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【兄上】 若生 鳳仙スレ 【大好き】

4742/3:2003/04/27(日) 23:07
 気持ちが晴れない。気がつけば山にいた。いや山に来たかった。
 兄上の生まれ変わりである彼方さんに秘める思い。そんな事を語
れる人はここにしかいない。

「そんなことがあってんですよ」
「それは確かに無神経といえば無神経ですね」

 悲劇の起こったこの場所は、私と龍神様だけしか知らない。
 崖にある三つ墓の場所も、意味も。

「さすが兄上の生まれ変わりだ、ここまで鈍感なのは」

 だが今日喋りに来たのは憂鬱な内容ではなく、鈍感な男の愚痴を
言うために山に来たのだ、過去の事は忘れよう。

「私の気持ちも全然気づいていなかったですからね」
「やはり菊花様と結ばれる運命らしい。兄上は」
「今の状況のことを考えると、あの時の悲劇はあっても良かったの
かもしれません」
「私は一生『橘』の姓で終わる事になりそうですが」
「私はそれ以前の問題です。ここから出て行かない時点で」

 そういえばそうだ、何故ここから出て行かないのだろう。季節が
戻ってからあまり逢ってなかったから聞きそびれていた。

「竜神様は何故ここにいるんですか」

 しかし、こんな話をする為に来たのではないけど、このままでは
良くない。

「私は人間が怖いんですだから…」
「それでも、私や彼方さんとあったら普通に話をするでしょう。こ
んな感じで」
「知っている人なら問題ないです。でも新たに知らない人に裏切ら
れる事を考えると心が拒絶してしまうんのです」
「あのような事をする人間はこの村には独りもいませんよ。私が保
証します」
「私の心は闇で覆われています。出口がなく隙間ほどの希望もあり
ません。いくら天罰が終わったとしても私の償いは終っていません」

 それでも自分を犠牲し、ここに一生いるのは辛い事、それはもう
私には耐えられない。龍神村で貰った優しさのせいで……いやおか
げか。
 それを、竜神様にも分かってもらいたい。結果的には良かったか
もしれないが竜神様は不幸のままだ。

「孤独の中で独りで償うより、みんなの下で償う方が辛くないはず
です」
「みんなの中に彼方さんも含まれていますね…」
「……………………………」

 永き静寂。
 桜は私たちの周りを包むように流れる。
 桜のもとに降り注ぐ日差しは暖かい。でも私たちの空気は重い。

「私は彼方さんにあった事があります。一度くらいですが間違いな
く白桜様の生まれ変わりだと悟りました。逢って話をすれば気がつ
いた頃には、もう私の心は後戻りは出来ないでしょう」
「…………………………」
「今は菊花の生まれ変わりと、子まで授かっています。もう私の入
る余地もありません。その状況は私には耐える事は出来ません」

 淡々と語るが感情は外に出る。声は少しだけ振るえ苦悩だけがに
じみ出ているように見えた…いやそう感じたのだろう。
 その様子はすごく痛々しい。
 神であるために人と結ばれてはいけない。それにまだ自分は神の
身。澄乃がいなくても結ばれる事は無い。

「それが一番の理由、だから私には無理なのです。分かってくださ
い鳳仙様」

 鳳仙。
 私も昔はこの名前で愛するものと結ばれる事は無かった。
 それは愛する者の妹の名前。
 そして私の昔の名前。
 それを考えると涙が出る。あぁ…もう涙が出てきた。 

「鳳仙様?」
「いや、今日は涙腺が弱いだけですので」
「鳳仙様すいません。彼方さんのことを好きなのに、一番辛い思い
をしているのは…」
「竜神様、謝らないでください。私が昔のように彼方さんを繋ぎ止
めることが出来なかっただけですから」
「鳳仙様」
「今は幸せに暮らしています。私はそれでいいんですから」

 それは嘘だ。私の描いた理想の結末は、私は彼方さんを愛し、彼
方さんは私を愛する。
 そんな結末だった。
 けど、それは叶わなかった。
 彼方さんに愛されない。それが私達の不幸。
 それにしても本当によく泣く日だ、生まれ変わった兄上の最愛の
人になれないのは悲しい。
 妹ではなくなったのに、それでも叶わないのは苦しい。これまで
生きてきた事よりもつらい。
 近くて遠い。立場どころか心さえも、だから今は思う。
 心が遠いのなら妹の立場でよかったと…。


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