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56ずっと一緒に・1:2006/05/01(月) 17:50:21
※ヨシュアが仲間になったらこんな感じかな、という妄想です。
 主人公の名前は、マーサ+リュカ=リーシャ。

 ― ずっと一緒に ―

 リンクスの機嫌が恐ろしく悪かった。
 無理も無い話である。ベロゴンの群れとの死闘で、全身をしこたま舐められたのを、苦痛
と認識しない者は滅多にいないだろう。
 見事な黄金の毛並み越しに青筋が透けて見えそうな勢いで、とにかく機嫌が悪かった。
「リンクス、機嫌直して」
 この、世にも奇妙な一団のリーダー・リーシャの声も、負のオーラを全身に纏った、今の
リンクスには届かない。
「わかったわ。川で水浴びしてから船に戻りましょう」
 リーシャは、観念して小さくため息をつく。
 鋼鉄の牙を武器にして、接近戦を主体とした戦闘スタイルのリンクスは、それだけ多くの
危険に見舞われる。それは本人(本……猫?)も承知のはずだ。
 しかし、母と天空の勇者を求める旅、度重なる激戦。リンクスをはじめとする仲間たち
は、口では文句を言いつつも、自らの意志で彼女に付いて行く。今までも、これからも。
 それを誰よりもよくわかっているからこそ、仲間たちの多少の願い事は叶えてあげたいと
リーシャは思うのだ。立ち止まったリンクスが、フフンと満足そうに鼻を鳴らして、尻尾を
揺らす仕草を見て、小憎たらしい子ねと思いながらも。
「ごめんなさい。船に行っててくれますか?」
 彼女は、スライムナイトとスライム、そして淡い金髪の青年を顧みる。
「二手に分かれたら危なくないか? おいらたちも付いて行……」
 青年……ヨシュアが、飛び跳ねるスライム、スラリンの頭上のとんがりを掴んで、その
言葉を遮った。
「わかった。先に戻っている」
「あ、ありがとう」
 少女の返答を聞いて、ヨシュアはすぐに踵を返す。反動で、びよーん、とスラリンの身体
が重力に伸びた。思慮深いスライムナイトのピエールは、黙って彼と共に場を後にする。
「あーちょっと何すんだよ、ちーぎーれるー!」 
 と言いつつも、ダメージひとつなく元の形に戻り、スライムは青年の頭に乗っかった。
 彼の金髪がその液状の身体に付着することは無い。いったい、スライムの体はどうなって
いるのだろう。
「たまには二人にしてやろう」
 静かな声でたしなめられ、スラリンは、むぅ、と押し黙る。
 幼い頃に生き別れ、奇跡的な再会を果たしたリーシャとリンクス。普段は皆に気を遣って
昔話に興じることは無いが、たまには二人だけが知る話がしたい時もあるだろう。
「一人と一匹ではないのですか?」
 隣を歩くピエールが問うた。喋っているのは、下のスライムなのか上の騎士なのかは永遠
の謎である。
「今更、区別するのもおかしいだろう」
「おかしいのは、あんただよ」
 顔色一つ変えずに答える青年の言に、スラリンは呆れ顔で、ぽよん、と地面に着地した。
「あんたのそーいうとこ、嫌いじゃないけどさ。一度しか言わないから、覚えとけよ」
「そうか、ありがとう」
 ことさら偉そうに宣言するスライムに、ヨシュアは大真面目に返答する。
「だが、そういう事は、あらかじめ言うべきでは」
 がこんがこん。ばたばたばたばた。ぴぎゃー……
 彼のセリフは、船の内部から聞こえる奇怪な音声に中断された。


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