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ぴらこクエスト

1名無しさん:2015/09/02(水) 22:37:28


 ルイーダの酒場は今日もにぎわっていた。

ぴらこ「なんかいい仲間いねえ?」

 ひじをカウンターにおき、けだるそうにぴらこが言う。

   「オ・ス・ス・メは支援系かなあ」キャピ
ぴらこ「ほう」

 ぴらこはメイドだ。つまり、前衛だ。

ぴらこ「たしかにウィズあたりほしいな」

 ぴらこのきゃしゃな人さし指がリストをなぞる。剣士、槍、すっとばしてウィザードへ。

ぴらこ「むしゃむしゃ・・・変な名前だな。こいつに決めた!」
   「むしゃむしゃさーん☆ お、よ、び、よ!」キャピ

 またこいつらの旅がはじまる。

 第一話「愉快なぴらことおまけのウィザード」

2名無しさん:2015/09/03(木) 23:31:59

 ぴらこの発言からこの話ははじまる。

「勇者といえば伝説の装備。というわけで伝説の装備探しをしようと思う」
「鎧なら知ってるで」
「武器がいい」
「鎧なら・・・」
「武器がいい」

 わがままなぴらこにあきれつつも、むしゃはそれでもいいようだ。
 情報収集といえばパブということからふたりはそこへと足を運んだ。パブの扉を開けると、ごはんを炒めるにおいが生暖かい風に乗ってふたりを通り過ぎていく。
 ふたりが真っ先に見たのは店主であったが、そのうしろにいたシーフに目を持っていかれた。

「なんだあいつ」

 ぴらこが思うのも無理はない。店主の背後で白昼堂々盗みを働いているやつがいるからだ。
 宝箱の中身を取り終えた盗賊はそのまま裏口から出て行った。

「追うぞ、むしゃ」
「おう」

 ぴらこが走っていくのを見送ってから、むしゃはビールを一杯頼みながらカウンター席に腰かけた。

 第二羽「ネタバレ盗賊はあめ」

3名無しさん:2015/09/04(金) 13:09:01

 追いかけていくと、青いごみ箱の上にに座ったあめがいた。

「おい!」
「ん?」

 軽々と返事をするあめにぴらこは人さし指を突きつけて固まった。顔を差した指があめの持つ地図へと向かう。

「伝説の武器だってよ」
「なんだってー!」

 地図をつかもうとすると余裕でかわされた。むっとしつつあめをにらむ。

「盗みをとがめに来たんじゃないのか」
「そうだけどいまはそれが欲しい!」
「正直なやつだな」

 ふむ、ひとつうなずくとあめはまじまじと俺を見つめた。

「な、なんだよ」

 その顔にいたずらな表情がのる。

「賭けをしねえ?」
「賭け?」
「ああ、これがホンモノかニセモノか」

 そのとき、俺は驚いた表情をしていたはずだ。地図がニセモノだなんて考えてもなかったからだ。

「俺はニセモノだと思うけど」

 ぴらりと紙を風に遊ばせ、あめが不敵に笑う。

「賭ける対象は?」
「そうだなあ。今夜の宿代で。近くのどうくつらしいし」
「・・・いいだろう」

 迷いはたしかにある。それでも承諾したのはあめの顔がしゃくにさわったからだった。

「それよりおまえ、相方がいなかったか?」
「は?」

 いまさら気づいた事実に頭がふっとうしてくる。

「むしゃのやろおおおおおおおおおおおお!」

 路地裏に反響した声は、四角く見える快晴に吸い込まれていった。

   第三話「ヴェルタスオリジはやっぱりまずかった」

4名無しさん:2015/09/05(土) 10:14:45
 おこぷんぷん!

