[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
201-
301-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
SS投稿専用スレッド
15
:
砂漠の夜・1
:2006/02/15(水) 16:23:18
『レヌール城にて』の感想を下さり、ありがとうございました。めっさ嬉し。
以下、女主人公と娘がメインの話です。
どうも感情的になってしまったので、湿っぽいのが嫌いな方は、ご注意を。
- 砂漠の夜 -
彼女は寝台に腰掛けて、二人の子供達を横目で見た。
たまに雑談を交えながら、ヒャダルコの呪文書を読みふける娘と、ベギラマの呪文書をあくびをしながら見ている息子。
……今からこれなら、もっと大きくなったら、どうなるんだろう。
二十歳前後の若さで、数多の魔物を従え、高度な武具や呪文を自在に操る自分のことを完璧に棚にあげて、彼女は思い――
「きゃーー! お兄ちゃんっ! 本によだれたらさないでーーー!!」
「……うーん……ボク、呪文苦手だよ……先生ごめんなさい……」
夢の世界に片足を突っ込んでいる兄の手から、呪文書を奪い取るのに必死な娘に、
私達も、もう休みましょうか。と、苦笑しながら声をかけ、すぐに眠りこけた息子を寝台に運ぶ。
今までの思考が――もともと、深刻に考えているわけでもなかったが――きれいに霧散していくのを感じながら。
彼女の息子と娘は、本当に良く出来た子だった。
自分たちを探して、ずっと旅をしていたという子供達。今だって文句も言わずに、進んで戦い、ついて来てくれる。
出来すぎる子だからこそ、一抹の心配もあった。
無邪気に笑っている顔の裏で、泣いているかもしれない。
そんな時、気付いてやれるのだろうか。
母親の記憶も、子供達との思い出さえ、持たない自分でも。
父は父で大好きだったし、父は当然、まだ見ぬ母にも、愛されていたと信じている。
けれど、母がいなくて寂しい思いをした子供の頃を思い出す。
だからこそ、うんと子供達を可愛がるつもりだった。
寂しい思いは、決してさせまいと思っていた……はずだった。
――――?
物音が響いた気がして、彼女は、はっと目を覚ます。
何処から何処までが、夢か現実だったのかよくはっきりしない、あの感覚。
静かに、極力音を立てないように身を起こし、隣の寝台の方を見た。
暗闇の中、かすかな寝息に合わせて、小山になった毛布がかすかに上下する。
……二人分にしては小さすぎる。
彼女は、考えるより先に寝台から飛び起きた。勿論、なるべく音を立てないように。
ここは、砂漠の王国テルパドール。
彼女の小さな息子が、勇者として認められたのは、つい先日の事だった。
愛用の紫の外套を羽織り、彼女は静かに部屋の扉を閉める。
深い闇夜に浮かぶ半月が、窓越しに砂漠の町を蒼く照らし出す。
静寂の向こうに見える、廊下に佇み、窓枠に手をかけてぼんやりと外を眺める、小さな影。
……眠れないの?
そっと声をかけたつもりだったが、びくっ、と小さな肩が跳ね上がった。
そろそろとこちらを向いた小さな影――彼女の娘が、ほっ、と息をつく。
「お母さん……なんだか、目が覚めたの」
囁くような声音でも、夜の冷たい空気にはよく通った。
おかっぱに切りそろえた、月明かりに染まった艶やかな髪を撫でる。
今はここにいない愛しい人と同じ色の髪。瞳の色も自分に似ていない。ちょっと悔しい。
怖い夢でも見た?
優しい問いかけに、娘は一巡した後に、黙って首を横に振った。
じゃあ、なにか心配な事でもあるの?
「平気、です。何でも……ないです」
嘘だ、と思った。
この子は、心の平静を欠いている時に、敬語を使うクセがある。
頬に触れると、とても冷たかった。いつからここにいたんだろう。
外套を広げて娘を中に入れると、驚いた顔をしてこちらを見上げてきた。
イヤだった? 内心どきどきしながら問いかけると、
「う、ううん!」
娘は、ぶんぶんと激しく首を横に振った。
そんな事あるわけがない、と全身で語っているその姿に、思わず笑みが零れる。
でも好意を寄せてもらうほど、子供達が可愛ければ可愛いほどに、胸が痛かった。
長く傍にいられなかったのに――
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板