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弱そうな奴(奴ら)に嬲られるシチュ Part.3

60名無しさん:2019/10/10(木) 20:22:04 ID:???
 尚華は眉間を歪ませ歯を食いしばり、額から脂汗を滴らせ、焦燥と屈辱のため腋からは冷汗が吹き出してスポーツブラにシミを作り、激しく呼吸が乱れた。
 しかし、それは少女も同じはず。実際、今のところ出し抜かれる気配はない。
 (もう少しよ…! 体型と足の鍛え方からして、あの子の方が先に力尽きるはず……!)
 そう自分に言い聞かせ、相手の脚の動きだけを注視した。そしてついに、少女は脚を引いて後方へ飛び退いた。追い打ちをかけるも疲労が蓄積し過ぎた右脚では正確な蹴りにならず、またしても空振りに終わった。
 チャンスを逃し続けている悔しさで精神が揺さぶられ、「くっ……!」と噛み締めた歯の奥から苦々しい声が漏れた。
 尚華は苛立った目で少女を睨み付ける。そしてその姿に度肝を抜かれ、立ち尽した。
 少女は依然として涼しい顔をして微笑み、腕を組んでいたのだ。汗一つかかず、あの劣等感を刺激する傲慢な笑顔を此方に向けている。尚華はその、哀れむような視線に癇癪を起こしそうになる。
 (ウソでしょ…? 疲れてないの? あの細い脚で私の動きについてきて、それでも余裕だとでもいうの?)
 信じられなかった。限界とまでは言わないが、機動性が低下するほどには苦しさを感じていたのに、相手はまだまだ続けられたかのような余裕をありありと残している。
 しかし身を引いたのは相手の方だ。辛さを隠すのが巧いだけなのかもしれない。それに攻撃をしかけてこない。それは相手も疲弊しているからだろう。
 そんな楽観的憶測を巡らせても、少女への恐怖は拭えなかった。先手必勝を信じた上の渾身の膝蹴りを回避された時点で、尚華のプライドにはヒビが入っていたのだから。彼女は呼吸を整えてから、辛うじて強がりを言う。
「ふぅ……なっ、なかなか、出来るみたいじゃない……」
 言ってから虚しさと無様さで気が狂いそうになった。無駄口の多さは追い詰められている証拠。そう経験上知っていたからだ。が、酷使によって痛んだ脚もだいぶ回復してきた。
「だいぶ息が上がってるわね、オバサン。もう引退する歳なんじゃないの?」
 最も恐れていた台詞を投げ付けられるが、今はそれどころではない。もうなりふり構っていられない。方法に拘っていたら殺される。悔しいが、予想を遥かに上回る強敵だと認めざるを得ない。
「ふっ……体力だけはあるみたいじゃない……」
 生唾を悟られないようにゆっくり嚥下する。
 尚華は毎日過酷なトレーニングを繰り返しているが、体力の衰えを感じたことは一度としてなかった。それどころか、ジムにおける体力測定の成績は年々向上しているのだ。
 つまりそれは、この娘と自分の間に年齢や体格の区別なしに、絶対的な体力と技術の差があるということだった。


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