一緒に寝てほしいとせがまれる。
「あー皆残念だが俺の体は一つしかない。なので俺はソファーで寝よう。」
バイツはそう言ってソファーに横になった。
しかし、寝るにはまだ早い時間。
すぐに体を起こすバイツ。
「皆、風呂にでも入ったらどうだ。」
「でもさあ、あたし達がお風呂に入ってる間何か起こっちゃったらどうしよう。」
「何も起こらないさミミロップ。さあ入っておいで。」
バイツに言われてバスルームに向かったサーナイト、ミミロップ、クチート。
キルリアはその場に立っていた。
「どうかしましたかキルちゃん。」
「お姉ちゃん。僕男の子だからバイツお兄ちゃんと入りたい。」
「何恥ずかしがっちゃってるのキルキル!さ、一緒にお風呂に入ろ!」
ミミロップに腕を引っ張られて半ば強制的に入浴する事になったキルリア。
そんな風景を見て穏やかな笑みを浮かべたバイツ。
「さて、ライキとイルとシコウは何してたのかなーっと。」
そう口にしてバイツはまずライキとヒートの部屋を訪ねる事にした。
すぐ隣なのでなんら迷う事も無い。
「おーい、ライキかヒート。居るんだろ。」
バイツがノックしながらそう言う。
一分もしない内にドアは開いた。そこに居たのは少々困った表情を浮かべるヒート。
「よおバイツ、今大変なんだよ。お前の力が必要かも。」
「何があった。」
「取り敢えず部屋に入ってくれ。」
部屋に入ったバイツ。
そこで彼が目にしたものは展開されたパソコンの画面を見ているライキとイルとシコウだった。
しかも、目をカッと開いて笑みを浮かべている。
「ヒートは金のなる戦いをしている・・・いい事じゃあないか。他の連中は気付いていない、これ程分かりきっているレースに誰も乗らない。目の色を変えて欲しがっている金になる話にどうして誰も乗らない、どうして気付かない。これが勝者と敗者の違いなんだ・・・」
ライキが何かをブツブツと言っている。
「ずっとこの調子よ。まあこの大会の闇賭博で俺に賭けて稼いでいるらしいんだが。」
イルとシコウは表示されている数字を見ているだけだった。
「俺にはどうにもできないな。」
バイツは部屋を後にしようとした。
「待てよバイツ頼むよ、この馬鹿を何とかしてくれ。」
「無理だ、何か精神的なショックを与えないと。」
「だったら私脱ぎますッ!」
「何を言ってるんだヒート。」
「冗談に決まってんだろバイツ。ノリが悪ぃな。」
「兎に角だヒート、お前はしっかり寝て明日に備えろ。明日はお前の戦いになるんだからな。」
「おう、分かった。」
そこまで聞いてバイツは部屋を後にした。
自分の部屋に戻ってきたバイツ。サーナイト達は既に風呂から上がっていた。
「お帰りなさいませマスター」
555
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:14:09 ID:/qBnNDz6
サーナイトが出迎える。
「ただいま。」
「どこ行ってきちゃったの?」
ミミロップに訊かれバイツは素直に話す事にした。
「ライキとヒートの部屋さ、ライキがヒートで荒稼ぎしていたがな。」
「荒稼ぎって何してたの?」
今度はクチートがバイツに訊く。
「闇賭博だそうだ。」
バイツはソファーに座っているキルリアの隣に座る。
「どうしたんだキルリア真っ赤だぞ。」
それ程長く風呂には入っていないはずのキルリアの肌は紅をさしたかの様であった。
「だって・・・お姉ちゃん達が・・・」
そこまで言ってキルリアは鼻血を出した。
「誰かティッシュを寄越してくれ。あとキルリアに何をした?」
「知りたい?だったらあたし達とお風呂に入れば分かっちゃうよ?」
ミミロップが妖しい視線をバイツに送る。
「いや、いいよ。」
バイツはやんわりと断った。
翌朝。
朝食を食べたバイツ達は大会の会場に向かった。
ヒートの体調は万全だった。対してリカは少々寝不足といった様子。
「おいおい、大丈夫か?」
欠伸をしているリカにバイツが訊ねた。
「押忍。大丈夫です。」
「君、本当に大丈夫?ヒートはそういう所も見逃さないで潰しにかかってくるからね。」
ライキがリカに訊く。
何があったのかは知らないが正気に戻ったライキとイルとシコウ。
壊れたままだったらどう正気に戻そうかと考えていたバイツ。
トーナメントの組み分けはリカが一回戦目、ヒートが五回戦目と少しヒートには時間があった。
まともに戻ったライキは全員分のチケットを買った。
そして間もなく一回戦目が始まろうとしていた。
リカが試合の行われるフィールドに立つ。
相手の選手が顔を見せた時バイツは口笛を吹いた。
公園でリカを笑っていてバイツに一撃で倒された男だった。
リカとヒート以外の試合をまともに観ていなかった所為で気付くのが遅れた。
「ファイッ!」
試合が始まった。
リカは小柄の為パワーとリーチは相手に負ける。唯一勝っているのは素早さだろう。
しかしバイツはリカの勝利を確信していた。
相手の男は力任せにリカを殴りつけているものの有効打にはならない。
リカも当たりそうな攻撃は受け流している。
「あの様な戦い方でよく予選を突破できたものだ。」
556
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:15:05 ID:/qBnNDz6
シコウが呆れた様に言った。
「仕方ないさ、戦う敵が自分より上とは限らないからね。」
イルもどことなく呆れた様子でそう言った。
リカも隙を見ては手を出しているが、筋肉の壁に阻まれダメージにはならない。
男が右手を大きく振りかぶって振り下ろす。
リカはそれを綺麗に避けて男の顔面に空中二段蹴りを叩き込んだ。
男はふらつく。
その隙をリカは逃がさなかった。
「チェストー!」
渾身の正拳突きが男に決まる。
男はダウンした。
「ナメてかかった代償だな。」
バイツがそう言い終わった時にはカウントが九まで数えられていた。
リカが一回戦目を突破した。
「よし!やったな、リカ!」
ルカリオが若干興奮気味に喜んだ。
その時、バイツは会場の隅に居た人影を見逃さなかった。
その人影は良く見えなかったが得体の知れない気配を放っていた。
「またあの奇妙な感覚だ。ライキ、イル、シコウ。」
「何?また変な感覚?」
「うーん、何とも言えない奇妙な感じ・・・コレ何処かで・・・」
「追うべきであろうな、何やら嫌な予感がする。」
バイツ、ライキ、イル、シコウは立ち上がった。
「マスター、どうかなさいましたか?」
「サーナイト、皆と一緒に居てくれ。少々ヤボ用が出来た。」
そうバイツが言い三人と共に人影を追う事にした。
その時サーナイトの左腕のメガバングルが反応した。
『ダークナーの気配が・・・一つ・・・いいえ二つ。一つは遠ざかっていきますがもう一つはこの会場内に・・・』
サーナイトは注意深く周りを見渡した。
バイツ達四人は会場の外に出ようとした際に着替える前のヒートに出会った。
奇妙な感覚がする人影を追っているとバイツが言うとヒートもついていくと言いだした。
「軽い運動だ。」
そう言ってヒートも走りだした。
十分程走ったであろうか。その人影は街から出て近くの森に逃げ込んだ。
そして、瞬間移動用の門を作りだすとその中に入って消えた。
「姿は見えたかシコウ。」
バイツが訊くがシコウは首を横に振った。
「収穫無しか・・・気配を追って・・・」
バイツはそう言ったが奇妙な気配は消えていた。
「そろそろ会場に戻るぜ俺は。」
ヒートがそう言ったのでバイツ達は試合会場に戻る事にした。
街中に戻ると試合会場で何かが起きているという話があちらこちらから聞こえてきた。
557
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:16:05 ID:/qBnNDz6
「急ぐぞ・・・!」
バイツ達は試合会場まで走る事になった。
話は十分程前に遡る。
リカに倒された男が急に苦しみだした。
『ダークナーの気配があの男性から感じられます。』
メガバングルからサーナイトに言葉が流れてきた。
サーナイトがミミロップとクチートに視線を移すと二人も頷いた。
『中継しているテレビカメラに映っちゃうのはちょっとまずいかなー』
ミミロップのメガバングルがそう反応した。が、話している暇は無かった。
急に男から黒い力の奔流が起こり、その黒い力は男を包み込んだ。
「ダークナー!」
巨大な化物は人々の注目を集めた。そして誰かが叫んだ。
「に、逃げろ!」
会場はパニックに陥った。
悲鳴と共に出口に殺到する人々。
「キルちゃんは逃げてください!私は皆様を出口へ誘導します!」
そう嘘を言ったサーナイト。
キルリアが逃げた事を確認したサーナイト達は今がチャンスとばかりにダークナーがいるフィールドに向かった。
「あ・・・ああ・・・」
リカはダークナーを目の前にし動けなかった。
周囲のカメラを破壊していたダークナーはリカに気付くと右腕を円錐形にし、その右腕をリカに突き刺した。
「え・・・?」
リカの体を易々と貫通する右腕。
血が右腕を伝って床の上に滴り落ちる。
「リカ!」
リカを連れ出す為に会場内に残っていたルカリオが叫ぶ。
そしてダークナーは右腕を振った。
そしてリカの体は壁に叩きつけられ力無く床の上に落ちた。
「「サイコキネシス」!」
メガシンカしたサーナイトの「サイコキネシス」がダークナーに当たる。「サイコキネシス」の強力な念波で吹っ飛ぶ。
そして、同じくメガシンカしたミミロップとクチートがダークナーに直接攻撃をする。
その戦いを尻目にルカリオはリカの元に駆け寄った。
腹部から流れ出す血は止まらなかった。
「リカ・・・おい・・・リカ!」
「ルカリオ・・・私・・・私・・・」
「喋るな・・・今連れ出すから・・・」
リカは力なく首を横に振った。
「私・・・ルカリオと旅が出来て良かった・・・」
咳き込むリカ。その度に血を吐き出してしまう。
「だからね・・・ここで旅が終わっても・・・悔いは無い・・・」
ルカリオに弱々しく微笑むリカ。
「あなたは・・・私に囚われないであなたの道を・・・」
558
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:16:55 ID:/qBnNDz6
そこまでリカは喋ると動かなくなった。
「リカー!」
ルカリオの叫びはサーナイト、ミミロップ、クチートにも聞こえた。
「そんな・・・リカ様・・・」
「サナサナ!今は目の前の敵に集中して!」
ミミロップの言葉にルカリオは反応した。
「敵・・・そうか・・・貴様がリカを・・・許さない!」
ダークナーが右腕を振り払ってミミロップとクチートを遠ざける。
「一気に決めようよ!」
クチートが提案する。
「分かった。皆、手を出さないでくれ。」
ルカリオが前に出る。
「危ないです!下がってください!」
ルカリオにはサーナイトの言葉の次に次の様な言葉が聞こえた。
『復讐に身を焦がすな。己の意志で立ち向かえ。』
「分かった。」
『行くぞ。』
ルカリオの体は光に包まれた。そして光が弾け飛ぶとそこに居たのは一体のメガルカリオ。
「さっさと終わらせよう。」
ルカリオが両手の掌を合わせる。
そして力を込めてエネルギーの塊を形成する。
「食らえ!「はどうだん」!」
ルカリオから放たれた「はどうだん」はダークナーを貫いた。
そしてダークナーは光の粒となって消えた。残ったのは気絶している男だけであった。
そして全員のメガシンカ状態が解除される。
「サーナイト!ミミロップ!クチート!無事か!?」
バイツが会場に飛び込んで来る。
「お姉ちゃん達!大丈夫!?」
続いてキルリアが現れる。
「私達は大丈夫ですが・・・」
サーナイトはリカの亡骸を抱えて泣いているルカリオに視線を送った。
バイツは静かにルカリオの近くに寄った。
「私は・・・私はこれからどうすれば・・・」
ルカリオはバイツに視線を送った。
「俺達と一緒に来るか。」
バイツが真剣な表情でそう言う。
「いいのか、私は大事な人を一人も護れないポケモンだぞ。」
「今度は・・・今度は俺が護ってやる。」
「そうか・・・ありがとう。」
「しかし、何があったんだ。」
バイツがルカリオに訊く。
サーナイト達はメガシンカの事を秘密にしておく事をルカリオに言っていなかった。
「巨大な化物が現われた・・・リカを突き刺した後何処かへ消えた。」
サーナイト達はルカリオがメガシンカの事を秘密にしていたのでホッと胸を撫で下ろした。
「おーいバイツ!」
559
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:18:14 ID:/qBnNDz6
ライキが会場に入ってきた。
「一旦外に出た方がいい。警官達がやってきたよ。」
「分かった、行こう皆。」
バイツ達は会場を後にした。
大会は中止になったが一週間ほどバイツ達は街に留まる事になった。
理由は主に事情聴取と葬式だった。
サーナイト達はダークナーの詳しい事を一切話さずに事情聴取を終えた。
リカの遺体はリカの両親が来てから火葬にした。
ルカリオがバイツ達と旅を続ける事をリカの両親は反対しなかった。
あの子の分まで世界を見てきてほしい。
それが両親の言葉だった。
ルカリオは涙ぐみながらその言葉を受け止めた。
両親が街を出る時もルカリオはその背中をずっと見ていた。
それからホテルに戻ったバイツ達。
「なあマスター」
部屋に戻る途中バイツはルカリオにそう言われ少し驚いた。
「何を驚いている?」
「いや、てっきり名前で呼ばれるものかと。」
「サナ達がそう呼んでいるから私もそう呼ぶ、不満か?」
「いや、呼び方はどうでもいいさ。で、何だルカリオ。」
「これからよろしくな・・・その・・・至らない部分があると思うが・・・」
「ああ、よろしくなルカリオ。」
バイツが手を差し出したのでルカリオも手を差し出して握手をする。
「これで旅も楽しくなりますね。」
サーナイトの言葉に少しルカリオは照れ気味にこう言った。
「皆、よろしくな。」
「こちらこそよろしくお願いします。」
「僕もよろしく!」
「これからの旅は楽しくなっちゃうよー!」
「ルカお姉ちゃん、よろしくね。」
すんなり受け入れられた事にルカリオは嬉しさ半分驚き半分だった。
「あの連中中々にやりますよ。並大抵のダークナーならば個人で片付けられる。」
暗闇に近い円形のドーム状の広い部屋で一つの人影がそう言った。
「今までの貴様の失態は全て奴らの所為だというのか。」
もう一つの人影が現われそう口にした。
「不思議な事に奴等は人間と共に私の行く先々に現れる。」
「下らぬな。今度は俺が出よう。」
「期待していますよ。」
そこまで人影は口にすると暗闇の中に溶ける様に消えた。
560
:
名無しのトレーナー
:2015/08/07(金) 23:19:01 ID:/qBnNDz6
話の・・・長さは・・・いかがでしたか?(HTN風に)
次の話の内容はさっぱり考えていません。
どうしようかな?
