したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

ドラゴンクエスト・バトルロワイアルⅢ Lv6

1ただ一匹の名無しだ:2016/08/23(火) 21:28:42 ID:1wMv/96g0
こちらはドラゴンクエストのキャラクターのみでバトルロワイアルを開催したら?
というテーマの参加型リレー小説スレッドです。

参加資格は全員にあります。
初心者歓迎、SSは矛盾の無い展開である限りは原則として受け入れられます。
殺し合いがテーマである以上、それを許容できる方のみ参加してください。
好きなキャラが死んでも涙をぐっと堪えて、次の展開に期待しましょう。

まとめWiki
http://seesaawiki.jp/dragonquestbr3rd/

避難所
http://jbbs.shitaraba.net/game/30317/

前回企画

ドラゴンクエスト・バトルロワイアルII
http://seesaawiki.jp/dqbr2/

前々回企画

ドラゴンクエスト・バトルロワイアル
http://dqbr.rasny.net/wiki/wiki.cgi
http://seesaawiki.jp/dqbr1/

DQBR総合 お絵かき掲示板
http://w5.oekakibbs.com/bbs/dqbr2/oekakibbs.cgi

662ただ一匹の名無しだ:2017/11/13(月) 19:03:13 ID:ee46RK/k0
>>657 >>659   >>661
今までの非礼を詫びるすまなかった。

663ただ一匹の名無しだ:2017/11/26(日) 10:50:44 ID:ZjGNfAlg0
予約来た!
これで勝つる!

664ただ一匹の名無しだ:2017/11/26(日) 10:56:33 ID:Ju27JOOA0
驚くぐらい反応はやいなお前

665 ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:50:03 ID:RkIRCQzk0
投下します

666Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:50:48 ID:RkIRCQzk0
運命とは、双六盤のようなものである。
沢山のマス目に、様々なことが書かれている。
それが止まった者にとって幸せな結果をもたらしたり、不幸せな結果をもたらしたり。
中には、マス目一つで、人生が180度変わってしまうこともある。


とりあえず、この二人がいま止まっているマスは、間違いなく悪いマスだろう。

なにしろ、剣が槌、もしくは矢が絶え間なく降り注ぐのだから。
「くそっ!!」
間一髪のところで剣を躱したトンヌラが、舌打ちをする。
剣の次は矢で攻撃。これはチャモロのかまいたちが撃ち落とした。


普通なら攻撃を避けた後は、こちらから攻撃に転じればいい。
だが、この強力な機械兵、キラーマジンガにはそれが通じないのだ。
攻撃を避けた先に、さらに追加で攻撃が来るのだ。
剣、弓、槌の3つを使った多段攻撃。
しかもそれぞれが中距離、遠距離、近距離攻撃の役割を担っているのだから、安全地帯が全くない。
それらの武器の威力も、スクルトをかけておいたとはいえ、まともに当たれば致命傷は免れないものだろう。

「まずいですね……以前戦ったキラーマシンに似ていますが、強さは段違いです。
それにケガしているはずのローラを早く助けに行かないと………」

後ろに下がり、ベレッタM92をキラーマジンガに向けて発砲する。
トンヌラ達を察知しているらしき目のような部分を狙って打ったが、やはり使い慣れていない武器なので、狙いは逸れてしまった。
銃弾はキラーマジンガの肩に命中したが、その部分のフレームを薄く傷つけただけだった。
「折角の武器も、この程度とは………」

やはりアサルトライフルを使うべきだったのだろうか。
いや、無いものねだりをしていても意味がない。

今度はお返しにとばかり、矢を連射しながらキラーマジンガが迫ってきた。
しかもそれはトンヌラを集中して狙っている。

667Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:51:25 ID:RkIRCQzk0

「しまった!!」
「なんのこれしき!!」

しかし、チャモロが多数の真空の刃を飛ばす。
さっき使っていたかまいたちの応用編であるしんくうはだ。
トンヌラを狙っていた矢は、一本残らず撃ち落とされた。

「凄いじゃないですか!!」
トンヌラも褒めざるを得なくなる。
「でも、これではあの魔物は倒せません。」

キラーマジンガのボディには、魔法を跳ね返す力がある。
それのみならず、固いボディは真空の刃を通さないのだ。


だが、これまで遠距離から技を使っていたチャモロが一転して敵に突っ込む。
キラーマジンガはチャモロに向けて斬撃を放つが、フェイントをかけて躱し、続いて襲い来るメガトンハンマーも紙一重で避ける。

チャモロが武闘家の修行で培ったフットワークだ

(ハッサンさん!!力を貸してください!!)
キラーマジンガに向けて真っ直ぐに拳を突き刺す。
彼の亡き友が得意としていた、正拳突きだ。
それだけでは倒せないが、地に足を付けていないキラーマジンガは大きく吹き飛ばされた。

「今です、トンヌラさん!!」
チャモロの合図で、離れてしまったアサルトライフルを拾いに行く。


「チャモロさん、魔法だけじゃなく、体術も使えたのですね。」
「ええ。僕の仲間のおかげです。」
トンヌラは武器を取り戻し、少し落ち着きを取り戻す。
チャモロに、前衛も後衛も務められることに親近感を感じ、同時に仲間のおかげで強くなれたと言っているチャモロに少し妬みを感じた。
だが、今はそんなことを感じている場合ではない。
距離を大きく離されたキラーマジンガが、再び迫ってくる。

668Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:51:48 ID:RkIRCQzk0



以前キラーマジンガと戦った時、チャモロは一つ見抜いていた。
3つの武器を持ち、魔法も跳ね返される。
一見隙のないように見える相手だが、そうでもない。

一つは、チャモロが自分で示したように、急に攻撃のパターンを変えると、対応するためのテンポが悪くなること。
もう一つは剣、矢、槌のうち2つを使ったら、次の攻撃まで一瞬のタイムラグがあること。


トンヌラにも勝るとも劣らない観察力や分析力、判断力から導き出した答えだ。
しかし、これで楽勝かと言われれば大違い。
敵のことを知っているだけで勝てるのなら苦労はいらない。
相変わらず自分達の攻撃手段は限られているし、敵の攻撃が強力なのは変わらない。
さっきのようにチャモロの正拳突きを食らってくれるという保証もないだろう。


チャモロはしんくうはで矢を撃ち落とし、トンヌラは取り戻したアサルトライフルをキラーマジンガに向けて発砲する。
しかし、思い通りにいかない。
戦いに関してはめっきり素人だったパトラの、銃を撃ち落とした時とは訳が違う。
このままでは距離を詰められてさっきの状態に戻されてしまう。
今持っている武器については、実は良く分からない。
この使い方でキラーマジンガを倒すのは難しいが、何か他の使い方があるのだろうか。


隣にいたチャモロが、あるものに気付く。
(トンヌラさんが使っている武器は、何でしょうか?)
(引き金を引くことで金属の欠片を飛ばしていることから、ビッグボウガンに似ている物だと思いますが………)

更にトンヌラが撃つ。だが、やはり大きな効果は見られない。
同様にしてトンヌラも、自分の武器に疑問を持っていた。
(そういえば破裂音、煙の臭い………もしや?)

さっきからトンヌラが不自然に思っていたのは、誰も火の呪文を使っていないのに、煙の臭いがすることだ。
キラーマジンガが持っている剣は、炎の力を纏っているが、それではないようだ。

669Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:52:16 ID:RkIRCQzk0


「チャモロさんは、火の呪文が使えますか?」
「僕は風の魔法しか使えないです。」
「そうですか……なら、これを持っておいてください。」
「いいですが、どういうことですか?」

トンヌラはチャモロにアサルトライフルを渡す。
一応自分にはもう一つ武器があるし、ここで裏切られる危険性もほぼない以上は、渡しても構わないだろう。

キラーマジンガが迫ってくる。
あと数秒で剣先が届きそうだし、迷っている暇はない。

「「剣に向かって、投げてください!!」
トンヌラがチャモロにアサルトライフルを渡すや否や、指示を出す。

(!?)
撃っても余り効かないからといって、武器ごとぶつけても変わらないと思うが、なりふり構わず投げる。

言われた通りに、銃を剣に向かって投げつける。
「炎の力よ、集まれ、ベギラマ!!」
「トンヌラさん、それじゃ……」

トンヌラが放ったベギラマは、キラーマジンガに当たって跳ね返されるかと思いきや、チャモロが投げた銃に命中する。


同時にキラーマジンガは、投擲物に対応して、灼熱剣エンマで薙ぎ払う。







(!?)

派手な爆音と共に、アサルトライフルが暴発を起こした。


「読み通りです!!行きますよ、チャモロさん!!」
そのまま二人はキラーマジンガを無視して、橋を通り過ぎる。
追撃の攻撃は来ない。
暴発によって壊されたか否かは不明だが、先へ進む。

最初は逃げるつもりはなかったが、このやり方で倒せないなら二人で完全に打ち倒すのはほぼ不可能だ。
それに、これ以上時間をかけすぎるとローラの身が危ない。


どうにかして二人は危険なマスから抜け出す。

670Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:53:05 ID:RkIRCQzk0
「トンヌラさん、今、何をしたのですか?」
橋からある程度離れた後、何が起こったか分からないチャモロが尋ねる。
「あの武器から煙の臭いがしたので、何か爆発か炎をトリガーにしているのだと気づきました。
ならば炎の魔法と、キラーマジンガの炎の力を持った剣を使えば、武器の暴発と、それによるダメージも狙えるのではないかと思ったのです」
「なるほど。初めての武器なのに、素晴らしい洞察力ですね。恐れ入りました。」
「いえ。さっきチャモロさんが敵の攻撃のテンポを見せてくれたからです。それよりもローラさんが心配です。急ぎましょう。」



チャモロも自分と同様に、観察力に長けているようだ。
二人で強敵であるキラーマジンガを倒せたのも、頭脳によるものだ。



「トンヌラさん、これは……」
「確かローラさんが、使っていたものです。移動を助けるものらしいですね。」

暫く進んだ後、平原に落ちている杖を見つける。光が消えていることから、使えなくなって捨てたのだろう。

「恐らく、ローラさんはあの村に向かったのでしょう。」
足跡からそう考えるのが妥当だ。
多少足止めを食わされたとしても、ケガをしていることに加えて身重であるローラに追いつくのは、そう遠くないことだろう。



トンヌラの口元に、笑みがこぼれる。
理由の一つは自分の観察力で、自分より強い敵を出し抜いた、すなわち、忌まわしい二人では出来ない方法で成功したという優越感。
もう一つはチャモロという役に立つ人間が自分を信頼しているということ。


(おっといけませんね。慢心すると、足をすくわれます)

トンヌラは唇を引き締める。
まだローラの安否は確認しておらず、機械兵の脅威から逃れたとはいえ、一つ武器を犠牲にしてしまった。
次に現れる敵も、さっきと同じように都合よく勝てることもないだろう。
それに肝心の、ローレルとルーナがどうなっているかも分からない。
既に死んでくれていれば万々歳だが、万が一出くわしてしまえば、面倒なことになるだろう。

671Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:53:28 ID:RkIRCQzk0




トンヌラが知る由もないことだが、二人は既に死んでいる。
一人は騙され、一人は死ぬことを求めすぎて死んだ。
彼は近々、それを知ることになる。
キラーマジンガとの戦いを運よく切り抜けたことといい、彼の双六は良いマスが多いのだろう。


だが、もうじき知ることになる。
彼の双六は、決して良いマスばかりではないということを。


○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○



時は少し遡る。
(………だめーじ、50ぱーせんと。移動問題ナシ)
残念ながら、ジンガーは壊れてはいなかった。
(進行方向ト戦闘力ヲケイサンシテ、ヤツラガあべるサマニキガイヲ加エル可能性、20パーセント。)
(あべるサマノモトニ戻ルコトヲ優先シマス。)


ジンガーはトンヌラ達とは逆の方向に進む。
その方向にアベルはいないのだが、破壊兵は新たに何を始めるのだろうか。



【I-5/平原/1日目・夕方(放送直前)】

【チャモロ@DQ6】
[状態]:HP5/10 MP3/5 腕、肩、脇腹に切り傷(応急処置済) ※竜化した場合、片翼損傷(飛行不可能)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 支給品1〜2(本人確認済み)
[思考]:ハッサンの意思を継ぎ、ゲームを止める
    ローラを追いかける
[備考]:チャモロは少なくとも、僧侶、武闘家、パラディンをマスターしています。

【トンヌラ@DQ2】
[状態]:健康 MP微消費
[装備]:ベレッタM92@現実(残弾2)
[道具]:支給品一式 支給品0〜1(本人確認済み)
[思考]:様子を見つつ、生き延びる。ローレルとルーナに殺し合いの中で死んでもらう為、危険人物として吹聴する
    ローラを追いかける

※トンヌラはローラの死による自分達の消滅を危惧していますが、その可能性はまずありません

【G-6/平原/1日目・夕方(放送直前)】
【ジンガー@DQ6キラーマジンガ】
[状態]:HP1/2 
[装備]:灼熱剣エンマ(ヒビ)@DQS メガトンハンマー@DQ8 ビッグボウガン@DQ5
[道具]:支給品一式
[思考]:アベルの元に戻る


※SIG SG550 Sniper(アサルトライフル、残り弾9)は暴発しました。

672Lucky Dice ◆znvIEk8MsQ:2017/11/26(日) 21:57:58 ID:RkIRCQzk0
投下終了です。
作中にトンヌラがアサルトライフルをベギラマで暴発させる描写がありますが、実は銃の仕様上おかしくなっているかもしれません。
一応、アサルトライフルとベレッタについては調べましたが、私はガンオタクではないので銃に詳しい方がいらっしゃれば指摘お願いします。
その他矛盾点などがあればよろしくお願いします。

673ただ一匹の名無しだ:2017/11/27(月) 23:39:15 ID:PIWubQGs0
投下乙
何だこのチャモロかっけえ
これは間違いなくパーティのリーダーの器
アサルトライフルが爆発するかどうかは知らないけどまあその辺は適当でいいのでは

674 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/06(水) 01:11:43 ID:i6behV3I0
投下します。

675Usual:2017/12/06(水) 01:13:11 ID:i6behV3I0
トラペッタ、リブルアーチ、ポルトリンク、トロデーン城。
この殺し合いの舞台には4つの拠点と言えるべき土地が用意されている。
その中でもトラペッタは外壁に囲まれた構造からトロデーン城に次いで潜伏や籠城に適した拠点であった。
しかし、その外壁は皮肉にもことごとく正義の使徒へと牙を剥く結果となってしまうこととなった。
ギガデーモンの襲撃時にはその外壁は内部の者たちの脱出を阻む障害物となった。
外部の視界を遮断していたその壁はゲマの奇襲を成功に導いた。

そして、今やその外壁によって隔離していたはずのバラモスゾンビは封鎖された扉を打ち壊し、再び殺し合いの場に解き放たれた。

バラモスゾンビは崩れ去る瓦礫の中からゆっくりと顔を出すと、目の前に"獲物"がうようよと居ることに気づく。
突然の襲撃に虚をつかれた皆が武器を構えるより先に、口から吐き出した酸のブレスで辺り一面を濃霧に変え、戦いの場を整える。
かつて魔王だった者の目には命などもはや喰らうものにしか映らないのだった。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

676Usual:2017/12/06(水) 01:13:59 ID:i6behV3I0

エイトは真っ先にバラモスゾンビに向かって走り始めた。

見るからに危険だと分かる明確な敵。
放置すると誰に危害が及ぶか…
その先を考えるや否やエイトは飛び出していた。

バラモスゾンビはエイトの剣を腕で受け止める。
これが痛覚を持つ生物でさえあれば、腕は裂けもう動かすこともままならないだろう。
しかしバラモスゾンビは気にも留めずにその剣を振り払いそのままエイトへと振り下ろす。

エイトはすかさず横へ飛び退き回避する。
空を切った腕は大地を隆起させ、その場の全員にその破壊力を思い知らせた。

「動きはそんなに速くないから、気をつけて戦えば大丈夫だよ。」

アルスがぼそりと呟いた。
どれだけ破壊力のある一撃も当たらなければ意味は無い。
そんな戦いの常識とさえ言えるようなことも感覚から抜け落ちていたことにエイトは気づく。

見たところ敵の攻撃の威力はいつか戦った巨竜の力を解放した竜神王に及ぶかどうかといったところ。
しかし回復効果が制限されている状況下では今までのように回復呪文で敵の攻撃を受けつつ相殺するというわけにはいかない。
今までの戦いとは違うのだとエイトはつくづく思い知らされる。

677Usual:2017/12/06(水) 01:15:12 ID:i6behV3I0
「ブライさん、お願い。」

その一言を残しアルスがバラモスゾンビに向けて走り込むと、バラモスゾンビはアルスを前に片腕を振り下ろした。
その腕がアルスへと届く寸前――――――

「ピオリム!」

ブライの補助を受けてアルスは加速する。
叩きつけられる腕の着弾点をするりと抜け、バラモスゾンビの胴体を思い切り蹴りつけた。
バラモスゾンビはその威力に一歩引き下がりはするものの当然致命打にはなり得ず、懐に潜り込んだままのアルスへと爪を突き出す。
身体を捻ってそれを躱したアルスはそのままドラゴンキラーを突き刺す。

「っ!」

アルスはその時、自分の不運に気づいた。
バラモスゾンビはアルスにとっては天敵と言えるほど相性の悪い相手だった。
上級職に就けなかったアルスはマスターも出来ない下級職で身につけられる小技のみで戦える戦闘スタイルを身につけた。
しかしどれだけ洗練しても小技は小技の域を出ることはない。
バラモスゾンビのように小技を真っ向から跳ね返せるだけの守備力を持った敵を崩す手段をアルスは持たないのだ。
剣は胴体に突き刺さらずに弾かれる。
想像以上の硬さに空中に放り出されたアルスへとバラモスゾンビの腕が振り下ろされんとしていた。

――――――ギィン!

