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FFDQかっこいい男コンテスト 〜ドラゴンクエスト6部門〜

110【2/7】:2011/01/03(月) 21:07:06
「ミレーユ。テリーはどうだった?」
 ギシギシと軋む車体の揺れも久々だ。一瞬、ぐらついた上体を腹筋に力を込めてどうにか踏ん張ったレ
ックは、既に揺れと一体化しているミレーユに向かって尋ねた。
「……っと、そうだった。テリーの奴、やっぱ捕まえるのは無理だったか? あいつ、世界中をフラフラ
旅してるもんなぁ」
 最後はぼやくように呟いたハッサンに向かってミレーユが極上の笑みを浮かべて見せた。
 彼女が手を伸ばして幌を開ける動きを目で追いかける。仄かに明るい薄光の中、御者席に座っていた青
いターバン頭が不機嫌そうに振り向いた。
「何だ。ちゃんといるじゃねえか」
「姉さんがどうしてもと言うから来てやったんだ」
 テリーが不貞腐れた口調で答えた。
「たまには、こういうのもいいでしょう?」
 ミレーユが弟の顔を覗き込むようにして首を傾げた。
「あなたと再会してから一緒に旅する間……過酷な戦いの日々の中でも温かい気持ちで胸が一杯になって
いたの。またこうしてみんなと過ごせて本当に嬉しいわ」
 心から幸せそうに微笑む姉の顔を見たテリーがウッと詰まった。放浪の旅で日焼けした顔にわずかな赤
みが差す。ハッサンの揶揄いの口笛に対しては反撃の言葉をきっちり返すあたり、本気で照れているよう
だった。
「でも本当によくテリーの居所が掴めたな。探し出すのは一苦労だったんじゃないか?」
 レックの疑問に答えてくれたのはチャモロだった。
「『世界中を旅するのは良いけれど、定期的に顔を見せに来ること』。そう約束を交わしているのだそう
ですよ」
「テリーが? ミレーユと?」
「はい」
 その後を引き継いで、アモスも解説に加わった。
「そうなんです。それで昨日、偶然グランマーズの館にやって来たテリーさんを説得して一緒に来てもら
ったというわけです」
「説得なんて可愛いものじゃなかったぞ」
 二人からの説明を受けて不満げに唸ったのは、当のテリーである。
「アモスもチャモロも、世間知らずだから知らないのかもしれないけどな。ああいうのは、世間一般では
『拉致』って呼ぶんだ」
「縄でぐるぐるっと縛って、肩に担いで来ましたからね!」
 わっはっはっと大声で笑うアモスを見て、嫌味が不発に終わったテリーが顔をしかめた。
「あ、でもテリーさんを地面に落とさないように十分気をつけたつもりですよ?」
「当たり前だ。落としてたら今ごろあんたの首と胴は繋がってないぜ」
 レックは思わず御者席の男と少年を交互に見比べた。


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