561
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:29:32 ID:/qBnNDz6
小説がまた出来たので投稿します。
本当は十一月中に投稿したかったのですがウィッチャー3のNG+が意外と面白かったので遅れてしまいました。
サーナイト成分が少ないかも・・・
許して・・・許してクレメンス・・・
562
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:30:12 ID:/qBnNDz6
月が地面を照らし出す時間帯。月の光が二つの影を作りだしていた。
片方の影の大男はむやみに拳を振るった。その攻撃は相手に当たる事無く空を切っていた。
大男の相手、もう片方の影は髪の長い少年。
少年は余裕といった表情で大男の攻撃を避け続けていた。
そして少年は溜め息を吐くと、男の下顎に包帯とオープンフィンガーグローブに包まれた右手で強烈なアッパーカットを打ち込んだ。
大男は地面に倒れ込む。
「こんなものでどうだライキ。」
そこまで髪の長い少年が言うとどこからか人影が出てきた。
「いやーお見事バイツ。」
その人影、ライキは手を叩きながらバイツに近付いた。
「生身の人間じゃないんだろ?こいつ。」
バイツが倒れている大男を見下しながらそう言った。
「うん、前のバージョンに比べて反射神経を上げたつもりだったんだけどなー」
「次のバージョンにはさらに高性能な弾道予測ソフトでも突っ込んでおけ・・・まあ、白兵戦で役に立つかどうか分からないけどな。」
「君の拳の速さは銃弾並みかい?貴重なご意見どうも。」
その時、近くの木の影から複数の影が現われた。
バイツはその影の名前を言い当てる。
「サーナイト、キルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオ。終わったよ。」
バイツは安堵の表情を浮かべる。
バイツに近付いてサーナイトが口を開く。
「怪我が無くて良かったです。あの・・・会話の内容から察するにもしかして今回の戦闘は・・・」
「そう、ライキの会社の新製品のテストだ。」
「下らないな、テストならマスターを使わないでお前達がやればいいだろう。」
ルカリオがライキに言う。
「今回は白兵戦がメインの商品だからね、僕は白兵戦苦手だしヒートとかイルとかシコウは加減を知らないし。」
「誰が加減を知らないって?」
サーナイト達は声のした方向を振り向いた。そこにはヒート、イル、シコウといった面々が気配も無くそこに立っていた。
「だってヒートすぐに熱が入って壊すじゃん。それにイルの氷はバイオケブラー簡単に突き通すし、シコウに至っては一撃で首の骨をゴキン!だもの。」
「アハハ、ゴメンねライキ。でもそんな戦い方しかできないし。」
イルが笑いながら言う。その隣でシコウが溜め息を吐いて口を開く。
「拙者も似たようなものだ。常に人体の弱点を突く様に教えられてきたのだからな。」
「で、この人どうするの?」
キルリアが傍にあった木の棒で大男を突っつく。男はピクリとも動かない。
「今から本社に連絡して回収してもらうよ、死んではいないはずだからね。」
「本当に大丈夫なの?」
クチートは恐る恐る大男に近付いて顔を覗き込む。
「クチート、あまり見るものじゃない。いつ起き出すか分からないぞ?」
「いいもん、その時はマスターの後ろに隠れるから。」
「クチクチは臆病だね!あたしはこんな奴こうしちゃうもんねー」
ミミロップは大男の肩を何度か蹴る。
その傍らでヒートは何かを考え込んでいた様だが何か答えがまとまった様でライキに声を掛けた。
「なあ、本社が回収って事は本社が近くの街にあるって事だよな。」
563
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:30:42 ID:/qBnNDz6
「うん、そうだね。そんなに遠くはないよ。寄ってく?」
「どうすっかな・・・その本社の人間達が秘密を守れるなら寄ってもいいんじゃね?」
シコウが二度目の溜め息。
「秘密どうこうよりもお主が寄りたいだけであろうヒート。あわよくばライキの会社の改造人間達と戦うつもりであろう。」
「バレたか・・・」
「取り敢えず行き先は決まったな。」
バイツがそう言った。
「じゃあ、ついてきて。かなり近いから。」
ライキが歩き出すとそれについていくかの様にバイツ達は歩き始めた。
ライキの言っていた会社がある街に着いたバイツ達。
「今日はホテルに泊まって、明日会社に顔を出すよ。」
ライキがそう言ったので一旦ホテルに泊まる事にした。
部屋を割り振られてバイツが自分の部屋に入ろうとした時、ライキに呼び止められたバイツ。
「良かったらバイツ、明日会社に行くの付き合ってくれない?」
「何でだ?」
「新作の調整をちょっと手伝ってもらおうかと思って。」
「ヒートがいるだろう。」
「さっき言ったけどヒートだと加減が利かないから・・・」
バイツは溜め息を吐いた。
「分かった・・・いいだろう。その代わりサーナイト達も連れていくぞ。」
「え?いいけど退屈すると思うよ。」
「退屈させるな。それが俺からの条件だ。」
「ハイハイ、了解しました。」
そう言って踵を返すライキを尻目にバイツはサーナイト達の待つ部屋に入っていった。
部屋に入るとサーナイト達が出迎えてくれた。
「皆、明日ライキの会社に行く事になった。」
バイツがそう言うとサーナイトが反応した。
「純粋な会社見学ですか?」
「いいや、また俺で新作の実技試験を行うらしいんだ。」
「またバイツお兄ちゃん巻き込まれるの?」
キルリアの言う事は的を射ていた。
「そうだな、「また」巻き込まれるんだ。」
「えーじゃあ、街中をブラブラして素敵なお店を見つけちゃったりはしないの?」
「そうだなミミロップ。だが時間は作る様に言っておくよ。」
「マスター・・・もしかして口車に乗せられてる?」
クチートが疑いの目でバイツを見る。
「困ったマスターだ本当に・・・まあ、私は何処へでもついていくがな。」
ルカリオが何処か照れくさそうに言う。
「そうですね、マスターと一緒なら何処へでもの精神ですね。」
サーナイトが笑顔を作って言った。
「悪い皆、この埋め合わせはいつかする。」
「はい、期待して待っていますね。」
564
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:31:23 ID:/qBnNDz6
サーナイト達は期待してバイツを見つめていた。
バイツはその期待に応えようと脳細胞をフル回転させて明日の予定を立てていた。
翌朝、朝食を済ませたバイツ達はライキの会社へ行く事にした。
「ボクは行かなくていいよね。」
「拙者も行く理由が無い、故にイルと少々街を歩きたい。」
イルとシコウがライキの会社見学を断った。
引き留める理由も無いのでバイツはイルにケーキが美味しい店を見つける様に頼み、それから別れた。
ライキが先導しながら歩くと街の中でも一際大きなビルに辿り着いた。
「こ↑こ↓」
ライキがビルを指差す。
「はぇーすっごいおっきい。」
バイツがビルを見上げて率直な感想を口にした。
「入って、どうぞ。」
ビルの正面玄関を通されたバイツ達。広いロビーでは一人の男が待っていた。
「ようこそお戻りになられました社長、それに皆様も。」
色眼鏡を掛けた四十代程の男がバイツ達を出迎えた。
「この人はバムトさん。僕の居ない間に会社を切り盛りしている人。まあ、副社長かな。」
「どうも、君が噂のバイツ君ですね。我社の製品の相手をしてくださる。」
「ま・・・まあ・・・」
バムトが握手を求めてきたのでバイツは握手をする事に。
「ヒート君も御無事な様で。」
「まあな、最近刺激が無ェけど。」
ヒートとバムトは顔見知りなのか軽い挨拶だけで済ませた。
「それではバイツ君とそのポケモン達にこの会社の案内をしましょう。」
様々な研究部門や開発部門を見せられたバイツ達。これと言って興味を引く物は無かった。
主だった「商品」やら「開発」を見せられながら二時間程が経った。
「おい、ライキ。」
バイツがライキに声を掛けた。
「ん?どうしたの?」
「これじゃあサーナイト達が退屈だ。俺からの条件を満たしていないじゃないか。」
「大丈夫これからハラハラドキドキの時間が待っているから。」
「何?それはどういう・・・」
「それではバイツ君。私についてきてください。皆様はそこの窓から下をご覧になっていてください。」
バイツはバムトについていった。
ついていった先には男が一人待ち構えていた。
上を見るとガラス越しにサーナイト達が心配そうにバイツを見下ろしていた。
「それでは我社の試作品のテストをお願い致します。」
「ああ、そう言えばライキにそんな事言われていたな。」
「今度の調整では反射神経を更に大幅に上げています。弾丸を見切るどころか掴む事さえできますよ。」
「この開発をライキは知っているのかな?」
「いえ、社長にはこの戦いで開発の成果を見てもらおうと思いまして。」
「分かった、精々一撃でスクラップにならない事を祈るんだな。」
565
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:31:55 ID:/qBnNDz6
男が構えるとバイツも構えた。バムトがその場から居なくなると。二人は動き始めた。
その戦いはバイツの想像とは違い白熱の展開となった。
右腕の攻撃はことごとく防がれて尚且つバイツも相手の攻撃をガードするという白熱っぷり。
「やるな・・・」
バイツは本気を出そうとしたが相手がスクラップになるのは気の毒なので力を抑えていた。
その戦いを上階のガラス越しに見ていたサーナイト達。
「マスターの攻撃がことごとく見切られています・・・」
サーナイトは心配そうにそう言った。
「でも最後はマスターが勝っちゃうもん。そうだよね!?」
ミミロップも心配そうな様子。
「マスターが負けるわけない。いつも勝ってきたから。」
クチートはそう言いながら戦いを集中して見ている。
「マスターも速いが相手も速い・・・速さは五分か。」
ルカリオがそう解釈した。
しかし、このルカリオの解釈は間違っていた。
次の瞬間、バイツの姿が一瞬消えた。
「えっ!?」
「なっ!?」
動体視力の良いミミロップとルカリオは驚いた。
無言だったがバイツの相手をしていた男も驚いた。
バイツが次に現れた時には男の体は宙を舞っていた。
床に倒れる男。
「確かに反射速度は上がっているがその他は少々足りていないな。」
バイツはそう言った途端何処からかバムトが現われバイツの言った事をメモしていた。
「貴重なご意見助かります。」
サーナイト達はホッと胸を撫で下ろした。
「凄い戦いでしたねキルちゃん。」
返事が返ってこない。姿が見えない。
キルリアが迷子になった事を知ったのはこれが初めてだった。
「えーっと、ここは何処だろう。」
バイツ達より遥か階下にいたキルリア。
「また迷子かなぁ、嫌だなあ。」
そう言いながら更に階下に降りるキルリア、気が付けば一階のロビーだった。
「どうしよう、ここで待っていようかな。」
しかし、ジッとできないキルリア。何を思い付いたのか外に出ていった。
「んー!お日様気持ちいい!」
その時キルリアに何かが聞こえた。
「?」
キルリアはその「何か」が強く聞こえる場所を探していた。
566
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:32:29 ID:/qBnNDz6
辿り着いたのはビルの裏手。かなり大きなビルなので移動に多少時間は掛かったが。
そこには腕輪がポツンと置かれていた。
「何だろうこれ。サナお姉ちゃんと同じ腕輪だ・・・」
キルリアは何の疑いも無くその腕輪を左腕に填めた。
「お姉ちゃん達とお揃いだ!見せに戻ろーっと。」
その時腕輪から声が聞こえた。
『やっと見つけたんだね僕を。』
「な・・・何!?」
『ここだよ、君の填めている腕輪。正確にはメガバングルっていうんだけど。』
「え!この腕輪喋るの!?」
『最初に言っておくけどこの声は君にしか聞こえていないからね。あまり大勢が居る所で反応しない様に。』
キルリアは辺りを見回したが誰も居なかった。
「大丈夫!誰も居ないよ!」
『そう、それならいいけど・・・』
その時メガバングルが何かを察知した。
『ダークナー・・・!』
「え?何?」
『このビルの中に君と僕の敵がいる。』
「どういう事?ビルの中に戻ればいいの?」
『うん、移動しながら僕の話を聞いてほしいんだ。』
キルリアは急いでビルの中に戻っていった。
少し前のビルの中。
「キルリア何処だー!」
バイツはビルの中を駆けまわっていた。サーナイト達はライキの所に置いてきた。
キルリアを捜す際に迷子が増えてしまっては元も子もないからである。
そんなバイツを尻目に見た連中が居た。
ライキの会社の「生きた」製品達であった。
「おい見ろよ。ガキが走ってるぜ。」
「へえ、珍しいこんな所に。ガキの来る所じゃないってのに。」
様々な事を口にしている男達。
「そういや聞いたか。この会社の社長もあれくらいのガキだそうだぞ。」
「そんなまさか、あれくらいのガキが俺達を物みたいに売り払ってるのか。」
その時、ライキがくしゃみをした。
「だとしたら世の中不公平だよな。どうしてガキのいいようにされなきゃならないんだ?」
「ああ、全く不公平だ。俺なんか三年前更に小さなガキに命じられて戦地に赴いた事もあった。そのガキは―――」
「お前達、面白い話をしておるな。」
いきなり現れた男に男達は身構えた。
「何処から湧き出やがった・・・!」
「誰もが知らぬ深淵から・・・まあ、この話はよい。貴様中々の闇のオーラを持っているな。」
男の視線は三年前の話をしようとしていた男に向けられた。
「その力、俺の為に使わせてもらうぞ。」
男が何かを放った。
567
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:33:05 ID:/qBnNDz6
その途端男の体は黒いオーラに包まれそのオーラは巨大化して男を巨大な黒い化物へと変化させた。
「ダークナー!」
化物が叫ぶ。
「ほう、これは中々。」
周りの男達は逃げ出し、その場に残っているのはダークナーと男をダークナーに変えた男だけであった。
「む?」
逃げ始めた人々の中に一人だけ対峙する者がいた。それはバイツであった。
「前々からしていた妙な気配・・・あんたとその化物のだったって訳か。」
「前々?まあ厳密に言えば俺のものではないのだがな。」
バイツは男に向かって歩き始めた。
「あんた、名前は?」
「俺の名前はトーヴ。貴様異常な程の闇のオーラを纏っているな。」
「何だって?闇のオーラ?」
「面白い奴だ。その力も使わせてもらおう。」
トーヴはバイツに向けて何かを放った。だが、バイツには何の変化も見られない。
「・・・?」
「どういう事だ?」
バイツは更に歩みを進める。
「まあいい俺の道具にならないというのなら、ダークナー!やってしまえ!」
「ダークナー!」
ダークナーが巨体を突進させバイツに襲い掛かる。
バイツはダークナーの頭上に跳ぶと右肘を振り下ろした。
右肘の一撃によってダークナーは床を突き抜け階下へ落ちていった。
「やり過ぎたか?まあいいかライキの会社だし。これ位じゃ崩れないだろう。」
ダークナーよりもライキの会社の建物を気に掛けたバイツ。
「何だ貴様人間ではないのか。」
「よく言われる。」
バイツがそう言うとトーヴは笑い始めた。
「面白い。貴様と少々手合わせしたくなってきたわ。ここでは狭すぎる。ついて来い。」
トーヴは壁を蹴り穴を開けるとその穴から外へ出ていった。
「待て!」
バイツは一瞬躊躇った。まだ階下には動ける化物がいると。
しかし、ライキとヒートが異常を察知して片付けると思いバイツはトーヴを追って行った。
『ダークナーです!階下!それも二体!』
サーナイトのメガバングルが反応した。
サーナイトはミミロップ、クチート、ルカリオに視線を送った。彼女達のメガバングルもまた警告を発していた。
その時建物が軽く揺れた。
「ライキ様、ヒート様。ここに居てください!安全になるまで!」
「え!ちょっと待って、どういう事!?」
ライキの質問も空しくサーナイト達は階下へと急いでいった。
「社長、階下で何かがあったようです。」
バムトが連絡を受けてライキに報告した。
568
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:33:43 ID:/qBnNDz6
「職員の避難を最優先。動けるものは原因の究明に当たって。」
「分かりました。その様にいたします。」
バムトは一礼すると何処かへ消えていった。
ライキが拳銃を取り出す。
「サナちゃん達に何かがあったら僕等の身がヤバい。」
「ああそうだな、急ごうぜ。」
ライキとヒートも階下へ通じる階段へと向かって行った。
その時バムトの声がスピーカーを通じてビル全体へと響き渡った。
『・・・警備班は直ちに十二階開発部門へ、未確認生物の反応在り。なお開発途中の兵器もありますが兵器よりも混乱の収拾を最優先に・・・』
「開発途中の兵器?何だそりゃ?」
ヒートがライキに訊く。
「MML(マルチミサイルランチャー)だよ。個人でも携行可能なコンパクトサイズ。複数の対象をロックオン可能な三十二発同時発射の小型ミサイル。更にバックブラストも抑えた魅力的な一品。」
「マジでヤベェな。」
「でしょ?これだけじゃないんだよ―――」
「アホ、それが敵の手に渡ってたらどうするんだ?万が一嬢ちゃん達にそれが怪我させてたら?」
「あーバイツに殺されるのは僕って事ね、急ごう。」
ライキとヒートが実の無い話をしている頃サーナイト達はダークナーの元に辿り着いていた。
『ダークナーの気配が分かれました。一体は目の前にもう一体は何処かへ・・・』
メガバングルの声を聞きながらサーナイト達は眼前のダークナーに視線を向けていた。
「居ましたよ!皆様!」
「分かっちゃってるよー!変身しちゃおう!」
「あたし、負けない!」
「誰かが来る前に終わらせよう、行くぞ!皆!」
サーナイト達の体が光に包まれそして光が弾けた時、サーナイト達はメガシンカしていた。
「私達が奴の気を引く!その間にサナは力を溜めて強烈な一撃をお見舞いしてやってくれ!」
ルカリオがそう言って構える。
「分かりました!皆様!お気をつけて!」
サーナイトは「めいそう」を始めた。
「さあ!あたし達は敵の陽動だね!」
ミミロップは跳びかかって強烈な蹴りを一撃叩き込んだ。
ダークナーはそれを防ぐ。だが、クチートとルカリオが脚を攻撃しダークナーを転倒させる。
「この調子ならサナお姉ちゃんの援護いらないかも!」
転んだダークナーはその巨体に似合わない速さで二転三転し後退すると何かを手に持った。
「気を付けろ!何かが来るぞ!」
ルカリオがそう言うとダークナーは何かを腕に取り込んでいた。サーナイト達は知らなかったがダークナーが腕に取り込んでいたのはライキの言っていたMMLだった。
MMLの先端が十字に開く。開いたそこにあったのは黒いオーラで形成された小型ミサイル。
大きな発射音と共に三十二発の小型ミサイルがサーナイト達を襲った。
追尾性能が高く避ける事が困難なミサイルはサーナイト達を的確に狙う。
「危ないです皆様!」
569
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:34:15 ID:/qBnNDz6
サーナイトは可能な限りミサイルを落とそうとした。
しかし、落とし損ねたミサイルは爆発しサーナイト達を吹っ飛ばす。
「ダークナー!」
ダークナーはMMLをリロードし再度発射。部屋の出入り口を崩す。
「く・・・うっ・・・」
サーナイトは体を起こそうとしたが体に力が入らない。ミミロップ、クチート、ルカリオも同じ様なダメージを負っていた。
「ダークナー!」
ダークナーは勝ったかの様に両腕を上げた。
その時、一体のメガエルレイドが土煙の中から現れダークナーの脇を肘刀で斬りつけた。
「ダークッ!」
ダークナーも油断していたせいかその攻撃に反応できなかった。
「い・・・一体・・・誰が?」
サーナイトは体を起こしてそのメガエルレイドを見た。
「大丈夫!?姉さん!」
そのメガエルレイドはサーナイトの事をそう呼んだ。
「まさか・・・キルちゃん?」
話はほんの少し前に遡る。
「駄目です!ここからの侵入は出来ません!」
崩れた壁の向こう側では警備兵が瓦礫を見てそう報告した。
「何とかならないかなーこの向こうにサナちゃん達がいる可能性が大きいんだよなあ・・・」
ライキが考える。
「吹っ飛ばすのは・・・駄目だ・・・向こうの様子が分からないんじゃ手の出しようが無ェ。もっと酷くなる可能性だってある。」
ヒートも慎重に考えていた。
その時足元から声が聞こえた。
「あ、ここに穴がある。」
そう言ったのはキルリアだった。
確かにキルリアが四つん這いになれば通れそうな位の穴が開いていた。
「キル君どうしてここに?危ないから避難した方がいいよ。」
ライキにそう言われたがキルリアは首を横に振った。
「僕、中の様子見てくるよ。」
「危ねえつってんだろ。うおら、避難避難。」
「僕何があっても中に入るからね。」
キルリアは四つん這いになるとサクサクと穴の中に入っていった。
穴はそう長くは無かった。
通り抜けると最初に目に入ったのは巨大な黒い怪物。
そしてその周囲で倒れているサーナイト達。
『あれがダークナー。僕達の倒すべき敵。』
「でも、どうやって戦えばいいの?」
『君を・・・一時的にだけど強制的に進化させる。』
「そしたら、勝てる?お姉ちゃん達を助ける事が出来る?」
570
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:34:51 ID:/qBnNDz6
『それは君次第・・・さあ、力を受け入れて。』
キルリアの体を光が包んだ。そして光が弾けメガエルレイドになった。
ダークナーは体勢を立て直した。そしてMMLをエルレイドへ向ける。
エルレイドは走ってダークナーに接近した。
リロードを終えたMMLが発射される。
エルレイドは走りながら肘刀で三十二発のミサイルを斬り落としていった。
「これで・・・終いだ!」
ダークナーに跳びかかりX字に斬り裂く。
「ダ・・・ダークナー・・・」
「邪悪よ!天に還れ!」
エルレイドが右腕を横に伸ばす。それと同時にダークナーのオーラは消え、ダークナーの居た場所には男が倒れていた。そしてその傍らにはMMLが転がっていた。
「キルちゃん・・・」
サーナイト達は何とか起き上がるとエルレイドに近付いた。
その時サーナイト達のメガシンカが解けた。それと同時にエルレイドもキルリアに戻った。
「はにゃー・・・」
突然キルリアが倒れた。
「キルちゃん!」
『安心してください。一度に進化とメガシンカを行った為に体力を消耗したのでしょう。』
サーナイトのメガバングルが説明する。
サーナイトはそれを聞いて胸を撫で下ろした。
その時頭上から声が聞こえた。
「おーい!皆!無事かーい!?」
ライキが部屋の天井に空いた穴からサーナイト達に声を掛けた。
「私達は大丈夫です!」
サーナイトが返事を返す。
「なあ皆思ったんだが・・・」
ルカリオが神妙な顔をして言った。
「まさか監視カメラに私達の姿が映っていたなんて事・・・」
ルカリオがとんでもない事を言うのでミミロップが口を開く。
「それって結構ヤバくない?」
などという事を話しているとライキとヒートがロープで下りてきた。
「いやー良かったよ無事で。監視カメラが使い物にならなくなってさ、君達の事確認出来なかったんだよね。ところであの黒い化物は何処?」
ライキが辺りを見渡す。どうやらメガシンカの事はばれていない様であった。
「何処かへ行ってしまいましたー」
サーナイトがのほほんと返す。
「ふーん、そう。」
そう言ってライキは倒れている男に近寄る。
ヒートは入り口付近の瓦礫の撤去を始めた。
『逃げたもう一つのダークナーの気配ですが・・・消えました。』
サーナイトのメガバングルがそう伝える。
571
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:35:22 ID:/qBnNDz6
サーナイト達はどっと疲れたのかその場に座り込んだ。
サーナイト達がダークナーと戦っている頃。バイツもまた戦っていた。
「ここら辺で良いだろう。」
近くの森に移動したバイツとトーヴ。
「さあ、構えろ。」
トーヴが構える。それを見たバイツもゆっくりと構える。
「行くぞ!」
バイツに急接近したトーヴ。
地面が抉れるほど強く足を踏んでの掌底打をバイツの胸に叩き込む。
「なっ・・・!」
トーヴは驚いた。通常の人間ならば上下に胴体が分かれる程の一撃を打ち込んだにも関わらずバイツは平然としていた。
「終わりか・・・もっと出来ると思っていたのに・・・残念だ。」
「ハァッ!」
息を吐くと共にトーヴは蹴りをバイツの顔面に叩き込んだ。こちらも効果無し。
「生憎やられっぱなしは性に合わなくてね。」
バイツは右手でトーヴの腹部を殴った。
寸前でトーヴはその一撃を防いだが、大きく後退する事になってしまった。
「ぐうっ・・・!」
「こいつはどうだ?」
今度は頭部への攻撃。額を右ストレートによる一撃。
今度はガードが間に合わず攻撃を食らい吹っ飛ばされる。
「がっ・・・!」
後ろの木々が数本薙ぎ倒される。トーヴは木々にもたれ掛る様にずり落ちる。
「普通の人間なら頭蓋骨陥没してるがあんたはそうじゃないみたいだな。」
トーヴは揺らぐ視界の中バイツを見つける事ができた。
しかし、その体は戦闘を続行するのには既に限界を迎えていた。
「おのれ・・・!」
更に揺らぐその視界に更に二つの人影が映った。
「へー面白い気配がしたと思ったけどもうボッコボコじゃん。」
「ほう、これは・・・人間ではないな?」
「イル、シコウ、何だ今更。」
イルとシコウが現われたのだった。
二人の異質な気にトーヴは勝ち目が無いと思い、「門」を開いた。
「おのれ・・・この屈辱はいつか返してやる・・・」
そしてトーヴは「門」の中に入って消えた。
「また、下らぬ事か?」
「ああそうさシコウ。また下らない喧嘩さ。」
サーナイト達が待つビルへとバイツは歩き始めた。
572
:
名無しのトレーナー
:2015/12/02(水) 23:35:54 ID:/qBnNDz6
はい。これでこの回はお終い。
次の投稿どうなるのかな?
