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第2回東方最萌トーナメント 61本目

149名無しさん:2005/03/09(水) 17:58:20 ID:M6Yjfgng

 あてもなくさまよう美鈴の眼の前に、一人の少女がひっそりと立ちつくしていた。
 流れるような金色の髪。瞳は紅く、深い。
 人形のような赤色の上下に身を包み、身長は――美鈴よりだいぶ低かった。

「どこへ行くの?」

 外見にふさわしい、無邪気な声。
 刹那、美鈴の精神は戦闘モードに移行していた。
 少女の声に含まれるなにかが、彼女の格闘家の部分を刺激したのだ。

「わかりません。本名で呼んでくれる人を捜してるんです」
 美鈴は無表情に答えた。
「妹様、どこかで聞きませんでした?」
「どんな名前?」
「中国語です。苗字が『ほん』で、名は『めいりん』」
「聞いたことあるよ」
 少女はこともなげに言った。
「だったら教えてください。どこで聞いたんですか?」

 少女が笑った。唇の形だけで。

「教えられないし、教えてもしょうがない」
「――どうして?」

 少女は固着した笑いを崩さず、それまでと変わらない口調で答えた。

「あなたは、ここで死ぬから」

 少女が足を踏みだした。
 警告もなく、美鈴は攻撃した。
 相手が主人の妹であることなど、まったく意識しなかった。
 最初のばら撒き弾で少女が後方へ吹き飛ぶ。
 地面に倒れ伏した影に、彼女はさらに弾幕を放った。
 通常弾幕とは信じがたい驚異的な美しさで全弾命中。
 
 スペルカードを構えながら、美鈴はなお臨戦態勢を解かずにいた。
 数十発の宝石弾をくらった少女が、再び起き上がってくる確信があった。
 
 ――予想は的中した。半分だけ。
 
 少女が立っていた。起き上がる過程を、美鈴は見ることができなかった。
 最初からなにごともなかったかのように、少女は二本の足でたたずんでいた。
 身体にも衣服にも、着弾の痕跡はない。
 わざと吹き飛ばされてみたのではないかと、美鈴は疑った。
 
「殺せないよ」
 低い囁き。
「そんなものじゃ、私は殺せない。そっちのスペルでも同じだよ。
 試してもいいけど、弾がむだになるよ。どうしよう。困ったね?」

 美鈴は無言でスペルカードを収めた。
「急ぎの用でして。妹様の相手をしてるわけにはいきません」
「そう言わないで、つきあってよ」
「残念。ワガママは嫌いです」

 緩やかに、美鈴の四肢が舞った。
 型を描きつつ、体内の気を高めていく。

 弾幕が通用しないのなら、素手で殺ればいい。
 それが紅美鈴という女なのだ。

「さあ」

 皮膚が内側から弾け跳びそうな高圧の気をため、美鈴はむしろ静かに言った。

   「殺してみなさい。――殺せるのなら」




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