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第2回東方最萌トーナメント 58本目
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「……でも、無理はいえないものね。ごめんなさい、もう帰るから――」
「ままままま待てっ! わかった、話を聞こうっ!!」
振り返りかけた腕を、慧音が机から身を乗り出して掴む。
後ろ向きのまま、私は密かに勝利の笑みを浮かべた。
くっくっくっ、慧音の性格は調査済みよ。
「ありがとう慧音! 恩に着るわ!」
涙を残した笑顔で振り返って、慧音の手をしっかと握る。
慧音は、“もう大丈夫”といわんばかりの優しい笑顔で、静かに頷いた。
……う、にわかに罪悪感がっ。
「では、暫しここで待っていてくれ。話の共に茶でも淹れてくるとしよう」
「あら、お構いなく」
「すぐ戻るよ。ああ、そこいらの書物には妄りに触れないようにな」
筆を仕舞うと、慧音は無数の巻物や書物を示してから奥へ歩いていった。
誰もいなくなった部屋を、見渡してみる。
清潔感のある整った部屋だけど、いかんせん何処もかしこも本だらけ。
堆く詰まれた本が島を作り、少々邪魔なくらいにも見える。
……触れるなといわれても、こう乱立していると掃除屋の血が騒ぐ。
それに、慧音の集める“歴史”という奴にも少々興味があるのだ。
「どれどれ……」
悪いとは思いつつ、腰を上げて書物の群れを眺める。
はっきりと判別はできないけど、人の名前、時間、知名、
様々なものが隙間なく書き込まれている。
これらの一つ一つが、今日までの歴史を作るピース。
慧音は、頭の中にこれをすべて仕舞い込んでいるんだろうか。
無数の情報たちを歴史と認識してしまうと、
やはり迂闊に覗くのは憚られた。
心の中で慧音に謝りながら、大人しく席に戻ろうとして――
「――あら?」
書物の群れの中に、ひとつだけ異質なものを見つけた。
何故なら、その書物にはまだなにも記されていなかったのだ。
本たちが歴史の具象であるとすれば、これはまだ存在していない歴史か。
これなら誰かの秘部に触れてしまう恐れもないだろう。
私は戯れに、本を手にとってページに触れた。
純白の海に目をやり、ありもしない文字を思い浮かべてみる。
――瞬間、身体からすべての感覚が消失する。
喉まで出かかった悲鳴を上げることなく、
私は白い世界の爆発に呑み込まれてしまった。
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