だってfallout4とJustCause3が控えてるんだもん!
573
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:39:11 ID:8dL.pFok
三月七日なので小説を投下します。
ボンガロパクっちゃった。細井先生本当にすいませんでした。
あと少しネタバレになるけどヒートが主人公より主人公しています。
574
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:39:55 ID:/qBnNDz6
暗闇が支配するドーム型の広い空間。
そこには一人の男が椅子に座っていた。
細身で金髪の髪の先端をカールさせていたその男はただ座っていたのではなく机の上でカードを並べていた。
「おや、トーヴ戻っていたのですか。」
男はトーヴの存在に気付きながらも机の上のカードに意識を向けていた。
オールバックの男、トーヴはその男に鋭い視線を向けた。
「ヴァルド、何をしている。」
「人間達がやっている占いというものですよ。確かタロット占いというものですかね。」
そう言いながらもヴァルドはトーヴに一切視線を向けなかった。
「中々面白いですよ、占って差し上げましょうか?」
「結構だ。俺は女王様に会ってこなければならぬ。新たな脅威が現われた。」
「ポケモンですか?新たな仲間が増えたとか?」
「いや、人間だ。我等に近い存在の・・・」
「そうですか、女王様はあなたの報告を待っていますよ。」
歩き去っていくトーヴを見る事無くヴァルドはカードを引く。
引いたカードは正位置の「ザ・タワー」のカード。意味は悲嘆、災難、不名誉、転落。
「んー・・・この占いが外れれば良いのですが。」
「ヴァルド。」
突然、闇の中から女の声が聞こえた。
ヴァルドは椅子から立ち上がり、胸に手を添えてお辞儀をした。
「次はお前が出よ。新たな脅威をその目で確かめてくるのだ。可能ならば排除しろ。」
「ハッ!仰せのままに。」
「良き結果を期待しているぞ。」
声が消えた後、ヴァルドは頭を上げた。
「本当に占いが当たらなければいいのですがね・・・」
とある街の上層階の繁華街。
そこの人混みの中にとある少年達とポケモン達が辿り着いたのは昼時を過ぎてからであった。
「本当にこの街には俺達を追う権力者は居ないんだなライキ。」
髪の長い少年バイツがそう言った。
「何度も調べたさ、念には念を入れてこの街を良く知る情報屋からも情報を買った。」
ライキはそう言いながらも周囲を見渡す。
「とにかくよぉ!この人混みから抜け出す方法を見つけようぜ!」
ヒートが声を荒げる。
「ヒートのいう事にさんせー!」
イルは人混みの波に少し押し流されながら口を開く。
「ふむ、まずは寝床を探すべきだな。」
シコウはイルとは違い人の波を余裕といった表情で上手く避けて歩いている。
そして彼等の仲間。バイツにとっては家族同然のポケモン達、サーナイト、キルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオは人の波に押し流されない様にするのが精一杯だった。
「皆体力を消耗するだけだ。ライキ、さっさと今日泊まるホテルを見つけよう。」
「はいはい、全く人使いが荒いねバイツ君は。」
ライキは一軒の喫茶店を指差した。
575
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:40:52 ID:/qBnNDz6
「あそこに避難しよう。」
バイツ達は喫茶店に入る事にした。
「凄い人の波でしたね。」
喫茶店の中。サーナイトが席に着くなりそう言った。
「ああ、凄かった。まあ今回は流石に多すぎだがな。疲れてないか?」
「私は平気です。」
バイツににこやかに返すサーナイト。その表情から嘘は言っていない様であった。
「何か食べようよ、僕お腹空いちゃった。」
「あたしもー・・・お腹ペコペコだよ。」
キルリアとミミロップは空腹感からか項垂れていた。
「よし、何を食べようか。」
「あたし、これがいい。」
クチートはメニュー表から比較的軽めの料理を選ぶ。
「おいおい、そんなのでいいのか?もっと・・・」
「どうせ夜はレストランのフルコースなのだろう?だったら今重いものを食べても仕方ないじゃないか。」
ルカリオはそう言ってキーボードを指で叩いているライキに視線を移す。
「まあね、今夜泊まるホテルの夕食はレストランのフルコースだけど・・・どうして分かったんだい?」
「波動の力・・・と言いたいところだが今回はただの勘だ。」
「ルカリオの方が一枚上だったな。で、ルカリオは何を食べる?」
バイツはルカリオにメニューを見せる。
とても微笑ましい光景にサーナイトは自然と笑顔になった。
そして全員がメニューを選び注文する。
品物が届くまでの間ミミロップは何処からか持ってきた無料で配布されている街のガイドブックを見ていた。
「何を真面目に読んでいるんだミミロップ。」
「んーと、マスターとのデート何処にしようかなーって。」
「えー!ミミお姉ちゃんずるい!マスターと一緒に行くの!?」
「なっ・・・!おいミミ!抜け駆けをする気か!?」
「えへへ、いいでしょー」
「お二人だけではなく皆様で一緒に行きませんか?」
「分かってないなーサナサナは。こういう事は積極的にやらないと。二人っきりで歩く並木道、二人の間は徐々に近付いていきそしてロマンスに・・・考えただけでもワクワクしちゃう!」
「俺は一向に構わないが皆が許さないだろう。」
「他の皆の意見はいいの。マスターはあたしと行動しちゃうんだから。」
「ふざけるなよミミ・・・!ならば私もマスターと共に行動しよう。勿論二人っきりでな!」
「ルカお姉ちゃんもずるい!私もマスターと一緒に居たい!」
「皆、声を抑えてくれないか。その・・・周りの客が見てる・・・」
「と・・・とにかく皆様ここはマスターの御意思を尊重しつつ・・・」
「そう言うサナサナはどうなの?」
「う・・・わ・・・私もマスターと御一緒したいです。」
「でしょー?」
サーナイト達のバイツとの行動権を賭けた勝負がまさに始まろうとしていた。
そんな時ヒートがバイツに声を掛けた。
576
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:41:23 ID:/qBnNDz6
「バイツ、この辺のカフェにカポエラって注文すると店主と戦える店があるらしいぜ。一緒に行かねえか?」
「ヒート、お前空気読んでないだろ。」
「空気。はい読んだ。」
バイツはこれ以上何も言う気が起きずただ頭を抱えた。
やがて料理が運ばれてきてそれを食べる一同。
バイツとの行動権を賭けての争いは一旦幕を閉じたかに見えた。
それからしばらく後、料理を全部平らげた一同はホテルに向かう事にした。
「いやー疲れたな本当に。」
ホテルの部屋に着いたバイツはそう言ってソファーに腰掛けた。
ホテルに着くまでの間も人混みに揉まれ続けていた。
バイツと同じ部屋のサーナイト達はいまだに言い争いを続けていた。
「ですから皆様、マスターのお供をするのは私です。」
「分かっちゃってないねー、マスターと一緒に行っちゃうのはこのあたし!」
「あたしがマスターと一緒に行動するの!」
「おいお前達私がマスターと共に行くのだ、異論は認めない。」
バイツは頭を抱えた。
「気にする事ないよバイツお兄ちゃん。時間がたてば皆仲良しになるから。」
「気遣ってくれてありがとうキルリア。ところでお前は言い争いに参加しないのか。」
「僕はいいよ。最終的に決めるのはバイツお兄ちゃんだから。」
「そうだな最終的に決めるのは俺だものな。そうか俺・・・か。」
そう言ってバイツは天井を眺めていた。
その時誰かが部屋のドアをノックした。
バイツはドアを開けた。
そこに居たのはヒートだった。
「なあバイツ、あのカフェ行ってみようぜ俺がさっき言っていたカポエラって頼むと店主と戦える店。」
「くどい。」
「そんなこと言うなよ。ライキ、イル、シコウに断られてきた所なんだからよ。」
溜め息を吐くバイツ。しかし、キルリアを除いたサーナイト達がまだ争っているので一旦外に出ていくというのも一つの手だと思った。
「分かったよ、行こう。ただしさっさと片付けてくれよ。」
「おっ!話が分かるじゃねえかバイツ!じゃあ早速行こうぜ!」
「皆ー、少し出掛けてくるからその間に喧嘩を終わらせておいてくれよ。」
「いってらっしゃいバイツお兄ちゃん。」
キルリアだけが反応する。
「悲しいなぁ・・・」
バイツはそう言い残すと部屋を後にした。
そのカフェは街の中心部に近い所にあった。
バイツとヒートは物怖じせずにそのカフェの中に入った。
店内は広いが平日の日中という事もあって店主と客が二人。
577
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:41:58 ID:/qBnNDz6
ヒートは店主に近付く。
「旅のお方ですな、何をお出ししましょう。」
「カポエラ・・・」
ヒートが何の前置きも無くそう口にする。
「ゲゲッ!?」
「あ・・・あいつ客じゃねぇ!」
客の二人が驚く。
「そうか・・・君は「キング・オブ・ファイターズ」出場者か・・・私がこの地区を守るリチャード・マイヤと知って来たんだね。」
「いいやただあんたと戦いたいだけだ。「キング・オブ・ファイターズ」とやらは関係無ェ。好奇心ってやつだよ。」
ヒートは不敵な笑みを浮かべそう答えた。
「いいでしょう。」
リチャードは身軽にカウンターを飛び越えた。
「最強武道カポエラ、お相手しましょう。」
ヒートは静かに構えた。
「ふっ・・・君は我流ですか。」
構えを一目見ただけで相手の流派を見抜く。バイツはそれを見て警戒した。リチャード・マイヤ。油断できない相手だと。
「まあそうだな、色んな武術のいいとこどりみたいなモンだぜ。」
「大した自信ですが―――」
リチャードが間合いを詰める。
「果たしてどの程度ですかな!」
リチャードが鋭い蹴りを繰り出す。
ヒートは難なくその一撃を避ける。
「!?」
「あ・・・あいつ避けた!」
「信じらんねぇ!マイヤさんの蹴りを!?」
客の二人が再度驚く。
「そらよ!」
今度はヒートが蹴りを繰り出した。リチャードはそれを間一髪の所で防ぐ。
「オラオラオラ!」
ヒートの猛攻。
今回は手数で攻めるのかと思ったバイツ。
「うおお、避けただけじゃねえ。マイヤさんが押されてる!?」
「馬鹿野郎まだだ、よく見てみろマイヤさんはあいつの攻めを紙一重の所で避けている!」
バイツは実況している客二人を見てこの場は観戦するだけにしようと思った。
「ほ・・・ほんとだ!いいぞーマイヤさん!そんな奴やっちまえーっ!」
リチャードが不敵な笑みを一瞬浮かべた。
「でええい!ビートルホーン!」
リチャードは空中で側転するかの様に回転し始めた。
「出たぁっ!マイヤさんの必殺技だ!」
その時、何かがぶつかる音がした。
「!」
客の二人が驚く、ヒートは微動だにせずそこに立っていたからだ。
「どういう事だ・・・?あいつ倒れねえ。」
バイツは壁に寄りかかってその流れを眺めていた。
578
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:42:32 ID:/qBnNDz6
「ああっ見ろ!?」
「マイヤさんの肩にアザが!」
リチャードは一筋の汗をかく。だがそれでも余裕そうであった。
「クックッ・・・凄い・・・凄いね君は。私のビートル・ホーンをかわしただけでなく蹴りまで入れていくとは。君になら―――」
逆立ちをするリチャード。
「―――カポエラの神髄をお見せしましょう。」
そして足を開き、横回転する。
「ローリング・ファング!」
「うおっ!」
急な動きに一瞬戸惑うヒート。
「てええい!」
「ガッ!」
ヒートは咄嗟に両腕を交差させ攻撃を防いだが大きく吹っ飛ばされてしまう。
「やったぁ!マイヤさんの技が決まった!」
「奴は柱に叩きつけられるぞ!」
そのまま柱に叩きつけられて終わるのかと思いきや、ヒートはくるりと一回転しタンと軽く柱を蹴った。
「なっ!?」
「スラッシュキック!」
バイツが溜め息を吐いて声を出した。
「ヒート、技名出すのはマズいから伏せておけ。」
ヒートにその言葉が聞こえていたのかいないのか分からなかった。
強烈な蹴りがリチャードを襲う。
「ぐはっ!」
その一撃はリチャードの脳を揺らした。
「お・・・おお・・・」
その場にうつ伏せに倒れるリチャード。
「ああ!」
「マイヤさん!」
「勝負ありだな。」
バイツはそう言って壁にもたれ掛るのを止め、ヒートに近付こうとした。
「くそう!」
客の一人が酒瓶を持ってヒートに突進する。
「テメェよくもマイヤさんをーっ!」
「お・・・おやめなさ・・・い・・・」
回復しきっていないリチャードが立ち上がって客を止める。
「これは私と彼の勝・・・負、手出し無用で・・・す。」
「け・・・けどマイヤさん・・・」
「私を卑怯者にする気ですか!?」
間合いを詰めるリチャード。
「私は武闘家だ・・・汚い手の勝利より・・・」
そして蹴りを繰り出す。
「堂々と闘った敗北を選ぶ!」
その蹴りをかわすヒート。
「いい言葉だリチャード・マイヤ、じゃあ俺も全力で行くぜ。」
579
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:43:13 ID:/qBnNDz6
ヒートはリチャードに跳びかかる。
「タイガーキック!」
ヒートの膝によるリチャードの顔面に容赦のない一撃。
「おい、だから技名出すの止めろって。」
バイツは聞いてもらえそうにない注意をヒートに送る。
「ぐふうう・・・強い・・・強いな・・・君・・・は・・・君ほどの男と戦え・・・た事・・・誇りに思う・・・よ・・・」
そう言いながら倒れたリチャード。
「マ・・・マイヤさん・・・」
客のリチャードを呼ぶ声を背にする様にヒートは踵を返す。
「出ようぜバイツ。勝負はついた。」
「そうだな。」
そして二人は店を後にする。
店を出て丁度十歩目でヒートがこう言った。
「リチャード・マイヤ・・・ここ数十年の内で闘った中でもイイ男だったぜ。」
「珍しいな、お前が闘った奴を褒めるなんて。」
「それ位いい闘いだったって事よ。察しろよバイツ。」
「ああ、そうだなヒート。お前も満足そうな顔をしている。ただ技名を出すのはマズいかと。」
「うるせえよ、お前だって何回か他人の技パクってるじゃねえか。」
二人はそう言い合いながら歩き続けた。
ある部屋に男が数人入ってきた。
男達は食事中の巨漢に何かを言った。
「何ィ・・・?」
男は食事の手を止めずにその報告を聞いていた。
「マイヤのやつがやられただとーっ。」
咀嚼しながら男はこう言った。
「ゲヘヘ・・・ざまあねえや、前からあの真面目面した野郎は気に入らなかったんだ。」
男は唾を吐き立ち上がる。
「どれ・・・マイヤを倒したとかいう奴を俺がぶちのめし株を上げるとするか・・・」
一方その頃サーナイト達は。
「皆様・・・休憩しませんか・・・」
今だバイツとの行動権を言い争っていたサーナイト達。
サーナイトが息を荒げながらミミロップ、クチート、ルカリオに提案する。
「いいね・・・一旦休憩ー・・・」
「あたし・・・疲れた・・・」
「どうした・・・私はまだ余裕だぞ・・・」
「そう言うルカちゃんも息が上がってますよ・・・」
「お姉ちゃん達、喧嘩は終わった?」
キルリアがソファーに座りながらサーナイト達の方を向いてそう言った。
「あら・・・?キルちゃん・・・マスターは何処に・・・?」
580
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:43:44 ID:/qBnNDz6
「お姉ちゃん達が言い争いをしてる時にヒートお兄ちゃんが何処かに連れていっちゃったよ。」
「えーっ!」
サーナイト達四人は声を同時に上げた。
「どうして止めなかったのですかキルちゃん!」
「だって、お姉ちゃん達喧嘩してるし・・・」
「何処に行くとか言っていませんでしたか?」
「カポエラがどうとか言ってた。」
「えーっと確か店主がカポエラ使いっていうお店がガイドブックに載っていた気がする!」
ミミロップがガイドブックの中身を思い出す。
「そこに行こうよ!まだマスター達そこにいるかもしれない!」
「よし、行くぞ。」
「キルちゃんも行きますよ!」
「はーい・・・」
サーナイト達は物凄い勢いで部屋を後にした。
バイツとヒートは街の遊園地「ドリーム・アミューズメント・パーク」に足を踏み入れていた。
「何で野郎と遊園地に来なきゃいけないんだよ。」
「全く同感だ。俺は帰ってもいいか?サーナイト達が待ってる。」
その時、車のエンジン音が聞こえた。
明らかにバイツとヒートの所に近付いてきている。
そして車は二人を轢き殺す勢いで突っ込んできた。
「何っ!」
「はおっ!」
間一髪で車を避けた二人。車は建物に当たりフロント部分がぐしゃぐしゃになってしまった。
「何だよヒート「はおっ」って。もうちょっとカッコイイ台詞があったんじゃないか?」
「うるせえよバイツ、急だったから仕方ねえだろ。」
そう軽いノリで話している時、車の中から一人の巨漢がドアを蹴破り降りてきた。
「くっそう・・・身軽な野郎共だぜ・・・車で轢き殺した方が手間が省けたってものをよ。」
「誰だ?あんたは。」
バイツは巨漢に訊く。
「ゲヘヘ・・・大レスラーライデン様よ。こっから先は通さねえ・・・」
「ヒート・・・お前「キング・オブ・ファイターズ」とやらに強制的に参加させられているんじゃないか?」
「ああ、多分その様だぜ・・・」
