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10423:2006/02/14(火) 23:05:15
 今日はたくさんの出来事が起こった。
 中でも明日までに結婚相手を選ぶという問題が彼女の
頭を痛くさせていた。そこで少し気分転換をしようと夜の
散歩にでかけたのだ。その途中、偶然彼に出会ってこうして
話しているうちにすっかり遅くなってしまった。

 時間も遅いし送るというロレンスに素直に甘えることにする。
なぜか今日はそういう気分だった。
 他愛もない話をしながら歩く。

 ふと、教会の前の広場にある噴水の傍でロレンスは立ち止まった。

 リュカはどうしたのかと思い、声をかけようとした瞬間、何かを
決意したように彼はリュカさんと彼女の名を呼んだ。月と星のひかりが
水に反射してとても幻想的な空間に、美しい青年が立っている。
いつものロレンスではない。美しいことにかわりはないが、今は纏って
いる空気が違う。その彼が自分をじっと見つめている。そう思うとリュカは
なぜだか胸が高鳴った。

 ぼんやり見とれていると、頬に手がかかった。

「明日」
 そう言って、親指だけを使って唇をなぞる。顔がそっと近づく。


「――――いえ、なんでもありません…」
 鼻と鼻がくっつきそうな位の距離でロレンスはそう呟いた。
近くで見る彼の瞳はなんだか悲しそうに、今にも泣きそうに見えて、
リュカは自分に触れている彼の手に、自分の手を重ねた。
 彼の指がピクリと動く。
 ロレンスの瞳にいつもの穏やかさが戻ってきて、リュカは少し安堵した。
「さあ、行きましょう」
 と彼は言い、自然、頬から手が離れていって、それを嫌だと彼女は思った。



 宿屋にはすぐ到着して、おやすみなさいと告げてロレンスは去っていった。


 あの後に彼がどのような言葉を続けようとしたのかはわからない。

 彼の指の感触が今でも唇に残っている。

 本当はもっと他に考えるべきことがあるはずだと、リュカは理解していたが、
今夜はさっき起きた出来事を思うことしかできそうになかった。



おしまい


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