「ちょっと一杯飲んでただけだろ」
「隣にいた女はだれだよ!」
「おまえらそういう関係だったの?」
「ちげえバカ!」

 ご一行は洞窟に向けて歩いていた。なあんだと頭のうしろで手を組むあめは残念そうな声色のわりに口笛を吹いている。眉間にしわをよせ、先頭を歩いていたぴらこの表情が一変した。

「だれかいる」
「お?」

 ぴらこの発言にあめはどうくつの前でたたずんでいる女性を見た。胸前で腕を組み、なにやらうなっているようだ。歩く音に気づいたのか、女性はするどくいちべつすると、ゆったりした動作でからだの向きをこちらへ変えた。女性の肩に背負っている矢筒からカコンと音がした。

「シーフ」

 つぶやいた女性はあめを見つめて言った。

「入るのか」
「おまえは入らないの」
「トラップがある」
「なるほどね」

 あめの目がするどく光る。解除は入口手前の岩にある小さなくぼみだ。その横に手をそえたあめが射るような目で女性を見つめた。

「なぜ、どうくつに?」

 あめの質疑に女性はメンバーを一通り見た。

「じゃまはしない」
「だろうな」

 女性なりの答えに納得したあめはトラップを解除した。簡素な機械音がして安全になるとわかると、4人はそれぞれ目配せした。土ぼこりのにおいと、冷たい風が通り抜けていった。

 第四話「だったらちゃん!」

5名無しさん:2015/09/06(日) 11:19:44
 むしゃが手をふりあおぐ。大気中に凝縮された魔法がひとかたまりとなって地面にたたきつけられ、円状に散っていった。モンスターが持ってたらしい小銭がそこかしこに落ちた。

「ひゅう」

 メテオに口笛で賞賛を示したのはあめだ。

「突き当たりの右に罠」
「おう」

 だたらの指示に従ってぴらこたちは進んでいた。あめが入手した地図はふかん図こそあれ、どこになにがあるかわからない常態だった。だたらが罠を熟知しているということから、罠があるなら宝まで続いているという推測のち、4人パーティーとなってどうくつ制覇を試みることになった。

 いくつかの分岐点を過ぎると、どっしりとした観音開きの扉が突如としてあらわれた。

「ここが最深部だな」

 ぴらこの発言に4人の気が引き締められる。ぴらこはしっかりとメンバーを見て、ひとうなずきしてから扉に手をかけた。
 重厚な扉が音を引いて開けられると、奥に泉があるだけのわりと広い場所だった。

