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1
:
俺は名無しだからな
:2007/07/08(日) 15:17:49 ID:akUcPEBI
昔、無かったっけ、こういうスレ。
まだ、書いてくれる人が居るか解らないけど、作ってみます。
とりあえず、自分で昔書いていたのを貼り付け。
他にも書き溜めていてくれる人とかが居たら、ここで公開とかしてくれると嬉しいかな。
2
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:19:06 ID:akUcPEBI
生き続ける事が、変わらない事が、彼女にとっての贖罪だったのかもしれない。
いつか懐かしい人にまた、逢えるかもしれないと…。
首都の門前に1人の女が立つ、長い銀髪に長い耳、着古し、くたびれたローブ、すらりと伸びた優美な肢体に、年老いた光を宿す双眸。
「随分変わってしまったわね」
無関心にそう呟くと、門をくぐる。
冒険者や商売人でごったがえす町並み、だが私にはここは、色も音もない世界。
ただ広がる原っぱ。
「壮健でいるといいんだけど」
留まり、うつろぐ世界とともに生きる事を選んだ戦友。
分かれ道からもう随分来た、そして、それぞれが歩んだ道は、再び交わるのか。
「随分とまぁ、、」
門を見上げる、さっき城門はくぐった様な気がしたのだが…。
門番に案内されて広大な庭を抜け、長い回廊を通ると、存外に質素で、小さな屋敷。
扉が開く、そこにはもう彼が立っていた。
「お待ちしていました」
そこには穏やかに微笑む壮年の男。
精悍な顔立ちに刻まれた年月、そして、かつての面影を宿し、彼はそこに居た。
驚いた事に、その身なりから彼が“Lord”の称号を手にしてる事が解る。
「うまくやっているようね、久し振り」
やや表情を和らげて話しかける。
「器なりに身を持ち崩しただけです、名前が立派なだけのお供え者ですよ」
「それで、今更私を呼び寄せたのは、何故?」
「まぁ、ここではなんですから」
彼は屋敷の奥に私を案内する、ゆっくりと歩くその足取りに、男の成長の軌跡を重ねる。
もう、勝てないかな…。
無鉄砲で後先考えない、がむしゃらに突っ込むだけが売りの少年剣士は、もうそこには居ない。
「しかし、ジュノーにいらっしゃるとは思いませんでしたよ。あの後、一体どのような経緯で?」
「話せば長くなりそうね」
「どうせ夜は長い」
嘗て、グラストヘイムと呼ばれる城塞都市が、ゲフェニア王国の王都であった頃・・・。
ゲフェニアは魔導王国としての隆盛を極め、大陸の中心であった。
人ならぬモノを召還し、そして人を造り出すにまで至ったその技術は、しかし世の摂理からは外れ、思えばそれがあの日を招いたのかもしれない。
そして、その日は唐突に訪れた。
一体何が起こったのか、グラストヘイムに溢れだした魔物は、瞬く間に王都を過去のものにした。
召還魔法の失敗、あるいは成功か、他国からの侵略、様々な憶測は後になされたが、あの時、あの場所にはそのような想像はなく、ただ疲労と、焦燥と、そして絶望が横たわるのみ。
生き残った決して多くはない王国軍の兵と国民は、当時開発中だった魔法塔に逃れ、明日の知れない生活を送っていた。
幾度となく繰り返された王都奪還の試みは悉く徒労に終わり、最早軍としての体裁さえ保てなくなったゲフェニアは、教育期間を繰り上げて任官した者のみで構成された急造師団さえ王都奪還に投入しようかという段に至り、いよいよ王国の黄昏は近づく。
3
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:20:16 ID:akUcPEBI
「そのような命令には承服できません、何故今更、将来ある者達を死地に追い遣る必要があるのですか?」
狭く、汚い一室、数人の男女、その中に女の声が響く。
この一室が嘗ては大陸の命運さえ左右させたゲフェニア王国の大本営だと、一体誰が理解できるだろうか。
「君にはこの命令を拒否する権利は、ある、だが、解っているな?」
この痩せぎすた男は、代わりが居ると言いたいのだろう。だが、どこに居ると言うのか、もはや人など居ない。
自分の眉がつり上がるのを感じる、感情の抑制がきかなくなってきた。この期に及んで何を今更っ!