バラモスゾンビの爪と割って入ったエイトの奇跡の剣が鈍い音を奏でる。
地に落ちたアルスが受け身をとって立ち上がると同時にエイトはバラモスゾンビの腕を弾き返す。

678Usual:2017/12/06(水) 01:17:08 ID:i6behV3I0
殺意の対象をエイトへと変えたバラモスゾンビはエイトを踏みつけるため右足を上げる。

「大防御!」

全体重を載せた一撃は受け止められないと判断し、ダメージを最小限に抑えるために奇跡の剣を投げ捨てての完全防御の構え。
バラモスゾンビの攻撃を受け止めたエイトは投げ捨てた剣を拾い上げ、受けたダメージを相殺するかのように斬り付ける。
奇跡の剣で放つミラクルソードであっても効果がほとんど感じられない。



「まずいわね…」

ふとデボラが呟くのをアルスは聞いた。

「どうしたの?」

「アイツ、傷がだんだん治ってるじゃないの。」

アルスやエイトがつけた傷がじわじわと治っていっているのだ。
考えてみると、ひとつの街を崩壊させるほどの戦闘を終えているにも関わらず身体に傷らしい傷も見受けられなかった。

実際のところは街の大部分を崩壊させたのはバラモスゾンビではないのだがそのことをアルスが知る由はない。

「つまり、ちまちま攻撃しても勝てないということですかな。」

「…僕には出来ないよ。あいつを一気に倒すことなんて。」

自分が無力だということは実感出来ても、悔しいだとかそんな感情はなかった。
こんな敵と出会ってしまったのも天命なのだろう。
ここで殺されるとしても構わない。サイコロの目が悪い方向に傾いた。ただそれだけのことなのだ。
仮にその不運の贄が自分の命だとしても。

679Usual:2017/12/06(水) 01:18:38 ID:i6behV3I0

「私なら撃てます。」

しかし、バラモスゾンビの攻撃を何とかいなしながらエイトが名乗り出る。

「しかしそれには時間が必要です。アルスさん、デボラさん、ブライさん、お任せしてもよろしいですか。」

「…わかった、任せて。」

そうだった。
未知数なのは敵の力だけではない。
隣にいるのはいつもの味方ではない。
ガボでもメルビンでもアイラでも、マリベルでもないのだ。

既に死んでいる人もいれば、どこにいるのかも分からない人もいる。
もしかしたらもうみんな死んでいるのかもしれない。



エイトはアルスとデボラの後ろへと下がる。
ブライより後ろに下がることは出来なかった。
ブライがトロデ王の面影を残しているからなのか、いつもの戦いで後列を担うことになっても魔法使いのゼシカより後ろには下がらなかったからなのかは分からない。
それでもバラモスゾンビの射程外に居ることを確認し、全身に力を溜め始める。
アルスとデボラは前線に出て戦い始めた。
二人とも身軽なもので、一撃一撃が重いバラモスゾンビの攻撃を的確に躱していく。
ブライはその二人を持ち前の呪文で補助している。
そんな中、自分が一撃必殺のために力を溜める。
一見バラモスゾンビに対して完璧な布陣のように思える。
しかしこの布陣に引っかかる点があるのも確かだ。

いつもの戦いではこういった相手に真っ先に飛び込んでいくのはヤンガスだった。
それをゼシカやククールが呪文や道具で補助して、ゲルダとモリーは多彩な手数で相手を撹乱していた。
それだけで勝てる相手であれば自分はそれらの補完をして、ジャハガロスやラプソーンなどの強敵が相手であれば必殺の一撃を叩き込むために力を溜める。
その戦い方はおそらく正しかったのだろう。

そこまで考えたところでエイトは現状に足りない部分に気づいてしまった。
この布陣がひとつの失敗で崩壊し得るとても脆いものであるということに。

アルスとデボラは確かに無傷のまま敵の攻撃を捌き続けている。
でも、ここにはヤンガスのように敵の攻撃を受け止められる者がいないのだ。
攻撃を受け止めること。
それが成立するのためには言うまでもなく敵の攻撃と同じだけの回復が不可欠である。
回復の制限されたこの世界では危険な行動であるのは間違いない。
しかし真っ向から攻撃を受け止められるということは多少の想定外の出来事にも対応出来るということ。
一度回避に失敗するだけで突破されてしまう今の布陣にエイトは不安を感じ始める。
しかし、だからといって何が出来るというのだろうか。
自分に出来ることは力を溜め続けることだけ。

誰か前線で戦ってくれる人が居てくれれば――――――

エイトにはそう願うことしか出来なかった。

680Usual:2017/12/06(水) 01:20:02 ID:i6behV3I0
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

トラペッタを脱出したライアンは気がつくと深い深い暗闇の中にいた。これが生と死の狭間というものだろうか。

私はここで死ぬ。

先ほど呟いた一言を思い出す。
それでも私はギリギリのところで生き延びている。
私だけが生き延びて、他の皆は死んでしまった。

そもそも、死とは何なのだろうか。

かつての戦いの中でもライアンは幾度となく死を経験してきた。
人間と魔物の戦いは空論上、魔物の方が有利だ。身体のポテンシャルが根本から異なるのだから、人間はそれぞれの適正に合わせ個別の"役割"を持った行動を心がけることで戦いの中のポテンシャルの差を埋めていく。

そしてライアンの役割は明文化されていたわけではないが、暗黙の了解として"敵の攻撃を受け止めること"だと決まっていた。ユーリルやクリフトなど、パーティーが崩壊しないためには死んではならぬ者がいる。
だから頑丈な鎧に包まれたライアンが最前線に立って壁となる。
当然、強力な敵を前にしては仲間を守って死ぬこともしばしばだった。
それでも自分にとっての次の瞬間には仲間や教会の神父が生き返らせてくれている。

681Usual:2017/12/06(水) 01:20:48 ID:i6behV3I0

おそらく、この世界での死ではその"次"がないのだろう。

ユーリルは故郷を、そして恋人を失ったことで勇者として覚醒した。理不尽に叩きつけられた"死"への怒りが彼を物語の主人公へと変えたのだろう。
物語の終末を彩るはずだったピサロもまた、理不尽な"死"への怒りを胸に異形の姿へと化した。
彼らにとっての"死"は私の思い描くそれとは大きく異なるものなのだろう。

では、私はどうなのだ。
命に対してどれほど真剣に向き合っていられたのだろうか。
聖なる存在の加護のおかげで失おうとも再び与えられる命を繰り返し、私は"死"を恐れなくなった。
その加護を失い、亡くした命が戻ることのないこの世界でも心の底に根強く残るその感覚は私の中に在るのだ。

私はここで死ぬ。
いつものように死に、いつもとは違って2度と目覚めない。

「それでいいのよ。」

いつか聞いた声。
暗闇の中にかつての仲間、アリーナ姫が立っていた。

682Usual:2017/12/06(水) 01:25:26 ID:i6behV3I0
「悪は何度だって蘇る。仮に今回倒せたとしても世界が平和になることはないの。もう希望なんてないんだわ。」

武道に対して天賦の才を持っていたとはいえ、彼女はまだ子供だった。だからこそ、現実を知った反動も大きかったのかもしれない。

「妻も子供もいないあなたに守らなくてはならないものなんてないでしょう。もう楽になって良いのですぞ。」

新たな影が浮かび上がる。
武器屋トルネコ。
この世界に呼ばれたことで妻と一人息子を置いて死ぬこととなってしまった男である。

「守りたかったものを守れずに失った時、人は死ぬのです。命の炎は消えずとも、既にあなたは死んでいるのではないですか?」

サントハイム城の神官クリフト。彼は誰よりもアリーナ姫のことを気にかけていた。おそらくこの殺し合いでも、アリーナ姫を探し回っていたのだろう。

「なあ――――――使命のことなんか忘れちまえよ。俺みたいにさ。」

やはり、というべきだろうか。最後の人物が浮かび上がる。
私が10年以上かけて探し出した勇者ユーリルがそこにいた。

「"勇者を探す"というアンタの使命の果てに待ってたのは何だ?そう、残ったのは俺たちが不要になった世界だけだ。俺は勇者として使命を果たしたんじゃない。自分で自分の居場所を失くしただけなんだよ。」

自分がずっと探し続けた勇者がとても勇者とは思えないような言葉を吐き続ける。
彼はもう、勇者ではないのだ。

「「「「さあ――――――」」」」

4人の声が重なる。
このまま眠るように死ぬのが私にとって最良の選択なのだろうか。

「「「「――――――こっちへおいでよ…。」」」」

違う。
私はまだ死ぬわけにはいかない。
殺された皆の無念を背負っている私は最後まで戦い抜かなければならないのだ。

「ぬおおおおおお!!」

暗闇を晴らし、ライアンは立ち上がる。
悪魔の囁きを頭から捨て、ナブレットから貰った剣を握りしめる。

「ジャンボ、という者を探すのでござったな…。」

自分を信頼してくれたナブレット。彼から受け継いだ使命をまずは果たそう。
ライアンは走り出した。
彼の胸に宿る命はもはやひとつではない。
トラペッタで散っていった多くの者の命を宿し、悲劇の元凶エビルプリーストを討つことを心に決めた。
勇者を探す旅ではなく、悪の根源を断つ勇者へと変わる旅が幕を開けた。

683Usual:2017/12/06(水) 01:26:00 ID:i6behV3I0





「ライアン殿、行ってしまいましたな。」

「ま、エビルプリーストに勝てるなんて思わないけどね。」

「あぁもぉー素直じゃねーなぁア・リ・ィ・ナ・ちゅゎん!ほら、スマイルスマイル!きゃわいいお顔が台無しだぜ?」

「ユ、ユーリル殿いいいい一体何を!?ザザザ、ザラキ!」

深き闇の底、ライアンを見送る影が4つ。
彼の胸に宿る想いはトラペッタで散った想いだけではない。

「――――――ま、こっちの方がライアンらしいよな。」

そして幻影は闇の彼方へと沈んでいく。
ライアンが最後に見た勇者であることをやめた者の眼は、確かに勇者の眼をしていたという。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

684Usual:2017/12/06(水) 01:26:35 ID:i6behV3I0

「グアアアアアアァ!」

敵が咆哮を上げながら迫り来る。

「ヒャダイン!」

後方からの氷塊呪文で敵の脚を突き刺して脚が一瞬止まる。
その隙に敵の攻撃の着弾点を予測して余裕を持って離れる。

仲間の顔ぶれこそ違えど感覚はいつもの戦いと同じだった。
僕は勝利を確信していた。

敵の両腕が大地を殴りつける。
僕がいない大地に穴が空き、エイトから注意を逸らすために敵の脚を斬り付けて離れる。
相変わらず深い傷を付けるには至らない。
ふと見たところ、エイトは何かの準備をしているようだ。
離れていても身体が痺れるようなオーラを感じる。

デボラさんも問題なく敵の攻撃を避け続けている。
このままエイトの準備が整うのを待てば、この戦いが終わるのも遠くはない。

一体どうして、僕なんかが生き残っちゃうんだろうとつくづく思う。
口は悪いけどとにかく芯の強いマリベル。
一族の使命に駆られ続けたアイラ。
古来よりずっと天魔王と戦い続けたメルビン。
僕なんかよりずっと生きる価値を見出していたはずの人たちが死んで、それの出来ない僕が生き残っている。
放送で名前を呼ばれた他の19人も、あの放送から今に至るまでに死んだ人たちも、きっと僕よりずっと生に執着していたはずだ。

685Usual:2017/12/06(水) 01:27:19 ID:i6behV3I0
敵が再び近づいてくる。
振り下ろされる両腕を避けて頭の前へと飛び上がる。

隣にいたデボラさんは一歩下がり、次の攻撃に備えている。
一方僕は思い切り敵の頭を蹴りつけた。
敵は首を大きく仰け反らせる。
僕はそのまま着地をして、敵の手でも足でも避けられる体制を整える。

しかし、誰が言っていたのだろうか。
敵の攻撃が手足だけだなんて。
いや、勝手に僕が思い込んでいただけだ。
その力の強さから搦め手を使う敵ではないと、いつもの戦いの記憶からそう思い込んでいた。
別に頭突きやら噛みつきやらを思考の外へ投げ出していたわけではない。
むしろ敵の歯が誰かの血で赤く染まっていたことから頭も敵の武器になることくらいは分かっていた。
仮に段々と哀れな姿になっていったオルゴデミーラみたいに身体の一部を飛ばして攻撃してきたとしても避けられるという自身はあった。
しかし敵の攻撃はそんな想定の範囲を大きく外れていたのだ。

敵は仰け反らせた頭を戻しながら、着地する僕と後ろにいるデボラさんの足元に向けて、"かがやくいき"を放った。

比喩ではなく、そのままの意味で足が凍り付いた。
僕とデボラさんの動きはまんまと封じられたわけだ。

686Usual:2017/12/06(水) 01:27:57 ID:i6behV3I0
このブレスは何度か受けたことがあるが、これほどの威力はなかったはず。
おそらく、最初に敵が吐き出した酸のブレスがかがやくいきの威力を高めているのだろう。
敵は最初から搦め手に回っていたのに気づけなかったということだ。

悔しくはない。
ただ、意思のない傀儡人形のように見えて行動ひとつひとつが意味を成していたというその事実を僕は賞賛するだけ。

悔しくはない。
ただ、"意思のない傀儡人形"というのは他でもない僕のことじゃないかと、僕は自嘲するだけ。


さて、どうやらこんな僕もここで終わりを迎えてしまうようだ。
エイトは目を丸くしている。
まあ、助けなんて期待するだけ無駄だろう。
この距離では間に合うはずもないし、何かしようとして今までの準備を不意にするようでは僕らがここで死ぬ事が無駄になる。

ゆっくりと、敵が近づいてくる。

「ハッ!こんなものでアタシたちを封じた気になるたぁ笑わせるねぇ。」

こんな状況下でもデボラさんは笑い出し――――――

「ベギラゴン!」

――――――灼熱の閃光で僕の足を縛り付ける氷を溶かし始めた。

「ガアアアアアアァァ!!」

属性の効果を高める酸の嵐が仇となったのか、火力により氷から解放された僕は敵の攻撃を避ける。
しかし、デボラさんの足を縛る氷の膜は未だ溶けていない。
あろうことか僕の呪縛を解くのを優先して、自分の危機に間に合わなかったらしい。

そのまま敵の爪は一直線に、デボラさんの胴を引き裂いた。

687Usual:2017/12/06(水) 01:31:21 ID:i6behV3I0
「が…ふっ…!」

目の前が血の紅に染まっていく。
僕は聞かずにはいられなかった。

「どうして…?」

助ける道理なんてないはずだ。
僕と彼女は出会ったばかりの他人。
自分の命を投げ出す価値など見出せるはずもないのに。

「さぁ…ね…。」

全身から血を失いながらも、臓器を垂らしながらも何とか言葉を発する。

「アンタの…その純粋な眼…リュビのこと…思い出しちゃったの…」

そしてぷつりと糸が切れたかのように、デボラさんは事切れた。
僕よりも生きることに意味のある人だった。
そして、女性でありながらも気丈に振る舞うその姿が誰かと重なった気がした。
きっと、"彼女"もこうして強く気高いまま死んでいったのだろう。




(――――――あたしが死んだらアルスはあたしのこと、ずっと覚えててくれる?)

(――――――ううん、きっとすぐ忘れちゃうよ。ほら、僕こんなだから。)

(――――――ふん!じゃああんたが死んだら、あんたの思い出なんか――――――)

(――――――だから、死なないでね。そばにいる人のことは絶対、忘れないから。)



いつかの記憶が頭の中を蠢く。

もう一度、"敵"を真っ直ぐに見据えてみる。
既に息絶えたデボラさんを投げ捨てて一歩ずつ、僕の方へとそれは近づく。
鈍い光沢を放つ全身は死を象徴しているかのようだった。



ねぇ、マリベル。
このいつもと違う気持ち、何なのかやっと分かったよ。

――――――デボラを貫いた腕が"死"を纏ってアルスに向かって伸びる。

僕は嘘をついた。
死んでしまった君のこと、僕はずっと覚えてると思う。

――――――空を切ったその腕を魔人の如く斬りつけた。心の乗ったその一撃が外れるはずもなく、デボラの血で染まった腕は粉々に砕け散る。


君を失って僕は――――――悲しかったんだ。



アルスの眼からは、ぽつり、ぽつりと涙が零れ落ちていた。

688Usual:2017/12/06(水) 01:32:36 ID:i6behV3I0
【G-3/トラペッタ外部/午後】

【エイト@DQ8】
[状態]:HP2/3
[装備]:奇跡の剣
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:ミーティアを守る
:バラモスゾンビ@DQ3を倒す

【アルス@DQ7】
[状態]:HP2/5
[装備]:ドラゴンキラー(DQ3)
[道具]:支給品一式 道具0〜2個(本人確認済み)
[思考]:バラモスゾンビ@DQ3を倒す
:夢中になれるものを探す
[備考]:戦いに対する「心」を得たことで下級職全てをマスターし、「魔人斬り」、「かまいたち」、「ヒャダルコ」、「ザオラル」、「死のおどり」、「ぬすっとぎり」、「つなみ」、「天使のうたごえ」、「どとうのひつじ」、「へんてこ斬り」を習得しました。
この小説内のアルスの習得技は3DS版DQ7に沿っているため職歴技は習得していません。

【ブライ@DQ4】
[状態]:健康 MP2/5
[装備]:魔封じの杖
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:バラモスゾンビ@DQ3を倒す


【バラモスゾンビ@DQ3】
[状態]:HP7/10 MP2/3 右腕壊滅
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考]:殺戮と破壊
 [備考]:一定時間ごとに、ダメージが少しずつ回復します。


【ライアン@DQ4】
[状態]:HP1/2 全身の打ち身、顔に傷、兜半壊、腹部に打撲、鎧半壊
[装備]:こおりのやいば
[道具]:支給品一式(パンと水がそれぞれ-1)
[思考]:ジャンボを探す。ホイミンのみんな友達大作戦も手伝う。


【デボラ@DQ5 死亡】
【残り42人】

689 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/06(水) 01:35:46 ID:i6behV3I0
投下完了しました。

690ただ一匹の名無しだ:2017/12/06(水) 08:43:18 ID:Y5Oa9W0I0
投下乙です

デボラの死が、アルスの心を動かしたか
戦いの心を得たアルスのこれからに期待!

