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第2回東方最萌トーナメント 56本目

200『無限の人形』 2/5:2005/03/05(土) 22:03:51 ID:3j4xD/kU

「そうか、あなた……」

「あなたも聞いたことはあるでしょう、吸血鬼の持つ『変化』の能力。
 その身を自在にコウモリや狼、果ては『霧』にまで変化させることが出来る。
 一瞬だけどあらゆる攻撃を無効化出来る。あなたの魔法じゃ決め手にならない」

 アリスは歯噛みした。
 こいつと最初に手合わせした時点で予想しておくべきだったのだ。
 これほどの実力を持つ敵が、一撃必殺の攻撃に対する対応策を用意していないはずがない。

「見たところ、あなたのスペルカードは残り少ないようね。
 もっとも、スペルで私に傷を付けることはできないけど……」

 見抜かれている。フランの指摘は正しい。
 道中の予想を上回る妨害の激しさに、
 アリスはここにくるまでに多くのスペルカードを消費してしまっていた。

「やっぱり、あなたはつまらない。そろそろ壊れてしまいなさい」

 くすくすと笑うフランの手に、一枚のスペルカードが握られていた。
 今まで余裕を見せて温存していた、悪魔のスペル。
 彼女は本気で殺しに来るつもりだ……。

 避けられない敗北と死を前にして、アリスの顔から表情が消える。

 だが、それは諦めによるものではなかった。

「―――あなたは、一つ勘違いしてるみたいね」

 アリスの言葉に、フランの顔に疑問の色が浮かぶ。

「私の魔法は、魔理沙たちのそれとは仕組みが違うの。
 彼女の場合、その場で魔術式を組み上げ、そこに自身の魔力を流して発動させる。
 私はね、魔術式も、発動に必要な魔力も、全て人形に組み込み済みなの。
 だから私は、人形のスイッチを入れてあげるだけで、自在に魔法を発動できる。
 私にとってのスペルカードはね、作り上げた人形を、この場に召喚するためのものでしかないの」

 あえて己の手の内をさらけ出すかの様なアリスの言葉に、
 しかしフランは興味を示さず、つまらなそうに言い捨てるだけだった。

「ごたくはいいよ。あなたは私に勝てない、その事実は変らない」

 その返答に、あざけりの色さえ浮かべてアリスは続ける。

「物解りが悪いのね。これだから引き篭もりは始末が悪いわ。
 普段の私のスペルが、一つの魔法の発動に必要な人形を喚ぶだけのものとすれば……
 もし複数の人形を同時に召喚するスペルがあったとすれば……どうなるかしら?」

「?……」

「見せてあげる。アリス・マーガトロイドの『七色』たる所以を」

そう言うと、アリスはスペルカードを取り出し、呪文を唱える。
……ひどく、哀しげに。 

「―――体は魔法で出来ている。
  血潮はマナで、心は水晶。

   幾たびの戦いを越えて不敗。

    ただの一度も敗北はなく、
     ただの一度も理解されない。

       彼の者は常に独り、異界の森で勝利に酔う。

        故に、生涯に意味はなく。
         その体は、きっと魔法で出来ていた―――」



   ――――無尽『Unlimited Puppet Works』――――




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