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第2回東方最萌トーナメント 38本目
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「私の式が失礼いたしましたわ」
少女。
いつの間にやら扇はその手になく、空いた手を合わせて、静かに。
「可愛らしい娘ですね。とても大事にされてること、わかります」
「手の掛かる盛りですの。許してくださいな」
微笑みを絶やさぬまま、少女。
そして何故か、対する紅い老婆の顔にも…微笑みが。
「わたくしの結界…お気に召しましたか?」
「それはもう」
今度はころころと、心底より楽しげな顔で、少女。
鈴の鳴るような、と言えば適当か、その笑み、されど哂い声は発することなく。
「境界を操る私を、ああも手玉に取られるなんて。今宵は本当に愉快なことでしたわ」
「それは…良かった」
既に事切れても不思議ないほど血を失いながら、なおも顔を綻ばす老婆。
「貴女に楽しんでもらえたのなら…思い残す事などありません」
「逝く前に、お礼申し上げたいわ」
それでもやはり老婆の負った傷は、即座に冥界へ導かれるほどのもので。
そうとわかってなお、互いの顔には翳りひとつない――
「人が山道へ入れば、狸に化かされるでしょう。人が三道へ入れば、狐に化かされるでしょう」
歌うように、ころころと。
「されど妖のこの身、この私を…八雲紫を、ひと時なれど化かすなど」
笑うように、ころころと。
「それも人の身で。或いは…寺そのものに化かされたかと、思いましたわ」
本当に、愉快そうに。
「その真中に、人を食った和尚でもいるかと思えば」
す、と手を下ろして。
「あなたのような美しい蝶に出会えるなんて。この八雲紫…」
そして深々と。
彼女には似つかわしくない動作に見えたが…頭を垂れて、礼を。
「今宵の事、きっと忘れませんわ」
「それは本当に…良かった」
微笑みながら。
今にも泣き出しそうなほど、顔を綻ばせて笑う老婆は。
「最初は…ほんとうは。あだ討ちのつもりだったのです」
とうに動かぬ躯で。既に流れ出る血さえも失った躯で。
「夫と息子を攫い…恐らくは食い殺したであろう、貴女を。討とうと」
顔だけは、本当に嬉しそうに。
「けれど…私の力では、貴女には及ばないだろう、と」
「そんな事はありませんわ」
その眼では、少しだけ伏せた少女の微笑みも…見えぬであろうに。
「そして諦めかけて…気付いたのです。あだ討ちなどより、貴女が喜ぶことを」
「ええ…」
ころころと、笑うように。
「今のあなたの方が、ずっとずっと。素敵だと思いますわ」
「そしてその結果、私はこうして…貴女に斃されることが、できた」
ころころと。歌うように。
「貴女に消えぬ私を残せて…良かった」
「だから…」
「「ありがとうございました」」
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