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87
:
女王様誕生
:2008/02/10(日) 09:27:36
ビシィィィィッッッッ!!
ムチ男の鞭が、唸りをあげて彼女の体を打ちつける。
「くぅっ!」
左肩から右のわき腹にかけてを打たれ、彼女が呻き声を漏らす。
服が裂けて、その下から覗く肌が傷を伴って赤く滲む。
続けて、鞭が彼女を打たんと振り下ろされる。
しかし彼女は咄嗟に左腕を、鞭と自分の間に掲げる。
「なにっ!?」
鞭は彼女の思惑通り、勢いのまま左腕に巻きつく。
ムチ男が力を込めて引っ張るが、固く巻きついた鞭は剥がれない。
「えいっ!」
それを逆手に、彼女が左腕を力一杯引く。
当然、鞭で繋がっているムチ男は彼女のほうへと引っ張られて、眼前に迫ったムチ男の顔を、彼女は右の拳で力一杯殴りつけた。
「げぇっ!!」
鞭を手放し、地面に倒れ付すムチ男。しかしまだ意識はあるらしく、立ち上がろうとしている。
彼女は、左腕に巻きついた鞭を剥がす。幾重にも出来た痣が痛々しい。
ふと、投げ捨てようとした鞭を改めて見つめる。
記憶に甦るのは、幼馴染が器用に鞭を振るって魔物を倒していた姿。
鞭の柄を右手で握り、記憶を頼りに振るってみる。
ピシィッ!!
と小気味よい音を立てて、地面を打ち付ける。
「あはっ。コレはいいかも♪」
嬉しげに言う彼女の顔には、笑みが零れていた。
「ひっ、ひぃっ!」
立ち上がって彼女の顔を見たムチ男は、その顔を見て悲鳴を上げる。
嗜虐的で美しい、彼女の笑顔を。
たまたまその光景を見てしまったヘンリーは、何故だかわからない不安に駆られて、身体を酷く振るわせた。
――これは運命の出逢い。彼女が、自らに最も相応しい武器と出逢った瞬間。
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