したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

SS投稿専用スレッド

5レヌール城にて・4:2006/02/08(水) 18:44:32
「……怖いの? 大丈夫、大丈夫よ。わたしが付いているからね」
 その不安を敏感に感じ取ったのだろうか、ビアンカが少女の左手を握り締める。
 小さく震える手のひら。
 怖がってるのがばれてしまう。少女は手を離そうとしたが、
 ……あ……
 逆に、ぎゅっと握り返した。
 やわらかなビアンカの手。冷たくて、でも汗で湿った手。
 ……そうか、
 唐突に、少女は悟った。
 ビアンカお姉ちゃんも、震えている。でも、元気に振舞っているんだ。
 アルカパの村を出て、不安な気持ちで山道を歩いている時も、
 怖くないよ、と何度も慰めてくれた時も、たくさんの魔物と戦っている時も。
 今まで……ずっと。
 そう気付いた瞬間、驚くほど怖さが減っていくのを感じた。ちょうど、半分くらいまで。
 ……怖くないよ。
 意を決して少女は言う。ちょっと強がりだったけど、口にしてみれば、本当に怖くなくなるかもしれない。
 怖くないから。お化けも魔物も、どんとこい! だから、大丈夫!
 ブーメランを握り締める手で、どんと胸を叩いてみせる。
 暗くて何も見えないが、その雰囲気は伝わったらしく、あら頼もしいわね、とビアンカの笑い声が聞こえた。
「そうね、ちゃっちゃとお化けを懲らしめて、子猫さんと城の人たちを助けてあげましょう!」
 ビアンカもまた、勢いよく応じて見せる。
 自分と同じように強がりなのだろうか。でもそれは些細な事だ。怖くないと言うなら怖くない、それでいい。
 手を繋いで、二人は勇んで暗闇の城の奥へと進む。
 暗闇に眼が慣れるにつれて、あれほど頼りなく冷たいと感じていた月の明かりが、重苦しく見えていた朽ちた城の壁が、
 さっきよりもずっと温かく頼もしく、明るく見えた。
 ……全然怖くないとまでは、言わないけど。
 わたし、泣かないよ。何があっても怖くない。
 口にはしないが、少女は思う。
 ――だから、ビアンカお姉ちゃんの怖い気持ちも、半分になって。わたしに、そうしてくれたみたいに。
 

 (了)


主人公が喋ってないようで喋りまくりな罠。
他にも色々反省しつつ。
読んでいただき、ありがとうございました。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板