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In the secret 前
:2007/09/23(日) 01:04:00
「――光るからすぐに見つかるって言っていたけど……探す範囲はやっぱり広いよね」
夜の草原の風は冷たく、羽織るマントがはためいている。
「しょうがない、手分けして探そうか。
いい? 光る草だからね。見つけたら教えてね。じゃあ、お願い!」
その言葉に、彼女の傍らにいた2匹――キラーパンサーとスライムが元気よく走っていった。
キラーパンサーのプックルとスライムのスラリン。彼女と旅をする大切な仲間である。
「月が隠れてくれてれば、逆に探しやすいんだろうけどな……」
雲ひとつ無い夜空に浮かぶ満月は、離れて光る草を探す2匹の姿もハッキリと浮かび上がらせている。
ルラフェンに住むベネット老人に頼まれ、古代の魔法を復活させる手伝いとして、材料となる光る草――ルラムーン草を探しているところである。
「ピキーーーーーーーッ!!!」
静寂に支配されていた草原に、スラリンの声が響いた。
「見つけたの!?」
声をかけながら彼女が駆けつけると、嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねるスラリンの傍に、ボーっと青白く光る草が生えていた。
「……すごい。本当に光ってるんだ」
しゃがみ込み、周りの土を丁寧に取り除いて、ルラムーン草を引き抜いた。
「これがルラムーン草……。引き抜いても光ってるんだ……」
神秘的な光景に心奪われる彼女の傍らでは、プックルが嬉しそうに喉をならし、スラリンが飛び跳ねていた。
〜中略〜
「お前さん、呪文が使えるようになっていないか、ちと試してくれんか」
家を壊すかと思えた大爆発の後、ベネット老人がそう言った。
「試すっていっても……、どうすればいいんですか?」
具体的な使い方も知らない呪文である。いかに彼女がいくつか呪文を使うことができるといっても、どうすればいいのかまったくわからなかった。
「なに、使い方は簡単じゃ。自分が行きたい場所を頭の中でイメージするんじゃ。そして呪文を唱えれば、そのイメージした場所に瞬時に辿り着いておる」
――自分が行きたい場所。
目を閉じて、頭の中に思い浮かべる。
真っ先に浮かんだのは笑顔。
どんなに辛い時でも、いつも笑って励ましてくれていた。
次に浮かんだのは、怖いくらいの顔つきで敵と戦う姿。
私が危ない時にはいつも助けてくれた。
次に浮かんだのは、背を向けて、声を殺して泣いてる姿。
私の前では決して涙を見せることは無かった。けれど、夜中に一人で背中を震わせている姿を見てしまった。
次々と浮かんでは消えていく、彼の顔、姿、思い出。
そして最後に浮かんだのは、困っているような笑っているような顔。
別れの時、『ついて行こうか?』という彼に対して、国を立て直すことが重要だと告げて断った。
笑顔で見送ろうとしてくれたけど、でも、私の事が心配なのだと、すぐにわかる複雑な表情。
見ていると甘えてしまいそうになるから、無理矢理笑顔を作って、背中を向けた。
あれから、一年。
嬉しい事もあった。生き別れになっていたプックルと再会することができた。
辛い事もあった。人に疑われて、信じてもらえなかった。
どちらも、彼に傍にいて欲しかった。
一緒に喜んで、一緒に泣いて欲しかった。
だから、うん!
彼に会いに行こう!
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