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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

30素極端役 蘭(三国屋 碧沙):2015/08/07(金) 20:50:39
【素極端役の一心同体(前)】

ふうわり、ふわり。
空中のような、水中のような、不思議などこかを漂う私。
ああ、これは夢だな。どこか冷めた頭でそう考える私。
その私とは別に、この心地よい空気にとけ切ってしまいそうな、そんな感覚を覚える私もそこにいる。
だけど、溶けてはいかない。
熱くて冷たい、暑くて涼しい。矛盾した双極が対立しあわず、溶け合うでもなく、ただ双極としてそこにある。
それは不思議な気分だけど、私にとっては慣れ親しんだ気分。
16年前、彼女とともに歩むことになってから、ずっと。

* * *

ハリネズミのジレンマ。原文ではヤマアラシのジレンマなのだそうだ。
それがハリネズミで有名になったのは、とあるアニメのタイトルからだとか。
近づきたいけれど、近づくと傷つけて、傷ついてしまう。そんな感情がどうのこうの。
おえらい先生方のそんなお話とは大して関係も深くなく、私の魔人能力は唐突に目覚めた。
ジレンマの名を冠したその力は、文字通り近づくものすべてを傷つけた。
いや、傷つけたなんて生ぬるいものじゃない。薙ぎ払った、が正解だと思う。
並みの人間ならそのまま即死。魔人でも油断すれば大けがを負う。
そんな衝撃波……ソニックブームを、私の一挙手一投足とともに生み出す。
それが私の魔人能力、『ハリネズミのジレンマ』だった。

どうしてそんな能力に目覚めたのかは、よく覚えていない。
中学生特有の全能感とか、排他的感情とか、その辺りがごちゃ混ぜになっていたような気がする。
だけど、目覚めたときの気持ちははっきりと覚えている。
すべてを傷つけられるという、歓喜。
すべてを傷つけてしまうという、絶望。
背反する感情を、刻んで潰してごちゃ混ぜにしたような。
その感情は、まさしくジレンマだった。

私の私生活は荒れた。
当然と言えば当然だ。おはようからお休みまで他人と物を破壊して回る、そんな女がまともな社会生活を営めるはずがない。
中学校での私は恐怖の傷害常習犯として扱われ、罰がない代わりにまともな権利も与えられなかった。
真面目に調べたことはないけれど、魔人と言われる連中のなかでも飛び切りのアナーキストだった自覚はある。

そんな私が、魔人の坩堝である私立希望崎学園に放り込まれたのは、まあ当然と言えば当然の帰結だ。
だから、彼女……三十(みと)と出会えた事は、一種の必然だったのかもしれない。
もちろん、ただの偶然であった可能性も同等程度にあるけれど。
運命というやつの数奇な結びつきであった可能性も否定はしないけれど。
私は彼女との出会いにそういう華美な装飾をすることを望まない。
ただ純粋な出会いであった。それは、それだけの事だ。

* * *

起きて、蘭、起きて。
んー、あと五分。いや十分。むしろ十分に。

寝ぼけたとき特有の妙な会話が脳内で始まる。
いつもは彼女と再び出会えるこの時間を大事にする私だけれど、今回はさすがに少々勝手が違った。

誰かが来てるよ。きっと魔人。
おっと、それはいけないね。

跳び起きる。先ほどまで跡形もなかった左脚、ぐちゃぐちゃだった右足、ついでに内臓も、今はしっかりと元に戻っている。
彼女との微睡の時間からの贈り物だ。感謝して、今度は大事に使おう。
両手をぐーぱー。両足をとんとん。軽くステップを踏んで調子を確かめる。
調子は良好。ちょっと血まみれ(さっきまでさんざん喀血してた血だ)なのを除けば問題なし。
私は笑みを浮かべ、前方からくる誰かを待ち受ける。
やがて現れた、虎の顔のマスクをかぶった少女。
私はにっこりと笑って、言った。

「いらっしゃいませ、メロウズへようこそ!」

* * *

私たちの戦いの後半戦の始まりである。
私たちが出会ってから、何度目かの大きな戦い。
今度も生き残る。それだけの思いを胸に。

私たちの物語は、もう少しだけ後に取っておくことにしよう。

(素極端役の一心同体(前)・了)


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