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79一人旅(サラボナにて):2007/06/14(木) 22:34:12
目の前で炎に包まれる父親が残した遺言は
「お前の母は生きている。捜し出せ」だった。
それがルカの長い旅の始まりだった。

ラインハットに戻るヘンリーと別れたルカは一人サラボナに向かった。
そこに住むルドマンという富豪が「天空の盾」を所持しているらしいのだ。
ところがどこで道を間違えたのか、山の中に迷い込み
気が付いたら火山の火口が目の前だ。
「私って方向音痴だったんだ……参ったなぁ一人になった途端に」
日も暮れて、こんな場所で野宿するしかないと覚悟を決めた時。
人の声がした。
気のせいではない。
それは二度三度と聞こえた。しかも悲鳴。
ルカはその人を助けることにした。
助けた後で道案内を頼むつもりで。

火口の側で一人の男が溶岩の魔物に襲われて死にそうになっている。
ルカは魔物に向かって真空攻撃の呪文を唱えた。
魔物の注意がこちらに向く。
「そこの人、生きてたらこれ使って」
薬草の束を放り投げ、後は戦いに専念した。

溶岩の魔物はルカの唱えた真空の呪文によって冷やされたのか動きが鈍くなった。
吹き上げる火炎の息には手こずったものの、最後は剣で叩いて何とか倒すことができた。

「大丈夫だった?」
男のほうを振り返ると、火口に落ちそうになりながら何か箱のような物を拾い上げていた。
「何、魔物の落し物?」
倒したのは自分だったんだけどなぁと、覗き込む。
「あらキレイ」
それは指輪だった。真紅の石が填め込まれている。
「こ、これはボクのだ。やらないからな!」
ルカが助けてやった男の、これが彼女への第一声だった。

当初の予定通り、男に道案内させてルカは無事にサラボナに到着した。
男は町にたどり着くや否や、ルカの前から姿を消す。
「恩知らずだなぁ、ルドマン氏のとこまで案内させようと思ったのに」
どうやってルドマンに会いに行くかの策を練るため、まず宿を決める。
買い物したり町の人と話をしたりで情報を集めたところ
さっきの男のことも少し判ってきた。

富豪のルドマンは一人娘の結婚相手をもっとも強い男にと決め
魔物の守る二つの宝物を持ってくるようにと候補の若者たちに告げたという。
ひとつは炎の指輪。
そしてもうひとつは水の指輪。
「私なら楽勝な条件だけど関係ないからなぁ。
うーん、ルドマン氏の協力を仰ぐのにあの男が使えるかな」

その晩、ルカは件の男を酒場で見つけた。
旅装を解いて絹のローブに着替え、髪も結い上げたルカは別人のように美しかった。
そんな格好で男の横の席に着く。
男は昨日自分を助けた旅人とは気付かずに、美人の出現に鼻の下を伸ばし、
下心ありありな様子でルカを褒めまくって酒を勧めた。
そしてルカが酔ったので帰ると言うと送ると言いはり、とうとう宿まで付いてきた。

「あなたと二人きりで話がしたいと思ってたの、寄っていって?」
男は自分に都合よく解釈し、部屋に入るや否や、ルカに抱きつき、ベッドに押し倒した。
ローブの肩に手をかけ、今まさに胸を露わにしようとした時
ルカの胸にムチの傷跡を見つけ、手が止まった。
「荒っぽいのが趣味なのかい?」
「いいえ、どちらかというと荒っぽくするのが好きかなぁ」
ルカは隠し持っていた毒針を取り出して男の喉笛に当てた。
冷や汗をかきながら、それでも男は強がった。
「ケガするよ?女がそんな物振り回しても。ボクは炎の指輪を取ってきた男だから」
「それにしちゃ回復の薬草もなしに無謀だったわねぇ」
ルカは体を起こして男の上になった。
「まさか君は、昨日の!」
ここでやっと男はルカの正体に気付いた。
「フローラさんとやらにプロポーズしようかという男が
私にこんなことしていいのかな?
アンタの選択肢は二つ。
ルドマン氏に昨日の顚末をばらされるか、
私に協力するのを約束してルドマン氏の一人娘と結婚するか。
どうする?」
「三つ目の選択肢で」
男の目がいやらしく光った、ようにルカには思えた。
「このままボクの愛人になって、君に協力してあげるってことで」
ルカが一瞬驚いた隙に、男は体を再び入れ替えて毒針を持ったルカの手を押さえてしまった。
「それは思いつかなかったな」
「フローラとの結婚は邪魔させないよ。でも君にも後悔はさせない」


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