誰もが理解しているのに、誰も認めようとしない決定的で致命的な一言が自分の口から零れ落ちようとした刹那、上座にあたる玉座と呼ぶには余りに粗末な椅子に座していた女性が、口を開いた。
「ゲフェニアの命運は尽きた」
誰もが自らの耳を疑った、そして、自分たちが最後まで縋ってきたモノが崩れ落ちる瞬間をみた。
この状況あって、その品格と威厳を微塵も失っていない、頭上に輝く“双頭の鷲”を模した王冠はあくまで金色に輝く。
陛下と呼ばれている女性。
私は、虚を衝くように言った。
「陛下、なれば彼らを、彼女らを解き放ち賜れ」
「ならぬ」
あくまで穏やかな、そして決定的で、絶望的な一言。
「何故・・・」
私は、彼女を直視して言う事ができなかった。
「ものごとには、在り方と言うものがある、解るか?ゲフェニアの母よ」
ゆっくりと紡がれる言葉に、誰もが聞き入る。
「そして、あるべき終わり方も、ある」
言わないでください、お願いです、どうか、どうかあの子たちを、お救いください。
「つはものには、つはものの有終を」
その日、その瞬間から、私の中の時間は、時を刻むことをやめた。
「そう言うことだ、解ってくれるな?ゲフェニアの母」
嬉々とし、狂気じみた表情で痩せぎすた男が言う。
私を、その名で、呼ぶな!
もはや遠慮は無用だった。
4
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:21:39 ID:akUcPEBI
「陛下、御前での御無礼どうか御容赦いただきたい」
そう断ると同時に、騎士として培ってきた渾身の力と、あらん限りの怒りを込めた拳が、男の頬に突き刺さる。
気持ち良いくらい派手に吹き飛んだ男は、情けなく懇願するような表情で陛下の顔色を窺う。
「へ、へいふぁ・・・」
「妾には、何故そなたのような男が生き残り、この場に存在するのかが理解できない」
冷然とあしらわれた男が絶望する姿を見るまでもなく、私は一礼し、大本営を後にした。
翌日、私に課された命令は、過酷なものだった。
“王都を奪還せよ”
“貴官は隷下の隊を王都まで嚮導せよ”
“貴官が隷下の隊と突入する事あたわず、隊最先任者に指揮権を譲渡後、単騎にて帰還せよ”
「中隊長!」
聞きなれた声、声変わりのまだ来ない、少年の澄んだ声。
振り返るとそこには、幼いが凛とした顔立ちの剣士、両手に何かを抱えている。
「どうしたの?」
「仔犬を拾いましたっ!」
よく見れば、少年が抱えているのは真っ白い仔犬だった。
「飼っていいですか?」
「ちゃんと飼えるの?」
少年は目を輝かせこくこくと頷く。
「じゃあ、好きにしなさい、ただし、その命はあなたたちのものじゃない事をよく心得ること」
まぁ、半分も聞いてはいないだろうし、そのようなことを言うまでもない事は解っていたが、果たして話半分で聞き流した少年は、皆の元に駆けて行った。
そして、暫く何かしらを議論した後、再び少年が仔犬を抱いて駆けて来る。
「中隊長!」
「こいつの名前を決めて下さい」
困った顔をした少年は続ける。
「みんなバラバラなので・・・」
どうやら先の論議は仔犬の名前についてだったらしい。
「そうねぇ・・・」
見上げた空はどこまでも青かった。
「そうだ、あの犬はどうなったの?」
日没後、僅かに薄明を残すバルコニーで、ふと思い出す。
「ああ、ソラですか、生きてましたよ、結構長く」
へぇ・・・。
「あなたが居なくなって、国もなくなって、それでも私とやつは生きてました」
その言葉が、ちくりと胸に刺さる。
私は、逃げたのだ。
「中隊長殿」
中隊では一番年長の少女が上目がちに質問してきた。
「我々は騎士になれるんですか?」
「あ、全員じゃないわ、あなたを含め、上から10人」
上から、と言うのは階級ではなく、年齢だ。
もはや階級は無意味、それは彼、彼女らにも十分に解っていただろうから、上から、という言い方に質問は来なかった。
「あの時は悔しかったですよ、どうして洟垂れヨシュアや泣き虫ナナイが騎士になって、自分がなれないんだ、って」
彼は少し懐かしそうに言う。
「私は、皆騎士になんてなって欲しくなかった」
心底、なってほしくなんてなかった。
「あなたの所為じゃないです」
ただ、その言葉だけが錘のように私の心に沈んでゆく。
「ほら、先日の写真です」
騎士になった少年の手にあるものは、仔犬を抱えたあの少年の周囲を取り囲む少年少女たち、端に控えめに写っているのは、私。
ああ、皆笑っている・・・。
私は?
