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ダンゲロス流血少女:01事前応援スレ

1流血少女GK:2015/07/25(土) 00:33:26
事前応援スレです。

41雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:04
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】

無限の闇を湛え、怖いぐらいに深い藍色をした水平線の上に、無数の星が瞬く。夜空の空気は澄み渡り、都会では見えないような暗い星まで明瞭に見える。だが、星々の配置は我々が見慣れた空とは趣を異にしている。星座の所々が欠けているのだ。だが、その話は今の彼女には関係ないので割愛しよう。

(気持ちのいい風……)夜の砂浜に独り佇む少女は、冷たい夜の海風が乱した前髪をかき上げ、整えた。その髪は夜の闇の中にあってなお、星の光を映して桜色の光を放っているようだった。その名も一十(にのまえ・くろす)。一族中の魔人率が99%を超える戦闘破壊家族、一家(にのまえけ)の一員。

妃芽薗学園高等部三年に在籍する十は、海の幸が贅沢に使われた夕食を食べた後、宿泊先の『メロウズホテル』を抜け出して浜辺にやって来た。十は、ことさらに孤独を好むような人物ではない。だが、彼女のことを慕ってやって来る友人たち(友人たちです!)を遠ざけて考え事をしたい時もある。

十は、何故だか同性に好かれやすい。その理由は百合粒子の存在を仮定すれば説明できることだが、今の人類の科学力は百合粒子の確実な観測に成功してはいない。しかし、十は百合ではない。百合ではないのだ。大事なことなので何度も言うが、百合ではないのである。

まあ、十が百合かどうかについても今日の話にとってはあまり本質的でないのでこれぐらいにして、彼女の今の悩みは先日受け取った手紙のことである。差出人不明の手紙。すわ恋文か。残念、そうではなかった。手紙の内容は、不可解で不吉なものだった。それはまるで……

過去の(普通の意味で過去と言っていいものか疑問だが、ともかく過去の)辛い出来事を思い起こしそうになった十だが、夜の砂浜を踏み締めながら近付いてくる足音を耳にして思索を中断した。(あの子は確か……)大きな眼鏡。普段はくるくると跳ねている髪の毛は、風呂上がりのため幾分か大人しい。

「こんばんは、生徒会の一十さん。番長グループの矢達メアです」今は雨竜院愛雨(うりゅういん・めう)と名乗ることの多いウルメだが、今宵は敢えて昔使っていた名前を名乗った。「生徒会って、私はそんなに生徒会に関わっているわけじゃ……」十は、そう言いかけたところで気付いた。

「メアさん、もしかしてあなたも『あの』ハルマゲドンを知ってるの?」「やっぱり!」ウルメは瞳をキラキラと輝かせた。「十さんも『転校生』なんですね!」そう。彼女達は魔人を超えた魔人でありまさに魔人そのものの『転校生』なのである。わかりやすく言えばエクス魔人だ(それは違う)。

『転校生』と言ってもその実態は様々である。多くの場合、通常の魔人よりも遥かに強大な力を持っているが、そうでない場合もある。一十と雨竜院愛雨は、今の能力ならば普通の魔人と大差なく、むしろやや弱い方かもしれない。だが、彼女達は紛れもなく『転校生』なのである。

彼女たちは、久我原史香がリブートをかける前、『一周目』の記憶を持っている。その意味では正しく異世界からの『転校生』である。「敵陣営だったから全然お話できませんでしたが、私、十さんのことを素敵だなって思ってたんですよ」百合粒子に当てられたのか、ウルメは頬を染めながらそう言った。

「貴女は、あの頃と比べるとずいぶん変わったように見えます」十は、ウルメのことをそう評した。『一周目』の矢達メアは、厭世的でいつも暗い表情をしていた。「今の方が、ずっと素敵」十は華やかに笑った。「えへへ、ありがとうございます」ウルメは嬉しくて、瞳を潤ませた。波の音が静かに響く。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#1 おわり

42雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:23
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#2

暗く静かな夜の砂浜に、穏やかな波が寄せては返し、返しては寄せる。膝を崩して座っている十の隣に、ウルメも並んで腰をおろした。近い。距離がやたらと近い。十は軽く危機感を覚えた。「私、向こうでは死んじゃったんですよ。知ってますよね」「ええ」「世界が、こんなに綺麗なことも知らずに、ね」

ウルメは水平線と、煌めく星を見て瞳に涙を滲ませた。十も、星を見た。今夜の星空はひときわ綺麗だ。十は、星座の中の欠けた星に、『あの』ハルマゲドンに散った妃芽薗の愛すべき仲間たちのことを想った。十の心に隙ができたのを、ウルメは見逃さなかった。

ウルメは素早く十に組み付いて唇を奪う。そしてそのまま砂の上に押し倒す。十の唇に伝わる柔らかな感触。眼鏡の奥のウルメの瞳は閉じられ、真意は掴めない。十の視線の先には満天の星空。ウルメの口付けは、不馴れで拙いものだった。(ちょ……積極的すぎ!)十の反撃が始まる!

相手は手練れではない。コンマ5秒でウルメの技量を測りきった十は、余裕を持ってウルメの唇を楽しんだ。「ん……」次第にウルメの吐息に甘い響きが混じりだす。ウルメが眼を細く開くと、満天の星空。十と目が合ってしまい慌てて眼を閉じる。いつの間にか体勢が入れ替わっている!

「ん……、う……」最早、ウルメは十の為すがままだった。十の唇が動く度、ウルメの躯がびくりと固くなる。それが女性同士のものであるならば……十は宇宙一キスが巧い! 念のため。一十は百合ではないので宜しくお願いします。十はウルメの控え目な胸に手を伸ばした。お願いしますよ!

