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58ずっと一緒に・3:2006/05/01(月) 17:52:36
 ヨシュアは感情があまり表に出ないため、終始無表情である。事情を知らない者にしたら
不機嫌にしか見えない。
「す、す、スミス。か、勘違い、かと、お、おもっ、た。だ、だ、だったら、み、みんな、
余分に、め、めめいわく。だから」
「勘違いなら、大丈夫だったで終わりだろう。それに越したことは無い」
 腕の切り傷よりも、どう見ても腐れ落ちた部分の方が重傷なのだが、疑問に思うことは、
仲間になった翌日に放棄した。前述の理由でいまいちわかりづらいのだが、思ったよりは、
深手ではないようだ。彼は小さくホイミの詠唱を始める。
「あ、あ。ご、ご、ごめん、よ、しゅあ」
「謝らなくていい」
 元はと言えば気を遣ったのだ。スミスが謝る理由などどこにも無い、と思うのだが。
「ご、ご、ごめん……」
 いっそう大きな背中を丸めるスミスを、少し困ったように見つめるヨシュア。
「いや、だから……」
「おめーに怒られてると思ってるんだろ」
 不毛な会話を見かねたスラリンが横から口を挟み、ヨシュアは無言で数回眼を瞬く。
「……仏頂面は生まれつきなんだが」
 小さく言う彼の、心情の読み取れない静かな眼差しが悲しげに揺れる。
 あ。傷ついた?
 善良な魔物たちは、慌てた。
「スラリンは無神経にゃー。悪い奴ニャー」
「あんだよー! だ、誰もヨシュアが悪いなんて言ってねーだろ!」
「あ、新しい踊りを思いついたダニ! 皆見るダニ!」
「ええい、やめんか。魔力が吸い取られるわい」
 ごちん、とマーリンの持つ魔封じの杖が、ダニーの後頭部にヒットする。
「元気出す。です」
「い、いや……何とも無い。ありがとう」
 ガンドフの純粋な瞳にじーっと見つめられ、青年は思わず眼を逸らす。
「ボクたち、ヨシュアさん好きだよ。でもね、表情が硬いと思うの。ほらー」
「羨マシイデス……」
 びよん、とホイミンが、お手本とばかりに触手で頬を三倍ほどの長さに伸ばして見せて、
そもそも表情が動かないパペックが遠い眼をした。
「努力はしてみよう」
 ヨシュアは真顔で答えるが、どう見ても人間の皮膚では不可能である。
「お気持ちは察しますが、努力で解決できる範疇の問題ではないかと思います……」
 聡明(でなくても解りそうなものだが)なピエールの、無駄に丁寧な突っ込み。
 ごろごろごろごろ。
 その後ろをロッキーがすごい勢いで転がって行く。何がしたいのだろう。
「ただいま。出発しましょ……って、何してるの?」
 そこに、全身を水で流してご満悦のリンクスをつれたリーシャが現れ、魔物達に囲まれて
硬直しているヨシュアに眼を留めて、眉を顰める。
「みんな。ヨシュアさんを困らせたらだめ、って私、言ったわよね?」
 穏やかだが有無を言わさぬ強さを持った声に、はいすいません、と魔物達は首を竦めた。
 彼女には、誰も敵わない。
「ごめんなさい。大変だったでしょう?」
 何て言うか、落ち着きの無い子ばかりだから。
 少女の言に、ヨシュアは静かに首を横に振る。
「いや。いい仲間を持ったな」
「それは勿論」
 迷わずに力強く頷いて嬉しそうに微笑むリーシャに、ヨシュアも小さく笑い返した。


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