「折角だから中隊長にも、と思いまして」
その少年の心遣いが、辛い。
「ありがとう」
ただ無表情にそれしか言えなかった、色んな事が溢れてきて、私の心に。
「きっと奴も解っていますよ」
もう夜のとばりがおりたバルコニーで話す彼の表情は、読めない。
後悔ばかりが募る、あの時、言えていたら、決断できていたら、そして
笑えていたら、、
彼らを、彼女らを、見送らなくて済んだのかもしれない。
5
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:23:20 ID:akUcPEBI
「じゃあ、行って来ます」
「またね」
「先に行って綺麗にしておくからさ」
「守るから、あんたたちだけは」
その日は、いつもと何も変わらない朝だった。
「残しておくからな、お前の分も」
「なぁ、帰ってきたら話したいことがあるんだ」
「ねぇ、皆どこに行っちゃうの?」
「また、明日」
その日は、いつもと何も変わらない朝だった。
「結局、どこまで一緒に?」
「城門まで」
「あいつら、何か言っていましたか?」
伏しがちだった顔を上げた彼が問う。
「さぁ、もう忘れたわ・・・」
私は、嘘をついた。
「そうですか」
彼もきっと、嘘をついた。
魔法塔にたった一人の帰還を果たして間もなく、誰もが予想していない事態が起きた。
東方の新興国家でしかなかったプロンテラが突如の武力進行を開始した。
兵無きゲフェニアの抵抗は絶無、プロンテラ軍は破竹の勢いでソグラド砂漠、迷いの森を踏破し、魔法塔に王手を掛けた。
大本営は、徹底抗戦派と、和睦派に分かれ激しく対立していたが、私には何の意見もなかった。
ただ、あの痩せぎすの男が態度を一変させ和睦派の首魁となっていたのには、失笑を禁じえなかった。
そして、陛下は、態度を改められる事はなかった。
「つはものには、つはものの有終を」
ただ、死を覚悟し、席を立ちかけたその時、陛下は私を呼び止める。
他の皆が退席した大本営に、二人だけが残った。
「おぬしには辛い思いばかりさせたな、すまないと思っている」
突然の陛下の言葉に動転する。
陛下はさらに続ける。
「許してくれとは言わぬ、皆、そなたのかわいい子供たちじゃった」
「だが、それも、もう終わりにしよう」
「妾も、討って出る」
当然と言えば当然であろうが、その言葉は余りに唐突過ぎた。
「何を驚いておる、当然であろう、この国の痛みは、妾の痛み、そして、、」
「この国の死は、妾の死じゃ」
「臣民の痛みもまた然り、そなたの痛みも、、」
この時、陛下の双眸から確かに、涙が、一条、流れた。
視界が滲む、陛下は泣いている、私も、、
「ゲフェニアの母よ、妾が死ねば、ゲフェニアは滅ぶ、そして妾のつはもの達も、つはものではなくなる、解るな?」
「あの子らを、残るあの子らを死なせてはならぬ」
その言葉を、もう少し早く聞ければ、あの子達は、私は、救われていたのに。
そんな身勝手な想いが私を衝き抜ける。
「陛下・・・」
「何も言ってくれるな、ゲフェニアの母よ」
陛下にもそれは痛いほど解っているのだろう、史上最大にして、最も栄華を誇ったゲフェニア王国の長としての重責を背負わなければならなかったその運命は、私に理解できる領分ではないが、それでも解る、このお方はきっと、私よりも悲しみ、苦しんだ、もう十分に。
「もう行くがよい」
最後に私に向き合った時の陛下の表情は、あくまで凛として、美しかった。
「中隊長?」
兵舎に戻ると、残された少年少女たちが詰め寄ってくる。
「我々は、どうなるのですか?」
皆が口々に憶測を口にする、それを制して、私は告げた。
「あなたたちは何もしない」
皆唖然とした表情でこちらを見る。
「そんなの嘘だっ」
「ただ殺されろと言うのですか?」
「先に逝ったやつらに何て申し開くつもり?」
私は、敢えて無視して続けた。
「あなたたちは、先の逝った者たちから預かった命を、そんなに無駄に投げ出すの?」
一転、兵舎は静寂に包まれる。
「私からの最後の命令よ、生きなさい」
「生きて、生きて、あなた達一人ひとりの真実を、後世に伝えなさい」
静寂に静かな、しかし確かな嗚咽が混じる。
6
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:24:50 ID:akUcPEBI
次の日、魔法塔から100騎にも見たないちっぽけな軍勢が、ゲフェンフィールドに出撃した。
見送る国民から、1人ひとり、種を受け取って。
