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832/2:2007/09/19(水) 18:56:26
「そうですか……伝説の勇者を」
 青年は呟くと、しばらく考え込むようにテーブルを見つめた。
 そして、やおら口を開いた。
「実は、私には妹がいます」
「?」
「その妹が今、婚約者を募集しているのです」
「……あっ」
 街で聞いた話を思い出す。
「そして妹の婿となる方に、家宝の盾――天空の盾を譲る事となっています」
「やっぱり天空の盾なんですか!?」
「はい。その通りです」
「それを、貸してもらうわけにはいきませんか?」
 彼女の言葉に、青年は静かに首を振った。
「多分、無理でしょう。素性の知れない者に家宝を託すほど、父もお人好しではないでしょう。父が気に入れば話は別でしょうが」
「そうですか……」
 消沈し、俯く彼女。
「あなたにお願いがあります」
「えっ?」
「妹の婿候補として、立候補してくれないでしょうか?」
「ええっ!?」
 あまりにもな急展開な要望に、大声を上げて驚く彼女。
「妹には望まぬ結婚ではなく、自らが選んだ男性と結婚して欲しいんです。ですが、このままだと妹は父の選んだ男性を結婚することになるでしょう。そこで、あなたに婿候補になってもらい、できることなら妹の婿になって欲しいのです」
「えっ、でも……」
「父に聞いたところによると、婿を選ぶ条件は何かを探してくることらしいのです。旅慣れているあなたなら、そういう点において他の候補者よりも優れているのではないかと思いまして」
「確かに、そうだとは思いますけど……」
「では、引き受けてもらえないでしょうか?」
 青年の顔は真剣そのもの。まっすぐに彼女を見つめている。
「あ……はい。わかりました」
 青年のただならぬ迫力に押されて、彼女は思わず頷いてしまった。
「ありがとうございます」
 優しく、微笑むような笑顔。その笑顔に、しばし彼女は心を奪われた。
「では、父達のいる屋敷へと行きましょうか」
 そう言って立ち上がる青年。
「はい。あ、でも、ボクは……」
 続いて彼女も腰を浮かせ、躊躇いがちに口を開くが、
「大丈夫です。後のことは私に任せてください」
 青年に遮られてしまった。
「ああ、すっかり忘れていました。貴女の眼を見ていると、何故か心が落ち着いて、以前から知っているような感覚にとらわれていたんですが、まだ、名乗っていませんでしたね」
 先ほどとは違う、少し困ったような笑い顔を浮かべる。
「私の名前はフロイスです。どうぞよろしく」
 右手をすっと差し出して、握手を求める。
 彼女もそれに応えて、青年――フロイスの手をキュッと握る。
「私の名前は――――」


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