691ただの一匹の名無しだ:2017/12/06(水) 22:22:01 ID:lwnVLcTE0
投下乙です!!
ついにアルスの覚醒キターーーーーー!!
これでバラ骨(これの元ネタ知ってる人いる?)くんも死亡待ったなしか?
デボラさん、あんたよくやったよ。
ライアンも死ぬ気で頑張れ。

めっちゃどうでもいい話だけど、最初の段落にある施設って、リブルアーチじゃなくてリーザスじゃないですか?
改めて、投下乙です!!

692 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/06(水) 22:57:04 ID:i6behV3I0
>>691
ご感想、御指摘ありがとうございます。
大陸飛び越えてましたね…

リブルアーチ→リーザス村
変更お願いします。

693 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:44:27 ID:IFpTpiCI0
投下します。

694 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:45:05 ID:IFpTpiCI0
こんにちは。
え?オイラが誰だって?
今、カビ団子のお兄さんのお尻の下にいるよ。
そう、ゲレゲレ。
アベル様の仲間で、ロッキーの先輩のゲレゲレ。


ジャンボがトロデーン城から出ていった後、オイラもどうするか悩んだ結果、ジャンボについていくことにした。
ターニアまで巻き込むのはイヤだけど、彼女も兄を探したいらしい。
それにあのピサロって魔族も、あんまり信用できないし。
やはりオイラはジャンボのことが気になる。


(おい、やべえぞ敵襲だ!)
(また敵が来やがって、ロッキールが……)
(メガンテを使いやがった………)

オイラは納得がいかない。
ロッキーは爆弾岩の中でも大人しい性格で、余程のことがない限りメガンテを使うヤツじゃない。
最も他の魔物達はそんなこともつゆ知らず、爆弾岩だという理由で恐れて近寄らなかった。だからアベル様が手を差し伸べるまでは仲間がいなかったけど。
ロッキーがメガンテを使わざるを得なくなるほど手ごわいヤツが現れたら、オイラが気配を察知するはずだ。
カビ団子が知るはずもないが、オイラがアベル様と再会してからすぐにロッキーも仲間になったから、オイラはアイツのことをよく知っている。

(それがしでございますよ、ゲレゲレ先輩ィィィ!)

とはいえ、オイラがこの世界で会ったロッキーは、オイラの知ってるロッキーではなかった。
自分のことをロッキールと名乗ったアイツは、バカみたいに明るい性格になっていた。
だから突発的にメガンテを唱えるような猪突猛進な性格になったのだという解釈もあるが。


まだ気になる点はある。
「グランマーズ」って誰だ?
あれはよく覚えている。
ターニアがグランマーズって人のことを話した時だ。
彼女の世界の人間らしいが、どういう訳かジャンボのヤツも知っているらしい。
ジャンボの奴、ヤケに熱心にソイツの話を聞いていた。
まるで他人ごとでないかのように。
その表情からは、オイラが威嚇せざるを得ないほど、おぞましいものを感じた。
ターニアは恐ろしいことを話してはいなかったし、これはどういうことだ?


兎に角、ロッキーを死なせたのは、オイラの責任だ。
仮にロッキーが自分の意志でメガンテを使ったのだとしても、オイラが近くにいればそれを制止できたかも知れない。
ターニアを守ればいいと思っていたが、同時にジャンボの見張りをしなければいけなかった。
ジャンボを警戒しながら、ゲマをはじめとするどこにいるか分からない敵が現れることを警戒し、それでいてターニアを守るのは難しい。
とりあえず背中に乗せておけばそう簡単に後ろ暗いことが出来ないだろう。

695 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:45:41 ID:IFpTpiCI0

そんなわけで、今はジャンボとターニアを乗せて、トラペッタへ向かっている。
ジャンボの地図でみたけど、ここから先は平原や荒野が多かった大陸の西側と違って、森や茂みが多い。
日も沈んできたし、これまで以上に警戒する必要がありそうだ。
ジャンボにも、誰とも分からない襲撃者にも。

「わあっ、はやーい!!」
「ありがとよ。これでヒューザにも追いつけるぜ!!」
上にいる二人が感謝を告げる。
トロデーン城でピサロやコニファーと話していた時は、計算高いが特に危険な面はないドワーフの青年、という印象だった。
誰かに危害を加えようとするのがウソのように。
本当にロッキーを自爆させたのがジャンボなら、城にいた誰かもだまし討ちにかけようとしたんじゃないか?


そして、ジャンボ以上に気がかりな人物がいる。
アベル様。
ミルドラースとの戦いはオイラも覚えている。
名前は会うまでに何度も聞いていたが、いざその姿を見た時、オイラも恐ろしかった。
仲間のほとんどは威圧感に押されていたし、リュビ様なぞ家族がいなければすぐに逃げ出してしまいそうだった。

だが、最も怯えていたのは、アベル様が指示する凄まじい攻撃を受けていた、ミルドラース本人だった。
オイラを始め多くの魔物を従えたアベル様は、絶え間なく仲間に攻撃の指示を出して、仲間が死にそうになると回復させてまた容赦なく攻撃していた。
それは、どちらが魔王なのか分からなくなったくらい。


アベル様が今この世界で何をしているのか知りたい。
誰かを手にかけたりしていなければいいのだが。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ククールとメルビンの墓を作り終え、ヒューザの姿が見えなくなってしばらくした後、ヤンガスは再び歩き出そうとした。
「よしっ!!」
顔を自分の両手でパンと叩き、自分を鼓舞する。

やはり自分は考えるのに向いていない。
自分は体を動かす方が性に合っている。
自分は仲間を探さなければいけない。
先程、この世界では自分の想像を超えることが起こると実感した。


エイトが、ゼシカが、モリーが、ゲルダが、そしてミーティアがククールのように死なないために。

696 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:46:11 ID:IFpTpiCI0
彼ら、彼女らがククールのような『馬鹿なこと』をしでかさないように。
ヒューザと同じ方向に行くのは癪だが、エイト達がいるのだとすればトラペッタの可能性が高い。
ひょっとすれば、ゼシカの故郷であるリーザスの可能性もある。
どちらにせよ、目ぼしい施設が教会一軒ぐらいしかない西側にいる可能性よりかは高い。


かつて自分が壊したはずの橋を渡り、街道を進む。
暫く街道を歩いてから、ヒューザに後ろを歩いていることを気づかれないように、街道から少し離れた平原を進んでいた。

(こ………これは…………)
自分がよく知っている者を見つける。
聖堂騎士団の団長、だった男の死骸。
彼によって、2度も牢獄に入れられた苦い思い出がある。
ラプソーンが復活したのも、考えようには彼の仕業だ。
だが、ヤンガスはそれを赦そうとしていた。

窮地に陥ったジャハガロス戦で駆け付けたマルチェロ。
それだけで赦したつもりはなかったが、仲間のククールの顔を見て気が変わった。
露骨に声に出して喜んでいたわけではないが、彼が途方もなく喜んでいたことは顔に書いてあった。
元々ポーカーフェイスの彼が、表情を変えるとすればオディロ院長か、はたまた義兄によるものだったからだ。

彼がすでに死んでいることは、放送で聞いたことだった。
だが、驚いたことはそれではない。
マルチェロの死の原因となったらしき胸の傷。
多少の火傷もあるが、それではないだろう。

(これは………間違いねえ。レイピアで刺された痕でがす。)

レイピア、というと真っ先に思い浮かぶ。
自分の仲間であったククールの得意としていた武器だ。
この世界でもククールは死んだとき、血に染まったレイピアを手にしていた。
レイピアの使い手が他にもいる、その血はヒューザやメルビンなどの解釈の余地がある。
だがククールが死んでいたあの場所からして、距離的に彼が殺した可能性は十分にある。


(何が……どうなってんでげしょう…………)
ククールがヒューザ達を襲ったのも、マルチェロを殺したことが原因だったかもしれない。
自分が知っているククールとマルチェロならば、殺し合う可能性は低い。
ジャハガロスの時のように、再び協力もできることさえ期待していた。
ヤンガスが知る由もないが、ククール本人もそう思っていた。


しかし、自分のない頭であれこれ考えても仕方がない。
自分が出来ることと言えば、やはりこれだ。

穴を掘り、死体を埋葬する。

少し前、ククールとメルビンをそうしたように。

(今度こそ、天国で仲良くするでげすよ)

再び街道に戻る。
長身のマルチェロを埋葬するのは苦労したため、流石にUターンでもしてこない限り、ヒューザとの距離は離れたはずだ。
ところが、後ろを振り向くと、キラーパンサーが走ってきていた。

697 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:46:37 ID:IFpTpiCI0

「おーーーーーい!!」
「!?」

よく見ると、キラーパンサーの上に緑色の亜人のようなものと、青い髪の少女がいる。
「ヤンガスだろ?」
「カビ団子のクセに、なぜアッシのことを知ってるでげす?」
「またカビ団子かよ……ドワーフと似たような体形しやがって………」
「なにぃ!?アッシのどこがドワーフに似ているでがす!!」
「ちょっと!!いきなりケンカはやめてよ!」


事実、球に近い体形、小柄、鋭い目つき、色黒の肌と、似ている点は多くあるのだが。
実際に、ヤンガスの背を少し低くし、肌に緑がかかればジャンボと区別するのは極めて難しくなるはずだが、そこは話さないでおく。

「オレ達はトロデーンにいたピサロから、オマエのことを聞いたんだ。」
「ピサロの旦那を、知っているんでげすか?」
「ああ、ついさっき城へ来た時、話をしたんだ。」

そこへゲレゲレが喉を鳴らし、ヤンガスになつく。
「こらこら。どうしたでげすか?」
「へえ、アンタ、魔物に好かれるタチか?」
「アッシは子供の頃、「アニマルヤンちゃん」と呼ばれて、動物に好かれていたんでげすよ。」
「へえ……魔物使いでもないのにねえ……」
「魔物使い?魔物マスターならお兄ちゃんたちから聞いたことあるけど……」


ジャンボだけでなく、ターニアも疑り深そうな目で見ていた
しかし事実として、ヤンガスは魔物や動物と触れ合う機会は多かった。
少年時代ポッタルランドという世界で、モリーの壺という道具を使いながらも、魔物を仲間にして冒険していた。
つい最近でも、そのモリーが経営するバトルロードや、ラパンハウスで魔物と多くかかわった。


「あと、ヒューザのヤツを知っているんだろ?オレはアイツを追って、城から来たんだ。」
「あ、アンタがヒューザの言っていたドワーフでげすか!!」
戦いに参加しているドワーフは一人しかいないだろというツッコミを入れたかったが、黙っておいた。

「で、ヒューザのヤツはどこにいるんだ?」
「それが……アッシが怪我の治療をした後、すぐに東へ行ってしまったでげす!!」
「なんでだよ。」
「まあ、アッシやヒューザにも色々あったんでげす!!それから、ヒューザもアンタを頼りにしているようでげす!!」
「言ってる意味が分かんねえよ!!とにかく、アンタとはぐれたんだろ?」

698 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:48:10 ID:IFpTpiCI0
ジャンボは再びゲレゲレを走らせる。
ヒューザの目撃者がいたということは、彼に会えるのもそう遠いことではないだろう。
「あ!!少し待ってくれ!!」
「まだあんのかよ!」
ヤンガスは名簿で、エイト達のページを見せる。

「この人達はアッシの知っている人でげす。もしヒューザに会う途中、この人たちにも会ったらこう伝えるでげす。
ヤンガスが仲間を探しているからトロデーンで合流しやしょうって。」

「OK。でも、もし上手くいかなくても、気にすんなよ。それとアンタはどうするんだ?」
「アッシは別の場所を探るでげす。この大陸には、知り合いの故郷の村もあるんで。手分けして探しやしょう。」
「それじゃあ、ある程度やること終えたら、トロデーンで落ち合おうぜ」


ヤンガスは再び出会った人物と別れる。
ジャンボ達は当初の予定通り東へ。ヤンガスはリーザス村を目指して南西へ行くことにした。




(まあ、たしかに手分けした方が仲間を探すのは簡単だがな)

「ジャンボさん、さっきのヤンガスって人と、一緒に行かなくていいの?」
「本人も別に行くところがあるらしいし、無理に付き添わなくてもいいだろ?」

実を言うと、ヤンガスが付いてこなくて、安心しているのはジャンボの方だった。
仲間を集めるのは良いとして、あまり仲間が多すぎるのも困りものだった。


ジャンボは他の参加者とは異なり、やるべきことがこの戦いを終わらせる以外にある。
自分の世界を滅ぼす遠い要因になる人物を消すこと。
大魔王を倒したということから、かなりの実力が伺えるし、バーバラの時のように都合よく殺せることもないだろう。
ネルゲルやマデサゴーラ、ダークドレアムのようなただの強敵なら仲間と協力できる。
奴らは満場一致で敵だと判断できるからこそ、仲間も集まった。
だが、事情を知らない人物にこの二人を敵だと信じさせるのは難しい。
そして彼らを殺すところを誰かに見られれば最後、事情はどうであれ危険人物のレッテルを貼られる。
従って、敵にも味方にも知られずに殺す必要があるのだ。


従って、同行者は極力少ない方がいい。
本当のことを言うと、ターニアもゲレゲレも城にいて欲しかった。
ゲレゲレの場合は、人とのコミュニケーションが難しいこと、乗っていれば早いこともあるから文句は言えないが

699 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:48:37 ID:IFpTpiCI0


だが、もうじき会う予定のヒューザや、他の自分のことを知ってる仲間達。
自分のことを信頼している人物なら別。
彼らは、自分が極めて頼れる人物だと思っている。
自分の世界が滅ぼされることは、彼らの世界が滅ぼされることでもあるため、他人事にもならない
だからレックとチャモロを殺すことにも、口車に乗せれば手伝わせることもできるかもしれない。
ウソをついてもある程度なら信じてくれるだろう。
ジャンボが第一優先で知り合いを集めたいのは、そういうこともある。


そもそも、「自分達の世界がこの戦いのとある参加者が原因で滅ぼされること」はウソではない。
誰もが信じ難いだけの真実だ。
ズーボーだけは馬鹿正直すぎるため、世界滅亡を防ぐために誰かを殺すなんて言ったら、「オイラは納得できないのだ!!」とか言って言うことを聞きそうにないが、どの道アイツは死んでしまった。
もちろん、一番重要な目的でもあるエビルプリースト戦にも役に立つ。(ヒューザとアンルシア以外は微妙だが)




自分を信用してくれる人物を集め、そうでない人物と距離を置く。
その点、オレのことを疑っているらしき尻の下にいるゲレゲレと、後ろに座っているターニアも、どうするか悩むところだ。
オレがレックとチャモロを殺す話を、仲間に持ち掛けたら最後、二人を敵に回してしまうことは避けては通れないだろう。
特にレックを兄に持つターニアからは決定的に糾弾されるはずだ。
いっそのこと三人だけになった時点で不意を突いて殺してしまうことも考えたが、素振り一つ見せただけでゲレゲレが襲い掛かってくるに違いない。
そもそも殺人は自分の最終手段であり、だれかれ構わず殺したいわけではない。
それ以前に自分から進んで殺しに行かなくても、勝手に殺される可能性だってある。


そこまで考えると、急にため息が出た。
距離感がどうとか、いつからオレはこんなみみっちい奴になっちまったんだと。
自分を信じてくれる仲間に対して殺人を正当化し、ましてや手伝わせようとするなど、間違ってもやってはいけないことだ。
(まあ、仕方ねえよな。世界を守って、シンイの所へ行くまで、オレはどんな汚れ仕事でもやってやるさ)

700 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:49:30 ID:IFpTpiCI0


そうこうしているうちに、人影が見える。
丁度ヒューザが、ホイミンを連れてトロデーンへ戻ろうとしていたのだ。
二人で話し合った結果、トラペッタには巨大な魔獣の死体があり、人を集めるのには向かないということと、ポルトリンクは二人で行くには不安なほど距離があるため。

とりあえず仲間を一人見つけたことで、ジャンボも喜ぶ。
やはりゲレゲレのスピードは伊達ではなかった。
自分の世界ではキラーパンサーのデザインのドルボードしかなかったが、ゲレゲレのスピードはそれに勝るとも劣らない。