「これだけ?」

 ぴらこががっくりと肩を落とす。その横をあめとだたらが進み出て、部屋を見渡した。

「ほんとうにここに何かあるのかよ?」
「そのはずなんだが・・・」

 文句を言うぴらこに、だたらは探索しつつも返した。槍でわりと大きな岩をてこの原理でどかしたりと、表情は真剣だ。

「ま、そういうことで俺の勝ちだな」
「ぐぬぬ」
「撤収しようぜ」

 泉に背を向けたぴらこを見てから、あめはだたらに近づいていった。

「やるよ」

 あめが掴んでいるのは卵ほどの大きさの石。

「いいのか?」
「ああ、俺の求めていたものじゃないし、俺には装備できないからな」
「さんきゅ」

 その石にはナンバー6と書かれていた。賭博とよばれる、8つを集めると武器が完成するやつだ。

「ちなみにあと何個なんだ?」
「あとひとつだな」
「めでたい」

 ふたりもぴらこを追いかける形で部屋をあとにした。清涼な音があめたちの背後で跳ねた。

第五話「あめはこういうやつ」

6名無しさん:2015/09/07(月) 00:04:41
 過密するパブのはしのほうで、あめはグラスを傾けていた。視界を閉ざし、音を広いわけていく。

「……丑三つ時……」
「……霧の中から……」
「……妖しく光る……」

 グラスごしににやりと弧に変わる唇を、小さく波紋を描いた水だけが見ていた。



「幽霊船?」

 宿屋の談話室にて、ぴらこが疑わしげに言った。

「ああ、なんでもこの港に停泊するらしい」
「アホらし。そんなんあるわけねえだろ」

 肩をすくめて一蹴するぴらこに、あめがいじわるそうな顔をしてみせた。

「怖いのか?」

 あめのひとことにぴらこの眉がつり上がる。
 
「んなわけねえだろ!」

 悪魔のようにケケケと笑うあめの横で、だたらがつぶやいた。

「そういえば、新聞になんかあったな」

 なやましげに手をあごに添える。

「なんでも金銀財宝をつんだ船が最近沈没したらしいと……」
「金銀財宝!?」

 ぴらこの目がドルに変わる。

「あるかもしれねえな、伝説のなんとやらが」

 ぴらことむしゃが目を交わす。あめの目をきちんと見てぴらこは聞いた。

「時間は」

 ブイサインをするあめを、3人が見る。

「二時に、ここで」

 簡潔に集合するうまを伝えられた3人はしっかりとうなずいた。

 第六話「あめが便利すぎる」

7名無しさん:2015/09/07(月) 00:57:05
 真夏とはいえ、深夜の港は冷える。ぴらこは肩を抱いて震わせていた。

「さみいいい! おまえマフラー貸せよ!」
「おいやめろ! 赤マフラーは俺のトレードマークなんだ!」

 ぎゃいぎゃいうるさいふたりをほっておいて、だたらは視界の悪い地平線を眺めていた。

「霧が濃いな」

 コンクリートのはしまで進み、見下ろす。波はおだやかに凪いでいた。
 ちらりとだたらはむしゃを見た。こいつは会った当初から寡黙で表情もわかりずらい。しかし……。

「(寝てる……)」

 すやすやと寝息が聞こえてきそうなほど穏やかな顔をしている。立ったまま寝れるという偉業に感心すら覚えた。
 月は完全に隠れており、街灯だけがあたりを照らしている。もう30分は経った。やはりうわさはうわさでしかないのか。
 ゆっくりとむしゃの目が開いた。その視線は海の彼方だ。
 首をかしげてそのほうを見ると、かすかな光が見えた。

「おい」

 ふたりに呼びかけると、ぴらこもあめもぴたりと静止してその先を見た。

「うそだろ……」

 つぶやいた声はかすれていた。
 遥か水平線から、一隻の船がゆっくりと、だが確実にせまってきていた。

 第七話「ぴらこはびびり」

8名無しさん:2015/09/07(月) 19:29:38
 通された客室は奥にベッドが等間隔で置かれた簡素な部屋だ。手前にはリビングテーブルがあり、むしゃをのぞく3人が座っていた。

「おかしい!」
「幽霊船だからな」
「しかもタダとか!」
「幽霊船だからな」
「ぐぬぬ」

 意義をとなえるぴらこにあめは軽くあしらっていた。恐怖感をにぎりつぶすのが目的か、ぴらこは始終ぶつぶつ言っている。

「にしてもよく寝れるな」

 ぐちをこぼしたのはぴらこだった。むしゃは部屋にはいったとたん、はしのベッドへ一直線。寝る気にならなかった3人だけが、それぞれイスに腰を落ち着けた。
 席を立ったぴらこに、あめはいじわるな目線をよこした。

「こういうホラーもんって、ひとりずつ消えていくんだよな」

 びくりとぴらこが立ちすくむ。

「なんでこういうときに言うんだよ!」
「こういうときって?」
「トイレに行こうとしたときだよ!」

 そらとぼけるあめにぴらこは講義した。とうの本人はしらんぷりで大げさにあくびをしている。

「俺も寝よ」

 むしゃの横へと移動するあめをぴらこは無言でにらみつけた。むだに終わった目線をだたらへと変える。訴えるような目をしてみせると、だたらは了承の意をこめて立ち上がった。



 長い回廊の真ん中に、お手洗い場があった。ぴらこはきゅっと栓を閉め手を拭くと、紙ナプキンをゴミ箱へ叩きつけた。

「とにかく! あめは無神経なんだよ!」

 ぴらこは絶え間なくぐちを言っていた。それこそ耳にタコができるぐらいだ。ズンズン歩くぴらこのあとをついていきながらも、だたらは違和感を感じていた。その正体は見破けないまでも、清水に透明な異物が混入しているような、一妙な感覚が視覚をつついていた。
 やがてあてがわれた部屋へと到着すると、中は真っ暗だった。

