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ホーリーランドクラブ SS・イラストスレッド

517水星:2014/09/29(月) 21:25:41
この選択をするはずだと、あの悪魔のような女は分かっていたのだろう。だから、家族を引き合いに出したのだろう。悔しいが、あの女の判断は正しい。現に私は水星さんを殺そうとこの場に立っているのだから。

私は悲壮な覚悟を腕に込めて、扉を開けた。

「あ、おはよう千冬ちゃん」
「おはようございます。一条さん」
「……おはようございます」
まさか私が水星さんを殺そうとしているなんて、思いもよらないのだろう。柊先輩と水星さんは私を暖かく迎えてくれた。
「あれ、千冬ちゃん寝不足かな? 隈ができてるよ」
「あはは、昨日ちょっと夜更かしをしてしまいまして……」
本当は、怖くて眠れなかったのだ。この手で人を殺すことになるのがあまりに怖くて。
「もー。夜更かしはお肌の天敵だよ? 千冬ちゃん可愛いんだからそこらへん気をつけなよー」
そう言って、柊先輩は私の頬をむにむにと触ってくる。先輩も、水星さんも、私を受け入れてくれてる。そう実感するだけに今からやろうとしていることが恐ろしくて堪らない。私は今からこの平和な日常を壊してしまうのだ。
「水星さん、柊先輩、差し入れのりんごジュースです」
声が震えてしまうのをなんとか抑えながら、鞄から2つペットボトルを取り出す。
「わぁ、これ自家製?」
「はい。えと、親戚がりんご農家やってて大量に送られてくるんで、それをミキサーにかけて作りました」
「おー、ありがとうございます。これを糧に今日の試合頑張りますね」
「はい! 頑張ってください!」
我ながらよくもこんな白々しい台詞が吐けるな、と思う。水星さんに渡したペットボトルの中には、例の毒が入っている。
「早速飲んでみてもいいですか?」
「あ、はい。勿論、いいですよ!」
今飲んでもらえれば、丁度お昼すぎに毒が回ってくる。試合中に死ぬ形になるので、罪を試合の対戦相手になすりつけることが出来る。
水星さんはペットボトルに口をつけ、ごくりと飲んだ。

――あぁ、これで水星さんの死が確定してしまった。

即効性はないのだから、特に異変は生じないはずだが、なんとなく気になってしまって水星さんの方を見た。
「……ふむ」
水星さんは一口飲んでから、少し考えるように顎に手を当てていた。
「? ど、どうしましたか水星さん。美味しくなかったです?」
もしや、気づかれてしまったのだろうか。そう思って、動揺が言葉に表れてしまった。
「……なるほど。なるほど。いえ、美味しかったですよ。ありがとうございます」
何かを納得したように、二度頷いてからこちらを向いてお礼を言った。その不審な行動に少し疑問を持ったが、それについて考える暇もなく後ろから柊先輩が抱きついてきた。
「わっ!」
「うん、美味しかったよ! ありがとうね千冬ちゃん」
頭をわしわしと撫でられる。何も良いことなどしてないのに褒められて、罪悪感が湧きでた。いますぐこの場で泣きながら謝りたい衝動に駆られる。でも、それは許されない。誰かに話したら家族が殺されてしまう。
そんな複雑な思いを懐く表情を単に柊先輩の抱きつきに困ってると解釈したのか、水星さんが言う。
「こらこら、一条さんが困ってるじゃないですか先輩。そろそろ作戦会議の方始めましょうよ」
「はいはーい。千冬ちゃんも何か意見があったらどんどん言ってね」
「はいっ!」
先輩が椅子を引いてくれたので、私はそこに座る。

そして、作戦会議が始まった。


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