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21大神殿脱出・1:2006/02/22(水) 16:33:54

※注意:ヨシュア生存+無駄に悩みがち、割と暗め。

連投気味ですみません。


 ― 大神殿脱出 ―


 頭痛がする。

 耳鳴りなのか、それとも背後の激流の音なのか。
 彼には判別する気力も余裕も無かった。

 足元には、気絶した鞭男たちが折り重なって小山を作っている。
 頬が冷たい。
 血の気という血の気を無くした自分の顔が想像できた。
 彼は、傍らに立つ長い黒髪の少女を顧みる。

「君は、何て早まったことを……!」

 その少女に腕を掴まれ。
 その有無を言わせぬ視線、もしかしたら彼自身以上に切羽詰った表情に、紡ぎかけた言葉
が消え失せる。
 早く、行きましょう。水の流れが止まらないうちに。
 やつらが目を覚まさないうちに!

 ――ただ無我夢中で、
 二人はもう一つのタルを地面に転がし、中に入り込んで蓋を閉め、回転に合わせて足場を
ずらしながら水路へと見当を定めて壁を押す。
 水の弾ける、くぐもった音と共に、密室が大きく振動した。
 タル全体が唸るような轟音が続き、小さな空間は激しく揺れ続ける。
 たしかめる事は出来ないが、流れにのったと思ってもいいだろうか。

 ただ、安心とは程遠い空間に、彼らはいた。

 水の流れのままに、上下左右がひっきりなしに二転三転する。
 今、口を開けば舌をかむ。
 鼓膜がどうにかなりそうな水流の音にも、耳を塞ぐ余裕が無い。
 身体がひっくり返らないように、タルの壁を押さえる腕が痛い。
 そもそも、痛いと言う感覚が機能しているかどうかも疑問である。
 今、振動に負けて、タルの壁に頭をぶつけた気がした。気のせいかもしれない。
 内側から閉めただけの蓋は頼りなく、もし外れたら、そこで二人の命運は尽きる。
 それ以前に、水圧でタルそのものが砕け散る可能性とてゼロではないのだ。
 ただ、耳をつんざくような水流の音が、ひたすらに響き渡り、
 唐突に、ふわり、と全身が重力から解き放たれる。

 ああ、落下しているのか。

 そう自覚した瞬間に、

 ――何もかもが破裂するような衝撃。

 …… 死んだか?

 全身が叩き付けられる鈍い痛み。
 遠のく意識の片隅に、妙に呑気に縁起でもない一言を浮かべる冷静な自分がいた。


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