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48228=(略) ◆PyB831QpqM:2006/04/19(水) 07:31:09
遅くなりましたがしあわせの詩・中編です。
......





「ヘンリー!」

静まりかえっていた廊下に、自分の名を呼ぶ声が響いた。ヘンリーはふぅ、と一息つくと、ゆっくり顔を上げてそちらに目を向けた。


「……何やってたんだよ」

一瞬、声が出なかった。
リュカは、普段旅している時にはあまりお洒落などせず、動きやすいローブに身を包んでいた。
そんな彼女に慣れていたせいも有ってか、こんな風に着飾った彼女は新鮮だった。美しさは変わらないが、何時もより一層女性らしさが際立っている。
真っ白なウェディングドレスが、少し紅潮したリュカの肌が、艶やかで流れる様な黒髪が、ヘンリーの目を捕えて離さなかった。

綺麗だ。
そんなの、前から知ってたけれど。


「ゴメンね。皆で喋ってたらつい長引いちゃって」

リュカは苦笑いで答えた。彼女の両側の父親代行はクスクスと笑う。

「確かに届けましたよ」

幸せにしてあげて下さい、と、声には出さずにロレンスが告げた。
当然だとばかりにヘンリーは頷く。視線はしっかりとリュカに注いで。

「さ、ヘンリー様…」

ヨシュアが、促すような目線を送る。ああ、と小さく呟くと、ヘンリーは手に持っていたヴェールをリュカにそっと被せた。
瞳を閉じ、ヴェールとドレスを身に纏った彼女は非常に繊細な彫刻の様だった。
フライングなのは承知の上だが、抱き締めたくて仕方が無かった。

「リュカ」


「…行くか」

ヘンリーが手を差しのべる。
リュカは柔らかく微笑みながら、その手に自分のそれを重ね合わせた。

「うん 行こう、ヘンリー」


歩き出す二人の背中を、ヨシュアとロレンスは暫く見続けていた。
遠くなっていく彼らを見つめ、自然と笑みが溢れた。

「…さ、ロレンス殿。私達も行きましょう」
「そうですね。急がなければ間に合わない」

ヨシュアに促され、ロレンスはマントを翻した。
もう、心残りは無い。二人なら大丈夫だ。
胸の痛みを誤魔化して、ロレンスは早足で歩き出した。


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