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150名無しさん:2021/11/08(月) 06:04:15
FINAL FANTASY IV #0687 最終章 決戦(10)

「倒したのか……」
セシルと離れた場所でその光景を見上げていたゴルベーザが一言。
この場にいる誰もが思っていたであろう。これで戦いは終わったのか? という疑問。
しばらくの間、誰もが緊張の中で固唾をのんでいた。
「愚かな……」
最初に口を開いたのはフースーヤ。
「月の民として……素晴らしい力を持ちながら、邪悪な心に驚かされおって……」
その言葉はゼムスを憐れんでいるようであった。
フースーヤにとってはゼムスもこの月まで逃げ延びてきた同朋であるのだ。
「ヒャッホー!」
重い空気を打ち消すエッジの声。
それが引き金となり皆、戦いを終えた二人へと駆け寄る。
「おお……そなた達もきたのか……」
セシル達の姿に気づいたフースーヤが声をかける。
先ほどの激戦を経て安心したのか、普段とは違い穏やかな声である。
「もう少し早くついてりゃ、このエッジ様がゼムスを倒してやったのによ!」
「もうっ!」
調子がいいんだとばかりにリディアが呆れ顔でエッジと話している。
セシルの視線は自然ともう一人の人物――ゴルベーザへと注がれる。
(に…い)
喉元まで出かかっているその声
「セシル……」
ためらう間に黒衣の戦士と視線が合う。ゴルベーザはセシルの名を呼ぶ。
「…………」
「セシル」
沈黙を守るセシルに心配したのか、ローザがゆっくりと手を握ってくる。遠目にはカインも無言でこちらを心配
している様子だ。
(いまさら…何を話せというのだ)
孤児であるセシルにとって肉親とは自分を育ててくれたバロンの王である。しかし、王も既にこの世にはいない。
そして自分の本当の父であるクルーヤもだ。
ゴルバーザは今となっては唯一の血を分けた兄弟であるのだ。
(兄さん)
心の中でゴルベーザを兄と呼ぶ。操られていたとはいえゴルベーザは青き星を混乱し沢山の被害を出した。
仲良く手を取り一緒に暮らす事はできないだろう。
(僕は)
自分は月の民であり青き星で育った。では自分はどこへいくのだ――そしてゴルベーザは
「!」
突如の轟音に皆が一斉に上空を見上げる。
「我は……完全暗黒物質……ゼムスの憎しみが増大せしもの……」
上空、暗闇からの曇った声、それは紛れもなく先ほど消滅したゼムスのものであった。
「我が名はゼロムス……」
否――ゼロムスと名乗るその声が終わらぬうちに空間が捻じれる。
禍々しい物体となったものが現れる。それは確かに先ほど倒した魔導士とは大きく姿形を変えていたものであった。
「全てを……憎む……!!」
エコーがかかったその声に前のゼムスほど、感情を伺い知ることはできなかった。
たが無機質な声とともに凄まじい衝撃がセシル達を襲った。
瞬間、周りの確認をする暇もなくセシルの体は弾き飛ばされた。
体が宙を舞う。
「みんなは――フースーヤ、エッジ、リディア、カイン」
目まぐるしく動く視界の中、仲間の名前を呼ぶ。
「ローザ、ゴル……兄さん」
守ると誓った愛する者の名を――そして初めて口に出した兄の名を叫び、セシルの意識は深い闇の中に沈んだ。


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