(どういうつもりか知らないけど……貴女の心、見せてもらうよ!)ウルメの胸に当てられた十の手が、何かを掴んだ。百合粒子が収束して実体化してゆく。伝説のアーサー王がそうしたように、十はウルメの胸からひと振りの剣を引き抜いた。その剣は真っ直ぐで瑞々しく、どこか危うさを秘めていた。

十は輝く剣を手にして身を起こした。「なるほど……私に特別な想いがあるってわけじゃなくて好奇心なんですね」ウルメは超絶のキスから解放され、肩で息をしながら答えた。「へへ……宇宙一スゴいって聞いたから試してみたくて……」ウルメは、武傘を支えにして立ち上がった。「では、戦いましょう」


「メアさん……? 私たちに戦う理由なんて……」「あります」ウルメは懐から封筒を取り出した。「『転校生』の十さんの所にも、同じものが届いているはずです」それは、ホリランへの招待状。なさけむようのシングル・エリミネーション。ウルメは既に戦う覚悟を決めてここに来ている。

「正気なの? この招待状からは『あの』ハルマゲドンと同じ臭いがする! 貴女、自分がどんな目に遭ったのか忘れたの?」「覚えてる」ウルメの瞳が紫色に燃えた。「今度は、死なない。覚えてる。戦いを拒み、脱出を目指した“探索組”が、どんな最期を迎えたのかも。きっと今回も、逃げ場はない」

「だったら……」ウルメは瞳を輝かせて笑った。「楽しまなくちゃね! さあ楽しもう、『ペトータルレイン』!」ウルメが武傘の名を呼ぶと、傘先端の石突き部カバーが外れて鋭利な突剣が姿を現した。「やるしか……ないの……?」十はウルメから引き抜いた輝く心剣を構えた。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#2 おわり

43雨竜院愛雨:2015/07/29(水) 23:04:35
【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】#3

暗い夜の浜辺で、ウルメと十の戦闘が始まった。月はなく、星が二人を静かに見守っている。ウルメの武器は、武傘『ペトータルレイン』と、エアガン『マカロフPM』。マカロフの銃口からは、仄かに紫の光。ウルメの能力による、ネガ雨乞いエナジーの光だ。十の武器は、ウルメから取り出した輝く心剣。

両手に武器を持ち自然体で構えるウルメだが、その構えはやや覚束ない。先程のキスがまだ足に来ているのだ。「メアさん、やめませんか?」十は最後通告。「デストロイゼムオール!」ウルメは笑顔と共に、“よろしくお願いします”という意味の英語で応えた。

最早戦いは避けられない。それならば、ウルメの脚が回復する前に速攻で決める。十は砂を蹴って一気に距離を詰めた。心剣士の剣気によって周囲の百合粒子が結晶化し、百合の花弁の如くに宙を舞い踊る。光の剣の軌跡が縦横に二度、ウルメを刻んだ。必殺の百合十字剣『リーリエ・クロイツ』!

ミリタリー調迷彩柄のウルメの服が十文字に切り裂かれ、鮮血が滲む。手痛い損傷だ。だが、ウルメは笑った。戦いが楽しいから。「ぐっ……」十は苦しげな声を出してよろめいた。脇腹から砂の上に血がぼたぼたと落ちる。ウルメの武傘もまた、十を捉えていたのだ。

必殺『トライ・ペゾヘドロン』。傘術、サバゲー殺法、相撲の多彩な技から適切なものを選択することであらゆる状況に対応できるのがウルメの強みだ。『リーリエ・クロイツ』に対して完璧なタイミングで放った武傘の突きにより、十の傷は深い。だが、なぜウルメは初見の技に対応できたのだろう。

十の修めたドイツ流剣術は、失われた武術だ。だが、その技法の一部は伝承され……とある組織の暗殺術にも受け継がれていた。ウルメは、ドイツ流剣術と同様の歩法を身に付けた元暗殺者と何度も手合わせをしたことがあった。元暗殺者の名はクラウディア・ニーゼルレーゲン……あるいは、雨竜院霧雨。

互いに傷を負った両者が振り向く。傷の深さからか、十の動きが一瞬遅れた。ウルメは一瞬で間合いを詰める。密着距離。ウルメと十の顔が近い。右手には武傘。左手には拳銃。再び『トライ・ペゾヘドロン』。武傘で突くわけでもなく。拳銃を撃つわけでもなく。ウルメは両腕で、十を抱き締めた。

気中の百合濃度が高まり、飽和した百合粒子が結晶化して白い花弁となって二人の周囲を舞う。ウルメは十を強く抱き締め……そのまま押し倒した。暗黒相撲奥義『寄り倒し』だ! そして、仰向けに倒された十の豊かな胸の上に、ウルメは素早く馬乗りになった。十の額に、マカロフ拳銃を突きつける。

「フリーズ。干物にされたくなければ、降参してください」銃を額に当てながら、ウルメは宣言する。「うん。まいった」十は素直に投降した。かくして、『転校生』同士による戦いの宴『ホリラン』の緒戦はウルメの勝利で終わった。

雨竜院愛雨の身は、明日には灰になる定めかもしれない。一十の躯は、明日には塵と散るかもしれない。呪われしハルマゲドンの開戦が迫っている。だが今は。だからこそ。精一杯、この戦いを楽しもう。ウルメはそう考えている。互いの健闘を称え、二人はもう一度、軽い口付けを交わした。

【レイニィ・ドラゴン・トゥ・アッシュ、ダス・エルステ・トゥ・ダスト】おわり


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