「おーい!!ヒューザ!!」


「オマエは……ジャンボ!!」

ひとまず、目的の人物には一人は出会えた。
だが、オレの仕事はここから。
さて、目の前にいる二人は、何を言えばオレの思い通りに動いてくれるか。
それと、周りにいる二人のことも、算段に入れておかねえとな。


非常にどうでもいい話だが、今から6時間ほど前、この場所でとある若者二人が、参加者を殺すか否かの話し合いをしていた。
次の話し合いは、どうなるのか。


【E-3/草原/夕方】

【ジャンボ(DQ10主人公・ドワーフ)@DQ10】
[状態]:健康
[装備]:ナイトスナイパー@DQ8
[道具]:支給品一式、道具0〜2 天空の剣、罠抜けの指輪 罠の巻物×3 ドラゴンローブ
[思考]:
基本方針:エビルプリーストに借りを返す。6世界の人物を……?(非力な人物は除外)
1:ヒューザ捜索。今はとにかく仲間を集める。
自分を信じてくれる人物は自分のやることを手伝わせ、そうでない人物とは一定の距離を置く。
2:自分のことを疑っているゲレゲレもどうするか考える。
[備考]:
※職業はレンジャーです。少なくともサバイバルスキルが140以上、弓スキルが130以上です。
※エビルプリーストの背後に黒幕がいるのではと疑っています

【ゲレゲレ(キラーパンサー)@DQ5】
[状態]:HP2/3、胴体にダメージ(中)、身体側面に切り傷
[装備]:悪魔のツメ@DQ5
[道具]:支給品一式、四人の仲間たち(絵本)@DQ5、道具0〜1
[思考]:
基本方針:主催を倒して脱出する。
1:ジャンボに不信感。

701 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:50:16 ID:IFpTpiCI0

【ターニア@DQ6】
[状態]:体の一部に擦り傷あり
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、愛のマカロン×6 道具0〜2
[思考]:基本方針:お兄ちゃんと合流したい。

【ヤンガス@DQ8】
[状態]:健康 MP7/10
[装備]:スライムの冠(DQ8) ふつうのチーズ(DQ8) 激辛チーズ(DQ8)
[道具]:支給品一式 トーポ(DQ8) バニースーツ(DQ10) 堕天使のレイピア オーディーンボウ@DQ10 矢×9 不明支給品0〜2
[思考]:リーザスに向かい、仲間たち(特にエイト)との合流を図る。
黒幕の情報を集める ジョーカーへピサロの伝言を伝える
第三回放送の頃に可能であればトロデーン城に戻る
※トーポは元の姿には戻れなくされています



【ヒューザ@DQ10】
[状態]:HP3/10 MP0
[装備]:名刀・斬鉄丸@DQ10 天使の鉄槌@DQ10
[道具]:支給品一式 支給品0〜1
[思考]:仲間(特にジャンボ)を探す

【ホイミン@DQ4】
[状態]:MP1/8 健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 道具1〜3個
[思考]:ガボと共に『みんな友達大作戦』を成功させる ヒューザに付いていく。

702 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 20:57:04 ID:IFpTpiCI0
投下終了です。
投下中に脱字を気づいたので訂正を。
699の「自分を信用してくれる人物を集め、そうでない人物と距離を置く。」
を「自分を信用してくれる人物を集めるが、そうでない人物、あるいは自分が良く分からない人物とは一定の距離を置く」
にしておいてください。

今回の話では、ゲレゲレの考えやジャンボの考えを多く書いたため、これまでの所から見て矛盾してる可能性もあります。
一度大きく書き直した所もあるので、意見お願いします。
それと予約欄にターニア書き忘れてました。すいません。

703 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/19(火) 21:00:41 ID:IFpTpiCI0
それとタイトルが抜けてました。「再会」です。

704ただ一匹の名無しだ:2017/12/19(火) 23:53:41 ID:6B/cMWqA0
投下お疲れ様です。

ところで3DS版のドラクエ8で検証してみたのですが、E-3からリーザス村に向かおうとすると、なるべく近道を通って何かとのエンカウント無しに進んでもリーザス村の辺りで大体6時間が経過するので第三回放送までにトロデーンに戻るのはまず不可能です。
ある程度の速度調整はSSなので効かせてもいいとは思いますが、第三回放送までの6時間少しでリーザスを経由してトロデーンに戻るのは他のキャラの進み具合を見てもある程度の域を出ているように思えます。

実際にその距離を走ったことのあるヤンガスが間に合わないことに気づかないのも不自然なので、リーザス村に向かうのであればトロデーンに向かうことを諦める考察を加えた方がいいと思います。

ちなみにこれは代案ですが、ヤンガスがリーザスに向かいつつ第三回放送までにトロデーンにイシュマウリについてよく知る人物を送り込みたいのなら、ヤンガスを一旦トラペッタに行かせてエイトがトロデーン、ヤンガスがリーザスに分割するという手もあるので御一考頂ければと思います。

705 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/20(水) 00:43:50 ID:zJgW50H.0
ご指摘ありがとうございます。すいません。時間関係のことを完全に忘れていました。

ではこの話を終える間際に、この文章を。
それとヤンガス一人場所が違うため、現在地をヤンガスだけE-3 森に変更します。


(しまったてげす……)
ジャンボ達と別れてしばらく進んでいたヤンガスは、重要なことに気付いた。
(リーザスに向かうってジャンボに見栄を切ったでげすが、恐らくリーザスに向かえば……)

ヤンガスはうっかりしていた。
もう日は沈もうとしているのに、遥々リーザスに向かえば、イシュマウリが出るかもしれない第三放送までに間に合わない。
ルーラも制限されている上に、キメラの翼を持っている人に会える可能性も低い。

不幸中の幸いというべきか、まだあまり道を逸れてはいない。
今からでも一人でトラペッタへ向かうべきか、エイト達に会える可能性は幾分か低いが、滝の洞窟近くを探すべきか。

(やっぱり、急に予定は変更するべきでないでげす………)

【E-3/森/1日目 夕方】

【ヤンガス@DQ8】
[状態]:健康 MP7/10
[装備]:スライムの冠(DQ8) ふつうのチーズ(DQ8) 激辛チーズ(DQ8)
[道具]:支給品一式 トーポ(DQ8) バニースーツ(DQ10) 堕天使のレイピア オーディーンボウ@DQ10 矢×9 不明支給品0〜2
[思考]:仲間たち(特にエイト)との合流を図る。
黒幕の情報を集める ジョーカーへピサロの伝言を伝える
第三回放送の頃に可能であればトロデーン城に戻る
※トーポは元の姿には戻れなくされています

※一人でトラペッタへ向かうか、それ以外の近場を探るかは次の書き手にお任せします。

706 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:52:18 ID:GvRx5MIg0
投下します。

707決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:53:02 ID:GvRx5MIg0

ねぇ、マリベル。
このいつもと違う気持ち、何なのかやっと分かったよ。

僕は嘘をついた。
死んでしまった君のこと、僕はずっと覚えてると思う。

君を失って僕は――――――悲しかったんだ。

あの時それが分かっていたら――――――なんて言えていたのかな。


(雰囲気が………変わった?)
(これは………)

アルスから漂っている、ふわふわした空気が突然燃え盛る炎のようなものに変わっていったことは、ブライにもエイトにも分かった。


「ガアアアアアアアアアアアアア!!」
腕を壊されたバラモスゾンビがアルスに突進してくる。
彼は死ぬまで戦い続ける呪いを受けている。
腕一本ぐらい失ったくらいで戦いを終える筋合いはない。


(デボラさんの………仇だ………)
涙に濡れた目で、強大な怪物を睨みつける。
バラモスゾンビは残った腕でアルスを握りつぶそうとする。

「危ない!!」
ブライは思わず声を上げる。

しかし、アルスは無言で腕を振った。
アルスが起こしたかまいたちが、バラモスゾンビの凶悪な腕を弾く。
間髪入れずにアルスは跳び上がり、ドラゴンキラーを振りかざし次の攻撃の準備をする。
バラモスゾンビも大きく口を開く。
さっきアルス達を襲った、かがやくいきを吐くつもりだ。
だが、彼の攻めはそんなものでは止まらない。

「へんてこ斬り!!」
文字通り軌道のつかめない斬撃はバラモスゾンビの頭の向きを明後日の方向に変えた。
当然かがやくいきも見当違いの方向に当たる。


「ヒャダルコ!!」
追加で尻尾の攻撃が来るが、それも無数の氷の刃に阻まれ、アルスには当たらない。

(すごい……)
それを端で見ていたブライも感心する。
動きの目まぐるしさはさっきまでとあまり変わらない。
しかし、これまではその目まぐるしさが原因で攻撃の破壊力が欠けていた印象だった。
一方で今のアルスにはそれがある。

708決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:53:26 ID:GvRx5MIg0

「アルス殿!!バイキルト!!」
ブライも賭けようとした。
アリーナやクリフトではない若者の新たな可能性に。
これまでのようにピオリムではなく、新たに目覚めた力を完全に活かすための呪文をアルスにかける。

アルスは地面に着地して、正拳突きをバラモスゾンビに放つ。
これは以前のアルスでも使えた技だが、ブライのバイキルトも相まって、威力は桁違いだった。
バラモスゾンビは吹っ飛び、瓦礫の山の下敷きになる。

「やったか?」
「ダメだよ。あの程度で倒せるようなら、もっと早く倒れている。」
「もう少し待っててください。私の力を最大まで高めれば……」



言った通り、瓦礫の山からバラモスゾンビが這い出てきた。
アルスはこの見境なく破壊を続ける魔物に見覚えがある。


(ど…どうしたことだ……。何も見えん………。暗や……みが……おそい……かかってくる……)

力を求めすぎるあまりに究極魔法、マナスティスによって破壊神と化したゼッペル王。
バラモスゾンビからも、何かこの魔物が放っている物とは別の邪悪な力を感じる。

(今なら、あの呪文を使うことができる……。)
そのマナスティスを打ち破る唯一の呪文、マジャスティス。
しかし、アルスはこの呪文を何故か使う気がなかった。



(ねえ、あの敵はスクルトで守りを固めてくるから、大神官のあの魔法で解除すればよかったのに、なんであの呪文を使わないの?)
(アルス、なんで使わないんだ?)
(何か使いたくない理由でもあるのでござるか?)



誰が何と言おうと使う気はなかった。
あれは、大神官が大事なゼッペル王を失いたくないという決意をもって、苦労しながら研究の果てに編み出した特別な呪文だ。
決して、メラやギラのような誰にでも覚えられるものではない。
誰かを守りたい、失いたくない。
そんな気持ちを持っていないアルスが、マジャスティスを使う資格は全くないと感じた。


(ねえ、僕よりも、他の誰かの方が、使う資格あるんじゃないの?)


しかし、他の誰も使うことは出来なかった。
残ったのは、いまいち判然としない気持ちだけだった。
その魔法を使わなくても困ることはなかったため、話題にも挙げられなくなった。

709決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:54:06 ID:GvRx5MIg0
「グオオオオオオオ!!!」



バラモスゾンビは両手を失ってなおも迫ってくる。以前のギクシャクしていた動きよりもスピードが上がっていた。
ゾーマがバラモスに掛けた呪いと、エビルプリーストが掛けた魔法が、バラモスゾンビの体とシンクロしてきたのである。
最初のレミールとの戦いは殴る蹴るの物理攻撃ばかりだったのに対し、ライアンとナブレットとの戦いで頭を投げる攻撃を行い、そして酸や氷の息を吐き始めるようになったのもそれが原因だ。
それに合わせて、自動回復の速度も上がっている。
アルスの魔人斬りによって粉砕された腕は、既に修復が始まっていた。
ここで食い止めなければ、倒すのは難しいだろう。



アルスは呪文の詠唱を始める。
(な、なんじゃ?あれは………)
(知らない魔法だ……)


今の自分には分かった。
自分と同じで、大切な人を失ってしまったゼッペル王の気持ちが。
自分と同じで、大切な人を失いたくないと思う大神官の気持ちが。

アルスにとって、デボラが自分と重ねたリュビ、という人物が誰なのかは分からない。
でも、彼女にとっても大事な人がいたはずだ。

今、僕は誰かを守りたい。
これ以上誰かを失いたくない。
だって、大事な人を失うことは、悲しいことだから。

「悪しき魔力よ、すべて消えたまえ………有は無に、一つは零に………
マジャスティス!!!!!!!!!!」
アルスの手から、青、黄、赤、橙、水色、金、銀、様々な色の光が出る。
彩り鮮やかな光がバラモスゾンビを照らす。


この魔物も、この世界で自らを犠牲にしてでも新たな力を求めたのだろうか。
それとも、ルーシアを目の前で失ったゼッペル王のように、誰かを守りたかったのだろうか。


(ガ…アアアアアア!!!!!!)
既に元々の生命はレミールによって死ぬ直前まで追い込まれていたため、バラモスの動力源はエビルプリーストとゾーマの魔法だけだった。
今まで斬っても突いてもダメージを受けた様子のなかったバラモスゾンビが苦しみ始める。


「アルスさん、ブライさん、ありがとうございます!!」
既にテンションが最大まで上がったエイトが、光を纏った奇跡の剣でバラモスゾンビに斬りかかる。
ミイラ男や、腐った死体、シャドーなどの命のないまま魔力や怨念によってうごめき続ける魔物には、テンションの籠った一撃が効果的だ。
バラモスゾンビは死なばもろともと、残った力を使ってかがやくいきをエイトに浴びせる。
だが、既に魔力を失いかけているバラモスゾンビのブレスごときで、エイトを止められる訳がない。
彼もまた、ミーティアを守るという決意があるのだ。
それにブレイクブレスの効果は、スーパーハイテンションの時に消えていた。

710決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:55:02 ID:GvRx5MIg0





「消えろ、邪悪な魔物よ……ギガ・ブレイク!!」
凄まじい光の刃が、バラモスゾンビを飲み込む。
「ギャアアアアアアアアアアア!!)
巨大な悲鳴と共に、消えていく。
その悲鳴も、どんどん小さくなる。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★



(終わった………)
(なんとかなったようじゃな。)


バラモスゾンビを倒して、安堵している二人をよそに、エイトはトラペッタの町に入る。
既に入り口の瓦礫は、ギガブレイクの余波で吹き飛ばされていた。



中に外観以上に悲惨なことになっていた。
町の多くを占拠している巨大な魔獣の死体。その近くには、魔獣ほどではないが大きな竜の死体もあった。
まともな形を保っている建物は一つもない。
だが、まだここでミーティアが隠れているかもしれない。
死体だとしてもトロデ王とだって、会いたい。

「ミーティア!!いたら返事してくれ!!」
エイトは大声を上げ続け、彼女を探し続ける。



一方でアルスとブライは、デボラの遺体を埋葬していた。
エイトは自分達を置いて行って中に入ったが、彼に関しては仕方がない。
アルスの心が熱を手に入れた代償は、間違っても小さいと言える物ではない。
(なんで……私より若い者が……次々と…)
(デボラさん。ありがとうございました。本当に……)
二人共涙を流す。
でも、泣いてばかりいる訳にはいかない。

「この男の子だったようです。デボラ殿がさっき言ったリュビというのは。」
ブライが名簿を開き、アルスに見せる。
「……子供だったのかもしれないよ。デボラさんの。」
アルスと余り年は変わらない子供だ。
髪の色が同じで、くせっ毛なところから、家族なのかもしれない。
アルスも、やがてボルカノとマーレ、そしてシャークアイとアニエスのように誰かと結婚して、子供を作るだろう。
その時、自分は父親として、子供に自分の生き方を見せることが出来るだろうか。
そして想像したくないが、自分が何もできないままその子供が死んだ時、自分はどう感じるのだろう。

711決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:55:30 ID:GvRx5MIg0


彼女の墓を作り、武器に使っていたダイヤモンドネイルを置く。
「この戦いを終わらせよう。僕はやっと分かったんだ。誰かが死ぬことの悲しさを。」
死んだら、それで終わりではなかった。
死んでも、その人が生きたことは誰かの心の中に残る。
デボラさんが、マリベルが身を挺してそれを教えてくれた。



(アリーナ様……クリフト殿………)
自分の託した未来を担ってくれるはずの二人を失ったブライには、もう何も残っていないはずだった。
しかし、アルスの心の変わりようを見て、新たな決意を固めた。
生きよう。
そしてこの戦いが終われば、自分の命を全て語り手として費やそう。
一人でも多くの人々に覚えておいてもらうのだ。
最後まで運命に抗い続けた姫の話を。
最後まで大切な人のことを想い続けた神官の話を。


陳腐なフレーズだが、人は忘れられた時本当に死ぬという。
二人が本当に死なないためにも。自分にはやることがある。



「ところで、ブライさん。」
「どうしたのですか?」
「向こうに、何か引っかかってますよ。」


近くの木の上にあったものは、死んだゲマが持っていたザックだった。
バラモスゾンビとの戦いで、吹き飛ばされていたのだろう。そういえばデボラさんが出てきたのも、このザックからだ。
一応、何があるか分からないが開けてみる。
杖に地図、剣からよく分からないものまで、予想外なほど多くの道具が出てくる。
この魔物はエイトに殺されるまで多くの人を襲っていたのだろう。


(これは、王家の墓の宝……確かにこの戦いでは危険な道具になりそうじゃ…)
「ブライさん、知っている道具がありました?」
「はい。これは依然我々が使っていた、変身が出来る杖なのです。」
「へえ……。あ、これは………!!」
「アルス殿も、何か見つけましたか?」