「なんだよ、電気消したのかよ」

 とりあえず明かりをつけようと、テーブルの上にあるはずのランタンへ向かう。

「待て」

 だたらがするどく制止し、弓をつがえ引いた。火に包まれた先端が、しょく台のろうそくに明かりをともして壁へ刺さった。

「ななななんだよ!?」

 小さな明かりが部屋全体を照らす前にぴらこも気づいた。
 リビングテッドの群れが部屋を埋め尽くしていた。

第八話「ゾンビプレイ」

9名無しさん:2015/09/10(木) 22:06:54
 一本にまとめられた水が、大砲となってドアに直撃した。

「おわっ!」

 破裂音に似た音に仰天したあめがベッドからひっくり返った。すぐさま臨戦態勢に切り替えたあめは扉をにらみすえたが、まるく染みたドアがキイキイゆれるだけで何もなかった。
 念のため外に出て廊下を見渡すが、やはり何もない。振り返ってむしゃを見ると、一度目があっただけで彼はベッドへもぐりこんだ。

「寝んのかい!」

 するどく突っ込んでみたが彼からの反応はなかった。ひといきついたあめはもう一度廊下を眺めた。

「それにしてもあいつらおせえな」

 廊下の奥、薄暗く見えた遠い場所で、何かよくない気配がするのにあめも気づいていた。



 だたらはすばやかった。ぴらこの手をとり部屋を出ると、階段へ一目散に逃げた。下は追い込まれるのを懸念しての上一択だ。ひとつ階を上がって手近な部屋に入り鍵を閉めた。船長室だった。

「うおおおおおおおおおおお!」

 ぴらこがなぜ叫んだのかだたらにもわかった。金銀財宝と呼ぶのにふさわしい宝が山となっていたのだ。インゴットはもちろんのこと、宝石、装飾品、それこそ多種多様の財宝が部屋のすみでなだれていた。

「ぱねえ! これ全部ホンモノかよ!?」
「だろうな」

 ぴらこが財宝に飛び込み、風呂のように遊んでるのを尻目に、だたらは本棚に立てかけられてあった写真を見た。男女、おそらくは恋人同士の写真だ。キャプテンハットをかぶる男性と、髪をひとつにたばねている古風な女性。その横には日記が無造作に置かれていた。
 開こうとするとちょうど真ん中の位置でぱっとあいた。そこには一文。

 ギルバードは化け物になってしまった。早く浄化の果実を……。

 そこを見たのはなんとなくだった。第六感かもしれないし、日記の筆者がそうさせたのかもしれない。写真立ての裏には小ぶりな果実が置かれていた。

 コンコン。

 部屋をノックする音に、だたらもぴらこもびっくりしてそのほうを見た。緊迫する空気の中で、だたらは日記を置くと静かに弓を構える。
 かちゃりと小さな音を立て、鍵と扉が開いた――。

