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第2回東方最萌トーナメント 38本目

227紫支援 神隠しの主犯(1/3):2005/02/20(日) 07:42:53 ID:LRIRrfiQ
くすくすくす。
くすくすくすくす。

闇深い森の中、嗤い声が木霊する。
何処から響いて来るのかも解らないその声に、幹を背に息を吐いていた男はゾッとした。
見られている。見られている。見られている…!
月の無い夜の森、無数の獣達さえも息を潜めているような異様な気配。そしてそれを支配するかのようなずっしりとした威圧感。
見られている。誰かが自分を見ている。“なにか”が自分を見ている。
玉の汗が男の額から流れ出る。昼であろうと夜であろうと慣れ親しんだ森の中だと言うのに、男の胸に渦巻くのは恐怖しか無い。

くすくすくす。
くすくすくす…

三重にも四重にも折り重なって聞こえてくるその声。
耳を塞いで聞こえなくなるのならば男はとうにそうしていた。だが無駄だったのだ。
耳を塞ごうと頭を抱え込もうと、その声は男に聞こえていた。
最初はただの幻聴かと考えた。村で噂になっていた神隠し。そんな話を聞いたから、馬鹿らしいと一蹴しつつも内心では気になっていたのだろうかと簡単に考えた。

だが違ったのだ。

その声は男をずっと追いかけていた。嗤い声が聞こえるたびに男は立ち止まり、振り返った。だが其処には誰も居ない。
再び歩みを進めても声が聞こえたから、男は立ち止まった。苛つきを押さえながら誰か居るのかと声を上げた。だが誰も返事はしない。
身体が覚えている獣道を早足でざくざくと進んでも声が聞こえたが、今度は男は立ち止まらなかった。早足が段々と余裕を無くし、最後は脚力を総動員して全速力で駆けた。
息が切れる程の距離を駆け抜けて安堵し、一息を入れたところでも嗤い声は聞こえてきたのだ。

くすくすと鈴を転がすような声。少女と娘の境程の可愛さを伴う分、森の中で響くそれは随分と異様さを際だたせる。

ぴったりと幹に背を付けて、男は注意深く辺りを見渡した。
山菜摘みで何度も何度も、それこそ子供の頃から出入りしている森だ。土地勘だって村の誰よりも持っている。
獣に襲われそうになった事や、蛇に噛まれた事も蜂の大群に襲われた事も、間違えて毒のキノコを食べてしまった事もある。だがそういった時に感じたモノとは何もかもが違うのだ。
男の体中が悲鳴をあげている。流れ出る汗はどんどんと体温を奪っていく。得体の知れない気味の悪さが全身に絡みつく。

くすくすと言う嗤い声が響くたびに男の息が荒くなっていく。噂になっていた神隠しの言葉が脳内をめまぐるしく駆け回る。




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