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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

47雨月星座:2015/08/11(火) 01:09:15

 「このムツはメロだね。このホテルも完全無欠とはいかなかったと見えるね」
 知った口を聞いているが、つい一年前まで幽閉されていた身だ。味なんて知ったこっちゃない。
 幼子の頃から習い親しんできたバリツも錆びついて久しい。ようやく体が暖まって来たが、狂人の真似事をしてようやく戦闘者に届く。殺人者である鮫氷しゃちや矢達メアには掠ることもなかったけれど。

 ふふっ、何をバカげたことを考えているのだろうね、僕は。
 そもそも怪盗の真似事をしている僕に探偵を名乗る資格などないじゃないか。

 「委員長……、これから何が起こるんでしょうか?」
 倉谷風、可愛い子だ。これは僕に男としての情欲が残っていることを意味するわけではなく。
 けれども、求められれば応えたいと思っている。……、体を重ね合うなどと下賤な妄想に浸るな、下郎! 
 おっと、三毛猫ちゃんが男の子になったらそんな風に口を聞いてあげないなんてことが出来たのですが。僕も少々桃色遊戯に興味を持っていたようです、失敬失敬。
 
 倉谷風、彼女はその時が来れば僕を殺せる魔人です。
 少なくとも殺そうと挑みかかることが出来る人種なのだからこれを称揚しないでなんとしますか?
 「自分が無と消えることを生きているうちに知るのなら、それはきっと己が掛け替えのない存在であるとを自身が揺るぎなく信じているのだ」
 …………。
 「どういう意味ですか?」

 後輩の疑問に対し、愛いヤツだ、と、今はもう奪われた、男としての僕、その残滓が囁く。
 あの日、父様に――を奪われた日から僕は一生男を愛することは無いのだろうと知った。あれからずっと、女の影を追っていて――。毎日、姿見で日を置くごとに女に変わりゆく輪郭を見ていた。
 直線より曲線を、丸みに抵抗するように、あまり食事をとらなくなった。

 毎日置き捨てた昨日の死体は家人に持ち去られ続け、行方は知らない。あの日の夢を見続け、眠ることをやめた。星ばかり見ていた。金星が人の姿を取るのを見てしまった。
 それからは星を見つめ続けている。誰でも夜を徹して見つめていれば僕の者になる。
 そうしていると、目を塞がれた。その頃には女の身に自惚れるようになっていたから当然かもしれない。

 探偵の家に縛られ続けたけれど、探偵であることに特別な思いを感じたことは一度もない。
 痛みを与えられたことも純潔前の何かを奪われたことも、探偵とは何ら関係ないと思っているから。
 探偵に救われ、感謝はしている。あの方に出会えたことにも。

 与えられた自由を自分から投げ捨てる悦楽を知った。それを含めての自由なのだと知った!
 だから、自分の手で一つの可能性を閉ざした彼女のことを僕は好ましく思う。あなたの見る世界はあなただけの物、他の誰かから見られたあなたがいらないと思ったその選択を羨ましく思ったかもしれない。
 
 嗚呼、答えずもせずに、他の女を見る女を許しておくれ風よ。
 そうして、思い悩む君の顔も酷く魅力的だから。少しイジワルをしたくなる。

 「迦南さんのことも、僕は愛しているよ」
 少し、嫌な顔をされても構わない。
 色んな物をつまみ食いするその姿勢は嫌いじゃない。二人ともそう長い間じゃないけど、見せてもらったよ。特にきみの瞳の色が好きだったよ。星の色。

 天狼星よりなお青い星――地球は青い。百年前では到底知り得ることのできなかった宇宙から見た明瞭な地球のカラー写真、それを見て僕は泣いたよ。
 だけど、曇りのない大気などありはしなかった。泣き顔を見せないきみが少し、憎かったよ。




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