それは、海の力を借りた剣。
アルスはかつてこれでオルゴ・デミーラを打ち破った。ダークパレスの滝の裏側で見つかったものが、こんな所にあるとは。
(また、力を貸してもらうよ)
アルスには、今度はこの剣を完全に使いこなすことも、戦いを終わらせる自身もあった。

712決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:56:30 ID:GvRx5MIg0


「ああ、これは……」
アルスが剣の説明をする。

それ以外にも、武器や防具、その他の道具など、いずれも戦いに使えそうなものばかりがある。
しかし、一つだけ例外があった。
「何ですかな、この……人形は?」
人形、というと昔ブライがアリーナにプレゼントして、3日後格闘術の練習台にしたアリーナによってボロボロになって帰ってきた苦い思い出があった。
この戦いの舞台にあることから、ただの人形でないと考えるのが妥当だ。

「ちょっと待ってください。説明書も、付いてますよ。」
「え〜と、『メッセージ吹き込んだ後、別の相手が手にはめれば、相手に自分のメッセージが伝わる?』」
「テレパシーのようなもの?」
「でも、これは我々の世界の技術でも、魔法の道具でもない。エビルプリーストのヤツ、こんなものまでどこから手に入れた?」

アルスが持っていた最強の剣に、何なのか全く分からないぬいぐるみ。自分の国の秘宝であった杖。
ブライはエビルプリーストの背後にいる、巨大な何かの存在を無意識に感じ取った。


【バラモス@DQ3 死亡】
【残り41人】

【G-3/トラペッタ内部/夕方】

【エイト@DQ8】
[状態]:HP2/3 MP微消費
[装備]:奇跡の剣
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:ミーティアを守る

【G-3/トラペッタ外部/夕方】

【アルス@DQ7】
[状態]:HP2/5 MP微消費
[装備]:オチェアーノの剣 (DQ7)
[道具]:支給品一式 ドラゴンキラー(DQ3)まどろみの剣 トンヌラのメモ(トラペッタの簡易見取図) ギガデーモンのふくろ(不明支給品0〜2) ゲルダの不明支給品0〜1個
道具0〜2個(本人確認済み)
[思考]:この戦いを終わらせる。
[備考]:戦いに対する「心」を得たことで下級職全てをマスターしました。
この小説内のアルスの習得技は3DS版DQ7に沿っているため職歴技は習得していません。

【ブライ@DQ4】
[状態]:健康 MP3/10
[装備]:魔封じの杖
[道具]:支給品一式 へんげの杖 白き導き手@DQ10  道具0〜2個
[思考]:生きる。生きてアリーナとクリフトのことを知ってもらう。

※このあと白き導き手@DQ10を二人がどのように使うかは次の書き手さんにお任せします。
※【G-3/トラペッタ外部】にダイヤモンドネイル@DQ5が置かれました。

713決意 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/24(日) 00:58:04 ID:GvRx5MIg0
投下終了です。
物語の後半に白き導き手が出ましたが、シオンからのメッセージが来るかどうかは分かりません。
その他、矛盾点がありましたら、指摘お願いします。

714ただ一匹の名無しだ:2017/12/24(日) 02:44:36 ID:gb5ZTVjQ0
投下乙です
バラモスゾンビが倒されて、新たな決意を胸に抱いたアルスとブライのこれからが楽しみ
エイトはミーティア次第でまだ怖いが…その同行者がキーファなのは不思議な巡りあわせだよなあ

715 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/24(日) 20:38:22 ID:OYriccYY0
投下します。

716血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:39:16 ID:OYriccYY0
人間と魔物の間には壁がある。
古来より魔物は人間を襲い、多くの死者を出していた。
そして人間は魔物を恐怖し、魔物を討伐することに軍事力を注いでいった。
そこにあるのは加害者と被害者の関係だと信じて疑わなかった。
しかし、魔物もまた襲い来る人間に恐怖しているのだということを誰が想像しただろうか。
互いに血を伴うこの対立の根源が人間側による攻撃にあるのかもしれないということを、いったい誰が想像しただろうか。



ナブレットから聞いた「ジャンボ」という男を筆頭にバラモスゾンビに対抗する戦力を探すため、ライアンは草原を走っていた。

目的地は滝の洞窟。
強い者は平原よりも洞窟の方にいるのが世の常でござる!…と、武人に相応しくないRPG地味た発想によるものだった。
『街の外に出て歩き続けるとやがて夜になりましょう。』などという当たり前のことを忠告してくる同僚もいる辺り、バトランドの教えはどこかおかしいようだ。

バラモスゾンビとの遭遇の危険性を危惧してトラペッタから離れて草原を南下していたため、トラペッタに既にバラモスゾンビと戦うパーティーが出来上がっていることなどライアンには知る由もなかった。
それが幸であったのか不幸であったのか、それは誰にも計り知れない。

717血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:41:06 ID:OYriccYY0
「ムッ…誰かいるでござるな…」

道の先に大きな影が見える。
その巨体から見るに人間ではなく、呪術で動くミステリードールの類の魔物のようだ。
交戦の合図か、両腕と両足を開きライアンの前に立ち塞がる。

この類の魔物は意思を持たず、術者の命令にただ従うのみ。
ましてやこんな殺し合いの世界に呼ばれるくらいだ。
皆殺しの命令がインプットされていてもおかしくない。

「みんな友達大作戦」を成し遂げるために出来ればほかの参加者と戦いたくはないのだが、バラモスゾンビのようにどうしても話の通じない相手は少なからず存在する。

悲しいことだが、「みんな友達大作戦」はそういった存在を排除した後にしか成立し得ないのだろう。
全身に痛みが走る中でこのような巨体を相手では分が悪いとはいえ、戦うしかないのかもしれない。
腰の剣に手を当てた直後であった。

「待ってください!私たちは戦う気はありません!」

声が響き渡った。
巨体に隠れて見えなかった黒髪の女の子がこちらへ向かって走って来る。

「あの…!この子はいい子なんです!だから…だから…戦わないでください!」

("いい子"でござるか…)

その言葉に思う節があるライアンは尋ねる。

「怖くはないのでござるか?」

「はい。こんなに優しい子を怖がる理由なんて、ありませんから。」

718血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:42:41 ID:OYriccYY0
『 ホイミンは"いい魔物"だから仲良くしてほしいでござる。』

ホイミンを怖がる街人にはいつもこう言っていたが、この少女の言葉との差異をを考えてみると分かる。
自分の言葉の暗に意味していたところは『人間にとって都合の悪い存在ではない』なのだ。
基本的に人間は人間を利害のみで判断したりはしない。
ホイミンを魔物として線引きしてほしくないと思っていたが、人間の都合の観点ばかりから魔物の善悪を定めようとすることは、まさに人間と魔物の線引きと呼ぶに差し支えないのではないか。
しかし、この少女からはそんな線引きが一切感じられなかったのだ。
子供ながらの無邪気さというのもあるのだろうが、人間と魔物の間にある差異を全く感じさせない。もしかしたら、小さい頃から魔物と共存する環境で育ったのかもしれない。

「かたじけない、変なことを聞いたでござるな。忘れてくだされ。」

「いいえ、私もこの子も気にしてませんよ。」

少女の言葉に対応するかのごとく、ふと魔物がこちらへ近付いて握手を求めてきた。
握りしめたその手は冷たくてごつごつとして人間味など到底感じられるものではなかったが、心の底は温まっていくような気がした。

719血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:44:37 ID:OYriccYY0
おそらく、自分を見つけたこの魔物がとった構えはこの少女を危険から離すための仁王立ちの姿勢だったのだろう。
自分もユーリルやクリフトを死なせないために同じような姿勢で戦いに挑んだことはあるが、それは二人が死ぬと戦線に多大な影響が及ぶからだ。

命を打算的にしか見ていない者と、打算抜きにか弱い命を守ろうとする者。
いったいどちらが人間でどちらが魔物だというのか。

実際、人間と魔物の差などそんなものなのかもしれない。
魔物の志にまで踏み込むと、そこには人間と違わぬ想いがあるのではないだろうか。

「拙者はバトランドの戦士、ライアンと申す。北の地で暴れているバラモスゾンビという魔物を――――――止めてやりたいのでござるよ。」

"倒したい"とは言わなかった。
もうバラモスゾンビと和解することは不可能だと分かっていながらも、もう線引きをしたくないという意思の表れでもあった。

「私はサフィールです。こちらの子はゴーレムという魔物です。――――――お父さんを止めたいと思っています。」

「お父さんを…?」

「はい。この殺し合いに積極的になっているお父さんを…」

「ふむ…よりによって父親が殺しに積極的とは…辛いものでござるなぁ…。」

「いいえ、本当に辛いのはきっとお父さんなんです。お父さん、聞いた話ではとても不幸な人生を歩んできて――――――」

720血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:46:33 ID:OYriccYY0
それからサフィールが簡潔に語ったサフィールの父親アベルの人生は、魔物に負けた自分の人生だった。
アベルは勇者を探し周る中で実力が付く前に強い魔物に目をつけられたのが不幸の始まりだという。
仮にあの塔にいたのがピサロの手先と大目玉ではなく、例えばヘルバトラーやアンドレアルなどのもっと強い魔物だったとしたら、自分もアベルのように奴隷として過ごしたり、あるいはその場で死んでいてもおかしくなかった。

だからといって同情するばかりというわけでもない。
何しろ既に人を殺しているようだ。
サフィールの話からは父親の様子に殺すことへの強い執着も感じられ、これも既に和解には遠いのだろうとさえ思う。
みんな友達大作戦の一番の弊害は邪悪な心を持つ魔物だと思っていたが、本当に恐ろしいのは強い意志に囚われた人間なのではないだろうか。

「拙者も協力させてはもらえないでござるか?」

アベルのことを自分が迎えていたかもしれない未来だと考えるとどうしても他人事だとは思えなかった。

「え、いいんですか?でも…ライアンさんにも目的があるはずでは…」

「うむ。でもバラモスゾンビと戦うにはまだ戦力が足りないのでござるよ。誰の仕業かは分からぬが、奴は北の街に閉じ込められているから人が集まるまでは放置しておいても問題はなかろう。他の仲間を集めてサフィールの父も止めて、みんな友達になってから戦ってもいいのでござる。」

721血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:48:19 ID:OYriccYY0
その際、みんな友達大作戦についてサフィールに話すことにした。

「みんな友達大作戦…?」

「そう、人間も魔物も平等に生きてここから脱出するための作戦。父上を止めることにもきっと繋がりましょう。是非、御尽力いただけないでござろうか。」

平等であること。
それは当たり前のもののようであるが実現するのはとても難しいものだった。
ほとんどの者は心の底で魔物を恐れ、無意識に遠ざけている。

「分かりました、協力します!」

「かたじけない。恩に着るでござるよ!」

それでもライアンは知った。
例え言葉が通じずとも、例え相手がゴーレムであっても、心では通じ合えるということを。
人間も魔物も同じように守りたいものがあり、同じように苦しんでいることを。

そしてそれこそがみんな友達大作戦の本質だった。
提唱者である竜王の曾孫には、かつて3人の友達がいた。

ローレシアの王子ローレル。
魔物を含めた世界に向けた彼の愛に打算など存在しなかった。
ただ人間と魔物の両者に等しき愛を注いだのである。

サマルトリアの王子トンヌラ。
彼は竜王の子孫であったことで人々から迫害を受けた曾孫に最も同情的だった。
人間も魔物も関係なく、血筋によって自分の姿を先祖の姿の奥に見られることの苦しさを彼は誰よりも知っていた。

ムーンブルクの王女ルーナ。
彼女は世界に無関心だった。
人間も魔物も同様に自分を苦しめる存在と見なし、逆に両者を分け隔てなく受け入れた。

種族の壁を経てもなお平等な相手。
それが竜王の曾孫が求めた"友達"の関係だったのだ。


「ライアンさん、ゴーレムさん、みんなで友達になって、そして生きて帰りましょう!」

サフィールの足取りは出会って間もない頃よりは少し軽くなっていた。
物理的な距離も心の距離も遠く離れてしまった父親に対して何をすべきか具体的には分からなかったところに新たな目標を与えられたのだ。

また、ライアンにもひとつ目標が与えられた。
このゴーレムと同じように、この少女の笑顔を「守りたい」と思ったのだ。



さて、こうしてみんな友達大作戦の名のもとに人間と魔物の壁を失くすひとつのキッカケになり得る同盟がここに成立した。

しかし今、アベルが残した機械兵がその同盟へと向かっている。
アベルの支配によって破壊の化身と化した機械兵に「友達」という概念はあるのだろうか。
そしてその両者の衝突は、果たして何を生むのだろうか。

722血の色は違えども:2017/12/24(日) 20:51:08 ID:OYriccYY0
【F-5/平原 /夕方】
【ライアン@DQ4】
[状態]:HP1/2 全身の打ち身、顔に傷、兜半壊、腹部に打撲、鎧半壊
[装備]:こおりのやいば
[道具]:支給品一式(パンと水がそれぞれ-1)
[思考]:ジャンボを探す。ホイミンのみんな友達大作戦も手伝う。

【サフィール@DQ5娘】
[状態]:HP:ほぼ全快 MP 3/5
[装備]:ドラゴンの杖
[道具]:支給品一式×3、ショットガン、999999ゴールド
[思考]:怖い人を無視してマリベルさんの遺志に流される
おとうさんを見つけて止める
みんな友達大作戦を手伝う

【ネプリム(ゴーレム@DQ1】
[状態]:HPほぼ全快
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 道具0〜2個
[思考]:ネプリムとサフィール、そして彼女らがくれたものを守る
サフィールと仲良しなライアンを信頼

723 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/24(日) 20:52:07 ID:OYriccYY0
投下終了しました。

724ただ一匹の名無しだ:2017/12/24(日) 21:21:09 ID:gb5ZTVjQ0
投下乙です
バドランドの教えw
確かにわざわざ言う事じゃないけどw

後これは指摘ですが、ひ孫に対するトンヌラの認識
49話を見る限り、トンヌラはひ孫についていい感情を抱いてる様子は全くなさそうです

725 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/24(日) 21:40:20 ID:OYriccYY0
>>724
ご指摘ありがとうございます。
結構重大な心理描写見逃してましたね…

トンヌラのくだりのところを以下の文に訂正します。

サマルトリアの王子トンヌラ。
彼もまた自分の姿を他の誰かの姿の奥に見られることに苦しんでいた。
人間も魔物も関係なく、同じ苦しみを抱くことを竜王の曾孫は知った。

726 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/27(水) 01:05:26 ID:MOQ6JMJI0
これで生存キャラ全員が、夕方まで到着しました。そろそろ第二放送に移ってもいいと思いますが、どなたかまだ書きたい方いませんか?
その他に自分が放送書きたいって方はいらっしゃいませんか?なければ自分が予約して書こうと思います。

727 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/27(水) 07:10:44 ID:JYK.vEy.0
このまま放送移行で異論ありません。
放送で扱うネタも温めていないので書いていただけるのであれば是非お願いしたいです。

728 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/28(木) 08:51:21 ID:IUhZfz7A0
第二回放送投下しますね

729第二回放送 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/28(木) 08:52:18 ID:IUhZfz7A0
再び、天空に6時間ほど前と同じ現象が起こった。
はるか上空に雲が集まり、エビルプリーストの顔が作られた。

「諸君、ご機嫌如何かな?
中には戦っている者もいて、お取込み中の所すまないが、新たな放送の時間になったのでな。
ルール通り、放送させてもらうぞ。

まずは禁止エリアの追加からだ。今回は一つ増えて4つだぞ。
2時間後に【E-2】.
4時間後に【H―5】
6時間後に【D-5】、そして【B-―6】だ。


これで禁止エリアは7つになる。くれぐれも注意して移動をするように


次はこの6時間で死んだ者の名前だ。心して聞くがよい。

ガボ
ロッキー
ローレル
バーバラ
ゲルダ
サンディ
アモス
ナブレット
カンダタ
ゲマ
パトラ
オルテガ
リオウ
ヒストリカ
アーク
ルーナ
パパス
デボラ
バラモス

以上、19名だ。
素晴らしい。これでとうとう半分になったではないか。
そして大事な者を失ったことで、復讐や破壊に走る者もいるだろう。
好きなようにするがよい。
我は種族や身分の貴賤は問わぬ。
優勝者には誰でも好きなだけ欲しい物、失ったものをくれてやろう。
残された者共の奮起を期待する。
己の願望や欲望の赴くがままに殺戮を続けるがよい。ではさらばだ!!」

730第二回放送 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/28(木) 08:52:44 ID:IUhZfz7A0


「全く、愚かな者共よ」
エビルプリーストは放送を終えた後、殺風景な部屋にいる大量の魔物の死骸を見つめていた。
大魔道が殺されてから、第二放送に到着する少し前、ピサロ側の魔物達が一斉に反乱を起こし、中にはそれに便乗する中立派だった魔物もいた。
しかし、究極の力を手に入れたエビルプリーストの敵ではなかった。
彼らは、エビルプリーストに襲い掛かってから1分足らずで物言わぬ血と肉の塊と化した。
「何のための生き返った命だと思っているのだ。」

ジョーカーも5のうち3減って、残りは2匹。
こちらで生き残っている者は、最初から自分に従っていた魔物と、ただただ反乱も服従もせずに怯えている者だけ。
生き返った魔族も、残り僅かになった。