ゲフェニアには古くから伝わる言い伝えがある。
梔子を朽ち無しとかけ、戦いに赴くつはものに、梔子の種を贈る。
そうすれば、つはものが例え戦場で斃れたとしても、梔子の種は彼らの亡骸を拠り所として、朽ち無しの花を咲かせ、彼らは永遠に生き続ける、と。
そして、その先頭に、ゲフェニアの長の姿があったのは言うまでもない。
直前に、私は命令を下されていた。
“貴隊は突入する事あたわず、必ず生き残るべし”
この日、ゲフェニアは逝った。
無血開城した魔法塔に進駐したプロンテラ軍は、ただちにゲフェニア王国の滅亡と、ゲフェニア領の占有を宣言、プロンテラはゲフェニアに代わり大陸最大の国家となった。
小高い丘の上、嘗ての王都を遥かに望むその場所で、私は、ひとり佇んでいた。
そこに1人の少年があらわれる。
「中隊長」
あの仔犬を抱いていた少年だ。
「あなた、まだいたの?早く行きなさい」
私には、遅かれ早かれ追っ手が掛かるだろう、だが、この子達には、生き残る義務と権利がある。
「私は、プロンテラに仕官するつもりです」
私は、無言で彼を見返す、そう言う者が出る事は覚悟していた。
「私には、まだ守るべきものが、ありますから」
少年は、胸を張ってそう言う。
辛く、苦しく、今にも横臥しそうな程疲れ切っているのに、それを微塵も出さずに。
「そう、私にはもう、その力は残っていない、だから、、」
私は無言で腰に挿していた自らの剣を少年の腰に回してやる。
そして、優しく抱擁した。
「私の分まで、先に逝った皆の分まで」
「おめでとう、あなたは騎士よ」
まだ肌寒いこの季節に、ほんの少しだけ暖かな春の使者が駆け抜けて行った。
7
:
1-1
:2007/07/08(日) 15:26:22 ID:akUcPEBI
「もうこんな時間ですか、今日はもう休んでください、詳しくはまた明日」
彼は眉間を押さえて俯きながらそう言うと、静かに席を立った。
その何でもない仕草は、あまりにも自分の中にあった彼とはかけ離れ、私はふいにおかしくなってきた。
それは、一人の少年が、青年を経て成長を遂げた証、時の流れた証。
時は再び動く、そして、私はきっと、実感するだろう。
私の中に時間は、止まっていたわけではない、目を逸らしてきただけなのだと。
もうすっかり夜のとばりがおりたバルコニーから案内された一室で、ふと窓の外を見遣ると、そこには眠らない街の灯。
思えば、そんな予感はしていた、あの日から。
8
:
1-2
:2007/07/08(日) 15:27:23 ID:akUcPEBI
結局追っ手は掛からなかった、プロンテラは新しく自らの版図に加えた地図を描き直すのに忙しかったらしい。
その事実を知ったのは、国境の街アルデバランだったが、私はただあてもなく旅を続けることしか出来なかった。
私には何もない、もとより家族もなく、そして故郷も失った、自らの命すらもう、、
そして幾年もの歳月が流れ、賢者の街ジュノーに辿り着いた時、門であの老人と出会った。
老人は物乞いをしていた、小さなお椀を無言で私に差し出し、深い皺の刻まれた眦を私に静かに向ける。
この賢者の街で、物乞いが居るとは思わなかったし、その老人の眦は、私に何かを乞うそれではなく、、
「賢者と言う名の無知が支配する街にようこそ、ここにはそなたの望むものはないぞ」
老人はかろうじて聞き取れる程度の声で言う。
「老人よ、私の望むものとはなに?」
それは、、
「それは、おぬしが失った全てじゃ」
からからと嗤いながら老人はお椀を更に私に突き出す。
「過去はないが、現実と未来は、あるぞ」
老人の家で、私は温かい食事と、久し振りの睡眠を与えられた。
次の日、私は早起きして老人宅を後にするはずだったが、老人は既に起き出して朝食を用意してくれていた。
「じじぃは早起きなんじゃて、まだまだ若いもんには負けん」
それは、意味が違うような気がする。
質素だが、しっかりとした朝食をご馳走になって、私は老人に礼を言い、席を立とうとした。
「どこに行くのじゃ?」
そんなの、私にも解らない。
「老いぼれの独り言を聞き流すだけで三食昼寝つきでこれからの身の振りようを考えられるのは、悪くないと思うがのう」
老人には全てお見通しのようだ、私は暫く老人の厄介になることにした。
老人はこの街を“無知の支配する街”だと言ったが、それは私にとってはまばゆいばかりの無知であった。
図書館には知識が溢れ、私はゲフェニアでも目にすることのなかった先史時代の歴史書にも触れることになる。