「オメエ等に訊きたい事がある。マイヤを倒したのはどっちだ。」
ここでバイツはヒートをヒートはバイツを指差した。
「ヒート・・・闘ったのはお前の方だが・・・」
「こういうデカブツ嫌いなんだよ。それにお前この小説の主人公だろ、闘わないと。」
「訳の分からない事を・・・」
「ゲヘヘ・・・お互いに譲り合いか?だったらお前から潰してやるーっ!」
ライデンは真っ直ぐバイツの方に向かってきた。
「俺か・・・」
「頼んだぜバイツ。」
そう言いヒートはバイツから離れた。
581
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:44:30 ID:/qBnNDz6
「そりゃああっ!フライング・アタック!」
ライデンがその巨体でバイツを潰そうと跳びかかる。
しかしバイツは簡単にそれを避ける。
「ぐっへ!」
地面に激突するライデン。
「おごご・・・いけねえいけねえ・・・お前が身軽な事を忘れてた・・・こんな大技じゃあかかりっこねえや!」
ライデンが起き上がりバイツに突進する。
「もっとじっくりいかんとなあっ!」
「じっくり?こっちは時間が無いんだ一気に決めさせてもらう。」
バイツは突進してきたライデンの鳩尾目掛け右腕による強烈なショートブローを打ち込む。
「くけっ!」
そしてもう一発、今度は左のショートブロー。
「ぐ・・・へええ・・・」
ライデンは大きく吹っ飛び地面に叩きつけられる。
痙攣しながら倒れるライデン。
バイツはライデンに背を向けヒートに近付いた。
「'99の四百弐拾七式・轢鉄か、また渋い技を選ぶねえ。」
「だから技名を出すな。」
ドリーム・アミューズメント・パークを後にする二人。
「なあバイツどうしてあのデカブツが俺達の事を知っていたんだ?」
「さあな、ライキじゃあるまいし情報なんか―――」
そこまで言って口を閉じたバイツ。
「―――心当たりがある。」
そう言ったバイツ。ヒートも同じ結論に達した様で一言だけこう言った。
「ホテルに戻るぜ。」
二人はホテルに戻る間ずっと黙っていた。
「やっぱりこいつだった。」
ホテルの部屋に戻ったヒートは真っ先にライキに詰め寄った。
ライキは最初、否定はしていたものの徐々にボロを出し始めた。
そしてヒートがリチャード・マイヤを倒したという情報をこの街を裏で支配している組織に売ったのだった。
そして今はヒートに服の襟首部分を掴まれてバイツの部屋に居た。
「勘弁してよーいいお小遣い稼ぎだったんだよー」
「おかげで変なレスラーとも闘う羽目になった。まさかライキ、俺がライデンとやらを倒した事も連中に話していないよな。」
「ゴメン、バイツもうその情報売っちゃった。結構いいお金になったよ。」
バイツは右手を包む程の炎を灯す。
「焼き加減の相談になるが・・・レアかミディアムレアかミディアムかウェルダンか・・・好きな焼き加減を選べ。」
「勘弁してください!バイツ様ヒート様!」
「まあいいさ。」
バイツはそう言い捨てて右手の炎を消した。
「サーナイト達は何処へ行った?」
「知らないよ!」
「兎に角この後の身の振り方を考えようぜ。俺達はもう「キング・オブ・ファイターズ」とやらに参加しちまってるみたいだからよ。」
582
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:45:04 ID:/qBnNDz6
「そうだな。このまま優勝してさっさと終わらせるのも一つの手だな。その前に―――」
バイツは空になった部屋を見渡してこう言った。
「サーナイト達と合流しよう。ライキ、サーナイト達の居場所は分かるか。」
「パソコンに触らせてくれればすぐにでも監視カメラの映像をハッキングして追う事が出来るけど?」
「ヒート、ライキを放してやれ。」
服の襟首を放されたライキはヒートと共に自分の部屋に戻った。
「さてと・・・」
バイツは再度空になった部屋を見渡すと自分の部屋を後にし、ライキとヒートの部屋に向かった。
その頃、バイツに叩きのめされたが比較的早い回復を見せたライデン。彼は銃を持って息を切らしていた。
「あのガキィ・・・あのガキは何処だよ・・・」
敗北したら始末される。
ただその一文がライデンの頭の中にあり続けた。
「殺さなきゃなんねえ・・・あのお方に殺される前に・・・」
ライデンは走り出そうとした。その時一人の男が眼前に現れた。
「ふむ、闇のオーラは十分ですが・・・こんな体たらくで使い物になるのでしょうか。」
その男ヴァルドはライデンを上から下まで眺めていた。
「何だ・・・テメェは・・・退けよーっ!」
「戦闘はまだ出来るのならばいいですね、その力使わせていただきましょう!」
ヴァルドが何かをライデンに向けて放つ。
ライデンを黒い力の塊が包み込む。
そして今までよりも一回り大きい人型のダークナーが生まれた。
「ダークナー!」
「うーん・・・あまり褒められた出来ではないですね。」
ヴァルドはそう言うとダークナーと化したライデンに背を向けて歩き始めた。
「まあ、多くは期待していませんが・・・この街を滅茶苦茶にしてしまいなさい。」
「ダークナー!」
サーナイト達はバイツのいたカフェに急いでいた。
『ダークナーの反応があります!それも二体!』
急に全員のメガバングルが反応した。
「ええっ!この様な大事な時にですか!?」
『急いじゃって!何をしでかすか分からないのがダークナーの怖いところなんだから!』
「うう・・・マスターの後を追わなくちゃ・・・」
『急いでいるのは分かってるけど・・・こっちの問題の方が重要だよ。』
メガバングルにそう言われ決めかねているクチート。
「うん・・・そうだけど。どうしよう・・・」
『急げ。被害が拡大する前に。』
「くそっ・・・仕方ない、ダークナーを止めよう。」
ルカリオが苦渋の決断を下す。
583
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:45:41 ID:/qBnNDz6
『急ごう・・・今奴等を止められるのは僕達しかいない。』
「うん、そうだね。行こう。」
ダークナーの気配を追う事にしたサーナイト達。現場に急行している時メガバングルがまた反応した。
『また反応が二つに分かれました!』
「気配が二つに分かれたのですか?どうしましょう一旦分かれます?」
「いや、一体に集中攻撃をして倒してからもう一方に向かおう。そっちの方が安全だ。」
ルカリオの案に全員が頷く。
そして逃げ惑う人々をかき分けダークナーと化したライデンの前に立ちはだかるサーナイト達。
「行きますよ皆様!」
サーナイト達の体が光に包まれメガシンカをする。
メガシンカが完了したと同時にダークナーの巨体に跳びかかるミミロップ、クチート、エルレイド。
三人の攻撃は全て脳天を狙っていた。
重たい攻撃がクリーンヒットしたはずだった。
しかし、ダークナーはダメージを受けた素振りを見せない。
「ダークナー?」
首をコキコキと鳴らすと横薙ぎの裏拳で空中に居た三人を吹っ飛ばした。
「皆様!」
「サナ!こっちに集中しろ!来るぞ!」
ダークナーがサーナイトとルカリオ目掛けて突進してくる。
「「サイコキネシス」!」
「「はどうだん」!」
二人の最も得意とする技がダークナーに当たった。だが、突進の勢いは全然衰えない。
「なっ・・・!」
「ルカちゃん!来ますよ!避けてください!」
襲い来る巨体をかわした二人。ダークナーの巨体は向かいのビルへと突っ込んでいった。
舞い上がる埃に崩れる壁。
「参ったな・・・全然ダメージになっていない。」
吹っ飛ばされた三人もサーナイトとルカリオの近くに集まる。
「どうしちゃおうか・・・」
ミミロップがダークナーの巨体に視線を向ける。
ダークナーは体勢を立て直そうとしていたが上手くいかないのか何度か転んだ。
「もしや・・・!」
サーナイトの脳裏に何かが浮かんだ。
「皆様、あのダークナーは巨体なので一旦体勢を崩せば立ち上がるのに相当時間が掛かるはずです。」
「見てて分かるよサナお姉ちゃん。でもどうしよう。」
「ならばまず足元を一斉に攻撃して転倒させ、その後また一斉に頭を攻撃するのはいかがでしょうか。」
「その考え乗った!」
「うん!そうしよう!」
「悪くないアイデアだ、やろう。」
「要するに一点集中だね。じゃあやろう姉さん。」
サーナイト達は構えた。ダークナーも体勢を立て直したのかもう一度突進しそうな構えになった。
「で、どっちの脚を攻撃しちゃうの?」
「私達から見て右脚を攻撃してください。」
「よーし!先手必勝!」
ミミロップが先陣を切り構えているダークナーの足元に突進した。
584
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:46:32 ID:/qBnNDz6
それに続きサーナイト、クチート、ルカリオ、エルレイドが接近する。
「行きますよ皆様!」
それぞれ構える。
「「サイコキネシス」!」
「「とびひざげり」!」
「「かみくだく」!」
「「インファイト」!」
「「サイコカッター」!」
それぞれの技が一斉にダークナーの左脚に直撃する。
「ダ・・・ダークナー!?」
サーナイトの目論見通りダークナーは転倒した。
起き上がるのに四苦八苦するダークナー。
「皆様!もう一度です!」
今度は頭部にそれぞれ先程の技を叩き込む。
「ダ・・・ダーク・・・ナー・・・」
ダークナーの闇のオーラは消えてなくなり残ったのは気絶しているライデンだけだった。
サーナイト達のメガシンカ状態も解ける。
「何とか・・・勝てましたね。」
「うん・・・やったね、お姉ちゃん・・・」
「どうしたキル、今日は倒れないな。」
「一々倒れてらんないよ・・・」
「それにしても疲れたー・・・」
クチートがそう言いその場に座り込んだ。
その時、パトカーのサイレンの音が聞こえた。
「ね・・・ねえ!逃げちゃわない?」
「そうですね、根掘り葉掘り聞かれるのは御免です。退散しましょう。もう一体居るとの事ですし・・・」
『それが・・・もう一つの気配は消えました。』
「そうですか・・・それならば一安心です。」
「サナサナ早く!こっち!」
ミミロップが細い脇道を指す。サーナイトは急いで逃げる事にした。
サーナイト達が戦っていた頃。
ヴァルドは表通りを避けて小道に入り、鼻歌混じりに遠くで聞こえる悲鳴を楽しそうに聞いていた。
「デカい割にはやりますね・・・おや?」
ヴァルドの目の前に現れたのは三人の少年。
「おいバイツ、変なのが現われたぜ?」
「俺達もこんな騒ぎに紛れて動いて十分変だと思うけどな。」
「しょうがないでしょ、何故か監視カメラが全部機能していないんだもの。」
三人の内の一人バイツは頭を掻いて一歩前に出る。
「まあ、ここに来たのはあんたの気配がしたって事もあるんだけどな。」
ヴァルドは真っ直ぐバイツを見る。
「ふむ、まさかトーヴが言っていたのはあなたの事でしたか。隠しきれない程の闇のオーラ・・・今まで気が付かなかったのが不思議でなりません。」
585
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:47:13 ID:/qBnNDz6
「トーヴ?ああ・・・あの。」
「私の名はヴァルド!女王様からの命を受けております。可能ならば排除しろと!」
ヴァルドはそう言うと空中に跳びあがりバイツに向かって数十枚のカードを投げた。
バイツの立っていた付近の場所は魔力で出来たカードで吹っ飛んだ。
立ち上がる土煙。抉れた石畳。
「んー、やり過ぎてしまいましたかな?」
ヴァルドは華麗に着地した。
「さて、次のお相手は?」
ライキとヒートはバイツの立っていた場所を指差した。
現にバイツは舞い上がる土煙の中無傷で立っていた。
「なっ・・・!」
最初に飛んできたカードを右手の指先で弾き、残りのカードに当て弾道を逸らしたのだった。
「悪くはない。ただ力不足かな。」
バイツはヴァルドの反射速度を上回る速さで接近し右腕を振るった。
「ぐはっ・・・!」
為す術も無くヴァルドは吹っ飛ばされ、建物に背中から激突する。
「俺達の出番は無ェや、先に「キング・オブ・ファイターズ」を開催している奴のビルに向かおうぜ。」
「うん、そうだね。じゃあバイツ後はよろしく。」
その場を立ち去るライキとヒート。
ヴァルドは膝をついて何とか立ち上がろうとしていた。
ダメージが大きい所為か体がいう事をきかなかった。
「この程度では屈しませんよ・・・私は・・・私は・・・!」
「口だけは達者だな・・・まあいいかこの場で死ね。」
バイツが右腕を振り上げる。
その時ヴァルドが笑みを浮かべた。
「待ってましたよ・・・攻撃が大振りになるこの時を・・・」
ヴァルドは瞬時にカードを投げた。
バイツは右腕でカードを振り払う、だがその瞬間カードが煙を上げて小爆発を起こした。
「!?」
煙で視界が塞がれたバイツ。ヴァルドはその瞬間を狙って「門」を開き、中に入って消えた。
周囲を見渡すバイツ。おかしな気配は既に消えていた。
「仕留め損なったか・・・まあいい。」
バイツはそれだけ言ってライキとヒートの後を追い掛ける事にした。
次々と刺客を倒し、とあるビルの前に辿り着いたバイツ、ライキ、ヒートの三人。
「裏口から入ろうよ。こっそりとさ。」
「馬鹿言うんじゃねえ。正面から堂々と殴り込みだ。」
バイツは溜め息を吐いた。
「雑魚は俺とライキで何とかしろって事だな。」
そう言っている間にもヒートは歩みを止めなかった。
「誰も居ねえ?」
ヒートが先陣を切ってビルの正面から中に入ったが誰も居なかった。
「取り敢えず上に行こうよ。多分、最上階に「ヤツ」が居る・・・」
586
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:47:51 ID:/qBnNDz6
エレベーターに乗り込む三人。
「きっと俺達に恐れをなして逃げ出したんだろうさ。俺達が刺客を倒したって情報はもうすでに流しているんだよな。」
「うんヒート、でもこれはおかしいよ。」
エレベーターが最上階に着く。
「ようしどうやら地獄の一丁目・・・着いた様だぜ。」
ヒートがずかずかと進む。
「罠だったらどうしよう。」
「その時には自力で切り抜けるしかないな。」
バイツとライキも先陣を切って進むヒートの後を追う。
「クク・・・ようこそ諸君。」
辿り着いた大きな広い部屋に一人の男が革張りの椅子に座って待っていた。
「君達がここまで来やすい様に人払いをしておいた。ゆっくり遊んでいくといい。」
「あんたがこの街を裏から操っている男かい?」
「実質的には表も操りたい所だがね?ヒート君。」
「何故俺の名を?」
「君達の事は調べさせてもらった。君の後ろに居るバイツ君、ライキ君の事もね。」
男は座ったまま話を続ける。
「どうだろう君達私の部下にならないか。これまでの無礼は水に流そう。」
「ハッ!ほざいてやがれおっさん!俺達がここに来たのはお前をぶっ倒すためだぜ!」
「クッ・・・クックッ・・・」
男は笑う。
その笑いが余裕を示しているかの様にバイツは見えた。
「残念だよ。つくづく愚かだな・・・」
男が立ち上がる。そして男から放たれる圧倒的なオーラ。
「大人しく私の部下になっていればよいものを・・・今からお前は死より恐ろしい恐怖を味わう事になるだろう。」
「何ィ?」
「ぬう・・・」
男の筋肉が膨張する。着ていたスーツが破れ鋼の様な筋肉が露出する。
「ふしゅるう・・・」
そして男は机を飛び越えヒートと向かい合う。
「奥義・鋼霊身!」
男は笑みを浮かべる。
「へっ・・・面白え!見せかけじゃない事を祈るぜ!」
ヒートが男を殴るが全然ダメージにはなっていなかった。
「こざかしい!」
「ぐあっ!」
右腕一本で払い退けられるヒート。そのまま壁に激突する。
「ぐふう・・・」
「お前はこれから泣き・・・叫び許しを請う。後悔しながらな。」
「ほざ・・・けよォ・・・泣き出しちゃうのは・・・テメェだーっ!」
ヒートの跳び蹴りが男の顔面に当たる。
「ぬおうっ!」
ヒートの攻撃はダメージになっておらず、男はヒートを押し返す。
「何て野郎だ・・・全然ダメージになって無ェ・・・」
「クク・・・蹴りというのは・・・こういうものだ!」
587
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:48:28 ID:/qBnNDz6
男の蹴りがヒートの脇腹に叩き込まれる。
「ご・・・ふ・・・う・・・」
ヒートが脇腹を押さえその場にうずくまる。
「クク・・・苦しいだろうアバラの二、三本も折れたかもしれんな。」
「おおーっ!」
ヒートは立ち上がり男の顔面に拳を打ち込む。
「ほう、しぶとさだけは大したものだが―――」
男がヒートに近付く。
「頭はあまり良くないとみえる!」
肘打ちがヒートの顔面に入る。
「ぐふっ!」
倒れるヒート。
「お前と私の力の差は歴然だ。もう諦めて許しを請うがよい・・・」
「ふ・・・ざけろよタコォ・・・誰がテメェなんかに!」
「クク・・・愚かだ。本当に愚か者だな貴様・・・お前の蹴りもパンチも私には少しも通じんのだぞ。そのお前の何処に勝ち目があるというのだ?」
「お・・・俺がまだ動けるから・・・だ。動ける限りチャンスはある・・・」
「成程そうか・・・ではこれで終わりにしよう。」
男は右手を下から上に振り抜く。それで発生した衝撃波はヒートの体を軽々と吹き飛ばし後ろの壁に激突させた。
「馬鹿が・・・これでもうピクリとも動けんだろう。」
バイツとライキは加勢する訳でもなくその闘いを見ていた。
「これはちょっとマズいね・・・」
「ああ、だが加勢なんかしたら・・・」
「ヒートに殺される。でしょ?」
そう言っている間にもヒートは男を支えにして立ち上がる。
