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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト8部門〜

300予想の範囲外 主クク 1/3:2011/10/12(水) 18:57:12
夜分遅く。
疲れた体を部屋の中へ引き摺るようにして、ベッドまでたどり着いた。
赤いマントと上の騎士団の服を半ば投げるように脱ぎ落としてシャツとズボンというラフな姿になると、なりふり構わず仰向けの状態でダイブする。
大丈夫、これを見ているのは同室になった赤いバンダナの青年くらいだ。
ーー銀髪が白いベッドの上で踊るように散った。

「あー、疲れた」

なんとも不機嫌そうな表情で、彼は力を抜いた。

「そうだね。毎日このくらい疲れてたら、もう君も夜遊び出来ないんじゃない?」

その様子を見て、苦笑混じりにこちらを揶揄する仲間の声が聞こえてきた。

「なんだよ。んな毎日毎日酒場に入り浸ってるわけじゃねえし、朝帰りだってしてないんだからいいだろ」

「僕にはそもそもワインの美味しさがわからないけどね……ほらほら、そんな格好してると襲われちゃうよ?」

エイトがベッド周りに散らばったククールの制服を律儀に拾い、こちらへ手渡してきた。
その、なんというのだろう……。年下の彼のその大人びた感じが何だか気に障った。それが疲れていたせいかはわからない。とにかく、その表情を崩すためにちょっかいをかけてみたくなったのだ。

だからククールは突然、自らの利き手でエイトの右腕を引っ張った。

「うわっ!」

驚きの声をあげてエイトがこちらに倒れこんできた。当たり前だ、かなり力任せに自分の方へ引っ張ったのだから。そしてこれはククールの中では予想の範囲内の出来事。

「なら、襲ってみる?」

「……え」

エイトの目が困惑で大きく見開かれ、対称的にククールの瞳が悪戯っぽく細められた。

301予想の範囲外 2/3:2011/10/12(水) 19:10:14
見つめあうこと数秒が経過した頃、ククールが唐突に噴き出しす。そして掴んでいたエイトの右腕を離してと思いきや、腹を抱えて大笑いしだした。

「ぶは、あはははは!じょーだんだよ、冗談!」

大人びた奴の鼻を挫いてやろうというやや子供染みた発想を抱いたククールとしては、エイトのきょとんとした顔がいかにも何も知らない無垢な子供のような表情であったから満足したのだろう。

「……ククール」

ぎしりと軋む音が耳元から聞こえた。
ぎしり。そんな音をたてるものはこの部屋の中にはベッドしかない。状況を詳しく言えばククールの耳のすぐ横に、先程彼が解放したエイトの右手があった。これがその音をたてたのか。そう理解するのに数秒かかる。見事に見下ろされる格好になったククールはそれだけ狼狽えていた。

「あ、あの……エイト?」

「なに?」

「退かないのか」

「どうして?」

今度はエイトがくすりと笑う。先程のあどけないようなきょとんとした表情は何処へやら、というような変貌ぶりだった。

「君が襲ってみるかって言ったんだろう」

顔が、不自然に近い。
互いの吐息がかかる距離にあるのだ。

「だ、だから冗談だって……オレ野郎の趣味は無いし、ひ」

ぺろ、と唇を舐められ情けない声が漏れる。
怯んだ隙に、これから言うはずだった静止のための言葉が相手の唇によって呑み込まれた。ということは、既に唇と唇が触れあっているらしい。
ちゅ、という耳につく音が聞こえる。これが現実なのかどうか未だ判断しかねるククールはただただ固まっていた。
しかしすぐに抵抗する羽目になる。

「ーー!」

何かが唇を割って侵入してくる感覚。こいつ、舌を……!
ククールは心の中で毒づいた

「ん、んんーー!!」

相手のそれを自分の舌で押し出そうとするが、反対に絡めとられてしまった。何処でこんなの習ったのか、と疑問に思うほど、正直上手い。

「……ふ、」

唾液が頬を伝って一筋流れていく。いやこれは本気でまずい、頭がぼーっとしてきたのが分かった。
畜生、息が苦しい。
なりふり構わずに手足をばたつかせると、タイミングを見計らったかのようにようやく唇が離された。

302予想の範囲外 3/3:2011/10/12(水) 19:32:58
「はぁっ」

一気に息を吸うと、案の定噎せた。げほげほと咳き込む自分に比べ、目の前の奴は随分と涼しい表情をしている。

「なんて顔してるんだ」

「は……?そんなに酷い顔してるか、オレは」

「うん。涙目で、頬が赤くて全体的にピンクの弓矢な感じ」

「エロスってことな」

まさかエイトからのキスで息切れするとは思わなかった。というか、キス自体されるとも思ってはいなかったが。

「ちなみに僕は同性とキスしたのは初めてだけど、君にもこういう趣味は無いんだったよね」

「……ああ」

「そんなククールはこれ以上の行為をして欲しい?」

「切実にいいえ」

お前は何処の鬼畜だと突っ込みそうになるが止めておいた。更に厄介なことになりそうだとオレの勘が告げているから。

「じゃあ、からかってごめんなさいは?」

「……もう本当すみませんでした。まさか乗ってくるとは思わなかったんです」

「わかればよろしい」

エイトは素直に上から退いた。
その顔はいつも通りの人畜無害そうな表情であったから、ククールはほっとしてベッドの上で溜め息をつく。

「そういえばククールって百戦錬磨じゃなかったの?」

「……野郎は対象外だって言っただろ」

「ふうん。ま、知識さえ教えてくれればまたお相手するよ」

にこりと笑って放たれたその言葉にククールは凍り付くが、その視線の先では何事もなかったかのようにエイトが寝る準備を進めている。
……神よ、羊の皮を被った狼がこんな近くにいたなんて知りませんでした、全くもって予想外の出来事でした。
ククールが天を仰いでいるその横では、年下の彼が先ほどと何ら変わらない大人びた表情をして、静かに笑っていた。

303予想の範囲外 作者後書き:2011/10/12(水) 19:37:36
小学生というのは大袈裟でしたが、幼めなククールと大人な主人公の絡みが好きですので投下してみました。
指摘などがありましたら優しく教えてくださると嬉しいです

閲覧ありがとうございました。

304名無しの勇者:2011/10/12(水) 19:46:46
まさかこの展開で投下が来るとは嬉しいなあ嬉しいなあ。
女の子相手ならイケイケな癖に男相手だとウブになるククがおいしいです。
投下ありがとうございました。

305名無しの勇者:2011/10/22(土) 19:29:05
は、投下されてたとは!
主クク萌えました、乙です

306名無しの勇者:2011/10/30(日) 16:05:37
うおお…主に押されるククール可愛いよククール
お子様だと馬鹿にしてた相手にいただかれる展開大好きだ
ご馳走様でした有り難う


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