多くの歴史学者が解読・翻訳を試みて、ようやく文の体裁を成すに至ったそれらの遺物は、それ自体が古代に近い年代のものから、ごく最近の、最新の研究の成果まで様々であり、私の知識欲をくすぐったが、中でも私の心を捉えたのは、ひどい癖字の無名の歴史学者の書いた注釈書「レテ」であった。
先史、つまり我々とは途絶した時代に書かれたと言われるその本は、まるでどこかの悪魔崇拝者が妄想の赴くままに書き綴ったかのような内容の、ある意味ありふれた(それでも先史時代の図書と言うだけで計り知れない価値を持ってはいるが)本であったが故に、殆どの歴史学者が手に取ることもなかったものであろうが、その癖字の歴史学者はいたくその本が気に入ったようで、熱心に解読・注釈を加えており、その成果はある驚くべき仮説に至って完結していた。
つまり、この世ではない世界は確かにあり、その扉も実在する。
そして、その方法とは、、
9
:
1-2
:2007/07/08(日) 15:28:28 ID:akUcPEBI
「そのような下らない本に囚われるとは、もう少し聡い女だと思っておったが」
「きゃぁ!」
突然肩を掴まれ思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。
「む、あ、すまんかった」
老人はバツの悪そうな顔をして詫びる。
「しかし、その本は良くない、あまり近づかんほうがいい」
そう言うと老人は私から本を取り上げ、何処かに持ち去ってしまった。
私は、見たことがある。
その“方法”を。
そして老人は重大な何かを知っている。
聞かなければなるまい。
その夜、図書館からの帰路、今となっては懐かしい感覚を感じた。
「いち、に、さん、、、、よん」
殺気を剥き出しにした素人が3人、そうじゃないのが1人。
私ではない誰かを狙っている。
やや先を歩くのはローブを纏ったあの老人の背中。
連中は私が老人をつけている事には気付いてないらしい。
私は距離を詰めつつ、更に気配を殺して老人に近づく。
「いい加減戻ってはくれませんか、御老体」
“そうじゃない1人”がそう声を掛けると同時に、残りの3人が老人を取り囲む。
「しつこい奴らじゃのう、老人でもここまで意固地ではないぞ?」
老人は静かに呟くと、その場に立ち止まる。
「では、無理にでも御同行願いましょうか」
有無を言わさず包囲の輪を狭める4人
老人は抵抗する様子も無く、ただ俯いたまま
私は、走った。
そして“素人”の一人が気付いてこちらに向き直ると同時に手刀を放つ。
手刀は相手の太刀筋をすりおろすと同時に相手の脳天を直撃する。
最初の一人が昏倒して倒れるまでの間に、もう一人の“素人”に前蹴りを見舞う。
前蹴りがもう一人の“素人”の鳩尾に入り、悶絶すると同時に、取り落としたサーベルを拾い上げ、そのまま峯で残りの“素人”の脇腹に一撃を叩き込む。
3人はほぼ同時に、音もなく、そして体中の力がまるで己の意に反して抜けるかのように、地に伏す。
まだ、錆びるには早い。
10
:
1-2
:2007/07/08(日) 15:30:32 ID:akUcPEBI
残った“そうじゃない一人”は、状況を把握したようだ、油断無くブロードソードを構え、慎重に口を開く。
「女、何者だ」
私は黙ってサーベルを構える。
手加減が出来るほど弱くもなければ、本気で相手をする程のものでもない哀れな存在。
「答える必要はないわ、犬死は無用よ」
男の顔が歪む、この男は自分の力量を測れる程度には強い、運が良ければ強くもなるかもしれない。
だが、男は退かなかった、そのままブロードソードを上段に構えると大きく息を吸い込む。
「愚かな、もののふには命の捨てどころもあろう」
もののふ、そして命の捨てどころ、、
意に介さず紡ぎ出された言葉に、一瞬、あの日、あの時の情景が脳裏をよぎる。
だが次の瞬間、均衡は破られる。
「南無三!」
男の叫び声が響き、怒涛の如き突進
防御を一切考えない捨て身の一太刀、戦場で、殺意無き一撃に次ぐ脅威
私は迷わなかった、いや、迷えなかった。
己の思考を超越して躰にしみこんだ掟は、男の胴体を泣き別れにすべく動く。
そして、男の胴体が二つになるその瞬間
「やめぃ!」
突如響いたその裂帛の一声で、私はぎりぎりの所で刃をかわす。
男の身体は紙一重でまだ繋がっているが、私の体当たりをまともに食らって大きく吹き飛ぶ。
「お嬢さん、わしには過ぎた振る舞いじゃよ」
