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3
:
レヌール城にて・2
:2006/02/08(水) 18:42:30
白状すると、とても怖い。
見たことの無い強力な魔物も、悪いお化けも。
そもそも、真っ暗な夜中に父と遠く離れた場所に来たことだって、今まで一度も無いのだ。
でも、ビアンカが傷つけられるのを、放っておくわけにはいかなかった。
無数のロウソクたちがメラの炎を掲げて、あたりがまるで昼間のように照らされ――
「ちょっと! あんたたちの相手は、わたしよ!」
ビアンカの声が、城の廊下に響き渡った。
魔物の呪文の詠唱が、わずかに途切れる。
つまり――どちらを狙おうか、魔物たちが一瞬迷いを見せた、その隙を見逃すビアンカじゃない。
迷わず床を蹴って、ロウソクの群れに飛び込む。
「じょおーさまと、およびっ!!」
景気付けにもう一度声を張り上げながら、いばらの鞭が華麗に一閃。
手傷を負ったロウソク達を、一まとめに退ける。
ロウソクたちがいなくなった途端に真っ黒に染め上げられた暗闇の中、少女達の呼吸が響く。
魔物らしい気配はもう、今のところは、感じられない。
しかし、さっきまでおぼろげながらも輪郭を浮かばせていた城内の情景が、全く見えなくなっている。
ロウソク達の強い灯火に眼が慣れたためだ。
理屈を理解していたわけではないが、本能的にわかった。
ぼろぼろの窓から差し込む、ささやかな月の光に慣れるまで、まだ時間がかかるであろうことも。
仕方が無いので、少女はあてずっぽうでビアンカの方へ駆け寄り、無邪気に声を上げる。
それで正しく彼女の元へと辿り着くから不思議だ。
やったね、ビアンカお姉ちゃんカッコイイ、女王さまかっこいい!
それは本音。ただ、空元気でもあったけれど。
「そう? 今度、あなたにも教えてあげるね」
一桁の子供のものにしては妖しすぎる会話だが、幼いからこそ彼女達は大人の事情など知る由も無い。
「もうっ。それにしても、あのロウソク嫌いだわ。わたしの得意な呪文、ほとんど効かないんだもの」
ビアンカの言葉に、武器屋さんで色々買って良かったね、と二人は頷きあう。
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