突然、どこかで感じたような頭痛が走る。

(ピサロがおるではないか。)
そうだ、裏切り者で、なおかつ生き返ったわけではないが、この世界にはピサロという忌々しい魔族の野良犬もいた。
「何?ピサロ?」
エビルプリーストは独り言のようにつぶやく。


問題はこれからだ。
順調に人数は減っているが、いかんせんゲームに乗る者、殺人を犯す者が減りつつある。
折角復活させたバラモスも、もう少し働いてくれると思ったが、殺した人数は3人どまりだった。
残った二匹のジョーカーも、何人か犠牲を出すとは思うが、それもまた遠からず滅びるだろう。

(ロザリーを攫ってきたはずだ)
「む?ロザリー?そんなことをした覚えは………」

(あの男を唆せ。今ヤツは一人いるはずだ。一人だと、人間も魔族もありもしない考えを抱くようになる。)




「だまれ!!何だ貴様は!!」
エビルプリーストは「それ」に対して抵抗を続ける。
表情は狂ったようにぐるぐると変わっている。目の焦点は合わない。
(折角蘇らせたのに、貴様呼ばわりとは、無礼な奴だがまあいい。)


それは、まるで道化の一人芝居のようだったが、誰も止める者はいなかった。


残り、41人


※エビルプリーストがピサロに介入するかどうかは、次の書き手にお任せします。

731第二回放送 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/28(木) 08:53:18 ID:IUhZfz7A0
投下終了です。
初めて放送を書いたので、何かルールに違反していれば指摘お願いします。

732ただ一匹の名無しだ:2017/12/28(木) 22:38:54 ID:rR9u0EKA0
投下乙です
内容に特に問題はないかと

733 ◆znvIEk8MsQ:2017/12/28(木) 22:56:12 ID:IUhZfz7A0
連絡し忘れていました。既に予約を始めてる方もいるため予約は自由ですが、
何かの理由があってこのssを破棄することになれば取り消すことになります。
また、投下解禁は12月30日0:00から始めようと思います。

734 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/30(土) 00:22:57 ID:po/9pLpk0
投下します。

735The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:24:32 ID:po/9pLpk0
「…ま、しょーがないか。」

口から零れたのはそんな一言だった。

放送から聞こえてきた最愛の人の名前。
ポーラはそれをまるで分かっていたと言うかのごとく平然と受け入れた。

アークは自分と同じく剣を扱っていたが、バトルマスターになってからひたすら剣の腕ばかりを磨き続けた自分とは違い斧からブーメランに至るまで様々な武器の心得を取得していた。
支給品の武具がどんなものであれ対応は出来ただろうし、そもそも武具の力抜きにもアークは強かった。
それでもアークが不死身ではないなんてことくらい分かっていた。
何せ、彼だって人間なのだから。
そしてそうあることを願ったのは他でもない、自分だった。

喪失感に打ち負けて狂ってでもいれば、もっと楽だったのかもしれない。
現実から逃げ出すくらいに心が弱かったらこんな想いに駆られることも無かっただろう。
しかし生憎と頭は冴え渡り、次に取る行動は様々に形を変えて頭を過ぎり続ける。

ポーラは死後の世界の存在を知っている。
仮にこの場で剣を自分の喉にでも突き立てようものならばすぐにでも向こうの世界でアークと出会えるのだろう。

しかし、放送の中でポーラの心を揺さぶった名前はひとつではなかった。
サンディ。
あの妖精も向こう側にいる。
向こうでアークに出会えるとしても、彼が受け入れてくれる保証なんて、どこにもない。

剣の柄を強く握り込む。
独りで生き残らなければならないことなど戸惑うことでも何でもない。
アークと出会う前のように、誰も信じなければいいのだから。

キーファとミーティアは出会って数時間もしない内に別れることとなったが、良い人だった。
でも、彼らには自分が【見える人】であることを話していない。
そのことを知ればあの二人だってどう態度を翻すかなどわかったものでは無い。
人は保身のためならば他人を平気で傷つける。
ましてやこのような殺し合いの舞台なのだ。
他人を信じた結果裏切られて死んだ人だって何人いるかわかったものではない。

「待っててね、アーク。絶対にあなたを取り戻すから。」

剣を抜き、ここにはいないアークに向かって呟いた。

736The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:25:20 ID:po/9pLpk0

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


時は少し遡る。



「あなたは…どうして人を殺すの?」

破壊の剣の射程外から、セラフィはアベルに問いかけた。

「おかしな質問ですね。そもそもここはそういう場のはずですよ。」

こうは返すものの、アベルはセラフィの言うことの表面上の正しさは理解している。
殺し合いを強制されたからといって実際に他人を殺して回る必要などない。事実彼は、20年間も奴隷としての生活に反抗してきた。
アベルは殺し合いの場の中で生き残るために戦うのではなく、心の赴くまま破壊するために戦っているだけなのだ。

「そんなことない! アークさんもヒストリカさんもほかの人を犠牲にして生き残ろうなんて考える人じゃなかった!」

「では、その人たちは何故ここに居ないのです?」

「…。」

「おそらく、殺されたんですよね?」

「…違う。そんな簡単に言わないで!」

"殺された"。
結果だけ見るとそうなのだろう。
死ぬ必要のなかったアークさんやヒストリカさんが死んだ。
それは紛れもなく"殺された"と表現するに相応しく、二人を殺したルーナさんのことは許してはいけないのだけど、それでも彼女の心の弱さに漬け込み凶行に駆り立てたのはこの世界なのだ。それなのにルーナさんの悪意だけを抽出して結果を語る目の前の男が許せなかった。
強い意志を持ちながらも意味もなく命を奪っていくあなたとは違うんだって言ってやりたかった。

「仲間だの協力だの、所詮は力無き者の戯れ言です。より大きな力の前では簡単に破壊されてしまう。」

でも、男が語る結果論もまたひとつの事実だった。
だけどそれを認めたくないと心が抗っている。

「そんなの、間違ってる!」

それでも根拠の無い否定など届くはずはなかった。

「だったら正しさを証明してみればいいでしょう。どんな理想論を語ろうと、実現出来ぬまま死んでは戯れ言でしかないのですから。」

アベルは腰を低く落とし、剣を構える。
セラフィとピたろうも来る攻撃に備え、アベルの動きを注視し始めた、その時だった。

737The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:26:41 ID:po/9pLpk0
「諸君、ご機嫌如何かな?」


第二回放送の始まり。
そしてそれを待っていたと言わんばかりのタイミングで、アベルがセラフィに斬りかかった。

「うわっ!」

咄嗟に飛び退いて回避するセラフィ。

「ちょっと!放送が始まったんだよ!」

「ええ。あなたの気も紛れて、絶好の殺し時だと思いましたが、何か?」

アベルは更に前に出て斬りかからんと迫る。
両者の実力差は明確だった。
魔物の中でも最弱種といわれるスライム系が"魔王"を止めようと奮闘しているのだ。

その中でも彼女らの幸運は、アベルが直前の戦闘でかなり疲弊していることだった。
幻魔ドメディのグランドクロスをまともに受け、大地を踏みしめるたびに崩れ落ちそうになるほどの負傷を既にアベルは負っている。
失い続ける生命力を自分にベホマを掛け続けることによって補ってはいるが、回復魔法の制限下では魔力の消耗ばかりが激しく、詠唱のためどうしても動きは鈍くなる。

そのためアベルの前に出る速度と、セラフィが後ろに下がる速度は大体釣り合っており、急激に距離を詰められることも逆に安全地帯まで下がることもない。

しかし、互いに現状の戦局を維持し続けるとなれば斬ることのみに徹する側と避けることのみに徹する側、肉体的にも精神的にも疲弊の度合いは全く違う。体力か精神力か、どちらが尽きてもセラフィに待つのは死。そしてその極限までの緊張感を張り詰め続けるのにもいずれは限界が来る。

そもそも、アベルには互いの戦局を維持する道理がない。
アベルは術式を組み、詠唱を始める。

「バギクロス!」

そして巨大な竜巻がセラフィを襲う。
呪文自体は即死させるほどの威力ではないが、受ければ足にも支障が出るのは必須。アベルの狙いは攻撃の数を増やすことで本命である破壊の剣による一撃を避けにくくすることだった。

738The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:27:45 ID:po/9pLpk0
しかしその詠唱を見逃さなかったセラフィはその間、目を閉じて空へと祈っていた。
回復魔力を高める"聖なる祈り"。
その極意が秘められたバッジにはセラフィの顔が載っているという。

竜巻がセラフィを襲う。
巻き込まぬようピたろうから離れてそれを受けつつ――――――

「ベホイム!」

"祈りベホイム"による一瞬の回復で相殺する。
単体への回復力と詠唱速度に優れているベホイムはわずかな時間の隙が生死を分ける戦いでは時にベホマラーよりも重宝される。
本来なら牽制程度に放たれるバギクロスなど、聖なる祈りを使えばホイミでも相殺出来るのだが、回復呪文が制限を受けているこの世界ではそうはいかなかった。

バギクロスの回復呪文による相殺は予想外だったが、アベルの次の行動は変わらない。
剣を振りかぶりセラフィに迫る。

『いいか、セラフィ。回復役は意地でも死んじゃならねえ。来る攻撃の軌道をしっかり読んで、離れたり横に逸れたり後ろに回ったり、時にはジャンプしたりもして避けられる攻撃はしっかり避けるんだ。』

いつかジャンボが言っていたことを思い出す。
アラハギーロのリーダーとして歩むことを決めた私に護身術として教えてもらった戦い方。まさか実践する時がくるとは夢にも思っていなかった。

真っ直ぐ振り下ろされる直線上の斬撃。
攻撃の軌道を読み切ったセラフィは歩む道を直角に曲げて回避する。

「あなたが殺すのをやめるまで、いつまでも耐えてみせるから!」

「良いでしょう。ではすぐにでも終わらせてあげますよ。」

乗る必要もない安い挑発。
しかし呪いに心を蝕まれているアベルはそれを聞き流す余裕を無くしていた。

739The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:28:48 ID:po/9pLpk0
「ピキッ!(セラフィちゃんをいじめるな!)」

ピたろうが毒針をくわえてアベルに飛びかかる。
その業物の危険に気づいたアベルはピたろうとの射程の差を活かし大振りで応戦する。

「危ないっ!」

アベルの視線がピたろうに移ったことに気づいたセラフィは自分を見ていないアベルに回転しつつ体当たりをぶつける。
アベルはホイミスライムによるものだとは思えないほどの衝撃に半ばよろめく。
よろよろと姿勢を戻したアベルの目にはいっそう殺意が篭っていた。

アベルは剣を構え、セラフィへと振るう。
左右に躱せない横薙ぎの斬撃をセラフィは一歩下がって避ける。足元にいたピたろうがアベルの足に毒針を突き刺そうとするが、アベルは足で毒針の付け根を上から踏みつけ、毒針を落としたピたろうを蹴飛ばす。

「ピュギッ!?(いてっ!)」

飛んでいくピたろうを外目にアベルは毒針を拾い上げる。
そしてそのままその毒針をピたろうに向けて投げつけた。

「ピィ!(わ!)」

ピたろうは咄嗟に跳んで躱す。
しかし、空中にいるピたろうに逃げ場はない。

「まずは…一匹!」

アベルは走り込み、ピたろうに向かって剣を持ち上げた。
しかし、ピたろうにそれが振り下ろされることはなかった。


「ヒストリカ。」


「アーク。」


定時放送から聞こえてきた名前。
セラフィはあらかじめ二人の死を知らしめられていたからこそ放送で呼ばれる名前に心を乱されることはなかったし、幸運なことに元の世界のセラフィの知り合いがその放送で呼ばれることはなかった。

しかし、セラフィがこの世界で共に行動していた者の名前を耳に入れたアベルは思いつく。彼はこれから愛しい者が殺されようとしている時、セラフィのような――――――父のような人間が、黙って見ていられないことを知っていた。

「待っ――――――」

セラフィは迂闊にもピたろうの近くへと駆け寄る。
ピたろうに刃を振り上げたアベルが横目でセラフィを見据えていることに気付いた時にはもう止まることは出来ないくらい勢いがついていた。
前にもこうやってアークのところへ駆け寄って殺されかけた。
それでも、セラフィには見捨てるという選択肢を取ることは出来なかった。たとえその向かう先に全滅が待っているとしても。
アベルはニヤリと笑い、剣の切っ先をピたろうからセラフィに向け直す。

「ほらね。くだらない感情のせいでこうしてあなたは殺される。」

そこにいたのはただただ残酷に命を弄ぶ"魔王"だった。
斬撃がセラフィの喉を切り裂き、次の瞬間にはそのままピたろうも一突きで肉塊へと変える。

740The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:29:44 ID:po/9pLpk0
そんな未来がセラフィの脳裏を掠めた瞬間――――――アベルが勝ちを確信した瞬間を狙ったかのように、この世界に居る者全てに声が響き渡った。



「パパス。――――――デボラ。」



放送から聞こえるそれらの名前が耳を掠めた次の瞬間にはアベルの動きは硬直していた。

かつて無償の愛を注いでくれた父親、かつて愛し愛された相手。その者たちの死を連続して知らしめられたことは、アベルの心の奥底に眠っていた僅かな良心を引き出した。

たった一瞬の迷いだった。
普通であれば眼前の光景が理性を殺し、振るう剣の太刀筋も大きく逸れることなどないだろう。
しかしアベルは破壊の剣の呪いを利用しているに過ぎないのであり、呪いに蝕まれてはいるのだ。
一瞬であれど剣から湧き出る破壊衝動に抗うことは、剣の呪いを引き起こすことに繋がった。

時間にして、たったの数秒間の呪いによる硬直。
アベルの剣が、そしてアベル自身が呪われているということを本人も最も自覚することとなった数秒間。
それは駆け寄ってきたセラフィがピたろうを連れて離れるのには充分な時間だった。
そしてそれは――――――



「たあああぁぁ!」



――――――乱入者が割って入るには充分な時間だった。

「なっ!」


――――――ギィン!


硬直が解けたアベルは乱入者ポーラの剣を破壊の剣でギリギリのところで受け止める。

ポーラは鍔迫り合ったアベルの剣を力で強引に振り払った。
吹き飛ばされたアベルが尻をつき、ここぞとばかりに斬りかかる。

「ぐっ…バギクロス!」

倒れた姿勢から大地に向けて炸裂させた真空呪文。
ポーラの進路を妨げ、放った勢いでアベルは後方へと退く。

バギクロスを強引に斬撃で振り払うポーラを狙ってアベルは剣で受け止めにくい刺突を繰り出す。バギクロスの対処で体制が整わないポーラの心臓を正確に狙う一撃だった。

身体を捻り、急所への直撃を何とか裂けたものの、ポーラの脇腹に赤い筋を残す。
回避に精一杯のポーラには反撃の隙も与えられず、アベルの第二擊が来る前に一歩引き下がる。

741The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:30:53 ID:po/9pLpk0
奇襲が上手くいかなかったポーラは戦術を組み直す。
目の前の男は他の参加者との戦闘を繰り広げた後なのか、すでに満身創痍。
攻める側であれば守りを崩すのは難しくないだろう。

しかし、互いのコンディションで一概に勝敗を見定められないのが人間の脆さである。
コンディションがほとんど万全のポーラも破壊の剣ほどの業物で急所を叩き斬られれば死は免れない。

ならば体力差を活かし、攻める隙を与えない。
攻撃は最大の防御というが、"すてみ"の覚悟で相手の行動猶予を最低限に留めたまま倒すというバトルマスターのバトルスタイルに最も沿った言葉だとポーラは常々思う。

突撃し、剣の射程に入ると同時にアベルを斬りつける。
ポーラより速く攻撃するだけの体力のないアベルはその地点で防御を半ば強いられる。
そしてアベルの反撃が来るより先に射程外へと離れる。
アベルの斬撃は空を斬ることしか出来ず、先に攻め手に回るポーラにはどうしても届かない。
理想的な戦術の押し付けをポーラは狙っていた。

この応酬を幾度か繰り返していると、不意にアベルはポーラに問いかけた。

「よろしければあなたの戦う理由、聞かせていただけませんか?」

仮に目的が一致するのであれば戦わずともリオウやジンガーのように味方に引き込めばいいとアベルは考えていた。
しかしポーラはその意図を察する。

「お断り。あなたの目的とは相容れないから安心して逝きなさい。」

「そうですか、それは残念。」

目的は個人的なものであるとの意味を含ませた返答。
ポーラの目的はアークを生き返らせることだけではない。
アークを生き返らせた上で自分も生き残ることが必須なのだ。
自分は死んでもいいからアークだけは生き返らせたい――――――そんな目的の人以外と目的が合うことはないし、目的が背反する者と協力体制を組んだところでいずれ裏切られる。
そんな突拍子もない願いを持つ人など探すまでもなくいないと断じたポーラの頭の中からは誰かと協力するという発想は抜け落ちていた。

愛を貫いて戦う者と愛を否定し破壊する者。
過去の人となってしまった想い人を取り戻すために戦う者と過去を払拭し消しさらんとする者。その二人が相容れる要素など微塵も存在しない。
交わすのは剣のみで充分だと両者に知らしめるかのように二人の剣が耳をつんざく金属音を鳴らし、再び戦いが始まった。

742The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:31:46 ID:po/9pLpk0
ポーラの戦術を理解したアベルは先ずはその嵌めからの脱出にかかる。

「バギ!」

ポーラが前に出るのに合わせてアベルは絡め手を放つ。
魔力も底が見え始めているのか、あるいは詠唱時間の短縮なのか、先ほど放ったバギクロスではなく微小な攻撃呪文での撹乱。