老人はそう言うと、吹き飛んだ男に向かって歩み寄り、そして
「連れて行くがいい、何処へなりとも」
そう言うと諦観した表情で私に向き直った。
「すまんな」
ただそう言うと、ブロードソードを杖にして立ち上がった男と共に背を向ける。
男は去り際に振り返ると
「二度と忘れん」
そう言い捨てて立ち去った。
私は早々にその場を立ち去った後、老人について考えていた。
老人の目は、目の前でまさに起ころうとしていた悲劇を止めるためのものではなく、まるで、、
まるで、今ではないいつか、多くの悲しみを見てきたかのような、まるで墓守のようであった。
「御老体、何を見たの」
つい無意識に呟き、顔を上げるとそこはあの老人の家であった。
鍵はかかっていない、主のいない家に入ると、私は老人の書斎に入る。
確かめなければならない、あの老人は何者なのか。
机の引き出しを開けると、そこにはかなりの数の日記帳があった。
「まめなおじいさんね」
日記はつい最近、そう、私が老人と出会った日、最も古いのは、10年程前の物だ。
ぱらぱらと最も新しい日記帳をめくる、そして、
「これは、、」
そこに綴られているのは、あの図書館でみた癖字そのものだった。
「やっぱり、あの御老体は、、」
老人と再び会わねばなるまい。
手がかりは意外にも早く見つかった。
研究、息子、国軍、そして、
レッケンベル・コングロマリット。
11
:
俺は名無しだからな
:2007/07/11(水) 16:31:55 ID:Oac.q0sU
発表したいだけならblogでやれよ…
12
:
俺は名無しだからな
:2007/07/11(水) 22:36:15 ID:5ng8JUfM
以前こういうスレがあって一時盛況だったのは確かだからね
うちのマスターがカートに住むアサの話を書いてたが・・・
1人で一気に長いの書いてしまうと、なかなか続く人はいないもんだ
13
:
俺は名無しだからな
:2007/07/12(木) 19:54:15 ID:SR3.WKMI
長すぎて、うっとうしい。
早く下がって欲しい
14
:
俺は名無しだからな
:2007/09/10(月) 01:31:04 ID:BkibASkE
どこがSSなんですかw
15
:
俺は名無しだからな
:2007/10/08(月) 04:38:22 ID:ehbxc7TY
♡
16
:
俺は名無しだからな
:2008/01/13(日) 23:03:43 ID:YuBwoGjE
過疎すれでテスト
17
:
俺は名無しだからな
:2008/04/03(木) 14:12:00 ID:./rMiFLo
>>14
スクラップ スレッド?
18
:
俺は名無しだからな
:2008/06/29(日) 13:05:01 ID:KcoPAHZE
なが
19
:
俺は名無しだからな
:2008/07/07(月) 22:22:57 ID:mctZJbKk
testtest.
20
:
俺は名無しだからな
:2009/04/19(日) 00:28:00 ID:0D3nO3DA
test
21
:
俺は名無しだからな
:2009/05/07(木) 07:02:49 ID:Nmb6.VT.
お
おはよう!!
よ
う
!!
22
:
俺は名無しだからな
:2012/01/09(月) 07:32:21 ID:4Yvt0rKg
>==: : : : : : : : : : : . .
/,、: : ,、====: : : : : : : : : : : : : : : . . .
//:./: : :,、-…: : : : : : :.:\: : : : : : : : : : : : : : . . .\
/:./: : :/: : :._:二、: : : : : : : \: : : :\: : : : : : : : : . . .
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23
:
俺は名無しだからな
:2012/01/27(金) 23:54:09 ID:GUmpUxwY
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24
:
俺は名無しだからな
:2013/04/28(日) 03:15:44 ID:D6I8hFwA
test
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