「おおりゃー!」
男の顔面にヒートの拳が叩き込まれる。だが依然として男にダメージは無い。
「ぬう・・・お・・・おのれーっ!」
男の拳の乱打。ヒートは為す術も無く床の上に倒れる。
「ハア・・・フウ・・・ハア・・・あ・・・呆れたしぶとさだが・・・」
男は倒れているヒートを見下す。
「どうやらそれもここまで―――」
しかし、ヒートは立ち上がる。立ち上がって男に迫る。
「き・・・貴様・・・」
男がヒートに攻撃を叩き込む。
右フック、左フック、裏拳、顔面に膝蹴り、肘打ち、左フック。
「おおおぉー!」
左手でヒートの後頭部を掴み右手で顔面に拳の連打。
しかし、ヒートは倒れなかった。
倒れるどころかその目には輝きがあった。
「・・・あ・・・?」
無意識に一歩引く男。ヒートがゆらりと動く。
「・・・あ?・・・あ・・・?」
そして、キッと男を睨み付けるヒート。
「う・・・」
588
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:49:11 ID:/qBnNDz6
男は脳内で考えていた。何故この少年は倒れないのか。と。
「わああーっ!」
男は叫んでヒートの咽喉を絞め上げる。
「くおおお死ね!死ね!死ねええーっ!」
ヒートは自分の首を絞めている男の手を軽々と払い除けた。
そしてそのまま手を掴み手の骨を握り砕いた。
「ぎゃあぁあーっ!」
そしてヒートの拳が男の顔面を捉えた。
男は倒れる。
「あ・・・?・・・あ?」
今度はヒートが男を見下していた。
「その筋肉増強は気の力によるものだろ?」
「あ・・・?あ・・・?」
「そういう力ってのはただ発散させてりゃいいってもんじゃねえ。相手の力も気も自分に取り込んで増幅させなきゃ意味が無ぇ。お前は俺を攻撃しているつもりだったが逆に俺に気を取られていたんだよ。」
「・・・」
「そこら辺を考えてねえのが―――」
ヒートが男を蹴り飛ばす。
「―――テメェの敗因だ!」
「むぐ・・・むぐぐ・・・」
男が口元を押さえる。
「俺が本当の気の使い方を教えてやるぜーっ!」
ヒートが拳に気を集中させる。
そして、気を込めた拳で男を勢いよく殴りつけた。
男は勢いよく吹っ飛び、強化ガラスの壁を突き抜け外に飛び出した。
「わぁあぁぁあ・・・っ!」
男は無残にもそのまま地面に叩きつけられた。
下で響く悲鳴。ヒートはその光景を見下していた。
「ま、こんなモンよ。どうだ?」
「某ゲイザーはパクらなかったか。見事だったよヒート。」
バイツは賛辞をヒートに送った。
「あーあ、「キング・オブ・ファイターズ」は優勝したけどこれじゃ賞金がパァだよ。」
ライキは優勝賞金の事しか頭になかった。
「しかし危なかったなヒート。」
「おいおい、闘ったのは俺だぜ?負けるなんて事―――」
ヒートがふらついた。
そこをバイツとライキが支える。
「―――無ェだろ?」
バイツとライキは互いに顔を見合わせ静かに笑った。
「ホテルに戻ろうか。まだ夕食も食べてない。」
三人は裏口から出てビルを後にした。
「サーナイト達は一体どこに向かったんだろうか。」
「何だか街で大きな騒ぎがあったみたいだしホテルに戻ってるかもよ?」
「うーん・・・」
ライキの言う通りサーナイト達はホテルに戻っているのかもしれない。
589
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:49:50 ID:/qBnNDz6
これでホテルに居なければ一人で探しに行けばいいのかもしれないと思いバイツはホテルに一旦戻る事にした。
「ヒート、さっきの闘いのダメージはどうなんだ?」
「マジでアバラの二、三本はイってるな・・・まあホテルに戻ったら気で治すけどよ。」
化物じみた回復方法に溜め息を吐いたバイツはヒートに肩を貸しながらホテルに向かうのであった。
ホテルの自室に戻ったバイツ。
そこではサーナイトがベッドで眠っているキルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオに毛布を掛けている所だった。
「お帰りなさいませマスター」
「ただいま。皆はどうしたんだ?」
「疲れが出てきた様で眠ってしまいました。」
まさか、戦って疲れがきた等とは口が裂けても言えないサーナイト。
「サーナイトは大丈夫なのか?」
「私は・・・大丈夫です。」
「表通りは凄い騒ぎになっていたが何かあったのか?」
「私分からないです・・・ずっとここに居ましたから。」
「そうか。」
バイツはサーナイトの嘘を疑う事無くソファーに座った。
「サーナイト、おいで。」
「はい。」
嬉しそうな顔をするサーナイト。すぐにバイツの隣に座る。
「街がこんな状況じゃなきゃ何処かに行きたかったけどな。」
「私はマスターと一緒なら何処でもいいです。」
バイツはサーナイトを抱き寄せる。
サーナイトの顔が紅くなる。
「何時までもこうしていたいものだな。」
「私もですマスター」
ふと、目と目が合う。バイツは柔らかな笑みを浮かべるとサーナイトの唇に自らの唇を重ねた。
サーナイトにとって嬉しい不意打ちだった。
短いキスが終わる。
「マスター・・・」
「どうした?」
「もっとチューしてください。」
今度はサーナイトの方から唇を重ねる。
遠慮がちにサーナイトが舌を絡めてくる。
バイツもそれに応じるかの様に舌を絡める。
先程よりもずっと長いキス。
唇が離れる頃には混ざり合った二人の唾液が橋を作っていた。
そしてサーナイトの顔はこれ以上ない位紅くなっていた。
「あの・・・マスター?嫌ではありませんでしたか?」
「嫌なわけないだろう、これ以上無いって位サーナイトに想ってもらえているんだからな。」
サーナイトはその言葉を聞いて、嬉しさからかバイツに寄り添う様に抱きつく。
「時間の許す限りずっとこうしていたいです。」
どうやらバイツ争奪戦はサーナイトの一人勝ちの様だった。
590
:
名無しのトレーナー
:2016/03/07(月) 20:50:27 ID:/qBnNDz6
この話はこれでお終い。
色んなものをパクったので謝罪の言葉しか出てきません。
本当にすいませんでした。
591
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:34:50 ID:/qBnNDz6
多田野は母子家庭に育った 金の問題はいつもついて回った。
グラブ一つ、ユニフォーム一着無駄にできない環境
そんな中でも、多田野の母は野球を続けさせた。多田野もそれに答え、みるみる頭角を現していった
大学に進み、世代を代表する投手と言われ始めると、色々な球団から栄養費が支給された
多田野はそれをすべて親孝行と借金の返済に当てた
余分な金はいらない。母に楽をさせてやりたい。多田野青年は母の苦労を知っていたのだ
だがそんなおり、愛用のグラブが壊れてしまう
栄養費は母の口座に振り込んだばかり、手元に金はない
まさか返してくれと言えるはずもなく、多田野青年は途方に暮れた
そんなとき、ゲイ雑誌の片隅にビデオモデル募集の広告を見つけたのだ
多田野はお前達の言うような男ではない。真面目で誠実な青年なのである
何でゲイ雑誌なんて読んでいるんですかね・・・(疑問)
後、小説が出来ました。
592
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:35:31 ID:/qBnNDz6
「トーヴ、あなた黙っていましたね!?」
ヴァルドは本拠地に帰った途端にトーヴを問い詰めた。
「言った筈だろう、新たな脅威が現われたと。」
「あんなモノだとは聞いていません!」
「聞かれなかったからな。」
グッと言葉を堪えたヴァルド。確かに脅威について詳しく聞かなかったのは自分の所為であった。
「とにかくアレを何とかせねば世界を闇に落とすなど不可能だ。」
トーヴがそこまで言った時突如誰かが現われた。
「お前は女王様に失敗の報告でもするんだな。」
突如現れた二メートルを超えた大柄な筋骨隆々の男がそう言った。
「ヴォルツ・・・あなたですか・・・」
スキンヘッドに目元を覆うようなマスクといった少々個性的なファッションに身を包んだ男、ヴォルツは二人に歩いて近づいた。
「その脅威っていうのは相当ヤルのか?」
「私のカード攻撃を難無くかわしたのですよ、中々の手練れです。」
「まあ、お前のカード攻撃は力強さが足りないからな。」
「何ですって?」
ヴァルドが食って掛かろうとしたその時闇の中から声が聞こえた。
「ヴァルド、報告せよ。」
その言葉に黙ったヴァルド。
「ま、さっきも言った様に精々敗北の原因でも考えて女王様に報告する事だな。」
ヴォルツの言葉を背に受けヴァルドは更に深い暗闇の中に向かって歩き始めた。
「ククク・・・お前等が苦戦している人間に会ってみたいものだ。」
「言っておくがアレは人間などというレベルではない。」
「ほう?」
ヴォルツがトーヴに細かく聞こうとした時声が聞こえた。
「ヴォルツ、今度はお前が出よ。脅威とやらを排除するのだ。」
「分かりましたよ女王様。そいつとあとポケモン達も潰しておこう。」
「ヴォルツ!女王様に何という口の利き方だ!」
「トーヴ、良い。そこまで自信があるからには期待しているぞ。」
「任せておきな。」
ヴォルツは口元に笑みを浮かべた。
ある街の上層階にある一軒の屋敷に来訪者が二名現れた。
「大奥様が言っていたお客様ですね。どうぞ。」
小間使いの少女がそう言い二人を奥の部屋に連れていった。
部屋に入るとベッドの上に横になっている黒人の老女が居た。
「よく来たね。目は殆ど見えなくなったけれどあんた達の事は分かるよ・・・ライキ、ヒート。」
ライキと言われた少年が口を開いた。
「お久しぶり、マダム。調子が悪そうだね。」
ヒートと呼ばれた少年も口を開く。
「寿命ってやつか?」
「ヒート。そんな口の利き方・・・」
593
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:36:06 ID:/qBnNDz6
「いいんだよライキ、死は避けられないさ。それが寿命ならね。それにしてもよく立ち寄ってくれたね・・・」
「ん、ちょいと近くまで来たもんでな。」
「それで・・・顔を見に来ただけじゃないんだろう?」
「うん、ちょっと「視て」もらいにね。」
ライキがそう言うと老女は頷いた。
「ああ、いいよ。目が見えなくなっても見えるものがある。力はまだ失われていないさ。」
そして、老女は黙って目を閉じた。
「見えるよ・・・はっきりと・・・炎が見える・・・それも普通じゃない、黒い炎が・・・」
ライキもヒートも黙って老女の言葉を聞いていた。
「これは・・・周りにあるのは光だね・・・五つの小さな光・・・見過ごしてしまう所だった・・・」
「光?」
ライキが訊く。
「そうさね・・・光さ・・・」
老女は白く濁ったその目を開けた。
「済まないね、あんた達二人の事を「視れ」なくて・・・今日はここまでが限界さ・・・」
「いや、いいよマダム。ありがとう。」
「しかしよぉ、この前この前会いに来た時を除いてあんたを助けたのは何年前だ?五十年前か?」
「あの時は助かった・・・礼を言うよ。」
「気にすんなって、ただ時の流れは残酷だなーって思ってよ。」
「そうだね、不変な物なんて無いと思っていた・・・あんた達に会うまでは。私はもうしわくちゃのおばあちゃんなのにあんた達は変わらない・・・少年のままさ。」
「全く成長が見られないってだけの話かもしれないよ?マダム。」
「いいや、あんた達は成長している。私が保証するよ。」
ライキは照れ臭そうに老女に背を向けた。
「ヒート、長話はマダムの体に障るからさ。ここでお暇しようよ。」
「そうだな、下層スラムにあいつらを置きっぱなしだ。」
ヒートも老女に背を向ける。
「じゃーな、婆さん。死ぬまで長生きしろよ。」
「あんた達には敵わないさ、道中気を付けるんだよ。」
部屋を出ると小間使いの少女が待っていた。ライキとヒートに一礼する。
「お医者様の見立てでは大奥様はもう長くないそうです。お会いくださってありがとうございます。」
「気にしないでよ。あてのない旅の途中で寄っただけだからさ。」
「また近々会いに来るぜ。今度は街を出る時にな。」
そして二人は小間使いの案内で玄関まで歩いた。
「本当に車を出さなくてもよろしかったのですか?」
「いいよ別に、気にしないで。」
「高級車が下層スラムに行ったら人目を引いちまうだろ?」
「それじゃあ、マダムによろしく。」
ライキはそれだけ言うと玄関を出た。ヒートもその後に続く。
屋敷から数十メートル離れた所でライキは歩みを止め振り返る。ヒートも立ち止まる。
「振り向いたって時は戻らねーぞ。」
「うん・・・またいなくなるんだね・・・僕達を知っている人。」
「婆さんと初めて知り合ったのはいつだった?」
「さあ?マダムが四歳か五歳位の頃じゃなかった?」
「長い付き合いになったな。」
594
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:36:36 ID:/qBnNDz6
「本当・・・長い付き合いだったね。」
そして二人はまた歩き始めた。下層スラムへ続く道を。
一方、その頃下層スラムでは一人の少年が右腕で紙袋を抱え全く車の走っていない道を歩いていた。
紙袋の中には上層階で買った食料が入っていた。
「全く・・・ライキとヒートは何処に行ったんだ?上層階に行ったと思ったが全然会わなかった。」
そう言いながら長い髪をなびかせて歩いている。
少年の名はバイツといった。
「サーナイト達はともかくイルとシコウも隠れ家で大人しくしている・・・筈。」
説明口調の台詞を言った後は黙々と歩き続けるバイツ。
ふと、足を止める。
目の前には一人の浮浪者が立っていた。
「へへ・・・クイ・・・モノ・・・」
そう言った男の視線はバイツの持っている紙袋に向けられていた。
そしてナイフを取り出す男。
「クイモノ・・・置いていけ・・・」
男の獣の様に血走った目からバイツは判断した。この男は人殺しでも平気でやる男だと。
「嫌だね。」
それを分かりながらバイツは否定した。
「じゃあ・・・シ・・・シ・・・シネ・・・」
男はナイフの切っ先をバイツに向けて突進した。
その瞬間バイツの姿が消えた。
当然その男はバイツの姿を追えなかった。
刹那、男の頸椎に衝撃が走った。
「ガ・・・ァ・・・」
男の背後に瞬時に跳んだバイツが男の頸椎目掛け蹴りを放ったのだった。
「終わりだ。」
男は為す術も無くその場に倒れた。
「どうだろう、いっそ首の骨を砕いてしまおうか。」
十分に加減していたとはいえバイツによる強烈な一撃によって男は気絶していた。
「・・・先を急ごう。」
バイツは何事も無かったかのようにまた歩き始めた。
それから隠れ家に着いたのは丁度五分後。
この隠れ家もあまりいい方法で入手したものではなかった。主にヒートが前に出て先にその場所を占拠していた浮浪者達を主に暴力で追い出したのであった。
「ただいま。」
「お帰りなさいませマスター」
真っ先に出迎えたのはサーナイトだった。
「ここまで大丈夫でしたか?お怪我はありませんか?」
「大丈夫だよ。サーナイトはどうだ?体の調子は?」
「私は大丈夫です。」
「お帰りマスター」
次に出迎えてくれたのはルカリオだった。
595
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:37:06 ID:/qBnNDz6
「ただいま。キルリアとミミロップとクチートはどうした?」
「何だかゴミの山で見つけた玩具で遊んでいる・・・たしかミミはジェンガとか言っていたな。」
「そんな古いものをよく知っていたな。正しい遊び方なのか?」
「私は分かりませんけれども・・・マスターはご存じですか?」
「まあ一通り・・・壊す方が好きだけどな。」
隠れ家の一番広い部屋に着くと床の上で集中してジェンガをやっているキルリアとミミロップとクチート。イルとシコウは大人しく椅子に座ってその様子を眺めていた。
「何だ、本格的にやっているじゃないか。」
「戻ったかバイツ。」
シコウがジェンガから視線を移さずに口を開いた。
「ああ、ただいま。っていうか帰ってきたこと分かるだろ。」
「まあ、足音で察知はしていたがな。」
「お帰りバイツ、何かつまむもの無い?小腹が空いて来ちゃった。」
「バゲットでも食っていろ。」
そう言ったバイツはイルの口に無理矢理バゲットを突っ込んだ。先端部分がイルの口の中に入る。
「もがっ!・・・あ、結構美味しい。どこのお店で買ってきたの?」
むしゃむしゃとバゲットを齧りながらイルが喋る。
「たまたま目に入った店でだ。静かにしなくていいのか?皆集中しているぞ?」
バイツはジェンガに視線を向ける。次はキルリアの番だった。
慎重に一本抜き取る。
その時タワーのバランスが崩れ、倒れてバラバラになった。
「はい、キルキルの負けー!」
「ああもう!強いよお姉ちゃん達!」
その時ようやくキルリアとミミロップとクチートは帰ってきたバイツに気が付いた。
「あ、お帰りバイツお兄ちゃん。」
「ただいま。随分熱中していたみたいだな。」
「うん!とってもとっても楽しいの!」
ミミロップがその場で小さく飛び跳ねながら言う。
「マスターもやる?」
クチートは崩れたジェンガを集めていた。
「ああそうするかな。でもまずイルとシコウと戦ってみたい。」
イルはバゲットを齧りながら、シコウは溜め息を吐きながらそれぞれ椅子から立ち上がった。
「勝っても負けても恨みっこ無しな。」
「うん、いいよー」
「承諾した。では順番を決めようか。」
クチートがジェンガのタワーを立て直している間にじゃんけんで順番を決める。結果順番はバイツ、イル、シコウの順番となった。
