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80
:
1/2
:2007/09/19(水) 18:54:35
――うわっ!
瞳を射す様な眩しい陽射しに、彼女は思わず顔を歪めた。
洞窟の暗闇に慣れた瞳には、照りつける真昼の太陽は些か強すぎた。
「うおっ!? まぶしっ!」
ストレートに感情を口に出しているのは彼女の旅のパートナー、ヘンリー。
ここだけの話だが、北方大陸にあるラインハット王国の王子だ。
何故、一国の王子が旅をしているのか、話が長くなるので割愛するが、要するに彼の押しかけである。
『国の方もだいぶ落ち着いてきたし、一人より二人の方が旅も楽しいだろ』
ぶっきらぼうにそう言い放ったヘンリーに対して、彼女は一度は断ったが、
『はーん? 聞こえないな。もう一度言うぞ、一緒に旅をしてやる。それと、子分は親分の言うことを聞くもんだ』
彼の決め台詞(?)に押し切られる形で、先日から一緒に旅をしている。
彼女の方も、彼が純粋に自分の事を心配してくれているのがわかっているので、決して固辞したりはしなかった。
ヘンリーの仕種に、彼女が含み笑いをしていると、すぐに不満げな声をあげた。
「なんだよ、何かおかしいか?」
「ううん、何でもないよ。それより、アレがそうなのかな?」
笑顔で否定した彼女、その視線の先に街の影が見えてくる。
「ああ、多分そうだろ。なんて言ったっけ、サラボナ?」
サラボナ――天空の盾があるらしいと、デール王に教えてもらった街。いま現在ではたった一つの手がかりだ。
仲間の魔物たちはさすがに街中には連れて行けないので、近くの木陰に馬車と一緒に留守番をさせ、彼女はヘンリーと二人、街の中へと足を踏み入れた。
「わん! わん! わん!」
と、白い犬が駆け寄ってきた。犬は彼女の前で停まると、その場に座り込んでしまった。
「誰か! お願いです! その犬をつかまえて下さい!」
遅れて、女性の声が聞こえてきた。
恐らくはこの白い犬――リリアンの飼い主だろう。
女である彼女の目から見ても、綺麗で清楚な雰囲気を漂わせている。
〜中略〜
街の奥へと去って行く女性とリリアンを見送りながら、ヘンリーが口を開いた。
「いかにもお嬢様って感じの人だなー」
「うん。ボクと違って全然おとなしそうな人だよね」
ヘンリーは彼女の顔をちらりと見やって、「確かに」と頷いた。
「ボクなんかこんなにたくましくなっちゃって、東から西への旅がらすだもんね」
笑いながら、むん、と力こぶを作ってみせた。
そんな彼女の頭にポンポンと軽く手を乗せて、ヘンリーも答える。
「けど、だからこそこうして一緒にいられるんだけどな」
「もー、子ども扱いしないでよ!」
頬を少しふくらませて、手を払いのける彼女。続けて口を開いた。
「そんなことより、天空の盾の情報を集めなきゃ」
「そうだな。それじゃあ、とりあえずは宿屋にでも行ってみるか」
「うん」
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