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投稿スレ
149
:
名無しさん
:2021/11/07(日) 02:35:36
FINAL FANTASY IV #0686 最終章 決戦(9)
地下深くにつれ音が大きくなる。セシルの予想は間違いなかったようだ。
狭い道から開けた場所が見えてくる。最深部へ到着した、そう思って間違いないだろう。
音や振動の他、発光が追加され視覚的にも状況が見えてきた。
「フースーヤ……ゴルベーザ」
セシルは月の民と一瞬だけ戸惑って兄の名を呼んだ。
その姿を見るだけで安堵の気持ちが沸き上がるが、目前で繰り広げられている光景はすぐさまセシルの安心を打ち消す。
「あれが……ゼムス」
自分の考えに確認をとる小さな一声。目前では既に二人が戦闘態勢に突入している。
二人が対峙しているのは薄暗い青のローブを身にまとう一人の男、顔色の悪いその表情からは感情を察する事は出来ないが
戦いから一歩退いた場所であるセシル達の場所からでも、ゼムスと思われる男の悪意を感じ取る事は出来た。
(この悪意……この男がすべての混乱を生んでいた)
「よしそのままやっちまえ!」
重々しくゼムスを見ていたセシルの考えを、威勢のいい声が現実に引き戻す。エッジだ。
見る限りエッジ以外の仲間達の表情は明るい。
「押されているな」
カインが冷静な状況分析を短く言った。
竜騎士の指摘通り、ゴルベーザの攻撃魔法がゼムスを段々と守勢へと押し込んでいる。
それを後押ししているのはフースーヤの補助魔法による援護だ。
遅延――スロウの魔法が ゴルベーザとゼムスとの攻撃の回転差を増やしている。
ホールド、束縛魔法がゼムスを拘束する。すかさずゴルベーザの炎、氷、雷の魔法による連続攻撃が続く。
怯んだゼムス、その隙を縫って間髪入れずにフースーヤが白魔法の最上魔法、ホーリーの詠唱を完成させてゼムスを直撃する。
その体は大きく放り出され、足場を離れ上空の闇へと飛び上がる。
「やったあ」
リディアが喜びの声を上げる。
「もう一息じゃ! パワーをメテオに!」
フースーヤにも手ごたえがあったのだろう、大きな声で声を荒げ呪文の準備に移る。
「いいですとも!」
呼応するゴルベーザもすぐさまメテオの呪文詠唱に入る。
究極魔法メテオ、それを使える二人もの使い手がいるのだ。二人の使い手からメテオを同時に食らえばただではすまない。
この周りには月の民の眠る場所があるのだろう。ゼムスを上空へと放り投げたのは眠る仲間達の安否を気遣ってことだろう。
拘束したのも詠唱の完成までの時間を作るためだ。
(使うがいい……すべての力を……)
「!」
その言葉は幻聴であったのか?
二人のメテオの長い詠唱時間の間、しかし確かにセシルのはその声を聴いた。
どす黒い憎悪の渦巻く声は確かにゼムスのものであった。しかし誰も気に留めるものはいない。
メテオが完成する。二人によって唱えられたWメテオは確実にゼムスの体に直撃していく。
(肉体は滅びれど……魂は不滅)
究極魔法の轟音と共に聞こえてきたそれは間違いなくゼムスの声であった。
その悪意の声を聴いたのは皆にも届いたのか?
疑問は氷塊せぬままに決戦の場所へ再び静かな轟音が戻ってきた。
さきほどまでゼムスがいた空中も、一旦爆風が止まればただ静かな光景が広がっているだけであった。
150
:
名無しさん
:2021/11/08(月) 06:04:15
FINAL FANTASY IV #0687 最終章 決戦(10)
「倒したのか……」
セシルと離れた場所でその光景を見上げていたゴルベーザが一言。
この場にいる誰もが思っていたであろう。これで戦いは終わったのか? という疑問。
しばらくの間、誰もが緊張の中で固唾をのんでいた。
「愚かな……」
最初に口を開いたのはフースーヤ。
「月の民として……素晴らしい力を持ちながら、邪悪な心に驚かされおって……」
その言葉はゼムスを憐れんでいるようであった。
フースーヤにとってはゼムスもこの月まで逃げ延びてきた同朋であるのだ。
「ヒャッホー!」
重い空気を打ち消すエッジの声。
それが引き金となり皆、戦いを終えた二人へと駆け寄る。
「おお……そなた達もきたのか……」
セシル達の姿に気づいたフースーヤが声をかける。
先ほどの激戦を経て安心したのか、普段とは違い穏やかな声である。
「もう少し早くついてりゃ、このエッジ様がゼムスを倒してやったのによ!」
「もうっ!」
調子がいいんだとばかりにリディアが呆れ顔でエッジと話している。
セシルの視線は自然ともう一人の人物――ゴルベーザへと注がれる。
(に…い)
喉元まで出かかっているその声
「セシル……」
ためらう間に黒衣の戦士と視線が合う。ゴルベーザはセシルの名を呼ぶ。
「…………」
「セシル」
沈黙を守るセシルに心配したのか、ローザがゆっくりと手を握ってくる。遠目にはカインも無言でこちらを心配
している様子だ。
(いまさら…何を話せというのだ)
孤児であるセシルにとって肉親とは自分を育ててくれたバロンの王である。しかし、王も既にこの世にはいない。
そして自分の本当の父であるクルーヤもだ。
ゴルバーザは今となっては唯一の血を分けた兄弟であるのだ。
(兄さん)
心の中でゴルベーザを兄と呼ぶ。操られていたとはいえゴルベーザは青き星を混乱し沢山の被害を出した。
仲良く手を取り一緒に暮らす事はできないだろう。
(僕は)
自分は月の民であり青き星で育った。では自分はどこへいくのだ――そしてゴルベーザは
「!」
突如の轟音に皆が一斉に上空を見上げる。
「我は……完全暗黒物質……ゼムスの憎しみが増大せしもの……」
上空、暗闇からの曇った声、それは紛れもなく先ほど消滅したゼムスのものであった。
「我が名はゼロムス……」
否――ゼロムスと名乗るその声が終わらぬうちに空間が捻じれる。
禍々しい物体となったものが現れる。それは確かに先ほど倒した魔導士とは大きく姿形を変えていたものであった。
「全てを……憎む……!!」
エコーがかかったその声に前のゼムスほど、感情を伺い知ることはできなかった。
たが無機質な声とともに凄まじい衝撃がセシル達を襲った。
瞬間、周りの確認をする暇もなくセシルの体は弾き飛ばされた。
体が宙を舞う。
「みんなは――フースーヤ、エッジ、リディア、カイン」
目まぐるしく動く視界の中、仲間の名前を呼ぶ。
「ローザ、ゴル……兄さん」
守ると誓った愛する者の名を――そして初めて口に出した兄の名を叫び、セシルの意識は深い闇の中に沈んだ。
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