 第九話「ぴらこ風呂」

10名無しさん:2015/09/12(土) 20:27:59
 だたらはつがえた矢を解いた。矢筒の中に入れ、侵入者に話しかける。

「よく俺らがここにいるってわかったな」
「俺はいろいろ探知できるんでね」

 あめがにやりとして宝の山を見る。足音を立てずに目の前までいくと、いただきに乗っかっていた王冠をひょいっと取った。

「わっ!」
「ほわあ!」

 絶叫を上げたぴらこが、今度はぽかんとした。みるみる顔が赤くなっていく。

「あめ!!」
「あひゃひゃ」

 部屋の中を追いかけまわるぴらことあめを見ながらだたらは日記の背表紙を見た。筆者はエドという女性らしい。おそらく、写真立ての女だ。

「あめ、ほかに何か見なかったか」
「ほかに?」

 頭をかき、目線をななめうえに向ける。

「俺の探知はモンスターもできるが、おまえら以外、探知できなかったけど?」
「ゾンビいたっつーの!」
「ほう?」

 あごに手をそえたあめがじっとぴらこを見つめた。

「あいにく、この世の者じゃないものは探知できなくてな?」
「あ?」

 意味をはかりかねたのは一瞬だった。あめが何を言いたいのかがわかったぴらこの顔が青くなる。

 そのとき、船体が大きく揺れて3人はたたらを踏んだ。全員が上を見た。震源は上だった。

 第十話「むしゃ爆睡中」

11名無しさん:2015/09/13(日) 04:08:42
 部屋を飛び出すふたりを見て、あわててぴらこは宝物を持てるだけもった。途中ぽろぽろポケットから落ちるのに気づいたが、置いていかれるほうが怖かった。
 一階あがると小部屋に開けっ放しの扉が見えた。あめとだたらの後ろ姿を認めて、2人と並ぶ。絶句する2人の視線の先をたどると、マストの前に浮く一匹の龍が見えた。

「マブガゴ……?」

 だたらの知っているマーブルガーゴイルとは色がちがっていた。色違いの龍は見たことあるが、青い龍ははじめてだった。

「しかも探知しない。本体じゃないのか、あるいは……」

 続くことばをあめは飲み込んだ。非現実なのは信じていなかったからだ。
 風が、空に伸びたマストへと一直線に駆け抜けた。それは一本の矢で、だたらの放った攻撃は龍の頭を通り過ぎた。

「あたらないな……」

 横目からでもだたらが冷や汗をかいているのがわかる。


 超常現象をひとつ認めたのなら、ほかの超常現象も認めるべきだ。


 いつかのあめに、だれかはこう言った。だから彼は信じていなかった。しかし今は――。
 刹那、まばゆい光に焦がれた目を、あめはかばった。ワンテンポ遅れて熱をもった向かい風に、マフラーが少なからずも首を締めつけた。ひらりとマフラーが落ち着くころ、ようやく探知していた人影に気づいた。

「むしゃ!?」

 声を上げたのはぴらこで、むしゃは水平に杖をかまえたまま龍をのぞんでいた。

「キエエエエ……!」

 竜の叫声に、4人は反射的にフォーメーションをとった。前衛に広く間をとったぴらこ、あめ。そのふたりのあいだの後衛をむしゃとだたら。その陣形は即席にも、理にかなったフォーメーションだった。

 第十一話「戦闘開始」

12名無しさん:2015/09/20(日) 03:59:39
 あめは考えていた。ぴらこは黒魔術師になって闇魔法をガンガン使っている。だたらも物理攻撃寄りだが、知識が使えないわけでもないらしく、火攻撃を放っていた。むしゃなんかそもそも知識だ。つまりこの場で何もできないのはあめただひとりだった。

「せつねえ……」

 でもいちばん近くにいるあめだからこそ気づいた。これだけ派手に猛攻しているにも関わらず、龍はとくに変化がないのだ。

「(効いていないのか……?)」

 物理攻撃ならすり抜ける。魔法攻撃ならくらってはいるようだが、あんまりダメージがない。やはり、本体じゃないというのがいちばんしっくりくる。だとしたら、本体はどこだ。



 だたらは攻撃の手を休めた。あめに遅れてあまり威力がないことに気づいたからだ。

「(どうすれば……)」

 だたらがあせるのも無理はなかった。いまでこそぴらこもむしゃも顔色すら変えていないが、物資が尽きるのも時間の問題である。そしてそのときは、きっと遅くはない。

「なんかおかしい」

 小さくつぶやいたあめに、だたらが耳ざとく気づいた。

「なにが」
「どう考えてもやっぱこいつはモンスターだろ」
「せやな」
「なぜ探知しないんだ……」

 あめは探知スキルを疑ってはいない。それだけ自信があるからだ。あごに手をそえただたらはやがて結論を出した。

「狂わされてるんじゃね? 幽霊船っていわれてるくらいだし」

 あめが驚いた顔をする。その可能性は考えてもいなかったからだ。しかしあめの切り替えは早い。

「だとしたら、マストがあやしくね?」
「マスト? なんでだ」
「だってあそこから動かねえし。守ってるみたいじゃね?」

 じっとマストを眺めてみる。これだけ知識攻撃しても船にダメージがいかないのは、そもそも対魔法の素材でこの船ができているからだ。それ自体はめずらしくない。ずっと背を向けて動かないのは守っているようにも見える。だが、マストを守っているならはじめのだたらの攻撃が当たっている時点でその考えは消滅したはずだ。いや、しかし――。
 ためしに槍を甲板に指してみた。手のひらから槍へ魔力を注入すると、ガーディアンポストと呼ばれる稲妻が二手に分かれて伸びた。