大方小さな竜巻に隠れて死へと誘う斬撃を混ぜこもうとしているのだろう。
そう判断したポーラはその竜巻を無視してアベルの斬撃に対してカウンターを仕掛けるべく備える。
しかしアベルがバギで隠したかったのは斬撃ではなく、背中に持つ杖であった。

左手で肩の杖をくるりと回しながら掴み込み、吹き飛ばしの杖をポーラへと振るう。
ポーラは突然の魔法弾により後方に積まれていた積荷の中へと飛ばされ、背を打って膝を付く。

そして死へと直結する斬撃が今度こそポーラへと迫る。アベルは破壊の剣を両腕で握り込み、下段から両手剣のように斬り上げた。

ポーラは舞い上がる埃の中、後方の木の壁を蹴って横薙ぎに剣を振るう。

交差する縦と横の斬撃。
交錯する人と人。
そして、1本の刃が宙に舞った。
ポーラの持つ炎の剣が互いの業物の破壊力の差に耐えきれずポッキリと音を立てて折れたのだった。

「っ…!」

折れたとは言えど刀身の半分程度は残っており、剣の殺傷力自体は健在である。

しかしリーチはどうしても不利を取るため、先程のような射程に任せた戦術を取ることは出来ない。このまま敵へと斬り込む場合、少なからず命を落とすリスクを負うこととなる。

ポーラは小さく舌打ちをしつつ折れた剣の柄に魔力を込める。

剣を極めた者の極意であるギガスラッシュの応用。
失われた刃を補うかのように剣は雷光を帯びた。
剣が元々纏っていた炎と交わって黄金色に輝き始めた。
そのままもう一度アベルに向かって走り込む。

「――――――認めない。」

アベルは呟く。
ギガスラッシュの雷の煌めきに、アベルはただ目を奪われていた。

「――――――勇者の雷など認めない!」

アベルは再び吹き飛ばしの杖をポーラに向けて振るった。
杖の魔力に抗うことは出来ず再び後方へと吹き飛ばされが、先ほどの不意打ちとは違いタネは分かっていたため体制を崩すこともなく着地する。それは撃ち合いを先延ばしにするだけのただの時間稼ぎにしかならなかった。

743The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:33:55 ID:po/9pLpk0

アベルはポーラの持つ雷の力を半ば無意識に恐れていた。
アベルの中で雷は勇者にのみ操ることを許されたものだったからだ。

アベルの人生は勇者に壊されたといっても過言ではない。
父の勇者を探す旅に同行し、10年の奴隷生活を強いられることとなった。
その後も勇者を探す旅は続いたが、真実は残酷なものだった。

父が生涯をかけて探し求めていた勇者はまだこの世に存在していなかったのだ。
そしてアベルが石と化している間にその勇者も勝手に育っていった。

アベルは自分の人生に"勇者の父親"として勇者を作り出したことしか意義を見出せなかった。
奴隷として生きた10年間も、石像として生きた8年間も、父と共に、あるいは父の後を継いで勇者を探したからこそ過ごすこととなった時間だ。
当時は存在していなかった勇者を、あるいは既に見つかっているはずの勇者を探してアベルは意義のない多大な時間を失った。

そして息子のリュビは紛れもない勇者だった。
その証としてリュビは雷を操ることが出来た。
自分が勇者でさえあればとアベルは何度も思ったが、リュビの操る雷は自分が勇者の器ではないということを幾度となく思い知らせた。

だからこそ、アベルは他の勇者の存在を、雷を操る者の存在を受け入れられなかった。
ポーラの操る雷は"勇者の父親"というアベルの唯一の存在意義さえ否定するものだったのだ。

だからアベルは吹き飛ばしの杖で否定する。
目の前で繰り広げられる勇者の力の存在を。

そしてアベルは否定する。
"皆を守る"勇者を。
アベルはポーラが吹き飛ばされている間に破壊の対象を変えた。
ポーラではなく、眼前で繰り広げられる戦いをただ眺めていたセラフィの方へと向き直り斬り掛かる。

「見ろ、お前は誰も守れない!」
「そんなの、どーでもいーの。あたしが守りたいのは――――――」

彼の笑顔だけだから。その一言を飲み込んで、ポーラもまたアベルに向かって走り出した。
ポーラは皆を守る勇者などではなく、そこの少女が斬り殺されようがポーラには何も関係がない。既に殺し合いに身を投じる覚悟は決まっている。遅かれ早かれそこの少女にも死んでもらうのだから。

しかし他の誰かを斬る間は隙が生まれるかもしれない。
その隙を突くべくポーラは雷光を纏った剣を握りしめた。

744The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:36:39 ID:po/9pLpk0
「ピー!」(セラフィちゃん危ない!)

そんな中、セラフィの背中から"勇者"が飛び出しセラフィの前に躍り出る。

「ピたろう、逃げてえええぇ!!!」

セラフィは叫ぶ。
しかしピたろうの耳には届かない。
ピたろうの身体は後方にいるセラフィにも、そして前方から迫って来るアベルにさえ伝わるほど凄まじい熱気を放っていた。

(この熱気は…!)

いつだったか。自分たちが追い詰めたミルドラースも同じような熱気を放ち、その熱源を直接吐き出した。
その時の戦いを思い返してみても、リュビのフバーハが無ければどのような結末を迎えていたのか想像出来る。

そんなピたろうのただならぬ様子に気づいたアベルは咄嗟に吹き飛ばしの杖をピたろうに振りかざす。
背後にいたセラフィを巻き込んでピたろうは後方へと飛ばされていく。

そして魔力弾に吹き飛ばされる中、ピたろうがアベルに向けて灼熱の炎を吐き出した。

「バギクロス!」

距離を離してもなおアベルに襲い来る業火へ向けて放つ。
魔王の呪文とスライムの吐息がぶつかり拮抗する。そして両者はそのまま消滅した。
セラフィにはそれを呆然と眺めていることしか出来なかった。

そしてアベルは撤退を余儀なくされていた。
灼熱の炎を吐くスライムに勇者の力を使う乱入者の両方を相手にするには体力も魔力も足りない。

しかし安易な撤退は死に直結する。
ポーラが既に自らに向けて走り出しており、ならばと吹き飛ばしの杖をかざしても魔力弾は飛ばない。すでに杖は魔力を使い果たしていた。
ポーラの攻撃は実体を持たない魔力の刃であるため剣で受けることさえも出来ない。
アベルは近付いてくるポーラにバギの連射で応戦する。

真空波にも似た高速の刃がポーラの肌に切り傷をつけるものの、ポーラは止まらない。

呪文も使えない。剣も届かない。
しかし最後に少しでも足止めになればと投げた吹き飛ばしの杖は、思わずして最後の効力を発揮した。

745The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:39:09 ID:po/9pLpk0
「えっ…?」

ポーラは再び吹き飛んでいく。
ポーラを一時的に遠ざけたアベルはピたろうの追撃を注視するが、アベルの危惧は杞憂となる。
ピたろうは再びアベルに灼熱の炎を吐くことはなかった。
口からなお立ち込める煙を見て、アベルはピたろうを注意対象から外す。
ポーラとピたろう、両方の危険分子を遠ざけたアベルはそのまま撤退を成功させた。

「ま、好都合か。」

剣に纏わせた雷光を消しながらポーラは呟く。
敵がマーダーのスタンスを保つのなら撤退して他の参加者を殺して回ってくれた方が都合が良い。ゲームに乗っている参加者を排除しようとする正義の味方とでも相打ちになってくれれば理想的だ。
それに正直なところ、あのまま戦っていたら危なかったかもしれない。
本来魔法を一切使わないバトルマスターの職に就いているポーラの魔力の量は少なく、ギガスラッシュを纏わせた剣を維持し続けることは出来なかった。
こんな荒業は本来、剣も魔法も洗練しているアークのような者が行うべきなのだ。

そんなことを考えているポーラにセラフィは駆け寄る。

「あの…!ありがとうございます!ピたろうも、守ってくれてありがとっ!」

これは愛の力が成した奇跡なのだろうか。
本来相応の習熟無しにはスライムが扱うことの出来ない灼熱の炎を戦いの経験など全くない1匹のスライムが放ち、少女の命を救った。

「あれ…ピたろう…?どうしたの…?」

これは愛の力が課した代償なのだろうか。
戦闘によって成熟していくはずの器官が成熟しないまま灼熱の炎を扱ったピたろうの体内は自らの炎によって焼き尽くされていた。

「ねえ!返事してよ!ピたろうってば…!」


セラフィは何度も名前を呼びながらホイミを唱え続ける。
傍から見る分にはピたろうに外傷はなく、すやすやと眠っているかのようにすら見える。

「無駄よ。…もう、死んでるから。」

その光景を見ていられなくなったポーラは冷徹な声で告げた。

「どうしてそんなことが――――――」

それに続く彼女の言葉は、ポーラも全く予想していないものだった。

「――――――そっか。"見える"んだ。」

「え?」

746The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:41:45 ID:po/9pLpk0

ポーラにはスライムの"霊"が見えていた。
空っぽになった肉体と動き回る霊体の両方が目に見えている状態。
旅の途中にも何度か見たことのある光景だが、幽霊が見えるポーラやアークには肉体の持ち主がひと目で死んでいると分かってしまうのだった。
この世界で死者と対面することになるのは初めてだった。
これだけ人が殺されている殺し合いの世界の中で死と無縁でいられたこと自体は比較的幸運な部類に入るのだろうが、アークを失ったポーラにその幸せを噛みしめることは出来なかった。

ところで何故この少女は何故そのことを知っているのか。
コニファーやスクルドやサンディから聞いたという可能性もあったが、何故か彼らではないと確信を持っていた。

「アークに…会ったのね?」

「うん…。ポーラさん、ピたろうは…向こうでどうしてるの?」

「ここにいる。きっとあなたを最後まで守り通せなかったことが未練となって魂が成仏出来なかったのね。」

「そっか…。ピたろう、そこにいるんだね。守ってくれてありがとう。そしてごめんね、あなたを守ってあげられなくて…。」

あたしは、泣きじゃくる彼女を黙って見ていることしか出来なかった。
このゲームに乗っているあたしには、ここで折れた剣を突き刺して殺すという選択肢もあったのだろうけど、どうしても出来なかった。
彼女がこの世界のアークのことを知る最後の1人かもしれないという思いがあたしの心の片隅に引っかかっていた。
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

存在意義を否定された"魔王"は怒りに震えていた。
破壊衝動に一瞬でも抗ってしまったことへの不覚、突然の乱入者の存在、そしてその乱入者を出し抜いたのにスライムごときに邪魔をされてホイミスライムの少女を殺せないどころか貴重な魔力や吹き飛ばしの杖まで使わされ、誰も自分の手で殺せないまま惨めに逃げ帰る始末。
苛立ちを感じるのも致し方ないと言えよう。

だからこそ、アベルは支給品として配られたものの内のひとつが気に入らなかった。

『剣の秘伝書』という書物。
これを持つ者は勇者の雷を剣に纏わせ敵を断ずる伝説の剣技が使えるそうだ。

ふざけるな。
こんな書物ひとつで誰でも勇者の力を扱えるだと?
人生全てを否定する書物の存在を認めたくなかった。

それでも先ほどの戦いの乱入者が剣に纏わせた雷光は勇者の力が唯一無二のものではないことを私に知らしめ、しかも危うく命を落とすところだった。
信念やら意地やらで持つ力を行使せずに敗北しては元も子もない。
むしろそれこそ"余計な感情"に他ならない。

ならば、捨てよう。
自分の存在意義など、自分の歩んできた過去の産物だ。
過去を払拭すると決めた今、そんなものに拘っていたことがそもそも間違いだったのだ。
そして新たな歴史を刻もう。
この書物に記された''勇者の雷"を、いずれ"魔王の雷"と呼ばせてみせようではないか。

魔王はまたひとつ、過去をぬぐい去る。
彼が最も捨てたかったのは過去の他人との関係ではなく、敗北を続けた自分だったのかもしれない。



ところで、このような話をご存知だろうか。
勇者の雷を剣へと纏わせ敵を斬りつける剣の奥義は様々な世界に存在する。
しかし破壊の剣に勇者の雷を纏わせる時のみ、その雷は禍々しく漆黒に染まり、真に"はかいのいちげき"と化す。
そしてその剣技はとある世界ではこう呼ばれているという。
暗黒剣究極奥義――――――"ジゴスラッシュ"と。

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

747The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:42:48 ID:po/9pLpk0

少しして、彼女はスライムの墓を作り終えた。
遺体を土に埋め、埋めてある場所の土に毒針を立てているだけの簡潔な墓だった。
後で掘り起こす人でもいたら、目立った外傷も見受けられないのに死んでいるスライムを見つけて立てられていた毒針が凶器だと誤解するかもしれない。

必死に墓を作っている最中に何もすることがなかったあたしは既に名簿で名前は確認していたけど、セラフィはまだ名乗っていなかったことに気づいたらしく慌てて自己紹介を始めた。

正体はホイミスライムだと聞いた時はさすがに驚いたけど、呪術師シャルマナという前例を知っていたあたしは割とすぐに受け入れることが出来た。
むしろ自分の能力を受け入れてくれるという点では人間よりも接しやすい相手だとさえ思える。

「ポーラさん、今はピたろうはどこにいるの?」

そう言われて辺りを見回してみると、いつの間にかスライムの霊はいなくなっていた。
彼女の想いに触れて満足し成仏したのだろう、と特に不思議には思わなかった。

「もういないわ。きっと、星になったの。」

大人が子供に諭す迷信とは違った意味合いでそう言った。
もちろん、あたしがその言葉の裏に星へと変わっていった天使達の存在を見ていることなんかセラフィには伝わっていない。

「星に、かぁ。…そういえば、もう夜だね。この世界に見える星も私たちの居た世界と同じ星なのかな?」

「ううん、そんなわけない。」

星へと変わっていった天使たちはいつだってアークを守ってくれているはずだった。いや、守ってくれていないと割に合わないという逆説でもあった。
アークが人間へと身を落としてまで守った星空の下でアークが死ぬなんて救われない、だからこの星空はあの星空じゃない。
都合の良い理屈だとは思うけど、そうでも思わないとアークとの旅が全て否定されてしまうかのように思えてならなかった。

748The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:43:33 ID:po/9pLpk0
「星空はね、成仏していった命の輝きなの。…こんな誰も浮かばれない世界の空じゃいけないでしょ。」

「そう、だよね…。この星空も偽りなんだよね…。」

"も"という一文字が気になったが深くは追究しなかった。
あたしが星空の先に見ているものがセラフィに伝わらないように、セラフィの見ている星空の先にあるものもあたしには伝わらないのだろう。
相手の全てを理解しようとしない、そのくらいの関係があたしには丁度いい。
表面だけの人間関係、上っ面だけの信頼、そんなものはあたしが"見えている"世界を共有した途端にことごとく剥がれ落ちていった。

その後、セラフィといわゆる情報交換というものを行ったが、アークが死んだ場所に居合わせなかったセラフィには死因すら分からないとのことだった。

アークを殺した人は既に死んでいるという事実もあたしを苛立たせた。
背後にはそいつの死体が転がっていたけど霊は見えない。
たぶん、彼女なりに何かしら自己完結しながら死んでいったのだろう。
アークの命を奪っておきながら成仏出来ているというのもあたしの気持ちを最もぶつけるべき対象と出会えないのも気に入らないし、何よりもアークは彼女を守ろうとして死んだのかもしれないというセラフィの推測が気に入らなかった。
アークが命を賭して守ったかもしれない命はあんなにも凄惨な最期を迎えているとすると、アークの死はどこまでも報われないではないか。

そしてセラフィについて分かったことといえば、彼女がこの世界で知り合った仲間が既に皆死んでいるということ。
あたしはあたしの全てだったアークを失ったことでとっくに何かが壊れてるんだろうけど、セラフィもセラフィで彼女の人格を形成している何かが壊れているのかもしれない。
事実、性格は明るそうに見えるセラフィはあたしと出会ってから一度も笑っていない。
あたしがゲーム開始後間もなく出会った仏頂面の男はセラフィの元の世界の知り合いだったらしいのだが、その大体の居場所が分かっても大した反応も示さなかった。

749The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:44:29 ID:po/9pLpk0
そんな風に何かへの執着が一切見えなかったからだろうか。
この一言を言うにも大して躊躇はしなかった。

「あたし、このゲームに乗ろうと思ってるの。」

隠しておくことも出来た。
でも少なからず親しくなってしまったセラフィには言っておかなければいけない気がした。
死者が見えてしまうからこそ、あたしは殺した相手と今一度向き合わなくちゃいけない。
仮に彼女を不意打ちで殺したとしても、霊となった彼女と再び向き合える自信がなかった。
あたしのこの力はこんなところでもあたしを縛り付けるものらしい。

「そう…。それは…アークさんを生き返らせるためなの?」

返ってきたのは質問。
あたしは黙って首を縦に振った。

「そっかぁ。愛してるんだね。アークさんのこと。」

自分の恋の成就のためにゲームに乗るという身勝手を認めたくなくて肯定はできなかった。
アークを生き返らせることを善行であるかのように自分の中で完結させたかったのだろうか。

「んと…止めないの?」

止めてほしいというわけではないが、アークのことから話題を逸らしたくてそう聞いてみた。

「…そう言われると辛いなぁ。ここに来たばかりの私だったら、絶対に止めてたもん。」

「一応、あなたにも手を下すという意味で言ったのだけれど。」

そのことも理解していたらしく、セラフィは頷いていた。

「私ね、たくさんの人の死を見ちゃった。死にそうなのに仲間のことを気にかけているような優しい人もいたし、ピたろうやヒストリカさんは私を庇って死んで、アークさんも、アークさんを殺した人も…。」