バイツは右手でジェンガの一本を目にも止まらぬ速さで抜き取って一番上に置いた。
「へー」
「ほう。」
タワーは微動だにしなかった。
「次はイルの番だな。」
イルはバゲット左手にバイツと同じぐらいのスピードで一本を右手で抜き取り一番上に置く。
シコウも似たような事をした。
「うわー・・・」
596
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:37:39 ID:/qBnNDz6
数分後、キルリアは歓声とドン引き、二つの意味を込めて声を出した。
どのようなルールでやったのか分からないがもう抜くジェンガが無く上から見たタワーは見事に十字の形になっていたのだった。
「で?この場合はどうなるんだ?試合続行か?」
「もういいよねー。これ以上を求めたら地震でも来ない限り終わらないよコレ。」
「うむ、白黒つけたかったが引き分けで良いな?」
クチートがバイツに向かってこう言った。
「ねえねえマスター、勝負が終わったんだから倒していい?」
「ん?いいよ。」
クチートはそう聞くと嬉しそうにジェンガタワーに寄って、ツンとタワーを押した。
タワーは呆気なく崩れた。
「さあ、二回戦と洒落込むか?今度は皆でやろう。」
バイツがジェンガを組み立てながらそう言った。
サーナイトはその輪から少し離れた所でその様子を見ていた。
『微笑ましい光景ですね。』
サーナイトの左腕に填めているメガバングルがそう言った。
「ええ、見ているだけでもとても楽しいです。」
サーナイトはバイツ達に聞こえない様に小声でメガバングルに語り掛ける。
『特にバイツ様を見る時の貴女の視線・・・あの時のキス・・・本当にバイツ様の事が好きなのですね。』
サーナイトは顔を紅くした。
「いつから気付いていたのですか?」
『もうずっと前からです。貴女に見えているものは私にも見えているのです。』
サーナイトは顔を紅くしたまま少し俯いた。
「全部見ていたのですか・・・少々意地悪ですね。」
『でも、貴女の想いに嘘や偽りが無い事は確かです。自信を持ってください。』
「たとえそれが一般的な恋でなくともですか?」
『そうです。恋に種族の関係は大した壁にならないものですよ。』
「・・・はい。私、自信が持てたような気がします。」
「サーナイト。」
「は、はい!」
バイツに急に呼ばれて驚くサーナイト。
「サーナイトもジェンガやらないか?ルールは簡単だから。」
「え・・・ええ、是非。」
「よし、再戦であるな。」
シコウがそう言ってその場に居た全員がジェンガのタワーを囲んだ。
それから数十分後。
「もー無理、マスター達強すぎじゃん・・・」
ミミロップがそう言って倒れ込む。
数々の勝負を繰り広げたが結局バイツ、イル、シコウの三人が負ける事は無かった。
負けが込んでいるのはサーナイト達の方であった。
「完敗だ・・・私達の・・・」
ルカリオはそう言いながら何処か納得の表情を見せていた。
597
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:38:20 ID:/qBnNDz6
「流石マスターですね。私達では敵いません。」
サーナイトが晴れ晴れとした表情で言った。
「そんな事ない、サーナイト達だって善戦したじゃないか。」
「うー・・・でも一回位勝ちたいよ。」
クチートは悔しそうに倒れたタワーを見てそう言った。。
「じゃあもう一勝負といくか?」
「うん!」
クチートが大きく頷く。
バイツがタワーを元通りにしている時、外からクラクションの音が聞こえた。
バイツ達は外に出る。
そこには一台のワゴン車が停まっていた。
「おいバイツ!見ろよトヨタのボンゴフレンディだぜ!」
助手席の開いた窓からヒートの声が聞こえた。
どうやら運転しているのはライキの様だった。
「どうしたんだコレ・・・お前等車泥棒する為に上層階に行っていたのか?」
「いやこいつは下層スラムで見つけたんだ。ちょいと弄ったら走る様になったぜ。」
本当の事を言っているのか疑わしかった。
「ドライブにでも出かけねーか?」
「いや、俺はいい。」
「拙者も遠慮する。」
「ハーイ、ボク乗る!」
イルが嬉々として手を挙げ車に近付く。
「じゃあ後ろに乗りな。」
イルはボンゴフレンディの後ろのドアを開けて乗り込んだ。
「じゃーな!面白い帰ってきたら面白い土産話でもしてやっからよ。」
そうヒートが言った所でボンゴフレンディが発進した。
「嫌な予感がするな。」
「拙者も同じでござる。」
そして数メートル走った所で黒塗りのセンチュリーの後ろに衝突してしまった。
センチュリーから男が出てくる。どこからどう見ても暴力団員だった。
「やべえよ・・・やべえよ・・・」
「物凄い朝飯食ったから・・・」
そして男がボンゴフレンディの運転席のドアに手を掛ける。
「おいゴルァ!降りろ!お前免許持ってんのかコラ!」
遠くからそのやり取りを見ていたバイツ達。
特に何も感じなかったバイツとシコウ。一方サーナイト達は助けるべきか助けないべきか悩んでうろたえていた。
「おいゴルァ免許見せろ!あくしろよ。」
ライキが免許証を取り出す。
男がそれを取り上げた。
遠くから見ていたバイツとシコウは互いに色々言い合っていた。
「あの免許証どう考えても偽造だよな。」
「うむ、ライキが免許を取ったなど拙者は聞いておらんぞ。」
「降りろって言われたのに降りてないし。」
「ここで降りて何か変わるか?変わらないであろう。それよりも「早くしろよ」が「あくしろよ」に聞こえたが・・・衝突時の衝撃で言語中枢に障害が発生したのか。」
598
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:39:14 ID:/qBnNDz6
バイツとシコウは三人を助けるつもりなど皆無であった。
そう話をしている間にも男は話を進めて行く。
「よしお前等クルルァについて来い。」
クルルァって何だろうといった表情でライキとヒートは互いの顔を見合わせた。
そしてボンゴフレンディのドアが閉まった。
発進する二台の車。
これといった表情を浮かべる事無くバイツとシコウは二台の車を見送った。
「無免許運転。」
「そうであるな。」
サーナイトが何かを言おうとした時メガバングルが反応した。
『ダークナーが現われました!』
サーナイト達はこっそりとバイツとシコウから遠ざかる。
「今回も二体ですか?」
『いいえ、今回は一体だけです。』
「一体だけなら余裕じゃん!いつもの通りパパッと終わらせてマスターと遊んじゃおう!」
「油断は禁物だぞミミ。何が来るか分からない。」
「でも今回は騒ぎになってないよね。静かだよ?」
クチートにそう言われて他の皆は頭を傾げた。
「じゃあ騒ぎにならない内に倒しちゃおうか。」
キルリアの提案に反対するものは居なかった。
ダークナーの反応は上層階にあった。
サーナイト達はその反応を目指し移動を始めた。
上層階の表通りに辿り着いたサーナイト達。
人が行き交う普通の街並みが目の前にあった。
「本当に居るのですか?この人々の中に。」
『はい、反応は確かなものです・・・それに先程よりも強くなっています。』
その時サーナイトの視界の端に大男が映った。
他の人間達よりも身長が高いその男もサーナイト達に視線を移した。
「何あの筋肉達磨。まさかあいつって事ないよね。」
サーナイトの視線の先に気付いたミミロップがメガバングルに問い掛ける。
『うーん・・・実は正解なんだよね・・・』
「じゃあ、どこでメガシンカしよう・・・」
クチートが考え込む。
「ここじゃ人が多すぎるなもっと人気の無い場所に・・・」
ルカリオがそこまで言った時突然身構えた。
「ほう。これはこれは・・・その腕輪、お前達が例のヤツか。」
サーナイトの背中を冷たいものが通って行った。
大男はいつの間にかサーナイト達に接近していたのだった。
「俺の名はヴォルツ。覚えておけ・・・あの世までな・・・」
サーナイト達は無意識に一歩下がった。
「どうした?何故メガシンカしない?・・・ああ、そうか。」
何かを悟ったかの様にヴォルツは笑い始めた。
599
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:39:50 ID:/qBnNDz6
「発破を掛けられないと変身できないのか。」
その瞬間ヴォルツの体から密度の高いオーラが放たれた。
そのオーラは周囲の人間、ポケモン、物、ありとあらゆるものを吹っ飛ばした。
サーナイト達は何とか耐えたがそれで事態が好転するとは思えなかった。周囲の人間達が更にサーナイト達に視線を向けたのだった。
「さっさとメガシンカしろ。早ければ早い程すぐ楽にしてやる。」
サーナイトはその言葉に意を決した。
「皆様!メガシンカしましょう!」
『ですが人々が見ていますよ!』
「これ以上被害を大きくするわけにはいきません!」
サーナイトの言葉に賛同したかの様にキルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオも戦闘態勢に入る。
サーナイト達の体を光が包む。そしてメガシンカをしたサーナイト達。
「そうでなければな、面白くなってきた。」
ヴォルツは口端に笑みを浮かべた。
その頃ライキ、ヒート、イルの三人は狭い男の事務所に居た。
イルが先陣を切って歩き室内に入る。ライキとヒートはイルの後ろを歩いていた。
半笑いのライキ。
男は免許証片手に椅子に座っていた。三人を睨み付ける。
「免許証返してください。」
イルが開口一番にそう切り出す。
謝罪の言葉は無くただ免許証を取り戻したかったイル。
「やだよ、オウ。」
「オナシャス。」
「お前それでも謝ってんのかこの野郎。」
「オナシャス免許証。」
「嫌だっつってんだろ取り敢えず土下座しろこの野郎。オウ、あくしろよ。」
正座する三人。
「誰の車にぶつけたと思ってるんだこの野郎。」
「すいません。」
頭を下げたイル。ようやく謝罪の言葉が出る。
そして自分が何をしでかしたか分かったのか半笑いを止めるライキ。しかし、頭は下げない。
「どう落とし前つけるんだよ。」
「オナシャス、センセンシャル。」
必死に頭を下げるイル。
「返してほしいんだよな。」
「はい。」
「お前取り敢えず犬の真似しろよ。」
「えっ。」
「犬だよ、ヨツンヴァイになんだよこの野郎。あくしろよ、あぁ!返さねえぞ。」
「やれば返していただけるんですか。」
「ああ、考えてやるよ。」
返すとは誰も言っていなかった。
600
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:40:36 ID:/qBnNDz6
「あくしろよ。」
やたらと急かす男。
イルの後ろにいるライキとヒートは小声で何かを言い合っていた。
「僕達何やってるの?」
「さあ・・・」
サーナイト達は苦戦を強いられていた。
ヴォルツの攻撃は両腕を振り回すという、至極単純なものだったのだが、スピードと重さが桁違いだった。
武術の心得があるルカリオもなかなか手を出せずにいた。
「クッ!接近戦は危険すぎる!サナ!遠距離から攻めよう!」
「はい!」
一旦下がるミミロップ、クチート、エルレイド。
「「サイコキネシス」!」
「「はどうだん」!」
サーナイトとルカリオから放たれた攻撃。しかし、ヴォルツはそれをかわし、二人に急接近した。
「残念だったな。」
ヴォルツの重い横薙ぎのハンマーナックルがサーナイトとルカリオを吹っ飛ばす。
建物の壁に叩きつけられる二人。
「姉さん!」
「何だ?戦っている最中に余所見か?」
いつの間にか接近を許してしまったミミロップ、クチート、エルレイド。再度距離を取ろうとするがヴォルツの方が速かった。
ハンマーナックルが三人を吹っ飛ばす。
そして三人も壁に叩きつけられる。
「クハハハ!どうした!まさかこの程度って事は無いよな!」
あまりのダメージに咄嗟に起きる事が出来ないサーナイト達。
「何だ、本当に終わりか・・・つまらんな。」
ヴォルツが倒れているサーナイトに近付く。
「期待させた割にはこの程度か。まあいい一匹ずつ潰していってやろう。」
その時背後にただならぬ殺気を感じたヴォルツ。
「ん?何だ?」
後ろを振り向くとそこには二人の人間が立っていた。
四つん這いになったイル。
「何お前犬のくせに服着てんだよ。オイ。」
「はい。」
免許証を見る男。
「お前ライキか。」
「はい。」
「お前脱がせろ。」
無言でイルの上半身の服を脱がせに掛かるライキ。
601
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:41:23 ID:/qBnNDz6
脱がせ終わった時に男はイルの右腕に気付く。普段は人工皮膚を被せている筈の深い深い蒼をした藍色の腕。
「お前それ・・・」
男がそこまで言った時、突然空気の様な扱いだったヒートが男ごと椅子をひっくり返した。
その時椅子の下に隠してあったリボルバーが床の上に落ちる。
「ライキ!」
ヒートがリボルバーをライキに向かって投げる。
ライキはそれを受け止めると椅子ごと倒れた男の頭部に銃口を向けてコッキングした。
イルはそれを見ると急いで脱がされた服を着て男の首に氷の槍の先端を向けた。
ヒートは男の首に少し力を入れて足を乗せる。
「しゃぶったら撃つぞゴラァ。」
ライキの迫真の演技。
「しゃぶったら撃つのか・・・原作とは大違いだな。」
「アハハ!でも下も脱がされたらどうしようかと思っちゃったよ!で?この後どーするの?」
ライキとヒートが互いを見合わせる。
その一秒後事務所内に発砲音が鳴り響いた。
ヴォルツは殺気の持ち主である長い髪の少年に視線を合わせた。
「ほう・・・人間にしてはいい殺気だ。」
何とか立ち上がろうとするサーナイトを背に二人の少年、バイツとシコウに向かって歩き始める。
「トレーナーか何かか?」
「パートナーだ・・・!」
静かな口調からでも激しい怒りが感じ取れる。
「どうでもいい事だったな。まあいい、お前等二人から潰してやろう。」
ヴォルツは二人に急接近し両腕を振った。
しかし、二人には当たらなかった。
「何?」
続けて攻撃を出すもののことごとくかわされてしまう。
「どうしたお主、この様な攻撃では当たらんぞ。」
シコウは余裕を見せる。
「あまりナメるなよ・・・!」
ヴォルツの攻撃速度は更に上がる。それに対しバイツとシコウは後退するだけであった。
そして細い路地裏への道へ差し掛かった。
ヴォルツは攻撃を加えようとしたが両腕を振り回そうとした時、ある事に気が付いた。
両側の建物の壁に阻まれ自由に攻撃を繰り出す事が出来なかった。
「その手足の長さがお主の長所でもあり・・・弱点でもある。」
シコウがそう言うとヴォルツの背後に向かって跳んだ。
バイツとシコウに挟まれる形となったヴォルツ。だが、それほど身の危険を感じてはいなかった。
「だったらどうした?少しばかり攻撃方法を変えればいいだけだ!」
ヴォルツの右ストレートがバイツに向かって飛んでくる。
バイツは難なく右手でそれを受け止める。
「・・・!?」
次の攻撃の為に右腕を引っ込めようとするものの腕が動かなかった。
その時、バイツが右腕を引いた。
602
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:41:59 ID:/qBnNDz6
ヴォルツはそれにつられて引き寄せられる。
そしてバイツの右手はヴォルツの右手を放し、握り拳を作るとヴォルツの顔面目掛けて拳を繰り出した。
攻撃をまともに食らって吹っ飛ぶヴォルツ。吹っ飛んだ先にはシコウが待っていた。
バイツのいる方向に蹴り飛ばされるヴォルツ。そしてまたバイツによる一撃。
バイツとシコウの間を五往復程した後ヴォルツは表通りに吹っ飛ばされ転がった。
「ほう、お主人間でないにしても頑丈にできているな。」
バイツとシコウも路地裏から姿を現す。
ボロボロになったヴォルツは何とか立ち上がろうとするものの足に力が入らなかった。
「終わりだ・・・」
バイツがそう言ってヴォルツに近付く。
その時、「門」が開いた。現れたのはトーヴだった。
「退くぞ、ヴォルツ。」
ヴォルツの服の襟首を掴むトーヴ
「逃がすか・・・!」
バイツがヴォルツに接近するがトーヴの蹴りがそれを拒んだ。
シコウが間髪入れずに跳びかかり蹴りを繰り出すがトーヴはその蹴りを何とか防いだ。
そして「門」の中に入り消えるトーヴとヴォルツ。
「逃がしたか。」
「済まぬバイツ。本気で行くべきだったな。」
「いいさ、それよりも・・・」
バイツの視線は一つの方向に向けられていた。バイツの視線の先にはメガシンカ状態のサーナイト達が居た。
「どういう話が聞けるか楽しみだ。」
メガシンカ状態を解くサーナイト達。
「あの・・・これには深い訳がありまして。」
「ここじゃ駄目だサーナイト。何事も無かったかのように去るぞ。」
バイツとシコウ、そしてサーナイト達は半ば急ぎ足でその場を去った。
次の日、ライキとヒートは老女の屋敷に居た。
老女は明け方に亡くなっていた。
眠る様に息を引き取ったと小間使いは言っていた。
「マダム・・・死に目に会えなかったね。」
「あばよ婆さん。」
ライキとヒートは長い時間屋敷には居なかった。
老女の家族にお悔やみを言った後に屋敷を後にしていた。
「さんざん世話になったな、あの婆さんには。」
屋敷から出た後ヒートがそう言った。
「うん、でもマダムがその言葉を聞いたら「こっちが世話になった」っていうだろうね。」
ライキとヒートはしばらく互いに何も言わずに歩き続けた。
下層スラムに足を踏み入れた時にヒートが口を開いた。
「婆さんの葬儀に参加するか?」