「キエエエエエ!!」
「おわっ」

 突風が床を走りながらあめとだたらの間を駆け抜けていった。
 このとき、だたらはふたつのことを同時に理解した。敵反応がふたつあることと、龍とマストが元人間だった可能性をだ。そしてあれがギルバードだというのなら、だたらは抑える術をもう持っていた。
 だたらはゆっくりと浄化の果実を取り出した。

 第十二話「これが初心者クエスト」

13名無しさん:2015/09/23(水) 02:41:37
 遥か遠くにある雲の隙間から、輝く柱が一本伸びてきた。煌々たる光は視界を埋め尽くし、世界を飲み込んでいく。

「な、なんだ!?」

 ぴらこの声が耳朶を打つ。だたらはすがめた目から、世界が色を取り戻すのを待っていた。
 それは一瞬だった。まさに写真立てで見たふたりがふんわり笑んで、光が消えるのと同時に消滅していった。

「やったのか?」
「たぶんな」

 まだ油断していないぴらこを尻目にしつつ、だたらはあたりを見回した。さっきまでの暗雲にたちこめ薄暗かった視界がやけに明るかった。

「島がある」

 その発言はむしゃから。ここからそう遠くない場所で、きれいな砂浜が視認できた。幸いかどうか、この船はそこへと向かっているらしい。

「なんかいやな予感がする」

 言いつつあめは船縁に腕を置き、下を眺める。ハハッと一笑してから3人を見渡した。

「この船沈んでやがるぜ」

 一直線に船に備えられた浮き輪に飛びつくぴらこを見て、あめがもう一度笑った。

 第十三話「無人島ちゃん!」

14名無しさん:2015/10/12(月) 06:37:36

「沈むまえに沖に着くって教えてくれたっていいじゃん、なあ?」

 いじけるぴらこをだたらは作り笑いで応じた。その結論に気づかなかったのはおそらくぴらこだけだということばを言わないでおいたのは、だたらのやさしさである。
 彼女らの数歩進んだ先では、あめとむしゃがそれぞれ島の景観を見渡していた。

「無人島っぽいな」
「無人島だな」

 木々草花は生い茂り、人が歩いた形跡すら見当たらない。どう見ても人の手が加えられた風景とは思えなかった。

 どうくつが見えた!
 なんかコケっぽいにおいがした!
 ちょっと湿っぽい!

(どうくつに入っておね)
「なんか天の声が聞こえる」
「作者の声な。飽きてきたんだろ」
「次、古代遺跡だって。とりあえず新キャラ何人か出してやる気だすって」
「古代遺跡編へ続く!」

15名無しさん:2015/11/27(金) 23:52:37



 入口のすぐ前に台座があった。その背後には一枚の絵。

「ふうん、これに触ると異世界へ行けるわけね」

 茶色の額縁を触りながらテイマがつぶやく。その背後には弓姿の女性と、槍を背負った女性の姿があった。

「あーてい、正確には何百年と前の世界」
「だまって」
「鷹かわいそう」
「いうなとこの」

 完全なやつあたりを終えたあと、あーていが絵に手を触れさせた。3人は包む浮遊感に身をまかせ、ただ時が過ぎるのを待つ。やがて目の前に広がる町並みを視認した鷹がつぶやいた。

「ここがサンタクローズ村!」
「サンタローズな」

 負けじとあーていも口を開く。

「ここを通る某主人公からゴールドオーブを奪えばいいんだな!」
「レッドストーンな」

「解説乙」
「解説乙」
「なんで俺がつっこみ役なの・・・?」


打ち切り!


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