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92アルパカにて:2008/03/20(木) 23:23:05
(ヘンリーがラインハットに戻る決心を主人公に伝える場面です。)

 その日は野宿しないで宿屋に泊まった。お金節約のため同じ部屋だ。
「ルカ。眠れないんだ。話、してもいいか?」
 夜中。寝付けないでいるルカにヘンリーが声をかけてきたので、彼女は寝床から起き上がった。
「うん。」
「起きてたのか。」
「……思い出してた?城にいた頃。」
「ああ。親父が……死んでたなんてな。」
「ショックだったね。」
「うん、それはそうなんだが、実はホッとした。」
 ヘンリーが笑顔になったので、ルカもちょっと安心した。
「どうして?」
「サンタローズを焼いてのうのうと生きていたら、オレが親父を殺してた。」
「ヘンリー!?」
「だけどそんなことしたらデールが悲しむだろう?だから、そんなことにならなくてよかったって。」
 あの神殿でさえいつも快活だったヘンリーが初めて見せた、暗い、冷たい笑顔だった。
「ヘンリー。違うよ!王様はお父さんと友達だったんだ。ヘンリーを誘拐したなんて思うわけない!サンタローズを攻めたのは、王様の命令じゃないよ絶対に!」
「ルカ……。」
「私がさ、もしも、ヘンリーの子供といて、行方不明になったら、ヘンリーは私が子ども誘拐したって思う?」
「……何だよ、その例えは……!!」
 ヘンリーは腹を抑えてヒク付いていた。笑い声を懸命に堪えているようだ。
「笑うことないだろ!」
「あ、ああ。ごめん。そうだな。親父じゃないよな。うん、確かに。」
 ヘンリーはまだ笑っている。
「オレ、ラインハットにちょっと戻ってみるかなぁ。ここから東の方だったよな。」
 笑いながらでなければ、国を憂う王子の深刻さが滲んだ感動的な台詞に違いない、とルカは思った。
「もういいよ、気が済むまで笑えばいい。私はもう眠るから!戻るんなら明日も忙しくなるし。お休み!」
 ヘンリーも自分の寝床に横になった。
「あのさ、ルカ、お前がオレの子供と消えたらって……言ったよな。」
 もう笑ってなかった。
「……」
「オレの子供の母親はお前がいい。今でなくていいから、いつか考えてみてくれないか?」
 ルカは全力で眠った振りをした。


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