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42再会_B・1:2006/04/14(金) 23:23:24

※Aとネタは一部被ってますが、話の繋がりはありません。
 軽い女主人公→ヘンリー描写(?)があります。

 ― 再会 B ―

 彼らの出発は朝早い。
 見通しに支障を齎さない程度に、薄く霞が掛かった早朝の空気。
 先頭で馬車を引く少女は、片手に持った地図に視線を走らせて進路を確認する。
 目的地であるサラボナの町は、ここから南下した洞窟を越えた先。
 地図を丸めてしまい込み、彼女は前を向く。
 歩を進めるたびに朝靄が細かく纏わりつき、長い髪や衣服が微妙に重たく感じる。
 ぐるるるる。
 馬車の左脇を歩くキラーパンサーが、全身を震わせて不機嫌な唸り声を上げた。
 全身を覆う毛並みが湿って嫌なのだろう。
 基本的に、魔物は雨などの水分が苦手なのかもしれない。
 現にブラウンやガンドフなどの、端的に言うのであれば「もこもこした連中」は皆、馬車
の奥に引きこもっている。
 ピキーピキー。
 馬車の片隅で震えているメタリンの引きこもりは、晴れも曇りも関係ない。
 他にも「身体が重い」と大人しくしている者や、「身体の水分が増えて気持ち悪い」と
平べったくなっている者。「関節痛が悪化する」と言ってお茶をすする者……
 ……いったい、どこまで本当なのだろう。
「誰か、リンクスと代わってくれる?」
 少女は期待せずに馬車の中へと声をかける。キラーパンサーのリンクスが、ゴロゴロ、と
申し訳無さそうに小さく喉を鳴らした。
「ったく、しかたねーな。靄が引いたら、お前ら働けよ!」
 呆れ半分に馬車の奥へ向かって言い放ち、旅装束に身を包んだ緑髪の青年――ヘンリーが
馬車の中から飛び出し、
「リンクス、交代だ。大丈夫か?」
 少しでも多く、絡みつく水分を振り払いたい、と言わんばかりの勢いで全身を震わせる
キラーパンサーに声をかける。
 その呼びかけに反応し、ぎろり、と見上げる彼(?)の目線が、ガンを呉れていると言って
も差し支えない険悪なものに見えるのは、気のせいでは無いと思う。
 フギャーー! グルグルグル。
 毛を逆立て、明らかに少女に対するものとはうって変わった唸り声を上げて、リンクスは
音も無く風を切るような俊敏な動作で馬車に飛び乗った。
「心配要らない、って言ったのよ。うん」
 少女は、嘘にならない程度に、めいっぱい友好的に通訳する。
「本当かよ」
 ヘンリーは不信の眼差しを彼女に向け、
「リンクスの奴、てめえに心配されたかねえよ、あァ!? この野郎!ぐらいのことは思っ
てそうな顔してたぜ?」
「ヘンリー本当に、あの子達の言葉わからないの?」
 しまった。
 と思ったら遅かった。己の失言に冷や汗する少女、その視線の先には、機嫌を損ねている
のか笑いをこらえているのか、いまいちわからない面持ちの『親分』がいる。
「ぶっ。お、おまえバカだろ?」
「ほっといて」
 反論などできるわけが無い。
 わざとらしいくらい笑いをかみ殺すヘンリーに背を向けて、少女は手に持つ樫の杖を折れ
んばかりに握り締めた。


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