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2レヌール城にて・1:2006/02/08(水) 18:41:54
 いったい、何を退治しに自分達はここまで来たのだろうか。

 少女は、軽いやけどを負った左腕にホイミをかけながら、ふと思う。
 人の顔がついた大きなロウソク(こいつのメラにやられた)と、ありえないほど大きなねずみに囲まれて、
 丈夫な皮のドレスとブーメランで完全武装した自分は、父との旅の間に、何度かすれ違った冒険者みたいだ、
 とまで言ったら言い過ぎか。
「きゃっ! 痛ぁ……もうっ、なにするのよ!」
 威勢のいいロウソクのバケモノが照らす明かりの他に、一瞬、もうひとつ強い光が生まれた。
 ビアンカの放つ、ギラの灼熱だ。
 痛い、と言うことはどこか怪我でもしたのだろうか。
 攻撃の術にかけては少女の数歩先を行くビアンカだが、反対に少女の得意な癒しの術はからきし使えない。
 念のため薬草をたくさん買いこんではいるものの、やはり心配だ。
 今の一撃で何匹かのネズミ達が退散したようだが、元々燃えているだけあってロウソク達は平気な顔をしている。
 敵の明かりに照らされて、ビアンカが少し頬を膨らませながら、残ったロウソクのお化けを睨みつけるのが見えた。
 その後ろに、ぼんやり光る二つの小さな赤いひかり。
 おおねずみが残っている!
 少女は即座に理解した。
 ――伏せて、ビアンカお姉ちゃんっ!
 少女は声を上げて、手に持つブーメランを、暗闇の中で不気味に光る両目めがけて投げつける。
 ばしっ、と獣を打ち据える鈍い音。続けて聞こえる、甲高い悲鳴。
 ――やった!
 戻ってきたブーメランを器用に受け止めて、心の中で歓声をあげた。
 それと同時に、危険な敵の存在を確認したロウソクたちの視線が、少女の方へと集中する。
 さあ、来いっ。あなたたちなんて、あっという間にやっつけちゃうんだから!
 自分の胸の中でがんがんに鳴り響く心臓の音から、極力意識をそらしながら、少女は震える手でブーメランを握り締める。
 サンタローズの教会の鐘をメチャクチャに打ち鳴らしたら、こんな感じだろうか。


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