セラフィは泣くこともなく、ただただ無表情のままに話し続ける。

「逆に人を殺す人もいっぱい見てきたの。さっきの人は誰かを愛する心まで全部壊そうとしてた。アークさんを殺した人はたぶん、生き方を見失ってたんだと思う。」

アークは見ず知らずの人のお願いも聞いてあげるくらい優しかったから、こんな殺し合いの世界で自分を見失っている人を助けようとしたのも理解出来る。
それでも納得の出来ないあたしがいるんだけども。

「他にもね、復讐のために魔物になってしまった人間同士を戦わせて殺し続けたベルムドさんって人もいたの。復讐なんかしても失った命が戻ってくるわけがないのに…。」

セラフィは背を向けて俯いていた。

「でもね。」

突然、くるりと振り返る。

750The Polestar toward the Ark:2017/12/30(土) 00:49:20 ID:po/9pLpk0
「だからこそ、失ったものを取り戻すために、そして愛する人のために戦うポーラさんのこと、悪い人だって言えないの。」

たぶん、セラフィは悔しいのだろう。
仲間になった人たちが自分の隣から次々に零れ落ちていったことが。抗いたいのに抗う力がなくて、取り戻したいのに失ったものは戻らない。
そういう無力感とか、自分だけが残ってしまうことへの罪悪感とか――――――
そこまで考えて、目の前にいるセラフィがたった1人で人間の世界に取り残されたかつてのアークと重なることに気づいた。
あたしは本当にセラフィを殺せるのだろうか。

「でも、その前に。ねぇ、アークさんのところにいこうよ。」
「え…?」

突然の提案にあたしは驚いた。
殺し合いに乗ろうとしているあたしはアークに合わせる顔がないというのに。
それは慣用句なんかじゃなくて、あたしは本当にアークの幽霊と出会うかもしれないんだ。でも――――――
「分かった。…連れてって。」
――――――あたしは逃げない。
例えあなたに責められようとも最後まで戦い抜く。
だってあたしは――――――あなたを愛しているから。

【F-9/ポルトリンク/二日目 夜】

【ポーラ@DQ9】
[状態]:HP3/5 MP1/5
[装備]:折れた炎の剣@DQ6
[道具]:支給品一式 支給品0〜2個
[思考]:ゲームで優勝し、アークを生き返らせる。アークの死んだ場所へ行き、その後セラフィを殺す。

※未練を残す死者の幽霊が見えます。会話の可否等、ここまでで触れていないポーラの能力の詳細は以降の書き手さんにお任せします。

【セラフィ@DQ10】
[状態]:HP5/6 歩くとHP回復(装備効果)
[装備]:ホイミンのTシャツ@DQ8 祈りの指輪
[道具]:
[思考]:アークの死んだ場所へ行く。ポーラの行いは否定しない。ジャンボを探す。レックにはデュランのことを伝えてあげよう。

※仲間モンスターのホイミスライムと同じ呪文、特技が使えます。

【F-8/二日目 夜】

【アベル@DQ5主人公】
[状態]:HP1/5 MP1/20
[装備]:破壊の剣
[道具]:支給品一式 剣の秘伝書
[思考]:過去と決別するために戦う

※ポルトリンクのスライムの遺体が埋められている場所に毒針と不要なスライムの支給品全てが、町の中には吹き飛ばしの杖(0)が放置されています。

【スライム@DQ1 死亡】
【残り40人】


かつて、世界を大洪水が襲った。神に選ばれた少年ノアがお告げに従い方舟を創ったことで、人間は絶滅を逃れた。

しかし、この世界の方舟の定員はたったのひとり。乗れなかった者には等しく死が訪れる。
そして方舟に乗れるのは神に選ばれた正しき者であるとは限らない。 方舟の先に待つのが希望であるのかどうかもまだ分からない。
救いの手すら崩れ落ちそうな、そんな絶望の中に彼女たちは迷い込んでいる。

それでも、"愛"は彼女に希望を残す。
その"愛"は"北極星"のように、彼女の進む道――――――方舟を追い求める道を、移ろうことなく示し続けるのだった。

751 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/30(土) 00:59:03 ID:po/9pLpk0
投下終了しました。

もしも◆CASELIATiAさんがご覧になっているのであれば、是非またSSを投下してほしいと思い、自分を発端とした問題が起こった作品に一種の邂逅の意を込めてリレーさせていただきました。

752 ◆2zEnKfaCDc:2017/12/30(土) 09:54:00 ID:po/9pLpk0
早速ですが誤植修正を。

>>746
だからこそ、アベルは支給品として配られたものの内のひとつが気に入らなかった。

が文脈に合ってなかったので

また、アベルは支給品として配られたものの内のひとつが気に入らなかった。

に訂正します。

753ただの一匹の名無しだ:2017/12/31(日) 01:04:27 ID:cMTWbC320
いきなりの大作の投下、乙です!!
そしてピたろうも、乙です!!
アベル、セラフィ、ポーラ、そしてピたろうの決意が良く浮き彫りになっていました!!
やっぱりスライムの最後(色んな意味で)は灼熱の炎ですね。
Casさんがどう思っているのか分かりませんが正直もうあの件は気にせず書き続けるといいと思いますよ。

754ただ一匹の名無しだ:2017/12/31(日) 16:40:54 ID:ybLQI4Hk0
投下乙です

ピたろう…ムチャしやがって
ただのスライムが炎吐くって、愛の力ってすごい…
ボロボロのアベルも、まだまだ予断を許さない状況のポーラとセラフィも、どうなることやら…

755 ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:34:53 ID:3uAnN46U0
投下します。

756闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:37:35 ID:3uAnN46U0


「ジャンボ。無事でよかったぜ。なによりだ。」
「ヒューザこそボロボロじゃねえか。」


とりあえず、二人は再会を喜ぶ。
長らく会わなかった親友同士の再会のように
最もそれほど共闘する回数は多かったわけではないが。


「この人?たち、ジャンボさんの知り合い?」
「ああ、昔何度か一緒に冒険した仲間でな。ホイミスライムの方は知らないが、大方同行者だろ。」

ターニアは不思議そうに二人を見る(最もヒューザとホイミンを「二人」と数えるかは難しいが)


「このアブラ粘土みたいな人がヒューザの言っていたジャンボって人?」
「見た目はそうだけど、この戦いで大いに活躍してくれるはずだ。オマエのなんとか作戦も手伝ってくれるはずだぜ。」

一方でホイミンもジャンボの姿を怪しみヒューザに尋ねる。
最も、仲間を集めるのが得意なのは、魔物と少女が同行しているから、本当のようだ。


「まあ、5人もそろって立ち話ってのもナンだ。向こうの方に広場みたいな所があるし、そこで座ろうぜ。」

ジャンボの言われたまま他の4人も従って森の中に入る。
このメンバーは誰一人知らないことだが、かつてとある国の王と姫とその従者、そして山賊も休憩に使った場所である。
ジャンボはヒューザにベホイムをかけ始めた。回復量ホイミンやヤンガスのホイミとは全然違う。

「初めまして、ライフコッドのターニアです。お兄ちゃんを探しています。」
「ぼくホイミン。この戦いの参加者全員と友達になるんだ。友達になってくれる?」
「レーン村のヒューザだ。ジャンボとは、まあ、知り合いみたいなところだ。」
「あ、一応、自己紹介しておくぜ。アグラニ町出身の、ジャンボだ。一応、首輪解除の手掛かりを探している。」
「ガウ、ガウ。」
「こいつはゲレゲレ。アベルってご主人様を探してるらしいぜ。」

互いの自己紹介から始まり、持っているパンと水で食事を摂る。

757闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:38:13 ID:3uAnN46U0




「なあ、ジャンボ」
「分かってるぜ。首輪と、仲間集め、だろ。」
「なら話が早え。早速、手にした情報を教えてくれ。」
「まあ、そう焦るなよ。オレも実はピサロってヤツから…………」


(諸君、ご機嫌如何かな?)

「「「「「!?」」」」」

その場にいた5人が突然始まった放送に一斉に驚く。


だが、放送を聞いた後は、それどころではなくなった。

ガボ
ゲルダ
サンディ
ナブレット

「うわああああああああああああ!!!」
一番最初に悲鳴を上げたのはホイミン。

「どうした!?」
一番最初にヒューザが声をかける。


「みんなが………、みんなが…………!!」

トラペッタで新しく知り合ったメンバーは全滅だ。
りゅうちゃんに続いてガボまで死んだことが分かり、『みんな友達大作戦』の初期メンバーはとうとう一人になってしまった。

「しっかりしろ!!オマエが言ってたライアンって戦士は呼ばれてねえだろ!!」
最初の放送の直後に自分を襲ったバラモスが呼ばれたことと、ライアンが呼ばれてないことから、バラモスはライアンが倒したのだろう。
だが、まだ会えないのは同じだし、そんなことは慰めにならない。
ここの人達と新たに友達になったところで、また死んでしまうのではないか。


動揺したのはホイミンとヒューザだけではない。

758闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:38:51 ID:3uAnN46U0

パパス
デボラ

「ガウウウウウウウ!!!」
ご主人さまの大切な人と、そしてご主人様と同じくらい自分を大切にしてくれた人
大事な二人を失ったことと、自分の無力さを雄たけびにして表現する。


「バーバラさん………」
ホイミンとゲレゲレほどではないが、ターニアも悲しむ。
レックの仲間達の中でももう二度と会えないはずの人だった。
だからこそこの世界で会うことを楽しみにしていたのに。
きっと、お兄ちゃんはもっと悲しいだろう。



仲間を失った者、仲間を失った仲間を見ている者。全員多かれ少なかれの悲しみを抱いた。




一人のドワーフの男を除いて。




(やっぱり、この世界で「いいヤツ」ってのは生き残れねえんだな)

「いいヤツ」というのは「都合のいいヤツ」ではない。
ナブレットにヒストリカ。前の放送で聞いたズーボーも当てはまる。

生真面目で誰よりも弱い者を守る意思の固いパラディンのズーボー
観客の子供達のことをずっと考えているナブレット
コミュニケーション能力に若干の問題があるが、情熱的で友情に憧れているヒストリカ博士

彼らは融通の利かない所もあった。
だが、人が傷つくくらいなら自分が傷つくことを選ぶほど、優しい「いいヤツ」ばかりだった。
自分はどうしてもそういう人になれない。
あれこれクエストなども承諾していたが、それは旅人としての名声値やお礼の品、もしくはわが身を守るためのためであった。
間違っても人から感謝されることが目的ではない。


(さてと、あんまり気は進まねえが、やるしかねえんだな。)
ジャンボは悲しみを抱かず、冷静に場の状況を考える。
放送でレックとチャモロが呼ばれていないことから、決意を固める

759闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:39:22 ID:3uAnN46U0




ターニア曰く二人共かなりの実力派で、人間性にも問題ないらしいので、対主催の陣営に入っている可能性が極めて高い。
そしてその陣営は、時間が過ぎれば過ぎるほど大きくなっていくだろう。
そうなるとその輪の中にいる二人だけを狙って殺害するのはどんどん難しくなる。


やるなら、この時点から算段を打っておく必要がある。


(あ、まだ大事なことがあったな。)
もう一つ悪いことがある。
ついさっき入った森の広場が、ギリギリ2時間後の禁止エリア、【E―2】に該当していた。
少し戻ればエリアから脱出できるので、普通に考えればこれが原因で死ぬ危険性はまずないが、全員が動揺している中ではどうなるか分からない。


「オイ!!みんな落ち着け!!」
ジャンボはパンパンと手を叩き、全員の注目を集める。
「ここが禁止エリアになるみたいだ!!出ろ!!」
特にホイミンは気が進まない様子だったが、ヒューザとゲレゲレがそれぞれを運ぶ。

「忘れ物とかないよな?ここでの忘れ物はシャレになんねえぞ!!」




どうにか広場の外へ出る。まだ他の者たちの落ち着きは戻っていないようだ。
こんな所でこんなことを聞かされれば、落ち着いている方がおかしいのだが。

「ターニア、ゲレゲレ、そしてそこのホイミスライム。オマエらに一つ言っておきたい。」
「どうした、ジャンボ」
ヒューザがジャンボに声をかける。

「仲間探しはオレとヒューザだけで行く。後のヤツは城に帰れ。」
「「「「!?」」」」

「どうしてそんなこと言いだすのよ?まだお兄ちゃんを見つけてないのに!!」

760闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:39:51 ID:3uAnN46U0
「ガウ!!ガウ!!」
「確かに城へ行くのは目的だったけど……。」
「オイ、いきなり帰れはねえだろ?」


ターニアとゲレゲレは当然ながら反対する。ホイミスライムもあまり乗り気はしないようだ

「これからは暗くなるし、前にも増して危険になる。それにな、良い子はおねんねの時間だぜ。
城なら寝所もあるし、安全って訳でもないが、ここよりかはマシだろ。」


ジャンボがこういった理由は、言うまでもなく彼らのためではない。
これからのヒューザとの話を聞かれたくないからだ。

結局3人の態度に負け、自分はこれからヒューザとの話があるから少し離れてくれ、ゲレゲレは二人を守れとの話で終わらせた。


「別にアイツらを向こうに追いやらなくてもいいんじゃないのか?まあいいけどよ。」
「じゃあ、まずは首輪のことだけどな、ジバ系の呪文ってあるだろ?あれを応用して使われているんじゃないかって、ピサロから聞いたんだ。」
「オマエもピサロを知っているのか?」
「ああ、ヒューザが城を出てからオレがピサロに会って、そっからヒューザのことを聞いたんだ。」
「入れ違いになってたみてえだな。」

「話を戻すぜ。トラップジャマーって技を知ってるか?」
「なんだそりゃ?」


どんな世界でも、日々新しい技術が発明される。アストルティアも例外ではない。
ヒューザも一人で旅を続けているうちに新しい技を身に付けたが、戦士やバトルマスターに関わること以外は余り分からない。

「地面に設置されている魔法陣や爆弾みたいなワナを無力化して、そのままそっくり自分のモノにしてしまうって技さ。勿論ジバ系の魔法も例外じゃねえ。」
「すげえじゃねえか!!早速やってみろよ。」

ようやく、光明が見えてくる。流石ジャンボ、期待通りのドワーフだ。

「今はダメだ。それはどうぐ使いって職業になってねえと、使えねえんだよ。」
「なんだよそれ。」
「だから、どうにかしてオレが転職できる方法を見つけなきゃダメなんだ。」
「ダメじゃねえか!ここにはダーマ神殿出張所はねえんだぞ!」
「落ち着け、声がでけえよ。」

世の中そんなに甘くない、というヤツか。

「他には、首輪にかかっている魔法を解除するって方法も考えられるな。」
「零の洗礼、みたいなヤツか?」

そういえばククールとの戦いで、メルビンのじいさんが凍てつく波動で透明状態を解除していた。首輪の反応は変わってなかったが。

761闇の中へ ◆znvIEk8MsQ:2018/01/06(土) 18:40:16 ID:3uAnN46U0

「でも、そいつじゃ多分ダメだ。はどうガードって聞いたことあるか?
オレは知り合いの冒険者から聞きかじったくらいで、その力を持った敵と戦ったことはねえんだけどよ。零の洗礼なんかを無効化するらしいんだ。」

確かに、こんな首輪を作る技術があるならランプ錬金のように首輪に何かしらの耐性を付けることも不可能ではないはずだ。

「それもダメなのか。」
「まあ、気を落とすな。零の洗礼以外の魔力解除の技を使えばどうにかなるかもしれねえ。
それからシャナクって古の呪文を使って首輪に掛けられた魔法を解く、
魔瘴石を太陽石に変換する要領で別の無害な魔法の道具に変えてしまう。
首輪に魔法が掛けられていることを仮定すると、思い当たるフシはこのあたりかな。」



ジャンボが言っているのは、あくまで仮説でしかない。
だが、仮説とはいえここまで多くのアイデアを出すとは。

ヒューザはいざという時のためにジャンボの案を箇条書きしている。


「さてと、今のところ首輪の話は終わりだ、今度は戦力として力を貸してもらうぜ。」
「任せな。」

今度ばかりはソロを突き通すという訳にもいかないだろう。



★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

一方でターニア、ゲレゲレ、ホイミンの三人はジャンボ達とは距離を離れて、二人の会話が終わるのを待っていた。
遠くに居ろ、と言われたので、居場所は暗いながらも分かるが、何をしているのか分からない。
「ホイミンさん?だったね。大丈夫?」
「うん……………でも、ぼくが友達を作る前に、みんな死んじゃうんじゃないかな。」
「そんなことないよ!!きっとまだまだ新しい友達が出来るって!!」
「ガウウウ………」

一方でこの二人はまだ意気消沈だった。
ジャンボの言う通り、城へ戻ったほうが良かったかもしれない。

「ジャンボさん、半魚人の人と何話してるのかな。あれ?ゲレゲレ、どうしたの?」

ゲレゲレはこの状況にとある既視感を感じた。
確かロッキーは、ジャンボとマンツーマンでいた時に自爆したのだ。
ひょっとしたらあの魚人も危ないかもしれない。

「ちょっとあの二人に明かりを持っていくよ。暗くなってきたし。」
ターニアが支給品のランタンを持って、そのゲレゲレよりも先にヒューザ達の方へ行く。


★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板