ライキは頭を横に振った。
「いや、マダムはリスクを冒してまで葬儀に参列してほしくないと思うんだ。」
ライキはそう言って空を見上げた。老女の魂が微笑みを返してくれたようにライキは感じた。
603
:
名無しのトレーナー
:2016/05/30(月) 22:42:36 ID:/qBnNDz6
これで今回はお終い。
血塗られた美酒とFar Harborが楽しみです。早く来ないかな。
604
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 01:59:03 ID:/qBnNDz6
最近fallout4とハッピーダンジョンをやっています。
セブンイレブンで貰った色違いサーナイトの厳選はまだ手すら付けていません。
あと小説が書き上がりました。
605
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:00:00 ID:/qBnNDz6
「クックック・・・」
やけに上機嫌なヴォルツ。それを少し離れた所から見ていたヴァルドは眉をしかめながら口を開いた。
「一体何がそんなに楽しいのですか?この前の任は失敗に終わったようですが・・・頭でも打ったのですか?」
「いや、楽しくてたまらんのだ。あの異常なまでの力を持った人間・・・あの化物と戦える事がな。」
あの化物。
その表現にヴァルドは思い当たる人物がいた。
「あの人の形をした化物ですか・・・あなたも物好きですね。」
「今度は邪魔をするなよ・・・なぁ!トーヴ!」
闇の中からトーヴが姿を現す。
「邪魔をしたつもりは無いが?」
「今度はあんな真似するなって事だよ。余計な真似をしたらお前から潰す。」
「楽しそうに言ってくれるな。まあいい今度は助けん、好きにしろ。」
トーヴが呆れかえって闇の中に戻ろうとした時、声が聞こえた。
「オイオイいいのかー?ヴォルツちゃんよぉ、折角助けてもらったのにそんな態度取っちゃって。」
闇の中から姿を現したその男はヴォルツに向かって歩いていた。
「助けてもらっただと?俺はそんな事頼んでいない。」
「照れ隠しか?それとも本物の馬鹿なのか?まあ、お前はそのガタイと比べりゃ脳ミソは小さいからなぁ。」
「お前・・・潰されたいようだな。ドルヴ・・・」
ドルヴと呼ばれた男はヴォルツから放たれた威圧感を受け流していた。
それが殺気に変わる前に闇の中から女の声が聞こえた。
「楽しそうな所を悪いがヴォルツ、報告せよ。」
「女王様が呼んでるぜェー?ヴォルツちゃん。」
挑発的な口調を崩さないドルヴ。ヴォルツはつまらなそうに三人に背を向けて歩き始めた。
「ちょっと女王様に絞られてくる。」
三人はヴォルツの背中を見ながら話を続けた。
「んで?その人間ってのはどんな奴よ?」
「ヴォルツにも言ったがアレは人間の形をした「何か」だ。俺も奴に負けた。」
トーヴが苦々しく言う。
「へー、トーヴちゃん程の使い手がそこまで言うのかね。」
「ドルヴ、興味を持っては駄目ですが・・・アレを倒さないかぎり我々の計画が進まないでしょうね。」
「ヴァルドちゃんもそこまで言うのなら・・・一度会っておきたいもんだぜ。」
「いいか、とにかく奴に会ったら一切の手加減はするな。この前のヴォルツみたいになるぞ。」
「あー・・・ボロボロだったもんな、ヴォルツちゃん。ククク・・・」
回復する前のヴォルツの姿を思い出し、笑いを我慢しきれなかったドルヴ。
「ま、どんなヤローかは知らねーけどよ、ぶっ殺しておけばいいんだろ?」
「その通りだ。ドルヴ。」
女王の声が三人の耳に届く。
「今度はお前の番だ。一切の加減はするな、ポケモン達にもその人間にも。」
「女王様のご命令とあらば。」
ドルヴはそう言って闇の向こうに頭を下げた。
一組の男女がパソコンと一体化した机を挟んで対面していた。女性の方は幼さが残る顔立ちだが二十二歳。栗色の髪はショートカット。服装は白いシャツに黒色のベスト、黒いミニスカートにサイハイソックスという組み合わせ。対して男性の方はスーツを着た白髪頭の初老だった。
606
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:00:35 ID:/qBnNDz6
「ミコ君。これを見てくれたまえ。」
ミコと呼ばれた女性の前に幾つかの画像が展開された。
「これは・・・」
最初見た画像に映っていたのは人間でもなくポケモンでもない黒い生物だった。
「ここ最近目撃件数が増えている。それにこの生物は人間やポケモン達を狙って行動している様だ。」
ミコは男の言葉を聞きながら次の画像に目を移した。
映っていたのは黒い生物に立ち向かっているサーナイト、ミミロップ、クチート、ルカリオ、エルレイドだった。それぞれメガシンカをしている。
「どうやらそのポケモン達はその黒い生物と戦っているのだが・・・そのポケモン達の左腕を見てくれ。」
ミコは言われた通りにサーナイト達の左腕に注目した。
「メガバングル・・・?」
「そうだ。どうやらそのポケモン達はトレーナー抜きでもメガシンカが出来るそうだ。まあ話はここから始まるのだが・・・」
男はパソコンを操作し一つの画像を展開した。そこには黒髪の長い髪をした少年が映っていた。
「彼がこのポケモン達のトレーナーだと我々は睨んでいる。ミコ君、君にはこのトレーナーと接触し何故黒い生物と戦っているのか、そして分かればでいいがこの黒い生物達の目的も探ってほしい。」
「分かりました。」
「それとこれは機密事項なのだが・・・」
男は乗り気でない様にミコに話しかけた。
「このトレーナーには仲間がいる。どうやら上層部が彼と彼の仲間の身柄を確保したがっている。もし可能ならば・・・」
「捕えろ・・・という事ですか?」
「うむ。」
苦々しい表情を浮かべた男に対してミコは微笑んでみせた。
「大丈夫です。完遂してみせます。」
「頼んだぞ、我々特殊犯罪課・・・いや、警察のメンツがかかっているんだ。それと・・・これもついでだが・・・」
男が次に展開した画像に映っていたのは頭を撃ち抜かれて死んでいる男の死体。
「これは誰ですか?」
「ホモの暴力団員だ。」
「ストレートに来ましたね。それで・・・私はこの暴力団員を殺した犯人を追えば良い訳ですね。」
「そうだ。だが無理はするなこの件はあくまでもついでだ。」
建物の外に出たミコはモンスターボールを持っていた。
「あーあ、遂にバレちゃうのかな。」
モンスターボールの中からバシャーモを出す。
「どうしたんだいミコ、もう仕事は終わりかい?」
「ううん、これからお仕事。」
ミコはバシャーモの左腕についているメガバングルを見た。
「バシャーモ、仲間が見つかったみたい。あなたと同じで左腕にメガバングルをつけているポケモン達。」
「あたいに仲間かい?いいねえ、一人でダークナーと戦うのに疲れてきた頃だったんだよ。」
「でも・・・どうなるか分からない。」
「?・・・浮かない顔だね。」
「大仕事だからちょっと緊張しちゃって・・・」
「何言ってんのさ、これまで色々な事件を解決してきたじゃないのさ。」
607
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:01:08 ID:/qBnNDz6
「うん・・・そうだね。」
眩しい太陽の下ミコは歩きながら筋肉をほぐす為背伸びをした。
「よーし!頑張るぞ!」
意気込んでみせたミコ。その行く手には何が待っているのか。
ミコの現在地から僅か数キロしか離れていないホテルにとある一行が泊まっていた。
少年が五人にポケモンが五体。
ポケモンはモンスターボールに入れられていなかったが炎や毒を発するタイプのポケモンでは無かった為従業員は何も言わなかった。
その一行は部屋を三室借りた。
そして、その内の一室では重苦しい雰囲気が漂っていた。
一人の長髪の少年と五体のポケモン。
サーナイト、キルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオがソファーに座りながら少年に視線を向け押し黙っていた。
少年は窓の外を見ていたが、やがてそのまま口を開いた。
「話してくれるか、皆。」
少年の名はバイツ。伝説のポケモン、グラードンの力を右腕に宿した人間だった。
バイツの言葉に対し真っ先に口を開いたのはサーナイトだった。
「少し・・・長くなります。」
「構わないよ、最初から順に話してくれ。」
意外と柔らかい口調のバイツにサーナイトはぽつりぽつりと話し始めた。
メガバングルとの出会い、トレーナー抜きのメガシンカ、戦ってきた敵ダークナー。
時々サーナイトの話にキルリア、ミミロップ、クチート、ルカリオが細部を付け足す形で話が進んでいった。
到底信じられる話ではなかったがバイツは現にメガシンカ状態のサーナイト達を見てしまった。
「大変だったな。」
サーナイト達が話を終えた時のバイツの第一声がそれであった。
「信じて・・・下さるのですか?」
バイツはそこでようやっとサーナイト達の方を向いた。
「パートナーの話を信頼しない奴が何処にいる?少なくとも俺は信じる。」
サーナイト達の表情が徐々に明るくなっていく。
「だがな、信じるからこそ・・・皆を戦わせたくはない。」
苦々しい表情を浮かべてバイツはそう言った。
「実は俺も黙っていた事がある。そのダークナーと呼ばれる生物を生み出している奴等と戦った事がある。皆を助ける前の話だが二度程な。」
「え!マスターも戦っちゃってたの!?」
「そうなんだミミロップ。だから連中が皆だけの敵とは限らないんだ。」
「何か話していましたか?」
サーナイトの言葉にバイツは少し考え込んだ。
「闇のオーラがどうのこうのと言っていたが細かい事は忘れた。」
「どうして?」
クチートが訊く。
「連中は話したい事を話した途端勝負を挑んできたからな。細かい事を聞こうにもそうはいかなかった。」
「マスターにしては珍しいな。」
ルカリオがそう言うとバイツは苦笑いを浮かべた。
608
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:01:44 ID:/qBnNDz6
「珍しいか?まあ、何も聞こうとしなかった俺も俺だけどな。」
「それでバイツお兄ちゃん、僕達はこれからどうすればいいの?」
キルリアが少し困った様に言った。
バイツは真面目な表情を作った。
「旅はこれからも続ける・・・だがさっきも言った通り皆を戦わせるわけにはいかない。」
「しかし、それでは私達の存在意義が・・・」
「サーナイト、戦うだけが皆の存在意義じゃないだろう?」
「ですが、私達は護りたいのです。マスターを・・・マスターの住むこの世界を。」
「気持ちは嬉しい。でも皆が傷ついていくのは見たくない。」
バイツのその言葉に誰も何も言い返さなかった。
「正直なところ俺もどうすればいいのか分からないんだけどな。」
バイツは部屋のドアへと向かった。
「あの、どちらへ?」
「ライキとヒートの部屋さ、イルとシコウも一緒に何かを話し合っているみたいなんだ。心配するな、すぐに戻ってくるよ。」
そう言い残しバイツは自分の部屋を後にした。
バイツがライキとヒートの部屋を訪れると重苦しい雰囲気が漂っていた。
ライキ、ヒート、イルがソファーに座りながらシコウに視線を向け押し黙っていた。
シコウは窓の外を見ていたが、やがてそのまま口を開いた。
「何があったのか話せ。」
「どこかで見たぞ、この光景。」
バイツの言葉は無視され、ライキが口を開いた。
「少し・・・長くなるよ。」
「手短に話せ。」
バイツとは違いシコウは手厳しく返した。
ライキはぽつりぽつりと話し始めた。
ボンゴフレンディ、センチュリー、事務所での事。
「おーい、話の内容が違うがどこかで見たぞこの光景。」
再度バイツの言葉は無視され、ヒートとイルが細部を付け足す形で話が進んでいった。
到底信じられる話ではなかったがバイツとシコウは現にセンチュリーに追突するボンゴフレンディを見てしまった。
「この馬鹿共が。」
ライキ達が話を終えた時のシコウの第一声がそれであった。
「信じて・・・くれる?」
シコウはそこでようやっとライキ達の方を向いた。
「信じるも何も拙者とバイツはお主達がセンチュリーに衝突する所を見たからな。そうだろう?バイツ。」
「俺の存在に気付いていたのなら俺の発言も聞こえていた筈だ。何故無視していた?」
「何処かでこの光景を見たとかなんとか言っておったな。」
「ああそうだ、まるっきりパクって何を話してたんだ。」
「拙者等があの妙に硬い男と戦っていた時、こやつ等が何をしていたのか聞いていた所だ。」
「つまらない話だな、こっちと違って。」
「ほう、ではお主等は何を話していたのだ?」
バイツは溜め息を吐くとサーナイト達から聞いた事をそのまま話した。
「ふむ、あの男はダークナーという存在なのか。そしてそのダークナーとやらは世界を闇に包もうとしているとな?」
609
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:02:26 ID:/qBnNDz6
「物分りがいいじゃないかシコウ、ついでに俺の考えている事を当てればリコリス飴を買ってやるよ。」
「サーナイト達が戦う事についてだな?」
「大当たりだ。」
それだけ言ってバイツは溜め息を吐き、少し俯いた。
「何戸惑ってるんだよ。」
ヒートに今の気持ちを見抜かれてバイツは何故かホッとしていた。
「サーナイト達と今まで通りにいくかと思ってな。」
「今まで通りも何も普通に接すればいいだけじゃん。」
ライキがそうは言ったもののバイツは何処か納得していなかった。
「サーナイト達は・・・人類の希望だ。皆それを納得して戦ってはいたみたいなんだが・・・俺がどうも納得できない。」
煮え切らない態度のバイツにライキ、ヒート、シコウはそれぞれ溜め息を吐くだけであった。
「おい、イルは何処に行った?」
バイツはそう言って部屋の中を見渡したがイルは部屋に居なかった。
四人は再度溜め息を吐くとイルを探す為に部屋を後にした。
放っておくと何をしでかすか分からない少年、それがイルである。最もそれはライキとヒートにも言える事であったが。
イルは何処に行ったかというとホテルの外に出ていた。
「つまらない話は大っ嫌いだよー、何か食べに行こうっと。」
そう言いながら店舗を片っ端から観て歩いていった。
あれでもないこれでもないと選り好みの激しいイルの求める店は無く、気がつけばホテルからかなり離れていた。
「んー・・・戻ろうかな。」
その時イルの背後から声が聞こえた。
「そこの君、ちょっと待って!」
イルはゆっくりと振り返った。そこには栗色の髪をした女性が立っていた。傍らにはバシャーモ。
「私はこういう者なんだけれど。」
そう言って女性が出したのは警察手帳。
イルはつまらなそうにそれを流し見ると女性に視線を戻した。
「それで?何の用なの?」
「うーんとね、実は人を捜しているの。」
女性は黒色のベストのポケットから小さな円形の機械を出してそこから画像を一つ宙に展開してみせた。
それはバイツの画像だった。
イルは表情を変える事無く口を開く。
「おねーさん、バイツに何か用?」
これはイルなりの遊びだった。相手の欲しがる情報の断片だけを見せ相手の反応を見て面白がる。
「この子の事知っているのね?もしかして仲間なの?」
「首を縦に振ったらどうする気なのかなー?」
「あなたを捕まえます。そうする様に上から指示を受けているので。」
イルは声を上げて笑い始めた。
「ミコ、こいつは危ない奴なんじゃ・・・」
女性の傍らにいたバシャーモがそう言った。
ミコはその笑い声に狂気を感じた。
無意識に一歩引く。
「捕えるって?いいよ、やってごらん。手は出さないから。」
610
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:03:09 ID:/qBnNDz6
「分かった。バシャーモ、援護は要らないから。」
ミコのハイキックがイルを襲う。
イルは軽々とその蹴りを右腕で防いだ。
「なかなか速いね。」
余裕を見せつけるイル。
ミコは蹴りの連撃を繰り出すも右腕に防がれ、時にはかわされとイルにダメージを与えられずにいた。
しかし、ミコの狙いは蹴撃によるダメージではなかった。
ローキックを繰り出し、イルがそれを避けようと片脚を上げた瞬間ミコは脚を戻しイルに急接近し瞬時に組み伏せた。
「あら・・・?」
特に抵抗もしなかったイルに手錠が掛けられる。
「ふふっ、お姉さんの方が一枚上手だったでしょ。」
ミコが微笑みを浮かべてそう言った時、背後から声が聞こえた。
「オイオイ、とっ捕まってんじゃねえよイル。」
そこに居たのはライキとヒートだった。
「君達もこの子の仲間?」
ミコも立ち上がって二人を見る。
「まあ、そうだけど?どうするつもり?」
「捕まえます。そう言われているので。」
ヒートが後頭部を掻きながら前に出る。
「あんた・・・ポリか何かか?」
「まあそんな所ね・・・さあどうするの?二人で来るの?」
ヒートは溜め息を吐いた。
「ライキ、手ェ出すなよ。俺が出る。」
「はいはい、ご自由に。」
ヒートが構える。少し遅れてミコも構えた。
先に動いたのはミコだった。蹴撃がヒートを襲う。
ヒートはそれを難無く防いだが、受けた部分に妙な違和感を覚えた。
それを考える間も無く次々とヒートに襲い掛かる蹴撃。だが、ヒートも近接戦闘のプロである。イルよりも巧みに攻撃をかわし、防ぐ。
ミコが踵落としをしようと片足を上げた瞬間。ヒートの動きが一瞬止まった。
そして足を振り下ろし踵落としが綺麗に決まる。
「し・・・白・・・」
そう言って鼻血を出しながらヒートは倒れた。
ミコは顔を紅くする。
「み・・・見たのね・・・」
「ミコ・・・もう一人の方なんだけれど・・・」
バシャーモの言葉にハッとするミコ、慌ててライキに向き直る。
ライキはその場にしゃがんでいた。鼻血を出しながら。
「サイハイソックスとパンツの色の組み合わせ・・・いい・・・」
ライキはミコに向けて親指を立ててみせる。
ミコは更に顔を真っ赤にし、ライキに蹴撃を食らわせる。
「凄いじゃないかミコ、三人も捕まえた。」
称賛するバシャーモ。ミコは一度真っ赤な顔でバシャーモの方を向き、それからライキとヒートにも手錠を掛ける。
「全く何なのだ?お主等は。」
ヒートに手錠を掛ける為に屈んでいたミコの目の前に気配も無くシコウが現われた。
611
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:03:49 ID:/qBnNDz6
「あ、シコウだ。」
イルが反応する。
「お主も何者かは知らぬがこやつ等を放した方がいい、後々面倒事になるぞ。」
「あなたもこの子達の仲間?」
「まあ、そうであるが・・・」
「よーし!四人目を捕まえるぞー!」
ミコは意気込んで立ち上がる。
その瞬間、ミコとバシャーモの視界からシコウの姿が消えた。
「拙者を捕らえるつもりならば・・・」
背後から聞こえた声。ミコとバシャーモの背中を冷たいものが走る。
二人は振り返った。だが声のした方向にシコウの姿は無かった。
「この程度の動きが見えなければな。」
再度背後から聞こえる声。
ミコは振り向きざまに回転蹴りを放つ。
行動は正しかったがシコウは人差し指と中指の二本でその一撃を止めた。
「やるじゃない・・・」
「お主・・・」
シコウが何かを言う前にミコが蹴撃を繰り出す。
シコウはミコの蹴りに蹴りで対処する。
「私の蹴りについて来るなんて大したものじゃない!」
「生憎拙者も蹴りが主体でな。」
蹴りの乱撃がミコから放たれるもシコウはそれを正確にかつ迅速に蹴りで防ぐ。
「コラ!そこの君達!喧嘩は止めなさい!」
騒ぎを聞きつけてやって来た数名の警官。
バシャーモを含めシコウとミコの三人を取り囲むが、ミコが警察手帳を取り出して警官達に見せると警官達はシコウだけを取り囲む。
「ふっふっふー・・・形勢逆転!」
「この様な人数が戦力になるとでも?まあ良・・・い・・・」
そう言いかけてシコウはミコのいる方向とは全然違う方向を向く。
「この気配・・・前にも感じたな。」
その隙にバシャーモがミコの耳元で囁く。
「ミコ、悪い知らせだよ・・・ダークナーが現われた。」
ミコはその言葉に頷いた。
「申し訳ありませんがこの子達の事をお願いします!重要参考人なので署の特殊犯罪課の方まで連行を!」
そう言うや否やミコとバシャーモはシコウの向いている方向にすっ飛んで走って行ってしまった。
「ふむ・・・これは・・・?」
シコウを取り囲む数人の警官。シコウにとってはこの程度さほどの障害ではなかった。
街の中心部へと繋がる大通りは混乱を極めていた。
いきなり現れた巨大な黒い怪物が建物を壊し、人々やポケモン達を追い立てていたのだった。
一般的な二階建ての建物程の大きさがある化物の形は、上半身は人の形、下半身は獣の様な四つ足。右手には大剣を持っていた。
勿論ポケモンで立ち向かう者もいたが、攻撃が全く効いていなかった。
612
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:04:28 ID:/qBnNDz6
「ヒャーッハッハッハァ!いいねぇー絶望を聞くってのは。」
その怪物の肩にはドルヴが乗っていた。
「さあ・・・もっと悲鳴を上げろ!惨めに逃げてみせろ!」
その時、ドルヴの視界に入ってきたのは人の流れに逆らい立ち向かおうとする一組の人間とポケモンの姿。
それはミコとバシャーモだった。
「あん?何だ手前等・・・」
ドルヴの視線がバシャーモの左腕のメガバングルに移る。
「ハッ!成程な・・・ダークナー!あの虫共を叩き潰せ!」
「ダークナー!」
大きな咆哮と共にミコとバシャーモに向かって歩き始めたダークナー。
「ミコ、行くよ。」
「うん、頑張ってバシャーモ。」
バシャーモが左腕のメガバングルを高く掲げた。
光がバシャーモを包み込む。そして光が弾け飛び、現れたのはメガシンカしたバシャーモ。
「行くよ!」
バシャーモはダークナーに急接近し、跳び上がる。
そして鋭い跳び蹴りを繰り出す。
ダークナーは大剣でバシャーモの攻撃を防ぐが少しよろける。
「よし!このまま押し切って!バシャーモ!」
ミコがそう言った途端、両脚から異音が聞こえた。
「へ?」
そして、金属が折れる音と共にミコが倒れた。
倒れたミコの両脚からはサイハイソックスを突き破って機械の部品が顔を覗かせていた。
「マジかよ、あの人間、両脚が義足だったのか?」
ドルヴの言った通りミコの両脚は機械式の義足だった。
ミコは何とか立とうとするが義足は両脚とも真っ二つに折れていて使い物にならなかった。
「まさか・・・さっきの蹴り合いで・・・?」
バシャーモもミコの異変を察知し、一旦ミコの近くに行く。
「ミコ!安全な場所に退くよ!」
両脚を失ったミコを担ぎ上げたバシャーモはダークナーから離れる様に跳んだ。
「逃がすんじゃねえぞ!」
二人を追う様にダークナーは突進する。
意外と足が速いダークナー。ミコとバシャーモにすぐに追いつく。
「ダークナー!」
大剣を振りかぶるダークナー。
「マズい!」
そして振り下ろされる大剣。
ミコとバシャーモは目を強く閉じた。
次の瞬間、大剣による一撃が弾き返された。
恐る恐る目を開けるミコとバシャーモ。
目の前に立っていたのはメガシンカした一体のサーナイト。左腕にはメガバングルを填めていた。
「大丈夫ですか!?」
サーナイトは二人に向かって振り向く。
「う・・・うん、大丈夫・・・」
その光景を見てドルヴは不機嫌な表情を浮かべた。
613
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:05:12 ID:/qBnNDz6
「また増えやがった・・・何匹居やがるんだ?イラつくぜ・・・おい!何匹現われようが関係ねえ!潰しちまえ!」
ドルヴはそう言って更に不機嫌な顔を歪ませた。
サーナイトの近くにはミミロップ、クチート、ルカリオ、エルレイドがそれぞれメガシンカした姿で立っていたのだった。
「んのゴミ共が・・・!群れれば勝てると思ってんじゃねーぞ!」
「ダークナー!」
ダークナーは咆哮と共にサーナイト達に向かって突っ込んで来る。
「「サイコキネシス」!」
強力な念波がダークナーを捉える。完全に動きを止めた訳ではなかったが動きを鈍らせる事には成功した。
ミミロップ、クチート、ルカリオ、エルレイドが鈍くなったダークナーに急接近し跳び上がる。
蹴撃、大顎、拳、肘刀。
胸に向かって同時に放たれたそれぞれの一撃はダークナーを大きくよろめかせた。
しかし、勝負が決まる程のダメージではなかった。
「デカいからタフって訳?上等じゃん。」
ミミロップがそう軽口を叩く。
サーナイトによる「サイコキネシス」の拘束が解かれたダークナーは大剣を振り回し始めた。
接近攻撃を試みた四人は咄嗟に距離を取った為攻撃は当たらなかったものの周りの建物が壊れていく。
「バシャーモ!私はいいからあなたもダークナーを倒すのを手伝ってあげて!」
ミコが叫ぶ。
バシャーモは心配そうな視線でミコを見たが、ミコと目が合うと何かを決心した様にダークナーに向き直った。そしてサーナイトの近くに寄る。
「今度はあたいも攻撃に加わるよ。いいかい?」
「お願いします。」
そしてバシャーモは構えた。
「どうしようサナお姉ちゃん、攻撃を受けても平気みたい。」
クチートが大剣を振り回しているダークナーから視線を逸らさずに言った。
「誰か、いい作戦はあるか?」
ルカリオの言葉に反応したのはエルレイドだった。
「もう一度姉さんの「サイコキネシス」で動きを鈍くさせてから攻撃しよう。それしか手は無いよ。それに―――」
エルレイドの視線がバシャーモに向く。
「―――心強い仲間が増えたから大丈夫。」
バシャーモはその言葉にフッと笑ってみせた。
「あたいは全力で行かせてもらうよ。もう一度だ。」
サーナイト達はダークナーに向かって構える。
「もう一回いきます。皆様、準備を。」
サーナイトが「サイコキネシス」を放つ。
再度強力な念波に拘束されるダークナー。
「同じ手が二度通用するかよ!ダークナー!」
「ダークッ・・・ナー!」
「サイコキネシス」の拘束を無理矢理解いたダークナー。
サーナイト達の頭上をその巨体からは想像できない跳躍力で跳び越える。
そして身動きが取れないミコの近くに降り立つ。
「先に人間の方から潰してやるよ・・・!」
ダークナーが大剣を振りかぶる。
「ミコ!」
バシャーモの叫びと共に大剣が振り下ろされた。
614
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:06:00 ID:/qBnNDz6
しかし、その刃はミコに届く前に止まった。
ミコとダークナーの間に一人の少年が立っていた。その少年は包帯が巻かれた右手で大剣を止めていた。
「マスター!」
サーナイトが嬉しさのあまり叫んだ。
大剣による一撃を止めたその少年はバイツだった。
バイツの視線はドルヴに向けられていた。
ドルヴもまたバイツを見ていた。
「あー何?もしかしてトーヴちゃん達が言ってたのってテメェの事?まーこりゃスゲエわ。」
口端を歪めて笑みを浮かべるドルヴ。
「ちょいとこの場で死んでくれねー?俺等の仲間になるってなら話は別だけどよ。」
「悪いが仲間は間に合っている。それにお前達はサーナイト達の敵だ。」
バイツが乱暴に大剣を放す。
ダークナーは大きくバランスを崩す。
「サーナイト達の敵は―――」
バイツが跳ぶ。
「―――俺の敵だ!」
ダークナーの胸に右腕による一撃を叩き込むバイツ。
ダークナーは大通りを十数メートル程吹っ飛び、肩に乗っていたドルヴは振り落とされた。
「んの野郎・・・調子に乗りやがって。」
ドルヴは上手く地面に降り立つ。
「マジで潰すぞ!このクソガキが!」
「ほう?やってみるといい。」
ドルヴの背後から声が聞こえた。
そこにはシコウが立っていた。
更に一歩引いた感じでライキ、ヒート、イルも立っていた。彼等の手首には手錠が掛けられていなかった。
「オイオイ・・・大層なお仲間持ってんじゃねえか・・・」
「どうする?ここの全員とやり合って死ぬか・・・大人しく死ぬか選べ。」
実質一択しかない選択肢をバイツが挙げる。
「まだ死ぬわけにはいかねーのよ、俺。」
そう言って即座に「門」を開けるドルヴ。
「精々雑魚狩りでもしてな。」
中指を立てながら「門」の中に消えていったドルヴ。
それから一瞬間を置いてバイツの右腕による一撃が宙を切っていた。
溜め息を吐くバイツ。それからサーナイト達に近付いた。
「さっき聞いた皆の話によるとあのデカいの浄化しなくちゃいけないんだろ?」
バイツが気絶しているダークナーに視線を向ける。
「そうです。私達の力でなければいけないのです。」
バイツとサーナイトがダークナーに近付き、サーナイトが「サイコキネシス」を放つ。ダークナーの黒い巨体は光の粒になって消えていき、残ったのは気を失った数人の人間だった。
そしてメガシンカ状態が解けるサーナイト達。
「さて・・・と。」
バイツ達の視線はミコに向けられていた。
バイツがミコに近付く。
「おっと、手出しはさせないよ。どうしてもっていうならあたいが相手になる。」
バシャーモが割って入る。
615
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:06:41 ID:/qBnNDz6
「落ち着け。乱暴はしない。」
バイツの言葉を信じたのか素直に道を開けるバシャーモ。
ミコと話をする為に屈むバイツ。
「義足の先は?」
「え?」
「その壊れた義足の先だよ。どこに落とした?」
「あの・・・あっち。」
ミコは先程バシャーモと共にダークナーに立ち向かった地点を指した。
バイツは言わずにミコを背中に背負った。
「ちょ・・・ちょっと・・・!」
「しっかり掴まっててくれ。」
「う・・・うん・・・」
少し顔を紅くするミコ。ここは素直にバイツの厚意に甘える事にし、バイツの首元に回している両腕に少し力を入れた。
「マスターに背負ってもらえて・・・羨ましいです・・・」
サーナイトがそう呟く。
そして、バイツ達は歩き始めた。
それから三日後の朝。
バイツ達は未だ街を出発する事無くホテルに泊まっていた。
一階のティーラウンジでバイツ達はお茶を楽しんでいた。
「ミコさんからこの街に留まっている様に言われて三日か・・・」
「おいバイツ、デカのいう事なんて聞いてんじゃねえよ。さっさと出発しようぜ?」
「ミコさんが刑事だなんて知らなかった。それに今ここで姿をくらませてみろ、警察にも追われる破目になる。」
「あ!いたいた!」
元気な声が聞こえた。
バイツ達が声のする方を向くとそこには小走りに駆け寄ってくるミコとバシャーモの姿があった。
「脚はすっかり調子がいいようで。」
バイツの視線がミコの両脚に移る。
「うん、大丈夫だよ。この前はありがとう。それでね・・・私、皆の旅に同行したいなーって思ったの。」
バイツ達は一瞬自分の耳を疑った。
「勝手なのは分かってるけどダークナーを何とかしなきゃいけない。それにこの前聞いた話だとあなた達の行き先にダークナーが現われるみたいだし。だから一緒に行きたい。」
「でも、刑事としての職務は?」
「大丈夫、許可は取ってあるから。こういう課なの。」
「ならいいよ、一緒に行こう。」
「待ってよバイツ!僕達は―――」
「黙れライキ。別にやましい事なんてないだろう?」
何かを口に出そうとしたが刑事の手前何も言えなかった。
「ヒート、イル、シコウはどうだ?」
三人とも唸るだけで何も言わなかった。
「決まりだな。」
「じゃあ、これからよろしくね。」
ミコとバシャーモを加える事になったバイツ一行。とても賑やかな旅になりそうであった。
616
:
名無しのトレーナー
:2016/08/20(土) 02:07:16 ID:/qBnNDz6
サーナイトの出番が少なかったかな?
誰か何か喋らなきゃ撃つぞゴルァ!(豹変)
617
:
名無しのトレーナー
:2016/11/25(金) 23:00:06 ID:/qBnNDz6
誰も居ないのか・・・(困惑)
一応小説が出来ました。
スカイリムSEが忙しくてサン・ムーンをやっていません。
小説の方にも支障が出ています。
それでも止められないです。
まだMODを入れてすらいないのでこの状況がしばらく続くかと。
あと、デッドライジング4が待機しているので・・・投稿ペースはどうなるんでしょうね。
618
:
名無しのトレーナー
:2016/11/25(金) 23:01:14 ID:/qBnNDz6
「・・・つーワケなんですよ女王様。」
一寸先も見えない程の暗い部屋でドルヴは暗闇に向かって喋っていた。
「ほう・・・面白い報告だなドルヴ。お前はその者らを屠るどころか拳を交える事すらしなかった訳だな。」
暗闇から聞こえてくる声。
「勘弁してくださいよー・・・あんな「力」を持った奴が五人も居たんですよ。ポケモンならまだしもあんな奴等が相手じゃ・・・」
「分かった。下がれドルヴ。」
その命令にドルヴは喜んで従う事にし、胸に片手を添えお辞儀をした。そして、その部屋を後にする。
溜め息の音が部屋の中に響いた。
「どうやらお困りの様じゃな、女王様。」
暗闇の中から老人の声が聞こえた。
「盗み聞きかハーヴァルよ。」
「とんでもない。それに女王様。貴女は儂の存在に気付いていた筈。」
「フッ・・・何処までも食えない奴だ。」
「それでじゃが女王様、今度は儂が出ましょうぞ。若輩者共に年季の違いを見せてやりますわい。」
「では任せても良いか。」
「我が力はその御心のままに。」
ハーヴァルと呼ばれた老人は頭を下げると、声が聞こえた暗闇を背に歩き始めた。
「いやーボコられる寸前で逃げたのは間違いじゃなかったぜ。」
ドルヴは椅子に足を組んで座りながら、トーヴ、ヴァルド、ヴォルツに向かって自分の失態を話していた。
本人は恥じる様子も無く面白半分で「敵」と対峙した時の事を話す。
「貴様は拳を交える事も無く堂々と逃げたわけか・・・」
トーヴが溜め息混じりに言い放つ。
「女王様にも言われたぜ、それ。」
「ですが・・・あなたも歯が立たないとなると次に出るのは・・・」
ヴァルドがそこまで言った時、ヴォルツが声を上げた。
「俺がもう一度出る。タイマンなら俺の方が上だ。」
「あー・・・ヴォルツちゃんは二人を相手にしたんだっけか。」
ドルヴが椅子の背もたれに寄り掛かる。
「小僧共。何を話している。」
「ハーヴァルか・・・」
トーヴが声の主を当てる。
ハーヴァルは四人に近付く。
「女王様はお前等の失態に心を痛めている。そこで儂の出番という訳じゃ。」
「ハッ!えらく意気込んでるじゃねーか爺さんよ。あいつらは今までの敵とは違うぜ?」
ドルヴの言葉に耳を貸さずにハーヴァルは四人を眺めた。
「誰か一緒に来ぬか?戦い方というものを伝授してやろうぞ?」
「気が向いたら行きますよ。」
そうヴァルドが返したので満足そうに四人に背を向けて歩き去るハーヴァル。
「大丈夫なのか爺さん。戦闘能力は俺達の中で一番下なんだが?」
「心配なら貴様も行けばいいだろうヴォルツ。だが、ハーヴァルの造るダークナーは我々のそれをはるかに上回る。もしかしたら・・・」
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